ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

14 / 16
第14話

 オラリオの外の密林、セオロの森に来ているヤマダ、ベル、リリルカ、ナァーザ。ダンジョン以外にもモンスターはおり、主神たちは戦闘能力などない。なので足手纏いになると思い、オラリオに置いてきた。

 何故ここに来ているのかと言うと、ナァーザが新商品を開発する為の素材をここで調達するため。

「卵ねぇ」

「そう、ドロップアイテムじゃない、モンスターの卵」

「だとすると、つがいも居んのかね?」

「……たぶん」

「……繁殖期で交尾中とかだったりしない」

「新手のセクハラでしょうか?」

「……なんでそうなるの?」

 ともかく、ベルを先頭に隊列を組みながら森の奥に進んでいく一行。

「……止まって」

 ぽっかりと開いた場所でナァーザはヤマダにバックパックを渡す。

「10数えたらそれを開けて頑張ってね」

 言われた通りヤマダは10数えて厳重に締められているバックパックを開ける。すると嫌な匂いが一瞬にして辺りに立ち込めた。

「うぇ」

 血肉。ダンジョンでモンスターを引き寄せるために使うトラップ。

 しかし、モンスターたちにとってはこれが良い匂いらしい。腐臭した肉に這い寄るハイエナなのだろう。

 開けてすぐにモンスターが寄ってくるくらい、モンスターの方も鼻が良いらしい。

「よう。こんなの良く好きになれるな」

 視線を上げたその先には恐竜、ブラッドサウルスが牙が並んだ咢から大量の唾液をこぼしている。

『オオオオオオオオッ!!』

「うるせぇ。

――流れを止め、蝕み、浸食し、遡り、進める

永劫の鳥兎を超えようとも朽ちず、射止め続ける

空に縫い付けられる竜、土へと変わる波、壁となる風

動けず、鳴かず、息さえ止められた沈黙の世界

されど隔絶された世界に我らのみが矜持る

今ここに制止を、過去に逆転を、未来に改変を

そして万象を繋ぎとめよう――

出《い》でよ、序列2にして31の軍団を指揮する公爵、【アガレス】」

 ヤマダが耳を抑えながら、偽の詠唱を終える。詠唱は5秒で完了し、されど早口ではなく遠くに居たベルたちにもスッと頭の中に言葉が歌のようにして入って来る。

 スキル高速詠唱。しかし、スキル内包によって埋もれてしまったスキル。

 しかも、本来なら詠唱などヤマダにも召喚する悪魔にも必要はない。その場の気分、後は魔法と偽る為のカモフラージュ。

 そして、呼び出された悪魔の一体、【アガレス】。

 鎖に形態し、ブラッドサウルスの咢に巻き付け強制的に閉じさせ、そのまま拘束する。

「卵が必要なら、殺す訳にもいかんしな」

 血肉の匂いに誘われて次々とブラッドサウルスが出て来るものの、ヤマダは焦ることなく鎖を巻き付け対処する。

 

「す、すごい」

 ベルとリリルカはヤマダの捌き方に驚きの声を漏らす。3体ほど現れたブラッドサウルスは瞬く間に鎖で拘束され身動きが取れない。もがくことも身じろぎすることさえ敵わず、剥製と化した。

 が、見ている暇はないとナァーザが催促してせっせと卵を乱獲し始める。

 そして十分に取り終えた時、ナァーザはその場から一歩も動いていないヤマダに声を掛ける。

「もう大丈夫」

「へぇーい」

 鎖で拘束されていたブラッドサウルス。首に巻かれていた鎖の食い込みが強くなり、血流を圧迫させて気絶させる。

 鎖の拘束が解かれ地面に倒れるブラッドサウルスは、白目をむき出し体をピクピクと痙攣させている。

「さて帰るか」

 その時、鎖が体の中に溶けていく光景に悲鳴を上げるベル。

「ちょ、大丈夫なんですか!? 今、 鎖が!」

「あー。そう言った魔法だから気にするな」

「そんな魔法聞いたことないです」

 胡散臭そうにリリルカがヤマダを見る。

「魔法なんて神秘なんだ。何が起きても不思議じゃないだろ」

 そう言って誤魔化しながらオラリオに戻った一行。

 

 オラリオに戻ってからナァーザは新しいタイプのポーション、ライフとマインドを同時に回復させる新薬、を作り出した。ホームで待って居た神々は下準備を済ませ、ベルとリリルカも手伝い、ディアンケヒトが来る前に何とか間に合わせた。

「もう、くたくただよぉー。ベル君、慰めてくれぇ~」

 ヘスティアは対して働いていないにも関わらず垂れて、ベルはその姿に苦笑するほかなかった。

「でも、本当に土壇場で新薬がよく作れましたね」

「オラリオの人間はダンジョンばかりに目がいって、都市外の可能性を知ろうとしない……。もっと目を向ければ、たくさんの発見があるはず」

 

 一連の騒動を見終えてヤマダは彼らのホームから出て、家に帰り出す。そう既に空は藍色に染まり、星が輝くのが明かりになるほど。

「都市外の可能性……か」

 ヤマダはナァーザから言った言葉を反芻した。

 ダンジョンには強い敵がいる。しかしそれも雑魚となってしまった今、ヤマダは考え込む。

 自分は冒険者なのかと。

 穴倉に潜って鉱石を採掘する炭鉱屋と何が違うのだろうか。

「冒険者は冒険してこそ……か」

 ヤマダはオラリオの名物であるバベルの塔とは反対方向に目を向けた。




今回出て来たアガレスと言う悪魔ですが時間を操ると言うチート悪魔。
能力が時間なのに形態が時計ではなく鎖と言うのは、逃亡者を戻ってこさせるという能力から、対象を縛ると言った風に中二が考えた末です。
鎖に触れた途端、対象の時間を停止(行動不可)。
鎖自体は時間を加速させ一瞬にして迫る(回避ほぼ不可)。
また、必殺技は時空振動での対象を内部、外部から分子レベルでの崩壊(防御無視)。
……こんな相手にヤマダはどうやって勝った?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。