ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第2話

 ヤマダはあれからダンジョンでモンスター(最下層の一歩手前辺り)を倒しては地道に金を稼いでいる。と言っても、100階層以下のモンスターから得られる魔石一個持って帰るだけで、100万~1000万くらい余裕なのだが、流石に大量に流し価格崩壊しても困る。

 なので持ち帰るのはドロップアイテムとその階層で取れる鉱石が主である。魔石? 勿体ないが道端に捨てている。まぁ、余波で破壊されていない方が稀ではあるが。

 しかし、ドロップアイテムや薬草、鉱物などは持ち帰って、気兼ねなく売りさばくことが可能である。

 殆どが見たこともない素材なので価格がまず決まらない。

 しかし、最低限の価格でギルドは買い取ってくれる。それが未知のアイテムだとしてもだ。

 換金所の窓口になんだかよく分からない鉱石や鱗や角を金に換える。総額で1000万はしてヤマダの懐は温まっている。どこかの世界に居る一撃とは違い金はある。

 それなにりに生活は裕福である。

 だが、住み心地がいい街かと言うとそうでもない。

「また盗んで自分の喪にに済んなよヤマダ」

 ヤマダの功績は殆どの人が知らない。

 ダンジョンでも食べ物が得られることを知ってからは、ダンジョンに籠りっ放しで5ヵ月ソロで踏破し続け、その間もステータスは更新され続けるので地上に帰る必要がない。精々、武器の補充くらいだが剣が折れれば拳で戦っていた。

 なので、5年間最初の頃にしかステータスを更新せず、未だにLV1と思われ続けている。

 そして、LV1が1000万稼げる訳がないのでロキファミリアの在庫をちょろまけていると思われている。まぁ、在庫は全く減ってないのでリーダー格からは何も言われていない。

 それでも勘違いする弱い(LV1~5以下)馬鹿どもが群がりカツアゲしてくるのである。

 気色悪い笑顔で取り囲んできたロキファミリアの、多分lv2ぐらいの冒険者たち。血祭りにあげるのは簡単だが後処理が面倒。まぁ、カツアゲされて殺すと言うのも大人げないとヤマダは思う。

 なので、穏便に済ませる。

 手の平にいつの間にか握られていた音楽の指揮者が持つ指揮棒。真っ白で何かの骨で作られた針を思い浮かべさせられる。

 それを少し彼らに振る。

 すると酔ったような千鳥足で去っていく。

 【アルドゥスキアス】

 ヤマダの中に居る72の悪魔の中で音楽を奏でる。そして、軍勢が音楽隊。

【……あのような輩どもに吾輩の音を奏でても面白くないぞ】

「そりゃ、ちょっと魔力入れて振っただけで洗脳と記憶削除できる奴らだからなぁ」

【今使われた魔力ならば一生奴隷に出来るのだがな……】

 怖いことを言う悪魔であるが、ヤマダにそのような事をする気はない。せめて美女であって欲しいと思う。

【なぜあのエルフに吾輩を使わん?】

「え、そりゃ自分で落としたいからに決まってるじゃん。俺じゃなくてお前が落したらお前に惚れたみたいで嫌だ」

 故に花束を持っていても店に飾られるだけに終わるヤマダのアプローチは、きっと何時までも報われることはない。

 

 そして、暇になったヤマダはモンスターを調教して見世物にするガネェーシャファミリアの催し物、モンスターフィリアに行くことにした。

 ヤマダも悪魔を従わせているので芸を仕込められないかと思い、(絶対にしないだろうが)参考になればと思い向かう。道中声を掛けられた。

「丁度イイにゃ。失恋男ー」

 凄まじい精神的ダメージの言葉を放つ猫娘。隣にはこの前見かけた白髪の男の子がいる。リオンはヤマダが来たのを察してか店の奥へと行ってしまった。

「この白髪にコロッセオまで案内してくれにゃ」

「……あっそう」

 と、ヤマダは興味なさげに歩き出し、慌てて白髪の男の子が付いてくる。

 

 人でごった返している道をはぐれないよう付いてくるベル・クラネルは目の前に居る黄色いジャージの(こう言っては何だが冴えない)男に付いて行こうとする。だが、人の波に飲まれてしまいそうなベルとは対照的に、スイスイと人込みを避けて通るヤマダ。

 その時、なぜかベルはとても彼の背中が遠く感じる。彼自身なぜそう思うのか分からない。シル・フローヴァから聞いた話では自分と同じlv1で、万年燻っていると言っていた。

 だが、自分より遠く感じるのは何故だろうか?

 あの人の背中のように。

「着いたぞ」

「え、あ、ありがとうございます!」

 だが、雰囲気からその辺で店番でもやっていそうな気の抜けた空気が漂う彼を見て、ベルクラネルは考えすぎだと結論付け、本来の目的であるシル・フローヴァの探索を開始した。

 

「きゃぁあああ!」

 突如上がる悲鳴。

 ヤマダはいきなり現れたモンスターに戸惑うこともなく、じゃが丸くんバニラ味を頼んでいる。

「あんた何してんだっ! さっさと逃げろ!」

 自分かと気付いた時にはもう遅い。

 大型の猪が山田に向かって突進し、爆ぜた。

 ヤマダが拳を裏拳気味に放ち、一瞬にして死んだ。

 傍から見ていた一般人には猪が突然破裂したようにしか見えず、わけが分からなくなった。とても、目の前の冴えない男が一瞬のうちに屠ったとは思えない。

 しかし、猪を倒した余波でじゃが丸くんを出していた屋台がぶっ壊れてしまった。

「やっぱダンジョンじゃないと周りに迷惑掛かるよなぁ……」

 ヤマダはこの時、自分の居場所はここではないような気がした。

 では、ダンジョンがヤマダの居場所なのだろうか?

 漠然とそんな事を考えた。

 

「でさ、なんでこんな事した訳?」

 城壁近くの高い建物に佇んでいる真っ黒なローブを着た人物に問いかけるヤマダ。

「あら? 私たちが興味本位で行動するのは当たり前じゃない?」

「神様の悪戯に人々は何時もウンザリだと思うけど?」

「お気に召さない?」

「かなり詰まらない」

「貴方に敵う人なんていると思っているの?」

「アンタらの配下が弱すぎるだけだろ」

 控えていた仮面を着けていた獣人が、ピクリと動いたがすぐに目の前の人物への苛立ちを治める。

 その獣人が持っていた剣は中幅から折れて地面に転がっている。

 目の前の無礼な口調の男が、易々と掴み片手で砕いたのだ。

 全力で殴りに掛かっても簡単に受け流されてしまう。受け流す必要さえないと判断したのか、今度は無防備に突っ立りだした。そこに一撃当てても殴った拳の方が痛い。

「そう、で、これからどうするのかしら? 私をギルドに突き出す?」

「別に。ただ、聞きたいことがあっただけ」

「貴方が聞きたいこと? 強敵ならダンジョンにしかいないわ」

「あんたらが居た世界に行く方法なんだけど、そこにはまだまだ強い奴がいるだろ?」

 つまりヤマダが聴きたいのは神の世界に行く方法。

 そして、することは―――。

 その考えに行きついたことにローブの女性は鳥肌を立たせる。

「……どこまで強くなるつもり?」

「強くなるのって登山なのか? 頂上でもあるのか? それ以上、上に行っちゃいけないのか? 戦いって作業なのか? 一撃で終わっちまうもんなのか? 俺は嫌だね」

 その言葉にどこまで強くなるだろうと危惧し、どこの領域まで迫るだろうと期待してしまう。神の恩恵は無限。そして、最終的には神にすら至れるとまで言われているが、そこまでたどり着いた者など、未だ現れた形跡すらない。目の前の冴えない男以外は。

「……残念だけど行けるのは神だけよ」

 だが、まるで常識を知らないのように宣言する。

「だったら人間越えてやる」

 そう告げ、ヤマダは帰り始めた。 

 

「あの子も凄まじい輝きを持っているというのにね。渇望っていうどこまでも深く純粋で、神々の私たちさえ近づいたら焼かれそうな光」

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