ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第3話

 ヤマダは今日もダンジョンに籠る。

 しかし、一向に鬱憤を晴らすかのような毎日。

 自分の力に、自分の環境にうんざりする。

 無双ゲームここに極まり。

 最初の頃のような恐怖も興奮も置き去りになってしまった。最初の頃は最強の冒険者になるんだと意気込んでいたが、いざ其処まで行って見ると全員が弱すぎる孤独感。

 驚きをスリルを求めるには、仕方なく弱体装備の指輪を増やすし、自分を弱くするしかない。

「ちわーす」

「……またアンタかい」

 魔女の隠れ家と言う魔導士専門の店。だが、ヤマダは魔法を習得している訳ではない。ここに高純度の魔石を持ってきて、呪いの指輪の加工品にして貰っているだけだ。

 そして、袋に包まれた高純度の魔石と金をカウンターに置く。

「取りあえず今着けているネックレス単位でお願い。追加注文で、性能向上」

「馬鹿かい。ああ、馬鹿だった」

 いきなりそんな事言ういかにも悪い魔女をした姿をした老婆。それも仕方がない。lv5であれば1つ付けるだけで、身動きが出来ない呪いの指輪。それを何十も身に付け戦闘行為を出来ることが可笑しい。

 何十も付けてればまず死ぬ。例え神の恩恵を受けたlv5だろうが、まだ認知されていないlv10桁だろうが。少なくとも製作者はそう思う。

 しかし、死なない化物が目の前位に居た。

 更に今着けているのよりより強力な『呪い』を受けるのである。どこまで弱くすれば気が済むのか考えるほど馬鹿らしい。

「取りあえず今お金はこれだけしかないんだけど」

 置かれた魔石の数と金の量は、大手ファミリアの豪邸を軽く3軒買える額である。

「アンタはこの老婆を過労で殺すきかい?」

「今まで俺が払った金でバカンスにでも行ったら?」

「悪いけどアレに使ったよ」

 そう言って老婆が指さした先には魔導書と杖がある。恐らくどちらも凄まじい力を発揮するのだろうがヤマダには興味がない。

「魔法、神秘の力ねぇ……」

「アンタには関係ない話さ」

 何気に馬鹿だから魔法なんて使えないと言われた気がした。

 そんな時、新たに客が来る。

「邪魔するぞ。……む」

「何であなたがここに居るんですか? ここは魔導士専門の店ですよ」

 同じファミリアの魔法使いエルフ。

 リヴェリア・リヲス・アールヴ、レフィーヤ・ウィリディス。

 ヤマダは魔法という力は手品程度にしか感じない。大抵、殴れば殺せるのだ。つまり娯楽であり、便利グッズではあるが、殺すのに大道芸なんて必要か? と思う人種である。

「ヤマダ。いい加減ホームに帰ってきたらいいのではないか?」

「はぐれ者だから別にいい。からかわれるし、軽蔑するし、むしろ帰りたくない」

「……ロキが『このままはいかん』と言っていた。お前は戻って休憩を取るべきだ」

「大丈夫だって。一応、恋をしました」

「その恋は本物か?」

 少なくとも美人です。

「まぁ、振られてばっかですし、lv1じゃ振りもらえてないですけどね」

「本物の愛は外見や力なんて関係ないらしいぞ」

「それでも限度があるでしょう! 何ですかそのダッサイ黄色のジャージは! それ冒険者の格好じゃなくて不抜けたおっさんの姿じゃないですか! 少しはロキファミリアの自覚を持ってください! って言うかそれでダンジョン潜るとか、ダンジョン舐めすぎでしょ!」

 それ+弱体装備着けています。

 ちなみにヤマダが黄色のジャージを着るのは、薄暗いダンジョン内でモンスターに認識されやすいのと、防御力なしの実現である。簡単な話、どこかの死神と同じく相手を戦い易くする方法に近い。流石に髪の毛に鈴を付ける気はないが、持つべかと考え始めた。

「私もその格好はないぞ」

 と全否定されたが、ヤマダの絶望的なファッションセンスではこれに「マント着ければかっこいいんじゃね?」ぐらいにしか思っていない。それを目の前のエルフ2人に言ったら何か諦めた目をした。

「もういい、魔石の交換は終わったか?」

「不備はないよ。全く4つも魔法石を駄目にして、よく魔法使い名乗れるものだい」

「浪費家ですまない」

 そうしてリヴェリアは老婆から杖を受け取る時、耳元で囁かれる。

「あいつ、もう首飾りが効いてないよ」

「!?」

 危うく杖を落としそうになった。

 悟ったのはヤマダだけで、リヴェリアの瞳の奥に恐怖を映し出す。

(だから居られないんだって)

 しかし、レフィーヤは魔導書を見つけた驚きで気付かない。

「あ、あれって魔導書ですか!?」

 その声に合わせるようにしてリヴェリアは、ヤマダの目を逸らす。

「まさかレノアお前が作ったのか?」

「いひひっ。あたしがそんな大それた魔術師かい?」

 少なくとも凄まじい『呪い』を装備に付与する魔術師であることは間違いないだろう。ヤマダはそんなに感じなくなってきているが、最初の弱体化装備はそれなりに効いた。それでも少し熱を引いたような倦怠感ぐらいだが。

「今競売中でね。ひひっ、良い具合に競り上がっているだろ?」

 桁はそれなりに高いらしい。適当に10回~20回換金すれば届くようなアイテムである。

「って、こっちも凄そうな魔導書じゃないですか! わっ! 隣の杖も見るからに凄そう!」

「ああ、そっちは非売品だよ」

 レフィーヤが言ったそれはヤマダの金で買った方。

「お前が使うのか?」

「……使う必要がないように祈るさ」

 ヤマダに視線を向けながら言う老婆。

「それよりお前たち魔法大国の連中に目の敵にされてるよ。小娘の方は千だとか大層な2つ名を付けられているじゃないか。いひひっ。夜道に気を付けな」

 悪そうな魔女の老婆が言うと雰囲気があり、レフィーヤの顔が蒼くなった。

「余計な脅し文句は止せレノア。レフィーヤも真に受けるな。行くぞ」

「ちょいお待ち。あんたには追加に話があるだよ、リヴェリア。内密な話だから他の餓鬼どもはさっさと出ていきな」

 そう言われいつの間にかヤマダは、弱体装備の首飾りを受け取り店を出る。

「じゃ、また来るわ。ばぁさん」

「二度と来るな!」

 今にも手元にある物を投げそうな勢いで、叱咤したレノア。逃げ出すようにヤマダとレフィーヤは店から出ていく。

 

「で、話と言うのは?」

「あの杖と魔導書だよ。あんたにやる」

 いきなりのことにリヴェリアは反応に困ってしまった。ただ、目の前の魔術師はどう考えても善意な事をする性質ではない。

「あの魔導書には最上級の呪い、封印、弱体化を施した魔法が発現するように仕組んである。上限も上書きされ1つ増える。そして、杖はヤマダが最下層近くで集めた素材で作られている。ひひっ、意味は分かるね?」

 つまり、あの杖と魔導書セットで何かを封印しろという事。

 その何かとは―――。

「ふざけるな」

「何がふざけてるんだい?」

 今まで悪意のあるようなからかいの声は消え、真剣な表情になる老婆。

「モンスターではなく人間だから? 違うね。あいつはもう人間以外の何かだ。もう、呪いの指輪すら克服している」

「違う。あいつは―――」

「あいつは?」

 一瞬に言葉に詰まってしまった。

 自分自身が先程の魔女の言葉に思ってしまったのだ。

 化物と。

 だがそれでも。

「……ロキファミリアの一員だ」

「……そうかい。まぁ、遅かれ早かれタガが外れちまうもんだよ。特に力を持った人間て言うは、その力を振るいたくて振いたくて仕方がない。あんな風にしてまだ普通を装っているのが可笑しいくらいだ」

 

 魔女、レイラの言葉を頭の中で考える。

 最初はもう5年前になるか。

 モンスターを神の恩恵を受けず、倒したと言う子供がロキファミリアの戸を叩いた。

 入団試験では同じ試験を受けた大男の喉を、即座に模擬剣で突き昏睡させたことに驚いた。これならLV2は確実だろうと。

 そして、1ヶ月経った頃戻ってこなくなった。

 最初は死んでしまったと思った。

 ダンジョンは過酷で残酷。

 一瞬の油断が命取り。

 そして、4ヶ月後。ひょっこり顔を出して戻ってきた彼をロキと首脳陣は問い詰めた。今までどこに居たのかと。

 そして、彼は満面の笑みで言った。

 ダンジョンと。

 そんな訳あるかと全員が彼を叱った。

 しかし、まだ子供だった彼は意固地にダンジョンに入って居たと言う。

 では拳で証明してみろと言ったのは、ガレスだったか。本当なら力がついているはずだと、そうでなくとも拳で伝わると。

 そんな訳あるかと当時は思っていた。

 彼の一撃を見るまでは。

 一撃。

 たった、一撃でlv6のドワーフの頑丈な体をズタボロにした。

 前衛でモンスターの強力な攻撃を防ぐような奴をだ。

 骨は軽く3桁は砕け、内臓は破裂し、殆ど死体だ。

 エリクサーを何個も使いやっと息を吹き返した。死んでいないことの方が可笑しいと思えるほどの一撃。

 そして、言ってしまったのだ。

 誰が言ってしまったかは分からない。ロキかもしれない、フィンかもしれないし。もしかしたらまだ、奇跡的に意識があったガレス……いや、私が言ったのだろう。

 心の中で思っても飲み込むべきだった言葉。

 ポツリと漏らすように。

 「化物」と。

 聞いたヤマダは、飛び出して小さな部屋を借りて1人で住み始めてしまった。

 それから私たちはこのことを騒動になってしまうと考え隠蔽した。神々の興味を惹けば、ヤマダがどこかのファミリアから目を付けられるのは明白と、もっともらしい理由を免罪符にヤマダから目を逸らした。

 私自身他にやる事があると後回しにしてヤマダを避け、逃げ、無視してしまった。

 2年経った頃には手遅れだった。

 復讐に駆られた人物を手伝い、人をダンジョン内で殺してしまった。確かな確証がある訳ではない。だが、そうとしか思えないほどに殺人の現場は破壊されていた。

 そして、

「リヴェリア様?」

「ど、どうした」

「いえ、何かすごく考えていらっしゃたようなので」

「リヴェリアが? 珍しいね。ダンジョンでは一瞬の油断が命に関わるから余計なことは考えるなって言っていたのに」

「ん」

 ダンジョンに入る前アイズ、レフィーヤ、ティオネ、ティオナが怪訝な顔をする。

「ああ、すまない。少し考え事をな」

「もう、しっかりしてよねママ」

「……誰がママだ」

 そして、少々納得しないものの気にせずダンジョンに向かいだした一行。フィンは聞こえないように聞いてくる。

「……ヤマダのことかい」

「ああ。あいつの呪いの指輪が効かなくなっているらしい」

「…………ゆゆしき問題だね」

「……子供だったんだ。泣いていたんだ。なのに追いかけることもせずに、ほったらかしにした。……私は母親ではない」

「誰だって間違えるさ。僕だって同罪だ」

「……アイズは」

「大丈夫だ。彼女には仲間がいる」

 では、ヤマダには?

 答えを出す暇はダンジョンは与えてくれず、この瞬間だけは何も考えず戦う。

 自身で分かりきった答えなど、意味がない。




取りあえずヤマダの実力を知っているファミリアメンバーは首脳陣とロキだけです。
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