ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第6話

 ダンジョン100層にヤマダは居た。

 なぜ本来のLVからすればそんなに浅い階層に居るのか。

 ロキの酒のせいで余計な出費つで、金が必要になって来ただけである。

 そして、ヤマダにも強くなる、神になる以外にも目標がある。

 リュー・リオンとの結婚である。

 結婚資金、家、住宅費、生活費、子供が生まれれば養育費。生きていく上で金は必要である。金のある不幸はまだ何とかなるが、金のない生活は確実に不幸だ。

 さらに言えばリオンはエルフ。種族では長寿であり、人生で使う金は多い。更に子供もハーフなため、人間よりは長生きするだろう。

 故に今までに銀行に貯金し、それなりに蓄えはある。

 だが、少なくて困ることがあっても多くて困ることはない。精々やっかみで突っかかって来る馬鹿どもが多いだけだ。

 そして、100層に居る階層主と呼ばれるボスの魔石はかなりの値段で取引が出来る。ドロップアイテムも然り。

 そして、その100層ぐらいに居る階層主の黒い竜は、鎖で拘束され身動きが取れなかった。

 ヤマダの中にいる悪魔の1体【アガレス】。

 悪魔の鎖が黒い竜を拘束し続け、まるで麻酔をしていない患者を押さえる拘束具のように。

「まぁ、痛いけど我慢しろよー」

【【無茶言うな】】

 ヤマダの手にも変な形をしたナイフが握られている。園芸などで使う小さなシャベルを、U字に曲げたような短剣【アンドロマリゥス】。

 おもむろにその短剣を振り下ろし、黒い竜の鱗を引き剥がす。

 ビキビキと嫌な音が鳴る。竜からすれば連続して爪を剥がされた痛みなのだろうが、鎖で口を塞がれているので断末魔すら上げることが出来ない。

 次は爪、翼膜、甲羅、角、皮を引き剥がし、解体していく。

 もう、ドラゴンの威厳とか誇りをかなぐり捨てて、黒い竜が涙を目に溜める。

「悲しいけど、金の為なのよね」

 無慈悲に今度は黒い竜の魔石を取り剥がす。

 瞬間、灰に帰っていく竜。

 モンスターを普通に倒した場合、殆どの部分が灰と化す。しかし、財宝の場所を暴き出す能力を持つ悪魔【アンドロマリゥス】を使えば、大量のドロップアイテムを獲得することが出来る。また、採取道具(ピッケル、虫網など)の代用としても使える。

【【悪魔め】】

「お前らが言うな」

 悪魔すらヤマダのことを非情と思えるドラゴンの解体ショー。やっていることは、文字通りの身包み剥ぎ。

 弱肉強食がダンジョンの掟とはいえ、哀れすぎる光景である。

 リュックサックには大量に取れたドロップアイテムが、ぎゅうぎゅう詰めになっている。ついでにその辺を掘って純度の高いアダマンダイトを採取し、ヒョイと持ち上げいつも通り地上に転移した。

 

 オラリオの路地裏に転移し、後から軽く衝撃。

「待って、ふぎゅ!」

「ん?」

 唐突に後ろからぶつかってきた子供が可愛らしい悲鳴を上げる。

 なんだ? と後ろを振り返るとシル・フローラが尻餅を付いていた。

「あ、すまん」

「いえ。あれ? ヤマダさん、どこから来たんですか?」

「手品で」

「?」

「と言うか、なんで路地裏に居るの。ごろつきどもに巻き込まれるぞ?」

「あ、それは大丈夫です。それよりヤマダさん。私を背負って走ってくれませんか」

「え、怪我した!?」

「……はい、なので急いで走ってリューに追いついてください!」

 額に冷や汗を流してしまうヤマダ。シルはリオンと仲がいい。そして、そのシルをヤマダが傷つけたとなれば、何時もの冷たい視線に殺気がこもる事は間違いない。そのような事態はごめんだと、すぐにシルを背負い、走り出す。それと同時進行で、ばれないように【フェニックス】を手に持ち治療開始。

 直ぐに足の腫れは治ったはずで、隠蔽成功。

【……嘆かわしい】

 手に持った炎のように真っ赤な羽根扇子からそんな嘆きが聞こえて来る。

 そして、路地裏から出てた時、その光景にヤマダは固まった。

「ぼ、僕のナイフです! ありがとう! 本当にありがとうございます!」

「え」

 歓喜極まってエルフであるリュー・リオンの手を握り締めるベル・クラネルが居た。

 エルフと言うのは気を許した者以外には、あまりいい顔をしない。最悪殴られる。と言うか殴られた。

 しかし、リオンの顔は嫌な顔ではなく、むしろ恥ずかしながら嬉しいような、ともかく頬を薄く赤く染めている。

「え」

 その光景はシルにとっても衝撃的で、ヤマダと同じく固まった。

「クラネルさん。困ります。こういった行為はシルにやっていただかないと……」

「何言っているのリュー!?」

 硬直から回復したシルが、慌ててリオンにツッコむ。

 ヤマダは射抜かんばかりにベルを凝視している。

「あの」

「少年、いやベル・クラネル様! 俺にエルフの女の子と、もっと正確に言うならリオンさんと仲良くなる方法を教えてください!」

 土下座。それも回転ジャンプしながらのスタイリッシュ土下座である。好きな人の心を掴むためなら、恥など平気で投げ捨てる奴である。

「え? え?」

 余りのことにもうベルの頭の中は混乱状態。

「いい加減にしなさい。みっともない。クラネルさんもこいつの言葉を本気にしてはなりません」

 と、土下座をかましているとため息を吐くリオン。

「は、はぁ。ところでこのナイフ何処に落ちてましたか?」

「落ち……? いえ、小人族が持っていました」

 そう言って疑惑の目を向ける先は、小さな獣人が1人居る。

「ですが、私の早とちりだったようですね」

「え? そうなの?」

 ヤマダとしてはリオンの実力を知っている分、珍しいこともあるものだなと、また見逃しているのかと思った。

 だったら、ここで彼女の偽装についてあれこれ言うのも無駄だろうと思う。

「―――あんまりおいたしちゃだめよ」

 それ、脅迫ではないだろうかと耳がいいヤマダは、冗談抜きで怖い。戦闘力もただの力の一部に過ぎないのだ。何より雰囲気が怖かった。

 

「それで秘訣は!?」

「だ、だからないですよそんなの」

「まさかの素であれだと!?」

 目の前の白髪の男の子。ベル・クラネルとの差に余りに愕然としてしまう。

「な、何が違うと言うんだ。スペック? 愛くるしさ? まさかショタ好き? だとしたら俺に勝ち目がねぇ!?」

 一人寂しく項垂れはじめたヤマダに困惑しだすベル。傍から見ればいい迷惑であるが、お人好しなベルは豊穣の女主人でヤマダの愚痴を聞いていた。

 流石に悪かったと思い、ヤマダが奢ると言うと。

「そんな悪いですよ!」

 と言って自分の飯代を払おうとする。

 律儀な奴である。

「そう言えば装備が良い物だな」

「え?」

「身に付けている軽装は動きを阻害するところはないし、そのプロテクターならバックラー《小楯》としても機能する。それに篭手ならもう片手に武器持てるだろ? 良く自分の戦闘スタイルを考えて構築してるなと」

 緑色のプロテクターを指さしながら言う。

「じ、実は、その、贈り物で」

「……女性?」

「……はい」

「ガッデム!」

 いい奴ではあるが、妬ましい奴。ヤマダはベルをそう思った。




悪魔は何気に宝を見つけ出す能力を持っている奴が多いのはなんでなんでしょう? 元が天使だから? いや、悪魔だから現金なのか? 後者の方が納得。
 ちなみに今回黒い竜が出てきていますがゼウスファミリアが傷を付け、退散させたとしても、ヤマダが倒してしまえば傷は初期化され両目になるんですよね?
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