ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第7話

「で、どのくらい?」

「……3000万ね。そっちの鱗は売る気はないのよね?」

「うーん。どうするべきか迷ってる。いや、高く買い取ってくれることは分かっているんだけどね。……多分払えなくなる。ギルドの定価価格で売るのがいいんじゃね?」

 ヘファイストスファミリアに昨日採掘したアダマンダイトを売りに交渉してきたのだが、本気で悪魔の力を借りて交渉するとなるとヘファイストスファミリアの財政は火の車だろう。

 なにせ、高価ドロップアイテムが山のようにあるのだ。

 こんなのを毎日持ってきたとしたら、まず買うのにかなりの金を使い財政破綻。需要と供給が成り立たなくなる。それは、他の冒険者にとっても迷惑だろう。

「それで私が武器を作ったとしても」

「まぁ、まず耐えられないだろうな」

 苦々しい顔になってしまうヘファイストス。

 初めて来た時はクエストの報酬目当てだっただろうか。

 その報酬が武器の提供だった訳だが、その時ヤマダの言った言葉。

『いや、ガラクタはいいから金ください』

 頭のこめかみがぶち切れそうになった。

 ついでにその言葉を聞いていた武器の製作者も。

 で、『手前の武器のどこが気に入らんのだ!』と問えば『耐久性』と答える。不壊属性を持った剣をだ。なら『証明して見せい!』と言ったら、小枝でも折るように指を挟んで剣を折った。

 あんまりな光景に空いた口が塞がらず、製作者はしばらく心が折れていた。折られた剣のように修復不可能とはいかないが、1日塞ぎこんでしまった。

 その製作者はと言うと、今、太刀を持って工房から帰って来た。

「おお? 珍しい客がいるぞ。主神様よ。よし、ヤマダこの太刀を折ってみろ! 渾身の力作だ!」

「あいあいさ」

 と、軽く太刀の刃の中間を指で咥え、親指に力を入れて押す。結果、曲がった。

 折れはせず、曲がった。まるでスプーンでも曲がったように戻る気配はないが、折れはなしない。

「強度変わった?」

「ふふふ。まぁ、そんな所だがそれでもこれか……」

 先程の活発さはどこへやら、言葉が徐々に萎んで行き椿・コルブランドは項垂れた。

 まぁ、3日も丹精を込めた至高の1品が易々と無残な姿を晒せばそうなる。

「だが、手前は諦めぬぞぉ!」

「おー」

 すぐさま復活した椿にぱちぱちと力のない拍手を送るヤマダ。

 かれこれこのやり取りはもうすぐ3桁に達しようとしている。

 神剣を超える剣を作り出すことが彼女の目標らしいが、ヘファイストスが作成した剣もヤマダの力には耐えられていない(一応神の力は使えないので完全な技術だけ)。技術もなく叩き付けると確実に根元から折れる。

 まぁ、ヤマダとて最初からステゴロでダンジョンに挑んでいた訳ではない。ステータスがカンストする前に技術的にある程度は強くならなければ、各上のモンスターを倒せる訳がなかったのでそれなりに技術はある。

 一応ヤマダは剣術が使えない訳ではないが、それでも壊さないように使うなど面倒でやらない。

 悪魔たちが模る武器や道具は所有者の魔力を吸って具現化、強化するため、容量が超えない限りはなんとでもなる。例え負荷が掛かって折れようと魔力を込めればすぐに復活する。なのでヤマダにとって悪魔武器がある時点で、地上に売られている武器はガラクタも同然。

 ガラクタと言うよりはもう要らない、と言った方が正しいか。

「弁償はしねぇぞ」

「おう。絶対満足いく武器を作ってやろう!」

「いや、もう悪魔武器があるから別に要らね。それよりも面白い武器とかの方がいいんだけど」

「面白い武器?」

「剣が斧に変わったり、盾と剣が合体して斧になったり、魚を模った氷の魔剣だったり、7本の剣が合体して大剣になったり、どんなにステータスが高くともダメージが1しか出ない伝説の剣とか!」

「ちょっと待ってくれ、ヤマダ何を言っている」

「きっとどこかの世界にある武器」

「そんなのが武器な訳なかろう。玩具だ」

「そうね、ハルバードで事足りるし、耐久性が無さそうだし、最後は論外じゃない」

「合体や変形、ネタのロマンのかっこ良さが分からぬとは……」

 なぜか熱く語り出したヤマダをジト目で見る神と鍛冶師。

 これが男女の差であろうか。ヤマダは強さ以外でも疎外感を味わった。

 

「おぅ?」

「あいった!」

 課金を済ませた後、歩いているとベルが慌ててぶつかって来た。

 持っていた本が地面に落ちて中身が広がるが何も書かれていない。

「ん? 魔導書?」

 ヤマダが拾い上げた魔導書はもう使用済みらしく、もはや何も力を感じない。

「これ貰っていい?」

「え!? でも、それ忘れ物で」

「は?」

 ベルが何を言っているのか。少なくとも本当にこんな忘れ物するなら、余程の大馬鹿野郎だろう。まぁ、よくよく考えれば駆け出しのルーキー冒険者が、高価な魔導書を持っている方が怪しいのだが。

「……盗んだ?」

「違います! 冤罪です!」

「まぁ、そんなことする奴じゃないんだろうけどさ。でもこれどうするの?」

「も、持ち主に誠心誠意謝るしか」

「むしろ、なんてことをしてくれたんだしょう。とか、弁償しろと言う未来しか思わないんだが」

「うぅ。気の重くなるようなこと言わないでください」

 今にも泣きそうな声を出すベルと一緒に豊穣の女主人の店まで来た。

「え。ここで拾ったの?」

「えっと、正確にはシルさんに読んでみれば、って言われて」

 なんて偶然だろうか。最早、疑惑を通り越して奇跡的な確率。

 ベルは入店した直後に店主のミアに頭を下げる。

「本当にすいません!」

「それは大変なことをしてしまいましたねベルさん」

「ちょ!?」

「元凶が何言ってんのやら」

 シルの思わぬ言い方(裏切り)に驚くベル。そのシルは上目づかいで目に涙を溜め物凄くあざとい顔をした。

「駄目ですか?」

「すっごく可愛いけど、駄目です」

「テヘ」

 力がなくとも女は怖い。その認識を改めるには十分である。

「忘れちまいな。忘れた奴が悪い」

 そう言ってゴミ箱にシュートしたのをヤマダが慌てて拾う。

「物は大切に扱えよ」

「ガラクタだろうに、あんたも物好きだよ」

「いや、まだ使えるし」

「え? 使えるんですか?」

 効果が無くなった魔導書に使い道があるのかとベルはヤマダの発現を疑問視する。

「あ、ああ。メモ帳や日記代わりにな」

 と、さっさと魔導書を回収し自宅へと戻る。

 

「さてと、じゃあ頼むぞ【ダンタリオン】」

【よかろう】

 【ダンタリオン】。

 72の悪魔の1体。その形態は本。

 そして、ヤマダから出て来た【ダンタリオン】を、魔導書に翳す。

 本のページが【ダンタリオン】に吸い込まれていく。そして、全てのページを食べ終えた【ダンタリオン】は満足そうに頷いた。

 実はこの作業、魔導書に刻まれていた魔法を吸収している。元々から全ての魔法や知識を持っているとはいえ、せっかく地上に出て来たのだから本を読みたいのこと。

 なんでも、人間の作る魔法に興味があったらしい。

【ファイヤボルトか。全く人間の身でありながら詠唱要らずの魔法を発現させるとは、中々に面白い】

「ふーん」

【貴様からしたら、攻撃的な魔法よりも不可思議な魔法を期待しているのだろうが】

「まぁ、殴った方が速いし」

【筋肉馬鹿め。我など殆ど使って貰えぬのだぞ】

「いやぁ、【フルフル】とかが長く使っているからお気に入りになってさ。ってか馬鹿言うな。これでもお前らの知識の殆どを吸収した奴だぞ」

【その知識を使わないから馬鹿なのだ。冒険者としての力だけではなく、学者としても最高になれるのだぞ】

「別にそんなの要らないし」

【貴様は【オリアス】か】

 無欲な主に嘆息する悪魔だった。




 何気に頭の面でもチートなヤマダ。
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