ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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過去の回想回。


第8話

 4年前。

 

「邪魔だガキ!」

「知るかクズ」

 バギャと盗品を抱えた男を拳でぶっ飛ばすヤマダ。ぶっ飛ばされた男は屋台に突っ込み、頭から熱した油を浴びたが、冒険者なので心配はないだろう。ヤマダの拳で顎が砕け、骨が折れているだろうが。

「そこの少年やるではないか!」

 と、男を追って来たのか金髪のいかにも貴公子と言うか、いいとこのぼちゃんがヤマダの行為を見ていたのか声を掛けて来る。

「一撃で悪を屠る。まさしくヒーロー!」

「……」

 声高らかに言うので、周囲の注目を浴びる身としては一刻も早くこの場を去りたい。

 しかし、足を翻し去ろうとするとなぜか邪魔をされる。

「ふっ。僕はアストレアファミリアの正義の味方の1人。さぁ、君も騎士道に則り正義を執行しようではないか」

「頼む。人間でも理解できる言葉を言ってくれ」

「ふむ、ではもう少し詳しくいうと、冒険者とはいえやって良いことと悪いことがある。そして、今のオラリオでは悪いことをやっている冒険者の方が圧倒的に多い。そこで騎士を僕らは集めなければならない。このままではオラリオは更に治安が悪くなり、世も末の世紀末化するだろう。それを食い止めるために我々は結成された! 例え別々のファミリアとて、その胸に正義の心を持っているのならば我々と一緒にオラリオを変えていこうではないか! と言う話だ」

「20文字以内で簡潔に話せ!」

「僕らと一緒に悪い奴やっつけようっぜ!」

 

 まぁ、第一印象は最悪だった。暑苦しい、ウザい、能天気。だけど、あいつは本気でヒーローしていた。

 

「貴様ら、か弱き老人を労わらずしてそれでも人間か!」

「あ? 知ったことかよ。こんな所で店開いて邪魔だろうが」

 一応、老人が露店を出していたのは道の端っこであり、どう考えても邪魔になることはない。単純にゴロツキの悪い絡み方である。そして、店の金を巻き上げその手に持っている時点で強盗罪。

 しかし、注意する者がいるかと言うとそうではない。これがLV1程度の複数なら他の義に駆られた冒険者も参戦したかもしれないが、生憎と彼らのLVは3~4。

 オラリオでも少数の上級冒険者である。

 そして、貴公子のLVは2。勝敗など分かりきっている。

 これで、アストレアファミリアのメンバーが居れば話が変わったのかもしれないが、他のメンバーも巡回中で運悪く離れていた。

 それでも挑んだ。

 まぁ、結果はお察し1撃で地べたを這いつくばってしまう。

「ぐぅっ」

「はっ! 言う程じゃなかったな正義の味方さまぁ~。ぎゃははは!」

 そして、去ろうとするゴロツキに這いずりながらも足を掴む。

「か、返せ」

「うぜ」

 グジャと足で手を踏みつけられ潰される。

 それでも離さない。

「か、れが、何をしたと言うんだ。貴様らのような行いを許すほどの悪でも犯したと言うのか!? ただ穏やかに店を開いていただけではなじぃが」

「るっせんだよ。いい加減死ね」

 もはや、蠅集る虫を追い払う簡単な気持ちで殺すようになった冒険者。

 だが、体の中で胸糞悪い気持ちを抱いたのはゴロツキだけではない。

「てめぇもな」

 取り出した剣が素手で受け止められ、驚いたゴロツキどもだが数で勝てると思ったのか畳み掛けようとする。

 次の瞬間には口が地面と長時間キスすることになった。

 

 で、なぜか付き合いが多くなった。

 

「ふ。悪の眷属め! 今こそ僕が鉄槌を下そう!」

「てめぇの武器剣だけどな」

 まぁヤマダからすれば遊び感覚でダンジョンの浅い層に、暑苦しい貴公子と潜っていた。

 敵に歯応えはなく、一撃で倒せるがなぜか楽しかった。

 しかし、いつも一緒にではなく、やはり別のファミリアだから同じメンバーの方に用事があれば貴公子はファミリアの方に付き合う。そんな時は深い層でモンスターを倒しているから気付けなかった。

 逆恨みから命が狙われていることに。

 

 取りあえず、意図的にやったファミリアメンバー(神を含む)をダンジョンの【セーレ】を使い666層より下の魔界にぶち込み、無残に死ぬところまで見届けることにした。

「てめぇ! 俺たちをどこにやった!?」

「ダンジョン」

「ふざけてんじゃねぇぞ! 地上に帰ったら、いや、今すぐ殺してやる!」

「無理だろ」

「神である我をこのような所に送り込んでタダで済むと思うな! 今すぐ八頭裂きにし―――」

 神の胴から上がモンスターの攻撃によって薙ぎ払われた。

「神様だからって何でもして良いって事でもないだろ」

 通常なら死んだ途端天界とやらに強制送還されるらしいが、ここは魔界。瘴気が漂い、地上の力も、天界からのルールも通じない。

 神すら力を奪い、消し去る場所。

 ここは魔の領域。

 上層、中層、深層よりも、何千、何万、何億倍も強いモンスターが蔓延る所で精々LVが10にも届いていない者たちが、地上に変えてる見込みなどあるはずがなかった。

「ほら、モンスターが来るぞ」

 禍々しい赤黒い鱗、毒々しいオーラが溢れ出す竜。

 赤子の形をしているが、体調が50m超えている巨人。

 金色の剣と鎧を身に纏う4枚の翼を持った人型のモンスター。

 全てがヤマダが他の階層から持ってきた、階層主と呼ばれる通常より強いモンスターたち。

 全員が恐慌状態に陥って逃げ惑う。だが出口はすでに崩落しており、転移魔法を使えない彼らに逃げ場などない。

 赤黒い竜の一撃で、纏めて何十人もが挽肉になり死体となる。

 赤子の巨人が素手で掴み、頭から噛り付く。

 素早く振られる金色の剣で、瞬く間に死んでいく。

 抵抗しようが避けられ、弾かれる。しかしモンスターの攻撃は鎧ごと貫通し、致命傷となる。

 一瞬にして地獄絵図。

 誰にも知られることなく死んでいく。

 その辺の虫のように呆気なく死ぬ。

「だずげで、お゛ね゛がい゛だずげで!」

「やだ」

 例え彼らが改心したところで、許す気も助ける気も元から無い。

 彼らに望むのはただ一つ、この世から消えてほしいだけである。

 そして、奇跡的に1分生き残った最後の一人も踏み潰され死んだ。

 最後はヤマダが適当に3体のモンスターを蹴散らし、終わる。

 何の意味もない。

 別に虚しくはない。

 人を殺したと言う罪悪感もない。

 ただ、少し寂しいだけであり、全くと言っていいほどつまらない展開であった。

 まぁ、気晴らしにはなったが。

 

 最後に、【ムルムル】を使い魂となった貴公子と会話したものの相変わらずであった。

「例え肉体は朽ちようとも、騎士道に間違いはない!」

 と、そのまま天界に召されて逝ったようで、なんだかおかしくなった。

 今、例え夢の中でも隣で一緒に酒を飲んでいるのだから。

「騎士道は不滅である! なぜならヤマダが継いでくれたのだからな!」

「いや、継いでないから」

「いや、継いでいるぞ! 未だに魔物たちと戦い続けているのだからな!」

「生活の為だって」

「その過程で悪を屠るのだ! 何も恥じることはない!」

 やはりウザい奴だ。こっちの発言を自己変換して良いように変えてしまう。

「好きな人の凶行を止めることも出来なかったのにか?」

「しかし、僕らとは違い生きているだろう? ならば何も問題はない!」

 はははとヤマダは陽気に笑う。

 そして、貴公子は席から立ち上がり出口へと向かう。

「逝くのか?」

「ああ、新たな体を得てこのリック・フォン・ザーラックは、またこの地で騎士道を広める!」

「……いや、待て、その前に俺の貸した金返せ」

「ふはははー! 何のことだったかなぁ! では! これにて失礼!」

 

 と、リックが店を出た所で夢から覚める。

 もう既に夜は更けて、豊穣の女主人の営業時間を過ぎようとしていた。

「ヤマダ、いい加減起きて帰りなさい」

 と、お盆で頭を叩かれ、グラグラとする頭が覚醒していく。

「ああ、うん。なんかなぁ……」

「新品を試さずにはいられない性質だという事は知っていますが、一杯で酔い潰れるのに飲む奴がいますか。馬鹿ですか。馬鹿ですね」

「まぁ、でも夢の中でリックに会った。もう転生して、また騎士道とやらを広めてやるとよ」

「……そうですか。10、20年後は騒がしくなりそうです」

「……だよなぁ」

 勘定を終え、店の外に出る。

 酒で頬や頭に熱があり、そこに当たる夜風が心地良かった。




感想の方でありましたが、リューさんはヤマダの実力をそれなりに知っています。正確ではありませんが。

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