ゼオンが乗っているグランドが撃墜されたという報は敵味方問わず衝撃を与えたもののすぐに皆気を持ち直した。
まだゼオンが戦闘不能になった訳ではない。 だからすぐにラクサスを止めに行くだろうと皆は考えた。
その頃漸くギルドに掛けられた術式がレビィによって解除された。 まさかナツとガジルの亀と兎の話がそれを解くきっかけになったとは夢にも思っていなかっただろうが。
ナツたちは外に出ることが出来たが同時に外でも最後の雷神衆フリードとの戦いが起ころうとしていた。 街の外に近い場所にいるカナとジュビアの二人は戦いを止める為にフリードを追って来たのだ。しかし走っていたところで二人を囲むように術式が展開される。
「二人の内のどちらかが戦闘不能になるまで出ることを禁ずる・・・何だい!このふざけたルールは!」
カナはフリードの定めたルールに苛つきを隠そうともせず舌打ちする。このルールは当然両方倒れることを目的にしたルールだ。もしどちらが勝ったとしてもおそらくフリードに倒されてしまうだろう。
二人のどちらとも単体ではフリードとの力量差は大きいのだ。 そんな二人のどちらが自分と戦うのか見極めるかのようにフリードが二人の前に現れる。 カナが現れたフリードを睨みつけるがフリードはそれを受け流すと二人に戦うよう命令する。
「フリード!この術式を解きな!それとも何かい?私たち二人を相手にするのが怖いってのかい?」
「馬鹿言うな。忌々しきファントムの女が倒れようがカナが倒れようが我らの計画に支障はないがなるべく自分の手は汚したくないんでな」
その言葉にジュビアは手を握り締める。フリードの言葉は自分を仲間と認めていないということにほかならない。ならばとジュビアは覚悟を決めた。自らの身体を水に変え、空高く上がっていく。 どれだけ上がっても術式から出ることはできない。
しかし空にはラクサスが設置した雷のラクリマがある。無数にあるように感じられるラクリマの内の一つを破壊すれば自らは多大なダメージを受けるだろう。しかし仲間と認められる為になら何でもする。そう決めたのだ。
そして生体リンク魔法が掛けられているラクリマの一つを破壊したジュビアは雷に撃たれ、力無く落ちていく。倒れたジュビアを腕で抱えるカナは困惑の表情を見せる。
「あんた、どうして?」
しかしジュビアから返事はない。大きなダメージを受けた影響で気絶してしまっているのだ。
「まさか、ファントムの女がこんな事をするとは・・・・・・」
フリード自身信じられない。いや、信じたくないのだろう。
昔は敵であったジュビアだが今は仲間だ。カナは自分の身を犠牲にしてまで術式を解除してくれたジュビアにフリードが言ったファントムの女という言葉。それはジュビアを仲間と認めていないと取れる言葉である。それを聞いたカナは仲間に対する言葉ではないと憤慨した。
「取り消せ・・・・・・」
「ん?」
カナの握るカードに光が篭り、カナの怒りに呼応するように地が揺れる。
「ジュビアをファントムの女と言ったことを取り消せぇえええ!」
しかしカナはフリードに成す術もなく倒されてしまった。彼の扱う術式によって。それをミラが見ていた。カナの倒れている姿、ジュビアの倒れている姿。これはミラの過去のトラウマを刺激した。
しかも駆けつけたエルフマンをブリードはたくさんの術式にかけて傷つけていく。そして最後にフリードの言った言葉『死滅』が最後の
ミラから失われていた魔力が身体全体に駆け巡る。全ては家族が死ぬことへの恐怖心からかつてミラが魔人ミラジェーンと恐れられていた頃の力が発現する。身体は悪魔を彷彿とさせる姿に変わり髪は逆巻く。背中からは羽が生え尻尾が生える。この姿こそ
「まさか・・・その力は消えた筈⁉︎」
ブリードは一瞬何が起きたのか理解できなかった。だがすぐに理解する。自分はミラによって宙に浮かされたのだと。
ミラは一瞬でブリードの元へと行き吹き飛ばした。しかしまだ力に振り回されている感じがしていた。この力が開放されたのは二年振りなので仕方がないかもしれないがそれでも彼女はかつてエルザのライバルにしてS級魔導士だったのだ。すぐに自らの力を制御してしまうだろう。
そう思ったフリードはそうなる前に倒そうとしたが彼女の適応力は予想以上に早かった。サタンソウルの力に完全に適応したミラはフリードを川の方向に殴る。しかし寸前のところで自らの魔法で背に翼を生やすことで空に浮かぶことに成功した。フリードはミラの姿を見ると
「これはあまり使いたくないが仕方あるまい。闇の文字(闇のエクリテュール) 暗黒!」
自らに魔法を掛け悪魔のような姿に変貌したフリードはミラへと向かっていく。しかし力の差は歴然だった。完全に力を制御したミラに蹴り飛ばされ
「イービルイクスプロージョン!」
巨大な魔力の玉をぶつけられる。爆発するその玉に当たり、フリードは元の姿に戻った。最早彼に戦う力は残っていない。しかしそんなフリードに鬼気迫る表情で近付くミラに恐怖をフリードは感じた。生まれて初めて感じる恐怖だった。
目前まで迫ったミラはフリードに向かって手を向けた。殺される。そう思って目を閉じたがいつまでも痛みは襲ってこない。おそるおそる目を開くとサタンソウルを解除したミラが立っていた。
「虚しいわね。こんな戦い・・・こんなことをやっても誰も幸せになんてなれないのに」
虚しい。そうだ。虚しい戦いでしかない。仲間同士で本当は争いたくないと全て分かっていながら隠していた心がミラの言葉をキッカケに溢れてくる。もう自分は戦えない。今までの分まで涙が零れる。その涙は様々な感情が詰まった涙だった。
”フリード、ミラジェーン。両者共に戦意喪失”
一方で
「何故、貴様がここにいる?答えろ!ベルデ!」
憤怒の感情をさらけ出しているゼオンが一人の青年を見据える。その青年はまるで神話に出てくる神様のようだ。
「やあ、久しぶりだね。ゼオン。気分は最悪みたいだね。僕は最高だけど。だって君たちにまた会えたから」
一泊おき青年は言葉を続ける。
「君がこれからの選ばれた者だけが行けるステージにくる資格があるのかどうか確かめさせてもらうよ」
そう言って愉快そうに笑う青年にゼオンは黒炎竜の皇拳で殴り飛ばす。
「貴様だけは必ず倒す!我々人間を弄び、竜族の誇りを踏みにじった貴様だけは必ず!」
ここに新たな戦いが始まろうとしていた。
皆さんお久しぶりです。最後に出てきた青年は一体・・・・・・。次回は青年とゼオンの戦いです。