魔法の応酬による凄まじい戦闘をゼオンはベルデと行っていた。今いるこの場所には結界が張られている為、人に被害が出ることはないということは救いであった。
「ははっ 楽しいね〜」
心底楽しそうに戦うベルデにゼオンは怒りをさらに増幅させる。憤怒の感情が剥き出しだった。しかしそうなればなるほどベルデの思う壺だという事はゼオンにも分かっていた。だが止められない。今はこいつを破壊したい。ただそれだけだった。
「その減らず口は相変わらずだな・・・・・・」
苛立ちを込めた声でそう呟くゼオンとは違い心底楽しそうな表情でいるベルデ。両者は正反対の心情だが戦うという目的は一致していた。
ゼオンはベルデを殺す為に・・・。
ベルデはゼオンがあのステージへと来る資格があるかを確かめる為に。
「そう。怒るなよ。僕は君に会えて嬉しいんだからさ♪」
「あの時、俺たちを消そうとした癖によく言う」
ゼオンの脳裏に思い出されるのは四百年前の戦い。ベルデと戦うのはこれが二度目だ。しかし今の力で彼には勝てないとゼオンはよく理解していた。それでも戦うのは理性より怒りが上回っているからだろう。一度殺さないと気がすまない。それがゼオンの気持ちだ。
「あの後も君が生きていたのはあの時の僕にとっても予想外だったんだ。まぁ、その代償に君は力を失ったみたいだけどね」
ギリっとゼオンは奥歯を噛み締める。
こいつがいるせいでヒョウガは・・・皆は・・・死んだ。破壊したい。皆を殺したこいつを・・・ゼレフの幸せを奪ったこいつを殺したい。
ゼオンの心の中にドス黒く形容し難い感情が渦巻く。気付けば今自分が使える力を最大限使おうと身体が動き始めていた。
「黒炎竜の咆哮!」
しかしゼオンの咆哮は容易く躱された。
「危ないな〜。少しひやっとしたじゃないか」
「ちっ・・・」
「まあ、今の君じゃあ勝てないし互角に戦えないよ」
ベルデの言葉にゼオンは沈黙し自らの右手を見る。
「・・・・・・仕方ない・・・こいつだけは使いたくなかったが」
覚悟を決めた目で黒い魔力を開放するゼオンを中心に黒い風が舞う。それを見たベルデは歓喜に身体を震わせる。
「そうだ!それを待っていたんだ!君が持つ最強の力の一つを!」
ゼオンは変わっていた。髪には赤い毛が混じり、目は赤黒く変色した。そしてもっとも特筆すべきは
「ドラゴンフォースノヴァをね!」
ゼオンが纏う黒いオーラだろう。黒き竜の力を開放したゼオンの魔力は無理矢理全盛期に近くしている。しかし反面、無理矢理力を全盛期に近付けている為、長くは戦えない。
「やはり君は素晴らしいよ!ゼオン君!」
ならばとるべき道はただ一つ。短期戦だ。
「・・・・・・」
ゼオンは一瞬でベルデに迫ると黒い炎を纏った拳を放つ。先程とは威力が桁違いだ。
「(力が上がった。いや、戻ったのか? だけど分かることはやはり君は選ばれし者だ。まだ戦いたいと僕が思うんだから間違いない)」
ニヤリとベルデは笑う。楽しいのだ。なおも追撃しようと来るゼオンは黒炎竜の皇拳より遥かに強力な拳を放ち、ベルデは白いオーラを纏った拳をゼオンに放った。すると二人の魔力が弾け大きな爆発を起こす。
「(だから、もっと楽しくする為にある仕掛けを
両者共、傷を負っていた。受けたダメージは同じくらいだ。しかしダメージはゼオンのほうが大きい。やはり強制的に力を引き出すのは辛いのだろう。
「君の力は失われてなお輝いているね。あの時と、いや。それよりも強い輝きで。だがやはり力を失ったというのは辛いのかな?」
膝をついているゼオンは時間が経つ程に身体から血が流れる。それを見て何を思ったのかベルデは両手を上げ降参のポーズをとる。
「どういうつもりだ?」
「もう君と戦う必要はないんだよ。君に資格があることは分かったからね♪」
それを聞いたゼオンは拳を下ろす。最早戦う力はない。それに冷静になってベルデを見てみると目の前にいるべルデは本体じゃないと分かる。なら今こいつを倒したところで無意味だと考えた。そしてベルデは何かを包んだ袋をゼオンに投げ、それをゼオンは受け取った。
「それは僕を楽しませてくれたお礼だよ♪じゃあまたね〜」
そう言って消えたベルデが渡した袋を開けるゼオンは
「相変わらず分からないな。あいつの行動は・・・」
そう呟く。ゼオンの足元にはベルデが置いていった四つの虹色のラクリマがあった。それを一つ砕くと、おぼつかない足取りでラクサスがいる場所へと向かう。また一つ砕くと傷が少し塞がったように見える。しかもさらに足取りもしっかりとしたものになっていた。
その頃カルディア大聖堂にいるラクサスの前にミストガンが現れる。
「ラクサス!」
「よう、ミストガン。待ってたぜ。さあ、始めようぜ!俺が最強だと証明する為の前哨戦をな!」