空は暗い夜に変わる中、ゼオンとコブラは空中戦を展開していた。ゼオンは炎の翼を使用して、コブラはキュベリオスに乗りながらだ。
「中々・・・」
余裕がある表情をしながらも感心するように口が弧を描くゼオンと違い余裕があまりないコブラは両腕を竜のような腕にすると毒を使い攻撃を仕掛けるが躱されてしまう。二人の戦いはやがてニルヴァーナにある都にまで及び過激さを増していく。
「毒竜双牙!」
コブラが腕を交差するようにして振るうと大きな竜の腕がゼオンに襲いかかる。しかしそれを魔力で形成した膜のような盾で防いだゼオンはコブラを殴り飛ばす。キュベリオスの元から離れ宙に浮くコブラだったが彼の落下地点まで飛んできたキュベリオスに拾われ無事だった。
「なんて奴だ・・・俺の攻撃が効かねえとはな」
そう喋るコブラの額からは冷や汗が垂れており驚愕を隠せない。彼は自分の力に自信を持っている。だがゼオンには効かない。自分の攻撃が全て無力化されていた。それでも負ける訳にはいかないのだ。オラシオンセイスの誇りにかけて。その一方でゼオンには彼が妨害魔法を掛けているせいで自身の能力は使えない。
”妨害魔法”
これはかなり使い勝手の良い魔法でとても応用が効く魔法だ。今ゼオンが使っているのは閉心系と乱波系。閉心系はその名から分かるように心を聴けなくするタイプで乱波系はコブラのような特殊能力の力を音波を流す事によって乱れさせるタイプのものだ。
「いや、面白い攻撃だった。だが毒竜の力は厄介だな。だからその力は俺がもらおう」
傲慢な発言だとコブラは思った。自分の力を手に入れるなど自身にあるラクリマを取り出さない限り不可能だと分かっているから。それと同時に苛ついた。バラム同盟の一角 オラシオンセイスの一人である自分を前にしても余裕そうな態度を崩さないゼオンが。
「調子にのるな‼︎毒竜のブレス!」
毒竜の咆哮を放ったコブラはこれならばゼオンも倒れるだろうと笑みを浮かべた。それに対してゼオンは攻撃を放つ訳でも避ける訳でもなく、その攻撃を食べた。その行動にはコブラも驚いたが自ら毒を食べるという事は自殺行為だ。現にゼオンの身体には紫色の痣が広がり死ぬかと思われた。しかしすぐに痣は消えていき目が一瞬だけ紫に変わる。
「かなりマズイな。だが毒竜の力、確かにもらったぞ」
毒竜の力を自身の者としたゼオンにコブラは目を見開く。ゼオンがドラゴンスレイヤーだとは知っていたが違う竜の力を食らい自らのものとするなど聞いた事がない。
「貴様・・・一体何者だ⁉︎」
「人間と竜を超越してしまった者・・・とでも言っておこう」
「驚いているようだが俺の身体は貴様ら普通の人間とはスペックが圧倒的に違うんだ。たとえ魔障粒子だろうと俺の身体はすぐに適応し、自らの力にする事ができる。お前に勝ち目はない」
コブラは先程のように傲慢な発言だとは思えなかった。ゼオンが言う事は事実だと本能が訴えかけてくるのだ。それに自らの毒を自身の力に変えられたところを見たら事実だと認めざるを得ない。
ゼオンがコブラと戦っている頃
ブレインがいる場所に向かっていた筈のナツは謎の蒼髪の少年と戦っていた。
「ドラゴン使い・・・コロス」
使いとコロスという言葉しか聴き取れなかったナツは少年の攻撃を避け続ける事しかできなかった。何故ならあの少年には攻撃を繰り出しても何か見えない盾が存在するかのように弾かれてしまい魔力が消費されるだけなのだ。弱点が分かるまでは逃げ続けるしかない。
「なんで俺が狙われなきゃなんねえんだよ⁉︎俺を殺したくなるような事をした覚えはねえし、そもそも初めて会ったんだぞ‼︎」
そう叫ぶナツに次々と投げ付けられるたくさんのナイフ。しかも魔力の糸でこちらに正確に向かってくる為ナツもナツを持っているハッピーもかなり必死だった。
ナツたちが必死に逃げている中 グレイとルーシィはジュラ、ホットアイペアと合流していた。
「それにしても何なの?ここ・・・どうして都市があるの?」
ルーシィの言う通りこのニルヴァーナは危険な魔法だった筈・・・しかし何故都市がここにあるのだろうかと皆は不思議に思っていたが六魔だった為、ニルヴァーナについての情報を知るホットアイが教えてくれた。
「ここにはかつてニルビット族が住んでいたのデスヨ」
「ニルビット族?」
「今から四百年程前に存在していた一族でその長はかつてイシュガルに存在した王家に仕えていました」
ホットアイが話す事を聞き逃さないようにと集中する皆を見ると彼は話を続ける。
「その当時の王にニルビット族の長はニルヴァーナの立案書を提出したデスヨ。しかし王はそれを認めず、計画を永久凍結するように命令。ニルビット族もそれに従い、ニルヴァーナがこの世に現れる事はない筈だったデスヨ」
しかし今、ニルヴァーナは存在している。それはどういう事なのかとさらなる疑問が頭に浮かぶ。
「ですが人間はその王亡き後争いを始めたデスヨ。それに心を痛めたニルビット族は王の命令を破り、ニルヴァーナを創ったデスヨ。光と闇を入れ換える超魔法によって人間同士の争いは終わり平和という意味を持つニルヴァーナの名が与えられました」
しかし皮肉なものだ。平和という意味を持つニルヴァーナが今や悪事に使われようとしているのだから。そうグレイは言うがジュラは流石に古代人たちもそうなる事は予想できなかったのだろうと推測していた。それに強大な魔法には副作用がつきものである。
「しかしその王はそうなることを予想していたのだろうな。だからこそニルヴァーナを創る事を止めさせたのだろう」
コブラを思いっきり殴り飛ばしたゼオンは息を吐くとナイフから逃げているナツを見て相手を見る。しかしその相手は本来ならもうすでに存在しない筈の者だった。
「あれは・・・最初に創られたエーテリアス! 」
”エーテリアス”
ゼレフ書の悪魔の総称のようなものだがここにあのエーテリアスがいるのはゼオンにとってかなり予想外だった。最初に創られたエーテリアス・ファートは今のナツが敵う相手ではない。しかも二人が戦ってもしナツに眠るアレが目覚めてしまったらマズイ。その為、ゼオンは助けに行こうとする。しかしそうはさせないと言うかのようにキュベリオスがこちらに向かってくる。
「お前に用はない・・・」
その言葉と同時に雷が降り注ぐ。それをまともに受けたキュベリオスは力なく落ちていきゼオンはナツがいる場所へと向かう。
「ナツ・・・お前はコブラを潰してこい。こいつは俺がやろう。お前では相性が悪すぎる」
不満そうな顔のナツはゼオンに問いかける。
「けどよ〜それならあいつだって同じじゃねえの?」
「奴は耳が良すぎる。だから大きな音を出せば倒せるかもしれん。それにあいつはお前を格下だと思っているようだぞ」
額に青筋を浮かべ凄まじい速さでコブラがいる場所へと向かったナツを見ることなく、ゼオンはファートと対峙する。
「ゼオン・・・ケス。ドラゴン・・・イラナイ」
この狂った悪魔の様子を見たゼオンは顔を顰めた。闇の力を受け過ぎて壊れたのだろうかという程に目は濁り、身体は変色している。そして昔は笑いながら人間を殺すタイプだったのにとゼオンは昔を振り返っていた。
「・・・久々に黒の全能力を開放しよう。あまり長く時間は取りたくない」
「ケス!・・・ゼオン、ケス!」
ナイフではなく、自ら向かってくるファートにゼオンはただ立っているだけ。ファートの身体には生命エネルギーを奪う力がある。その為、ファートに触れた者は綺麗さっぱり消えてしまう。ようやく動き出したゼオンはファートに触れてしまった。しかし倒れたのはファートの方であった。
「お前、壊れて俺の力を忘れたのか?アクノロギアと俺だけが持つ竜の亜種・・・黒竜の特徴は破壊。圧倒的な剛の破壊がアクノロギアの力ならば俺の力は身体に直接作用する柔の破壊だ。その力を受けた者は身体が内部から破壊されると昔に身をもって教えてやった筈だが・・・所詮は失敗作か」
何故ファートが倒れてゼオンが倒れなかったのか。 それは彼の能力に起因する。ゼオンの力は内部からその者を破壊する事ができる。そしてファートが生命エネルギーを奪う事ができるのは人間でいう心臓部にそれを発動する核が存在するからだ。それを破壊してしまえばこれ以上生命エネルギーは奪う事はできない。しかもゼオンは不老不死だ。生命エネルギーが枯れる事はないのだ。つまり触れても問題ない。 さらに核を破壊してしまえばファートの身体は構造を保つ事が出来ず、消えるのみ。
「お前は一度だけ復活できるがそれはもう使ってしまったからな。永遠の死を味わっておけ」
一方でナツもコブラに勝利したがミッドナイトがグレイたちの前に現れた。そこでホットアイが皆を逃す為戦うが敗北してしまった。しかしジュラは圧倒的な実力でブレインに勝利し、エルザも自身の前に現れたミッドナイトと交戦し見事勝利を収める。
だが六魔が全員倒された事によってブレインのもう一つの人格 ゼロが目覚めてしまう。彼はナツ、ルーシィ、グレイ、ジュラ、ハッピーを倒すとニルビット族の末裔であるケットシェルターに砲撃しようとする。
「くっ・・・間に合わない!」
果たして連合軍のケットシェルターの運命は?