「いや、間に合わせる! そして必ず止める!」
ケットシェルターに大砲が向けられる。それを見てウェンディは悲痛な声を出し、皆も目を見開く。しかし間に合わない。皆がそう思ったがただ一人、ゼオンだけは砲撃を止めようと駆ける。全ては大切な者の為にと。
『お主が助けようとしている者はもうすでに亡霊だ。にも関わらず何故、動く?』
自分の頭にグランドの声が直接聞こえてくる。
「俺は大切な者を穢すような事をされるのが一番嫌いだって知ってるだろ? それが俺が幼い頃からいてくれた奴ならなおさら・・・」
”まぁ、ただの自己満足だがな”とゼオンは心の中で付け加える。
『・・・儂らの内のどれかを召喚しろ。そうすれば間に合うかもしれん』
「珍しいな。お前が俺の自己満に付き合おうとするなんて・・・お前が好きな誇りみたいなやつでもないぞ」
そう話すゼオンだったがグランドはそれを否定する。
『いや、其奴はお主の誇りのようなものだからな・・・儂はそれを守りたい。それは儂と同じ契約竜も同じの筈だ」
「なら、いくぞ。 強襲形態だ」
するとゼオンは今自分が出せる全魔力を開放した。それだけで大地は震え、同時に龍の姿でグランドはゼオンの前に現れる。
「とりあえず皆をニルヴァーナから転移させよう・・・」
パチン
とゼオンが指を鳴らすとナツたちの身体は光に包まれ、ニルヴァーナから少し離れたところに移動する。それに気を失っていなかった者たちは戸惑っていたがグランドの頭に乗り、ニルヴァーナを止めようと向かうゼオンの姿を見て納得する。
「今のはゼオンの仕業か・・・」
そう呟くエルザは彼がゼロを倒そうとしているように感じた。しかし
「マスターたちからの命令を忘れてはないだろうな・・・?」
ゼオンは六魔と一人しか戦ってはならないのだがコブラともう戦ってしまっている。もう戦う事はできない。そうは思ってもゼオンなら平然と破りそうだとエルザは思った。
そしてついにニルヴァーナから砲撃が行われた。マスターであるローバウルを除くメンバーたちは狼狽えるがそれをローバウルは一喝する。
「これが儂等の罪・・・なぶら。ならばそれを受け入れるのみ」
だが彼らの視界を遮る影のような形になったゼオンはニルヴァーナから放たれた攻撃を弾いた。
「若‼︎・・・生きておいでで」
ローバウルの目が最大限に見開かれる。かつて仕えていた主であり、自身が育て上げた者が自身の前に現れるとは夢にも思わなかっただろう。しかしゼオンには聞こえてはいないようでまっすぐニルヴァーナへと向かっていく。
「破壊させてもらうぞ‼︎」
ニルヴァーナを破壊しようと向かってくるゼオンの前に現れたゼロは彼にダークロンドを放つが弾かれる。
「させるか‼︎」
自身を転移させたのかと普段ならとゼオンは考察するだろう。しかし今、ゼオンはかなり頭にきている。ローバウルを狙ったゼロに対してなら残虐になれる自信が彼にはあった。ジョゼよりも恐ろしい目に合わせる自信が。
「お前は罪を犯した。じいに大砲を向けるという罪をな。だから制裁を下そう」
無表情で淡々と喋るゼオンに絶句するゼロは次の瞬間ニルヴァーナに叩きつけられていた。
「流石は竜を使役する一族・・・だが消えるのは貴様だ!」
そう叫ぶとゼロは二つの本を取り出す。
「出でよ! ドラゴニス‼︎そしてゼレンよ‼︎」
すると水色の人工的な鱗をした竜 ドラゴニスと白銀の鎧を纏った黒髪の男 ゼレンが現れた。彼らを見て思わず顔を顰めたゼオンを見てグランドは溜め息を吐きたい気分になっていた。
「げっ・・・クソ親父とニス」
ゼレンはゼレフ書の悪魔 エーテリアスだ。しかしその実態はゼオンたちの父親である。とはいえ息子であるゼレフにエーテリアスとして変えられてしまった訳であるのだが。
そしてドラゴニスはゼオンがまだ王になる前に親友という名の悪友たちとイタズラに使おうと考え、創った人工ドラゴンだ。ちなみにグランドはドラゴニスが今の実力になる過程で何度も戦っており、人工ドラゴンであるにも関わらず本物の竜に近い実力を持つ原因は半分はグランドでもう半分は言うまでもなくゼオンである。
少しヤバいかもと感じるゼオンは呟かずにはいられないというように話し出す。
「めっちゃ会いたくなかった。確かに失敗作が現れた時点で予想はしていたが・・・ニスとか反則だろ。あいつの実力は今の平和ボケした世界なら一国は塵すら残さず簡単に滅せるぞ。それにクソ親父とかないわ。失った力があるなら簡単に消せるけど今の実力じゃ勝てるかどうか怪しいし」
「お主がまいた種だろ」
呆れを含む声でそう言われたが反省は見られない。今はやつ当たりしたい気分でいっぱいなゼオンは皆を転移させる前にいた場所へと転移させる。ゼオンはグランドとの合わせ技でニルヴァーナを破壊するつもりでいたのだがゼレンたちがいる以上自分一人での破壊は不可能だと考えた。
「クソ親父をエーテリアスにしたのはゼレフだっての‼︎ああ、ウザい!確かに半分は俺のせいだけど!あのタッグと戦えとか死ねって言ってるようなもんだろ!」
久々にゼオンの素が見れたと考えるグランドと呑気に言いあいするだけの余裕はあるようだった。
「それよりゼレンって何?」
「あやつのエーテリアスとしての名だろう」
素のゼオンにはいつもより多く、ツッコミが入るようだ。
一方でナツたちにはヒビキからの念話が入っていた。その会話はゼオンも聞いていたが今はゼレンとの戦闘で会話に入る余裕はない。
二人の実力ほぼ五分と五分。 一瞬の油断が命取りになりかねないのだ。しかし一瞬の隙をつかれドラゴニスはケットシェルターに咆哮を放とうとする。
ゼオンも間に合わないと思ったが上空から砲撃が放たれその攻撃が出される事はなかった。皆が上を見上げるとそこには破壊された筈のクリスティーナの姿が。破壊は免れたものの消えた左翼はリオンの魔法で、浮かばなくなった本体はレンの空気魔法とシェリーの人間以外のものを操る魔法で浮かせている状態だったがあまり長くは持ちそうになかった。
しかし足元にある六つのラクリマを同時に破壊すればニルヴァーナは止まるという事を皆に教えるとヒビキはそれに番号を付けて皆に決めさせた。
ナツは一、グレイはニ、ルーシィは三、一夜は四、エルザは五でその場にいたエルザとウェンディとシャルル以外は知らないがジェラールが六番に行く事に。
いつの間にかニルヴァーナの内部に戻ったゼロがアーカイブをジャックするという事件は起きたものの皆はすぐに向かって行く。ただ一人ジェラールを除いて。ジェラールはゼオンという名を聞いた時から頭痛がしていた。そこで一部の記憶を取り戻した。炎を操る二人の魔導士の事を。 ゼオンとナツの事を思い出したジェラールは六番ではなく、一番に向かう。
場面をゼオンに戻し
ドラゴンに乗り空中戦を展開するゼオンは忌々しいというように舌打ちをした。
「あの二重人格者め〜面倒な奴らを解き放ちやがって!しかもこいつら持ってるって事は闇の誘惑ジェラールに掛けたのあいつで決定じゃねえか!」
ゼレン、ドラゴニス、そしてファートの本は闇の誘惑と共に封印されていた筈だった。しかし楽園の塔にあった物はその封印された筈のもの。悪い予感がずっとしていたゼオンは当たって欲しくなかった予感が当たりげんなりしていた。
「ぼやいても仕方あるまい。早く貴様の父親を倒すぞ」
「無茶言うな。この野郎は王国一と謳われた騎士団長だぞ」
しかし会話をしている間にも彼らは襲ってくる。こちらに向かって凄まじいスピードで突進してきた。だがそれをすれすれで躱すと途切れた会話を再開させる。
「昔は竜騎士って言われてたんだ。見た事はないが多分俺と同じように竜を召喚する力を持っている筈だ・・・」
「もしかしたらアレを使う事になるかもしれないな」
アレを使うような事にはなりたくないがと呟くゼオンにそれはそうだとグランドは同意する。
親子の決戦が行われている中ナツはゼロのいる一番のラクリマがある部屋へと辿り着いた。
ここにナツ vsゼロの戦いが始まろうとしていた。