フェアリーテイル 戦いの果てに待つもの   作:NAGI

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本当の気持ち

ゼレンと戦っていたゼオンはニルヴァーナの都市部でゼレンと一騎打ちをしていた。ゼレンは剣を振るいゼオンを攻撃するがそれをゼオンは容易く躱している。上空ではグランドとドラゴニスが空中戦を展開していて五分と五分といったところだろう。

 

「はぁっ‼︎」

 

ゼレンの上段から繰り出される攻撃を避け、剣を弾くと黒炎を纏った足で回し蹴りを喰らわす。今までの戦いの中でもかなり強めに蹴ったゼオンの攻撃を受けたゼレンはグランドと対峙していたドラゴニスの方向へと吹き飛ぶ。しかしドラゴニスの背中を蹴ると新たな剣を換装し、ゼオンに迫る。あまりにも早くゼオンが反応したのは剣が振り上げられるその瞬間だった。斬りつけられたゼオンは倒れたがすぐに起き上がりゼレンを見据える。

 

「(忘れてた・・・奴の代名詞・・・ソニックモードを)」

 

ゼレンは騎士だった。その為、素早く動く術を模索していた。その結果辿り着いたのがソニックモードと言われる超強化魔法だ。この魔法は理論上では身体能力を極限まで高める事も可能なドーピングのような魔法である。ただし、ゼオンがソニックモードで力を高める姿を見たのは今回を含めて二回。しかも一回目は模擬戦の時だったのであまりあてにはならない。

 

「(極限まで高められたらどうなるかは俺にも分からない。しかも奴は昔はともかく今はエーテリアスだ。そこまで高められたら俺はアレを使うかもしれない)」

 

ゼオンはゼレンがソニックモードで身体能力を極限まで高める前に倒さなければ勝ち目はない。

 

「(けど久々に燃える戦いだ。人類の存続をかけたドラゴンたちとの戦いでも、ジョゼとかのような弱い奴らとの戦いでもない。ただ同格の相手と自分の命をかけた本気の戦い。まさに生きるか死ぬか)」

 

ゼオンたちを破壊する力を持つゼレンに負ければ死ねない筈のゼオンでも死ぬ事になる。それが分かっていてもゼオンは自然と笑みを浮かべていた。

 

「じいの前で負けるってのは面目が立たないからな。本気で倒しにいく!」

 

弾かれた剣を拾い二刀流となったゼレンに向かっていくゼオン。第二ラウンドの開始と言ったところだろうか。

 

 

 

一方でグランドとドラゴニス

 

強襲形態から本来の姿に戻ったグランドはゼオンに心の中で詫びを入れつつもドラゴニスと戦う。

 

「ガァァアア‼︎」

 

吼えながらグランドに向かってくるドラゴニスは突進をしてくる。しかしグランドは右拳でドラゴニスの頭を殴り、その衝撃で二体のドラゴンは後ろへ後退する。

 

「伊達にゼオンが創った訳ではないようだな。本物の竜と戦っているようにすら思えてくる」

 

しかしいくら本物の竜にすら思える力を持っていても所詮は偽物の人為的に創られた存在。グランドは負けるとは微塵も思っていなかった。そして幾度も拳を交え、咆哮を放つとドラゴニスに変化が生じる。鱗がボロボロに罅が入ったのだ。

 

「だがやはり儂等竜族にはほど遠い‼︎」

 

グランドは全力の咆哮を放ちトドメをさした。ボロボロになった鱗ではグランドの攻撃を受け止めきれなかったのだ。破片一つ残らずに消滅したドラゴニスがいた場所を見つめるとグランドは再び強襲形態へとなりゼオンの戦いを見守る。

 

 

そしてケットシェルターにゼオンの戦いを不安そうに見守るローバウルの姿があった。

 

「(若・・・貴方はまだ気付いておられぬようですな。貴殿の父・ディオ殿を嫌う気持ちの奥深くにあるもう一つの気持ちに)」

 

確かに彼が過ごしてきた環境を考えたら仕方がないのかもしれない。

騎士団長として王宮にずっといた為、彼らは触れ合う時があまりにも少なかった。まともに話した時はなかったのかもしれない。ゼオンは炎の滅神魔法を教えられた時しかろくに話した覚えがないと言っていたのだから多分その推測は間違っていないだろう。あまりにも不器用だ。他者に自身の気持ちを伝える事が下手すぎる。愛しているのにそれが伝わらない。

そして見守る事しかできない自分にローバウルは歯痒い思いを抱いていた。

 

 

 

ゼオンside

 

 

ゼレンと戦っていたゼオンは違和感を感じていた。彼から意志を感じないのだ。ただ命令に従う人形のように彼は戦っている。それにゼオンは苛立ちを感じていた。何度もギアを上げて速さを増す

 

「ふざけるのも大概にしろっての・・・」

 

 

 

突如ゼレンの身体が赤いオーラで包まれたかと思うと一瞬でゼオンの目の前に移動し斬りかかる。しかしあらかじめ身体能力を上げる魔法を発動していたゼオンは反応することができた。それでもやはりゼレンの方が速く頬に一筋の傷ができる。これがゼレンの生前の本気

 

”ソニックモード ver.イグニッション”だ。

 

流石にここまでとは思っていなかったのかゼオンの表情に焦りが生まれる。

 

「チッ・・・なんてスピードだ。俺がブラスターの力を一部使う時以上だぞ」

 

だがゼレンの本気は今以上だ。人間の時より遥かにパワーアップしたゼレンは更に強くなれる。それが分かっているからこそゼオンは焦っているのである。

だから彼はあの竜を召喚をすることに決めた。

あまり言いたくない台詞を言わないといけないが状況が状況だ。恥ずかしくても我慢しようと考え魔力を高め左腕に巻いている包帯を取る。同時にゼオンの左腕に龍の痣が見えた。眩い光を放っているせいで服の上からでもはっきり分かる程だがゼオンにとってはいつも包帯をとった状態でこれを使う時はいつもの事なので気にしていなかった。

 

「まぁ、今は倒すしか道はない。ハルバス‼︎」

 

 

 

 

バルス・ホーリーによく似た世界にいる一頭の白いドラゴンがいた。彼の名はハルバス。ウェンディを育てた天竜グランディーネと同じ天竜だ。

 

「ん?僕を呼んでるの?ふぁあ」

 

ゆっくりと起き上がり翼を伸ばしたハルバスは遥か上空へと飛翔する。空を超えて高く飛ぶと一つの雲の前でハルバスは静止する。そしてその雲の上に存在する巨大な扉。ゼオンたちがいる世界へと繋がる扉であるそれを潜り抜けハルバスはゼオンがいる世界へと向かう。

 

 

 

 

 

「天を駆け 天を飛翔する白き純白の竜 その偉大なる力を我に見せよ 我は竜を超えし竜の支配者 竜魂召喚・・・白き疾風の竜 ハルバス!」

 

光の柱が現れそこからハルバスが現れる。グランドはあやつを召喚して大丈夫なのかと心配するがゼレンの速さに対抗できるのもハルバスだけであるのは事実だ。不安を感じつつも見守る事にし、同時に二体が同時に存在するのは魔力が底をついてしまうだろうと感じた為、グランドはゼオンとの魔力コネクトを一次的に解除した。

 

「わーい!僕がやってて言った台詞を言ってくれたー!」

 

目を輝かせてそう言うハルバスにゼオンは自分の要求を伝える。しかしこれで要求を呑まないと言ったら魔力の浪費でしかないので断らせる気はなかった。

 

「ああ。だから協力しろ。竜衣武装だ」

 

「いいよー!」

 

「「竜衣武装‼︎」」

 

するとハルバスの身体は透明になりその状態でハルバスはゼオンの後方から突進するように向かってくる。ゼオンの身体を通過した瞬間、彼の身体に竜をモチーフにした白い衣が纏われ、魔力が収束していく。

 

「(そろそろ解禁するか・・・四つ戻った今なら大丈夫な筈・・・)」

 

すっかりその事を忘れていたが竜衣武装を保たせるには魔力を全て開放しなければならない。彼が今まで解禁しなかったのはそれを開放しなくても大丈夫だったのもあるがなによりその力に呑まれてしまう可能性があったからだ。

しかし現在力は四つ 二割程の力が戻っている。今なら力に呑まれる事はないだろう。そして解禁すれば無理矢理力を全盛期に近付けた時のように髪の色が元の黒い髪と少し赤い髪が混じったものになる。

 

「(よし、やろう・・・魔力核のリミッターを全て解除。魔法発動時に発生する誤差は・・・0.01。これなら大丈夫そうだ。いくらでも修正できる)」

 

赤い髪が混じり、魔力がさらに上昇する。魔力が上昇した影響で爆風が起こった。そのせいでゼレンは飛ばされてしまいそれが収まった時には白かった鎧は白い紋様が混じった漆黒の衣に変わっていた。しかし爆風が収まると立ち上がりゼオンを見据えるが彼は皮肉を言う。

 

「俺が力を開放するのを待つとは騎士の心構えとやらを覚えているのか?」

 

「・・・・・・」

 

沈黙を貫くゼレンは後から換装した剣を戻すと意志がない為話せないと思っていたゼレンは口を開く。

 

「私はお前を倒す。今のお前に生きる価値はない!」

 

「意志が戻っているのか?」

 

”ならばいつから?”

 

ゼオンは疑問に思うがそれにゼレンは答える。

 

「爆風が起こった時だ。お前の魔力を浴びた影響で表に出てこれたのだ」

 

「そうか・・・だが倒すべき相手に変わりはない。貴様はここで倒す」

 

納得したゼオンだがゼレンが彼を倒す気でいる以上戦いは避けて通れないし、ゼオンも最初から倒す気でいた。どうしようと戦いが起こるのは確実だった。

 

「ふん・・・私はアトランティア王国の騎士団長 ディオ。誇りなき者に負けはせん‼︎」

 

ディオはそう言うとさらにスピードを上げ、ゼオンに迫る。しかしハルバスの力を使用している為、それと同等のスピードでいる事ができた。さらに意志がある事で殺気が向けられているゼオンは行動が先読みできていた為、難なく躱す事ができていた。それでもやはりディオも強者。だんだんとゼオンに傷を与え始める。

 

「・・・お前はあれからどうしていた?私がゼレフと再会した時あいつは自分を殺してほしいと言っていた。その間に一体何をしていた?どうしてお前はゼレフを救わなかった?」

 

その言葉にゼオンは奥歯を噛み締め、黒炎竜の皇拳を連続で繰り出す。

 

「貴様がそれを言うな‼︎俺たちより地位を優先し、母さんに無理をさせていた貴様が!貴様のせいで俺たちがどんな生活を送ってきたが知らずたまに帰ってきてはのうのうと家に居座っていた貴様が!」

 

「・・・・・・」

 

「かと思えば望んでもいない魔法を教えてきたりと俺たちの人生を滅茶苦茶にするだけしてきた貴様がそれを・・・言うなーーー‼︎」

 

今まで溜め込んでいた怒りが爆発する。頬に拳を受けたディオにゼオンは笑みを浮かべ”だが”と話を続けた。

 

「貴様が死んだおかげで父さんに会えた。その点だけは感謝している」

 

たとえそれが新たな王に祭り上げる為の政治的思惑だったとしても愛は与えられた。ゼオンにとってはディオより彼の一代前の王が本当の父だ。それでも顔を苦しそうに顰めたディオを見ると胸がチクリと痛むのを感じた。しかしそれに気付かないふりをする。それに気付いたらゼオンは自分の何かが壊れてしまう気がしたから。

 

それからさらに戦いは激化する。二人の魔力は聖十大魔導のレベルにある。そんな二人が激突すれば天変地異が起こりそうになる事は当然だった。空からは大雨と雷がしきりに降り注ぎ、土地は暴風によって紙のように風に吹かれて飛ばされていく。そのような中で二人の拳と剣は幾度もぶつかり合う。血が流れても雨が流していく。しかしそれを上回る量の血が二人から流れていた。それでも彼らは戦い続ける。そこにいるのは騎士のプライドを持つ父親と彼を嫌う王となった息子だけだった。

 

「・・・ゼオンよ。お前に問おう。お前の誇りはなんだ?」

 

「・・・貴様に言うとでも?」

 

双方とも疲れが押し寄せ肩で息をしているが膝をつくことはない。ディオは剣で身体を支えているがまだ負ける気はなかった。

 

「私を憎むのは当然の事だ・・・今さら許してもらえるとは思っていない。しかし私はお前の本心が知りたい。お前の誇りがなんなのか。頼む。教えてくれ!」

 

心が揺れるゼオンだったがまだ素直に言おうとはしなかった。言ってもいいかと思うが彼を嫌っている(と思っている)為言えないのだ。

 

「グァアア‼︎」

 

突如叫び声を上げるディオを見るとそこには右半身が黒く染まっているディオの姿があった。

 

「何だ⁉︎・・・それは」

 

「私は永き間、負の力を発する柱の近くにいたおかげで二つの人格が一つの身体に存在するようになった」

 

最初から存在したディオという人格とゼレンという悪しき人格が。最初ディオから意思が感じられなかったのはその悪しき人格が表に出ていたがゼレンには自我が存在せずただ命令に従うだけの存在だったからだ。しかしゼオンとディオが戦う内に自我が芽生えてしまった。ディオを封じ込め、表に出てくるのも時間の問題だ。

 

「お前の魔力を浴びたせいで奴の力が弱まり私は表に出てこれた。そしてお前の成長を知り死ぬつもりだったのだが・・・」

 

「・・・っ!」

 

「時間を取りすぎてしまったようだ・・・」

 

身体はほとんどが黒く染まりディオの人格が消えようとしていた。

 

「さらばだ・・・息子よ」

 

完全に身体は黒く染まり、悪魔としての真の姿 エーテリアスフォームとなる。つまりはゼレンが表に出てきたという事だ。悪魔のような姿になったゼレンは見下した笑みを浮かべるとこう言い放つ。

 

「さあ、死ね。貴様は我を裏においやった虫けらの血を引く者。その者を生かす訳にはいかない」

 

ポロポロとゼオンは顔を俯かせながら涙を流す。ディオの本心を知って、彼が消えた時自分の奥底にある感情を知ってしまった。本当はディオを嫌ってなどいなかったという事に。しかしゼレンは勘違いして

 

「命ごいをしたところで無駄だぞ。恨むならあの虫けらを恨むんだな!」

 

「命ごいをすると誰が言った?それに命ごいをする事になるのは貴様だ」

 

涙を拭いゼレンを睨むゼオン。

 

「親父の身体で勝手な事はさせない!」

 

 

 

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