フェアリーテイル 戦いの果てに待つもの   作:NAGI

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別れの時

ニルヴァーナから脱出したナツたちと合流した俺が行くと皆、ボロボロになりつつも勝利を喜び合っていた。

 

「メェーン」

 

しかし歩いた一夜が突如何か見えない壁に当たったように倒れ込む。皆が周りを見渡すとそこには術式が展開されていた。脆い術式だが俺たちがいると分かっていてするという事は何か目的があるのか。六魔のホットアイの引き込みや俺たちを倒して名を上げようとする。色々考えられるがどうやら違うようだ。

 

「誰だ⁉︎ゴラァア‼︎」

 

「手荒な真似をするつもりはありません。ただそこから動かないでいただきたいのです」

 

俺たちの前に現れた評議院のメンバーたち。意外と再結成されるのは早かったな。

 

「私は新生評議院 第四強行検束部隊隊長、ラハールです」

 

ナツたちは新生評議院がもう発足していた事に驚いているがそうなると奴らの目的は逮捕しかない。

 

「我々は法と正義を守る為に生まれ変わった!いかなる巨悪も許しはしない!」

 

法と正義を守るね・・・ばかばかしい。普通は民と世界を守る為だろ。

 

ホットアイの引き渡しが行われた。これは仕方がないだろう、自分の意志でやったのだから。だがウォーリーという弟が無事だと知って泣いていた。やはり心根は良い奴なんだろう。問題はその後だ。

 

六魔如き?

 

貴様らでは手に負える筈もなかったのにか?

 

評議院の潜入、破壊。確かにそれをジェラールはしたがエーテリオンを投下したのは貴様らの意志だっただろ。何故その責任をジェラール一人に押し付ける?

 

「ジェラール・フェルナンデス。貴様を連邦反逆罪で逮捕する」

 

ジェラールは大人しく行こうとするがナツが評議院の者たちに殴りかかり、グレイもそれに乗っかる。

 

「そいつはニルヴァーナを止めたんだぞ!そんな奴に労いの言葉もねえのかよ⁉︎」

 

ジュラや皆もジェラールを戻そうと動く中、俺とエルザは動かなかった。ここは武力より脅しの方が使える。こいつらじゃなく、議長共をな。まぁ、動いたら動いたらでこいつら殺しそうだから動かないんだが。

 

 

 

 

 

「そいつらを取り押さえるぞ!奴らは反逆者!抵抗する奴らは殺すんだ!」

 

するとゼオンの目が赤く染まった。スッと細められた目は評議員の者たちを冷たく見つめ、殺気を放っていた。皆は世界から置き去られた感覚にさらされる。いや、まるで今にも処刑台へと上がらされるようなそんな感覚だった。

 

「ラジール、評議院に連れて行け。俺が直接話をつける」

 

「ラハールです」

 

殺気を抑え、ラハールとジェラールを連れて評議院に行こうとするゼオンはナツたちの方を向くと

 

「お前らは休んでおけ。ウェンディ、ケットシェルターへこいつらを連れて行ってくれるか?」

 

「は、はい!」

 

指示を出し立ち去って行く。しかしジェラールは去り際にエルザに近付いた。

 

「エルザ、君の髪の色だった」

 

そう言われエルザは涙を流す。

 

 

 

魔法評議院

 

ここではゼオンを含む11人で対談が行われていた。

 

「ジェラールを解放しろと?」

 

「ああ、さっきからそう言っているだろ」

 

すると冗談じゃないという声が次々と上がった。しかしそれを一睨みするとゼオンはある紙を取り出し老人たちに見せる。それを見て彼らは目を見開くとゼオンは議長であるグラン・ドマに近付く。

 

「どうする?お前たちはアレを存在しないように闇に葬った。だがその犠牲者は今ここにいる。俺の要求を呑み権威を守るか、それとも断り破滅するか。お前が決めろ」

 

「・・・分かった。しかし操られていたとはいえ奴が暴れたのもまた事実だ。10年間の服役で手を打ってはくれまいか?」

 

グラン・ドマは額から流れる汗を拭う事も忘れ、ゼオンの顔を見つめる。もし、駄目だと言われたらどうしようか。不安が滝のように溢れ出る。

 

「いいだろう。ただし奴の服役中の行動次第で期間の短縮や延長をしろ」

 

それにグラン・ドマが了承するとゼオンは評議院から出て行く。

 

「厄介な奴だ・・・」

 

 

 

一方でケットシェルターへの道を歩くナツたち。

 

そんな中、ナツは先ほどの事を思い出していた。

 

ゼロがジェラールを闇に堕としたという事実。

 

それを知った時にはもうジェラールへの敵意はなかった。あったのはゼロへの怒りとジェラールへの信頼だけだ。その後咎の炎を食べドラゴンフォースを発動したナツは見事、ゼロを打ち破ったのだがそれはおいておき、この事を皆に言った方がいいのか迷っていた。

 

「言った方がいいのか?」

 

そう呟いたナツはルーシィと目が合う。

 

「何だよ?」

 

「いや、ナツが悩み事なんて珍しいな〜と思って」

 

俺だって悩む事はある。そう言おうとしてナツは汗をたらりと流した。考える事はあっても全然悩みなんてなかった。まさかこの歳で初めて悩むという事にナツは複雑な気持ちを抱く。

 

「ナツが馬鹿なだけだろ」

 

「んだと⁉︎」

 

グレイに突っ掛かるナツにグレイは嘲笑する。

 

「聞こえなかったか?お前が馬鹿なだけだって言ったんだよ!」

 

「上等だ!燃えカスにしてやるよ!氷野郎!」

 

「やれるもんならやってみろや!クソ炎‼︎」

 

しかしそこでエルザが二人を沈め、強制終了。影のマスター補佐は伊達ではないようだ。

 

 

 

 

転移魔法で花畑に移動したゼオン。まだあれから時間は経っていないらしく空は暗かった。少し歩くと十以上もの墓が建てられていてゼオンはその中央の墓の前で座る。そこにはマナと名前が彫られていて、優しい表情で撫でるように触れていた。しかしそこへ一人の老人が訪れてきた。ゼオンは視線を相変わらずマナの墓へと向けているが誰が来たのかは分かっていた。

 

「久しぶりだな、じい。ここにいていいのか?」

 

「それは若も・・・なぶら」

 

久しぶりに会った古の(ゼオン)とその教育係(ローバウル)。四百年もの間会う事はなく、ローバウルはゼオンが生きていた事を知っていた訳でもなかった。だからゼオンはローバウルに聞きたい事があった。向かい合い、まっすぐローバウルを見つめる。

 

「なぁ、なんでじいはニルヴァーナを創ったんだ?」

 

「なんでと申されましても世界から争いを無くしたかったからですな」

 

「他に方法があるとは考えなかったのか?」

 

「それしかない状況でしたな。貴方が選んだE・フィオーレ家の者たちは大丈夫でしたが」

 

彼らは自らの国を創り、自分こそがこの大陸を統べようと争いを始めた。しかもその者たちは誰の言葉にも耳を傾けず独裁政治をする者ばかり。少しだが立ち直ろうとしていたイシュガルは再び戦火に包まれた。その戦いで滅竜魔法等のロストマジックを扱う者は消え、数々の文献が失われた。

 

「貴方が記した戦いの記録の方は辛うじて無事でしたが竜について記した書はその時に・・・」

 

「そうか・・・」

 

言葉では言い表せない程の後悔がゼオンに伝わってきた。ゼオンの命令に背いてまでニルヴァーナを創ったという事からその戦いがどれほど酷かった事かが分かるのだ。かつて王の命令に逆らうという事は死を意味した。それもかなり惨い殺し方で死ぬのである。誰が好き好んで逆らうかと思っていた筈だ。とはいえゼオンは許容範囲内ならば軽く注意する程度で皆からは甘い甘い言われていた。もっともその甘いは現代から見たら違うのだが。

 

「俺があの日皆に命じたが実行された事で彼らの行き場のない怒りが溢れ出たのか」

 

自らの判断が戦いを招いてしまった。それは王だった頃、平和な国を創ろうとしていたゼオンの心に重くのし掛かる。余計な戦いと犠牲を招いた。本当なら起こらなかったであろう戦いを自身の出生等を消したが為に招いてしまった。あの計画を円滑にする為には仕方無かったとはいえ彼に後悔の波が襲う。

 

「確かにそれは否定できませんな。しかし、あの時の貴方の判断は少なくとも間違ってはいない筈なぶら」

 

「自身の記録や出生を抹消させる。それは必要な事だったと?」

 

首を縦に振り肯定するローバウルはゼオンに話すよう促され話し出す。

 

「もし、消していなかったならば貴方が考えたように大陸は崩壊していたでしょう。貴方は王としてすべき行動をした」

 

ゼオンの行動を否定しつつも認めるローバウルだったがゼオンは首を横に振る。

 

「確かにあれがあの時できるうる最善だったと俺だと思っていた」

 

「本当にそれは最善だったのかと考えている・・・という事ですな」

 

「それに俺は計画に支障が出てほしくなかった。もし、弟がその世界で迫害されるような事になるかもしれないと考えたから」

 

ゼオンは民の感情を敏感に察知していた。いつまでも終わらない戦い。人と竜、竜と竜、人と人が争う魔の宴 竜王祭。ゼオンがまだ物心つく前に始まったその戦いはいくつもの土地を荒廃させ、民を疲弊させた。やがて溢れ出る不満は王に集中する。その為に彼は弟に手が及ばないよう、記録を抹消した。だが戦いが終わればその不満は消えていくと考えていたのだ。だからゼオンからしたらその戦いは本当に予想外だった。まぁ、ゼオンからしたら予想外な事だらけであるのだが。

 

 

 

「俺は王としては失格なんだよ。父さんから引き継いだ国を守れず、親友であり、臣下であるヒョウガたちを死なせた」

 

自分は弟を優先したと思われても仕方がない行動をしたんだと呟く。悲しい表情をしていた。マナが死んだ時の哀しみに暮れた時とはまた違う。だが

 

「儂はそうは思いません。貴方はやはり王です。儂等を勝利へと導いた最高の」

 

「ありがとう」

 

掠れた声でそう言うゼオンは顔を俯かせていた。涙は決して他人に見せるな。そう先代から教えられたのだが我慢は出来ないようだ。自分の過去を知る人物から自分の存在を肯定された。それはやはり嬉しい事なのだろう。

 

 

 

ゼオンが落ち着くとローバウルは話を続ける。

 

「ニルヴァーナは貴方の命令を破って創ったもの。それは正しかったのか今でも考えます」

 

「半分は正しいさ」

 

”半分”

 

その言葉に首を傾げる。ゼオンにしては珍しい曖昧な答え。

 

「国からしたら救われたけど、じいたちからしたら破滅を招いた力。だから半分だ」

 

確かにと納得するローバウルは朝日が上ろうとしていたのが目に入る。

 

「そろそろ戻ろう。皆が心配する」

 

「そうですな」

 

その時、ゼオンに連絡が入る。

 

「何か用か?」

 

相手と少しの間会話していたがやがて小さく溜め息を吐いて了承した。

 

「・・・分かった。それじゃあ。じい、すまないが急用だ。会うのはこれで最後だな」

 

「はい。ですがニルヴァーナは破壊された。もう思い残すことはありません。しかし心配なのはウェンディの事。ウェンディの事をよろしくお願いします」

 

「・・・任せろ」

 

その言葉に笑みを浮かべたローバウルは最後に聞きたかった事を聞く事にした。一番知りたかった事を。

 

「貴方は後悔していますか?弟君を殺さなかった事を」

 

「・・・昔はな」

 

”さようなら”

 

その言葉を最後に交わすとゼオンは飛び去っていく。そしてローバウルもまたギルドへと歩みを進める。

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