「マナ?」
俺は今非常に混乱している。何故ってこの時代の人間ではない筈のマナが今目の前にいるからだ。違う世界とはいえこんな事があり得るのかと思うが逆にただ似てるだけって事もあり得る。全く分からない事だらけで嫌になってくるぜ。しかしそんな事を俺が考えているとは知らずに目を潤わせて抱きついてくる。
「ゼオン!」
この反応でこいつは絶対にマナだ。なんとなくだがそう感じた。
「心配してたんだからね!ずっと帰って来ないなんて馬鹿!」
それを俺に言われても困るんだが。これは言った方がいいのか?だが言ったら絶対傷つくのは確実。けど言わないと何も分からないし、てかマナには絶対すぐにばれる自信があるしな、言わないといけないか、
「すまないが俺はお前が知っているゼオンじゃない」
「どういうこと?」
不思議な顔をしてるがやはりそうなるか。この場合は
「下の世界から来たといえば分かるか?」
「アースランドから来たゼオン?」
アースランドってのが多分俺たちが住む世界の事か。なるほど、俺たちの事は知ってるのか。
「・・・そうなるな」
「そう・・・なんだ」
やはり泣きそうになった。やっぱり言うんじゃなかったか。この世界の俺は何してんだよ⁉︎というよりこの世界の俺は死んだのか?それか訳あって姿を晦ましている。そうしてる間にマナは泣き出すし。
「とりあえず落ち着け。なっ?」
泣くと中々泣き止まなかったからなあいつは。こっちの世界も同じなのか。
マナが泣き止むまで少し時間が掛かったが二人は森を抜けてマナ曰く隠れ家に来ていた。
「さっきはごめんね!泣いちゃって」
「俺の世界のお前も同じようなもんだったからな。別に気にしてない」
ゼオンの言葉に顔を赤くしたマナはアースランドの私ってと呟いていた。それを聞いていたゼオン。
「聞きたいか?」
「いい!恥ずかしくなるから止めて!」
彼の言葉にますます顔を赤くする。他人がいたら今すぐ立ち去りたいと思う程の空間が出来上がっていた。
「冗談だ。くっくっ」
「むぅ〜いじわる」
いじけた振りをするマナだったがそれでゼオンが堪える筈もなく、話を進めようとする。
「それより早くこの世界について教えてくれないか?」
「無視ですか・・・まぁ、いいわ。この世界の名前はエドラス。エドラスには二つの力があるの」
”二つの力”
首を傾げるゼオンにマナは答える。
「魔力と死ぬ気の炎よ」
「死ぬ気の炎?」
「そう。有限である魔力と違って死ぬ気の炎は人間が元から持つ生命エネルギーのようなものなの。死ぬ気の炎には種類が七つあって」
オレンジ色の大空の属性
赤い嵐属性
青い雨属性
黄色い晴属性
緑色の雷属性
紫の雲属性
藍色の霧属性
「そして死ぬ気の炎を燈すのに必要なのがある特殊なリングよ。けどそれを使うには波動とリングが合致しないとダメなの」
それに持ってる人が少ないから燈せる人は少ないんだけどねと話すマナにゼオンは納得した。
「なるほど、これはそうだったのか」
「それ、どこで手に入れたの?」
「もらったんだ・・・多分だがこの世界から迷い込んで来た奴に」
ドラゴニックリングを見てそう話すゼオンはそれよりと言葉を続ける。
「この世界の事をもっと教えろ」
「分かってるわよ!もう、せっかちなんだから」
「この世界には王国があるわ。その王国は魔法を使うんだけどさっきも言った通り魔力は有限。リングと
それを恐れた国王はアニマという超時空間魔法を創り、それを使ってアースランドの都市 マグノリアが一つ吸収した。そしてそれが王都にある巨大なラクリマ。つまりマカロフを始めとするギルドの者たちとマグノリアにいた者たちはラクリマとされてしまっている。
王国は魔法を使うがリングとボックス兵器は使えない。何故そうなったのかは分からないがマナの話を聞き、状況は理解したゼオンはさらなる疑問を解決しようとする。
「大体分かったがボックス兵器とはなんだ?」
「こういうのよ」
マナが見せたのはオレンジ色の匣。つまり大空のボックス兵器。
「大空か・・・」
「そうそして大空の炎の特性は調和。唯一全てのボックスを使う事ができるの」
「大空様々だな」
その言葉を聞いて苦笑するマナはまぁ、全ての力を引き出せる訳じゃないんだけどねと付け加える。
「それじゃあ最後の質問だ。エドラスの俺はどうしている?」
「分からない」
「分からない?なぜ・・・」
顔を俯かせたマナはこう説明した。
「私たちは王国軍と戦ったの。だけど結果は完敗。私たちは逃げるしかなかった。その時にゼオンは囮になって・・・」
「なら、死んだんじゃないのか」
「そうかもしれない。けど信じたくない。あいつが死んだなんて!」
話し終えると涙を流すマナを無言で抱き締めるゼオンは
「探してやるよ。この世界の俺を」
「えっ・・・」
「愛する女が悲しむ姿は見たくない。それがたとえ違う世界の奴でも」
だからもう泣くな。そうゼオンは話す。マナは涙ながらに感謝を述べ、しばらくの間ゼオンの胸に身体を預けていた。
少しして泣き止んだマナは上目遣いでゼオンを見据える。
「これからどうするの?」
「王都に行ってまずは仲間を取り戻す。そして王をぶっ飛ばす」
ジークはしぶとく生き残っているだろうしなと心の中で呟いたゼオンは隠れ家を出て行こうとして扉に向かうがマナは咄嗟に彼の袖を掴む。
「私も行くわ!」
「かなり危険だぞ。それでも行くのか?」
「勿論!」
何と言おうと着いてくると感じたゼオンは小さく溜め息を吐くとこう言った。
「俺の言う通りにしろよ」
その言うとゼオンはマナと一緒に王都を目指す。
ゼオンとマナが王都付近に到着していた。それが彼らが出発してから数日後の事だ。だがそんな二人の前に二十人程の兵士が立ちはだかる。
「待て!ゼオンとマナだな?」
「人違いだ」
「そうか・・・ってそんなそっくりなのに別人だと?嘘をつくな!」
「ああ、嘘だ」
完全にふざけてる。そう分かった兵士は顔を赤くさせ、ゼオンに杖を向け、魔法を使おうとする。しかし
「無駄が多い」
杖を奪われ、顔に彼の肘がめり込む。杖をゼオンが折って捨てるとドサッという音と共に倒れたその兵士。それを彼らが確認すると脅しと取れる言葉をゼオンに言い放つ。
「これはエドラス王国に対する反逆行為だぞ。それがどういうことか分かっているのか⁉︎」
「知るか。俺はただ貴様らのやり方が気に食わない。それだけだ」
その瞬間、直に浴びせられる圧倒的な威圧感。恐ろしく感じた彼らは知らず知らずの内に一歩後退していた。
「文句があるならかかってこい。全員ぶっ飛ばしてやる」
「やれーー‼︎」
数の差で勝てると思った為か合図を出した一人の兵士。それと同時に迫り来る兵士たちを見据えながらもゼオンはマナに指示を出す。
「マナ、お前は先に行け!」
コクンと頷いてマナは王都へと走って行く。それを追いかけようとする軍の前にできるオレンジ色の炎の壁。
「死ぬ気の炎⁉︎」
壁に阻まれたせいでマナを捕まえる事ができず、マナは足に晴の炎を燈して飛んで行く。
「この先に行きたいなら俺を倒してからにするんだな」
その言葉を皮切りに戦いが始まる。数で勝る王国の軍だったが力はゼオンの方が上だった。
「なんて強さだ・・・」
「ふん。貴様らとは潜ってきた修羅場が違う」
彼は昔から名前を知らなかったとはいえ死ぬ気の炎を使っていた。その力を使いこなして戦うゼオンからしたら彼らは弱いの一言に尽きる。通常の武器にラクリマを埋め込んだエドラスの魔法を彼らは使うが完全に使いこなせていない。必然的に軍配は力を使いこなすゼオンに上がり、数の差をものともせずに戦っていた。
「さて、終わりだ・・・ッ!」
ゼオンは彼らをしばらく眠らせる為に小さな炎を創り出しぶつけようとするがその時、突如大空の炎に彼らは呑み込まれる。その瞬間、大きな爆発が起こり煙が舞う。
「一体どうなっている・・・」
煙が晴れると兵士は一人もいない。逃げた訳ではなく、消滅させられた。何者かの手によって。しかしゼオンを岩陰から見つめる一人の男がいた。マントに身を包むゼオンによく似た男。そう、エドラスのゼオンである。
「ふふ。楽しませてくれよ?アースランドの俺」
そう呟くとエドラスのゼオンはフードを深く被り、立ち去って行く。ゼオンも後味の悪さを感じながらもマナを追いかける為に王都へと向かう。