フェアリーテイル 戦いの果てに待つもの   作:NAGI

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動く闇

王都では今まさに魔力の抽出が行われようとしていた。 広場にある巨大なラクリマであるがこれはほんの一部でしかない。エドラスの民にとっては嬉しい事だがフェアリーテイルのメンバーにはとても許容できる事ではなかった。

 

 

 

ゼオンは王都を走っていた。エドラスのゼオンは革命軍のリーダーとして名が売られているらしいのでマントに付いているフードで顔を隠しながらだが。走っている最中、広場から凄まじい音が聞こえた。何かありそうだなとゼオンが見るとそこには軍隊相手に暴れるガジルとそれを見ているグレイとエルザの姿があった。

 

「あれは・・・ガジル?」

 

しかも魔法を使えていた。ゼオンは何故魔法が使えるのかと不思議に思った。ガジルは左腕を棍の形にした鉄竜棍。それを地面に振り下ろし、その衝撃で煙が生じた隙に二人を連れて逃げて行った。

 

「追った方が良さそうだな」

 

真剣な表情でそう呟くゼオンは彼らが逃げた先がその常人より優れた目のおかげで見えていた。その為、彼らがいる場所を簡単に見つけられた。しかし入り組んだ道なので気配と勘と経験を頼りにして追っていたが。

 

 

 

 

ガジルたちがいる場所に追いついたゼオンはガジルが取り出した赤い丸薬を二人に食べさせる。二人がそれがどういうものなのか不思議に思い、エルザはガジルに問いかけた。

 

「エクスボール。エドラスで魔法を使えるようにする薬らしい。ミストガンって野郎から貰ったんだ」

 

「俺も一つもらおうか」

 

「あいよ・・・ってなんでお前がいるんだよ⁉︎」

 

ガジルの肩に腕を回してそう話しかけるゼオンに返事を返したガジルだったがすぐに飛びのいてしまう。

 

「さっきのやつ見てたから追いかけて来たんだよ」

 

納得したガジルはすぐにエクスボールを渡し、ゼオンはそれを食べる。後はサラマンダーたちを救出するだけだと考えているガジルだったがゼオンはすぐに立ち去ろうとしていた。

 

「おい、どこに行くんだよ?」

 

「俺は俺でやらなければならない事がある。ナツたちの事は任せた」

 

そう言って立ち去ったゼオンにガジルは舌打ちをしつつも元からそのつもりなので城に向かおうとしたが兵士が近付いて来ていた。

 

「丁度、いいところに来てくれたぜ。ラクリマにされた奴らはどこにいるのか聞かせてもらおうじゃねえか。ギヒッ」

 

しかしここでは戦うには狭い。ガジルは二人が城に向かったのを確認すると彼らにわざと居場所を教え、戦いやすい場所へと移動していった。

 

 

一方で獣に追われていたジークは・・・

 

「いや〜助かったす‼︎この世界のゼオンは優しいっすね!」

 

エドラスのゼオンと王都の近くにある小屋にいた。獣から逃げていた時に助けてもらい、現在はまったりと寛いでいるジークだがアースランドのゼオンが知ったら問い詰めることは確実である。

 

「アースランドの僕はどんな感じなんだい?」

 

「ドがつくSっすね。それで魔法が檄ヤバなものばかりなんすよ。無人島一つをマジ切れたしたら一瞬で消滅させる程っすからね!だからこの世界のゼオンがまともで良かったっす‼︎」

 

ジークの言葉に苦笑するエドラスのゼオン。

 

「・・・それはすごいね」

 

「やっぱり、まともで良かったっす!助かったっすよ!じゃあ俺っちは行ってくるっす!」

 

ジークは小屋を出てエーラを発動すると王都を目指して飛んでいく。

 

「まともね。俺は神に選ばれし者。貴様らとは違うんだよ」

 

 

 

 

 

 

マナが道中で教えてくれた王都にある拠点を目指していたゼオンはその拠点へと辿り着いた。普通の民家のような外見をしていて一階は一見、何も変わらない家のようだ。しかしその地下は違かった。ゼオンはカーペットの下に隠された隠し階段を下り、一つの部屋に入る。そこにはマナの姿があり、ゼオンが入ると駆け寄って来る。

 

「ゼオン!」

 

「マナ・・・そいつがアースランドのゼオンという事でいいのか?」

 

そう問いかける金髪の青年 ヒョウガに肯定の意を示すゼオンは彼らの指に填められているリングと手に持っているボックスに注目する。

 

「お前らがマナの仲間か・・・やはりリングとボックスは持っているようだな」

 

「ああ。これが唯一我々が王国軍に抵抗する手段だからな」

 

「(昔からリングは存在したがボックスは最近作られたとマナは言っていたな。という事は大方王国軍に勝つ為に作られたのか)」

 

心の中で呟くゼオン。しかし彼らは永遠の魔力を得ようとする王国を止めようとしていただけだった。それがいつしか大規模な戦いに発展してしまったのだ。

 

「(いつでも自分の思い通りになることはない。それはどの時代も同じか)とりあえず聞きたい。王を止める気があるのか、否か」

 

「もちろん、あるさ。俺たちはいつでも覚悟はできてる」

 

ゼオンの問いかけにすぐ答えたヒョウガ。次々とそこにいる者たちも同調する。その光景を柔らかな笑みを浮かべて見ているマナはゼオンの手を取る。

 

「私も覚悟はできてる」

 

「そうか・・・なら、まずは王がやろうとしてる事を教えろ」

 

「ああ。王の目的は永遠の魔力を得ることだ。その為には竜鎖砲を巨大なラクリマにぶつけ、エクスタリアにぶつける。そうすることで二つの魔力が融合し」

 

ヒョウガの説明に続くように赤い髪の青年 ジオが話す。

 

「永遠の魔力が手に入るって訳だ。うちの霧が王国に入り込んで得た情報だから信憑性はかなり高い。間違ってはいない筈だ」

 

「分かった・・・なら、その巨大ラクリマに向かおう」

 

「王を止める。確かにその目的を実行するのに一番手っ取り早い方法だな」

 

「よし、乗ったぜ!俺たちは巨大ラクリマがある浮遊島を止める!」

 

ゼオンと共に巨大ラクリマがある浮遊島を止める事を決意した彼らは上空へと飛翔する。

 

 

 

 

少し時を遡り

 

 

王都の上空に存在する国 エクスタリア。ハッピーやジーク、シャルルと同じエクシードの国である。エドラスではエクシードは天使と拝められ、尊敬と畏怖の象徴だ。さらに彼らは人間を管理する事を役目としていた。人間はエクシードより劣ると思っているこの国にウェンディと人間の考えに染まった為に堕天とされたシャルルはエクシードの皆に危険を報らせる為にエクスタリアに来ていた。

 

「このエクスタリアに危険が迫っています。女王様に会わせてください!」

 

そこへナディという黒く細長い身体をしたエクシードがウェンディとシャルルの前に現れる。

 

「君たち困るよ。堕天と人間がエクスタリアに侵入することは禁止だよ!それより君たちを追っていたニチヤさんたちはどうしたんだい?」

 

断続的に右手を振り上げながらそう問いかけるナディに対し、シャルルは

 

「王国軍にラクリマにされたわ」

 

 

その言葉に皆は笑う。

 

”コードETD” エクシード・トータル・デストラクション。天使殲滅作戦。その最初の犠牲者となったニチヤという一夜によく似たエクシード率いる近衛師団の者たちだが彼らは信じていなかった。自分たちより劣る人間にできる筈がないと、女王がいるかぎり大丈夫だと言う彼らはウェンディとシャルルに石を投げつける。しかしナディだけは顔を青くして震えていた。

 

 

 

 

一方でゼオンたちが巨大ラクリマへと向かった頃

 

王都から竜鎖砲が放たれてしまった。竜鎖砲が接続された浮遊島にはガジルとハッピー、そして黒い成人サイズのエクシードパンサー・リリーがいた。

 

リリーのラクリマとエクシードを消滅させるという言葉に涙を浮かべるハッピーだったが浮遊島は加速し、エクスタリアへとぶつかろうとしていた。

 

「うぉおおおお‼︎」

 

しかしその時王国軍に所属している筈の少女ココ。彼女のレギオンが島に体当たりをする。その頭上にはナツ、ルーシィ、エルザ、グレイの姿もあった。ナツはレギオンの身体を伝って、浮遊島を押し始める。

 

「ナツ・・・あのさ」

 

「早く手伝えよ。相棒!」

 

しかしナツはハッピーが何かを話すより早くそう言った。その言葉を聞いたハッピーは

 

「あいさーー‼︎」

 

顔をほころばせながら壁を押す。ガジルもリリーとの戦いを一時休戦にして壁を押していた。ナツたち体内に魔力を持つアースランドの魔導士は自身の魔力を開放し、壁を押していた。

 

 

 

そんな中でエクスタリアでは驚愕の事実が告げられていた。

 

エクスタリアの女王 シャロットは神と呼ばれていた。人間の死を決めることができると人間から恐れられていた彼女は本当は非力であり、シャルルたちと同じエクシードであるという事実が。シャロットはエーラを発動するが彼女の羽は右翼がない片翼だった。

 

「私たちは非力な種族。大昔に人間にとても酷い事をされてきたですじゃ。だから自分たちの身を守る為に私たちには力があると思わせてきたですじゃ」

 

「そしてエクシードが自信を取り戻せるよう、皆に対しても神の力を信じるようにさせました。始めは信じなかった人間も神に対して恐れを抱くようになった」

 

さらには殺す人間を決める人間管理は全て後付けだという事も述べられた。しかし

 

「シャロットには微弱ながらも未来を見通す力があった。それをあたかも女王の決定と思わせるようにしたのです」

 

エクシードの長老たちによって告げられた数々の事実にエクシードの者たちは涙を流しながらも神の存在を必死に信じようとしていた。

 

そしてシャロットは剣をシャルルの前に投げる。

 

「人間とエクシードを愛する貴女には自分を断罪する権利があります。皆さんも逃げてください。私はエクスタリアと命運を共にします!」

 

剣を地面に突き刺したシャルルは涙を流していた。

 

「なんで、簡単に諦めるのよ⁉︎自分たちの国でしょ‼︎神や女王がいないと何もできないの⁉︎」

 

嘘をついてまで必死に生きてきたのに何故簡単に諦めるのか。弱くてもいい。皆が力を合わせればなんだってできると話すシャルル。

 

「この国は無くならない!だって私の故郷だもん!絶対止めてやる!」

 

そう言うとエーラを発動し、浮遊島へと向かうシャルルは壁を押す。ナディもそれに続き、エクシードの皆も浮遊島の壁を押し始めた。

 

 

 

浮遊島へと向かっていたゼオンたちは流星のように浮遊島へと向かうエクシードを見た。

 

「エクシードが一つになったってのか⁉︎」

 

「種族の壁は超えられる。それが再び証明されたな。俺たちも早く向かおう。浮遊島を止めるんだ」

 

ゼオンは炎の翼を使って浮遊島へと向かい、ヒョウガたちも足に死ぬ気の炎を燈して続く。

 

 

 

そしてその頃エドラスのゼオンはある人物の頭に直接語りかけていた。

 

『奴らが浮遊島とエクスタリアの衝突を防ぎきったその瞬間にジオを撃て。いいな?ーーー』

 

 

闇は光を侵食しようと密かに動き出していた。

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