ヒョウガと戦うゼオン。皆を裏切ったヒョウガであるが彼は凄まじい気迫でゼオンと戦っていた。雨属性の炎を刀に纏い戦うヒョウガと剣に黒炎を燈して戦うゼオン。
「負けられないんだーーーーーーーーー‼︎」
「・・・お前は何故あいつらを裏切った?」
純粋な疑問をぶつけるゼオンだったがヒョウガは答えなかった。小さく溜め息を吐くゼオンはますます謎を深めていく。
「だんまりか。まぁいい。後で吐いてもらおう」
「はあっ!燕の嘴(ベッタカ・ディ・ローンディネ)‼︎」
連続で鋭い突きを放つヒョウガに全て躱しきるゼオンであったがその鋭さには心の中で驚いていた。
「(これほど鋭い突きを放てるとはな・・・)」
躱すのに精一杯という訳ではないが少し油断したら攻撃が当たってしまう。そう感じたゼオンの顔から表情が消えた。
「確かにお前の攻撃は素晴らしい。だが迷いのある攻撃では俺に勝てないぞ!」
ヒョウガが繰り出してきた剣技を魔力の盾を展開して受け止めるゼオンは剣を戻し、光を纏った拳で殴り飛ばす。
「くっ・・・アクア・ランス!」
地上へと叩きつけられたヒョウガ。しかしすぐに身体を起き上がらせて右手を前に出す。そこから雨の炎によって形成した槍をゼオンがいる空に向けて放った。
それに対してゼオンは槍を受け止めて圧縮、さらにそれを先ほどより強い力にして
「リフレクト!」
跳ね返す。
跳ね返った攻撃をまともに受けたヒョウガはすでにボロボロだった。それを見てそろそろ聞けるかと考えたゼオンはヒョウガの近くまで下降し、彼に再び問いかける。
「さあ、何故あいつらを裏切ったのか教えてもらおうか」
その時ヒョウガの頭の中にゼオンの声が響く。
『さあ、早く奴を倒せ。でないと貴様のーーの命はないぞ。それでもいいのか?』
「まだだ!まだ俺は戦える・・・」
自分に言い聞かせるようにそう呟くヒョウガは刀を杖代わりにして立ち上がる。
「止めておけ。お前にはもう戦う力は残っていない」
そう静かに告げるゼオンにヒョウガは足に炎を燈すと攻撃を繰り出し、ゼオンはヒョウガの攻撃を躱しながら上昇して行く。
「俺は戦わなきゃいけないんだ!」
ヒョウガの攻撃を先程より簡単に躱せる程度だが目は鋭くゼオンを見据えていた。
面白いとゼオンは思った。ヒョウガはあれほど傷ついているのにまだ諦めず、さらには自身をまっすぐ見つめてくる。 そして同時に何故それほどまでに勝ちに拘るのか不思議に思った。
『なら、力を貸してやる』
ヒョウガは上空から降り注ぐ光を浴びると身体に力が溢れてくる感覚に陥る。
「ぐあああああああああああ‼︎」
突如叫び声を上げるヒョウガにジオは驚愕する。
「おい!どうした⁉︎」
「何者かがヒョウガに外部から干渉しているようだな」
静かにそう話すゼオンは慌てているような素振りは見せていない。しかし視線は鋭く光の柱を見つめていた。
「外部から?」
「おそらく、あの光の柱が原因だ。ただ中央に魔力を放出している何かがあるな」
「なら、それを消せばいいんだろ?」
そう言うとジオは嵐のボックスを二つ取り出すとリングに炎を燈す。
「開匣!」
ボックスから現れたのは子猫と髑髏をあしらった火炎放射器だった。
「ニャ〜オ」
「行くぜ。瓜。形態変化(カンビオ・フォルマ)‼︎」
瓜はジオの左腕に固定されている火炎放射器と合体した。次の瞬間、瓜と火炎放射器は弓矢へと変わる。
「弓矢か・・・」
「ああ。仲間を守る為に得た俺たちだけの力だ。これならあれを消せる」
そう言うとジオが柱の中央に狙いを定めたのを見たゼオンは手のひらに黒い球体を創る。
「俺も手伝うか」
「デストロイ・・・」
「ストーム・・・」
「「バスター!」」
黒と赤、二つの光線と矢が柱に直撃する。それと同時に光が辺り一面を包む。
「やったか?」
ジオは確認するようにゼオンに問いかけるが彼は否定した。
「いいや。まだだ」
「ガァァァアアアア‼︎」
謎の痣がヒョウガにあった。それは鎖のように彼の顔に広がる。そして冷静に状況を判断するゼオン。
「まぁ、もう手遅れだったみたいだが」
「ヒョウガ?おい、嘘だろ」
ヒョウガは髪が伸び、目は理性を失くしているようだった。そんなヒョウガにジオは驚きを隠せていない様子で目を見開いていた。
しかしヒョウガはそんなジオに構うことなく、炎を込めた銃弾を放つ。普段なら簡単に躱せる程度であったが裏切り、そして突如豹変したヒョウガの様子に呆然としているジオは躱せる状態ではない。ゼオンは舌打ちをすると魔力で創った弾でそれを弾いた。
「今は戦いの最中だ。ボーッとするな。またするようなら消えろ。邪魔だ」
「あ、ああ。すまねえ(そうだ。ここは戦場だ。しっかりしねえと)」
気を取り直すジオは弓を構える。
『ちっ。邪魔をするな!降雷鳴!』
空から降り注ぐ雷。連続でゼオンが躱す場所へと降り注ぐ。雷は滅竜魔導士であるゼオンにとって食べ物だ。しかしあの雷は食べれないと感じた為、避けていた。
「(本当に何者なのか・・・何故俺と全く同じ力なんだ?)」
疑問に思いながらもゼオンは雷を躱し、こちらに向かって来るヒョウガの相手をしていた。ジオは雷と一緒に現れた影に呑み込まれ、ヒョウガは我武者羅に攻撃して来る。
逆に予想不可能な攻撃を躱す事に精一杯であるゼオンは一瞬だけ雷の事を忘れてしまっていた。案の定、雷に当たり森の方へと落ちて行くゼオン。しかしヒョウガと影に呑み込まれているジオを救おうと右手に力を込める。
「光竜一閃!」
ゼオンの手から放たれた光が影に迫り、消滅させた。ジオは影から解放され、ヒョウガも元に戻る。
現在
森の方へと落ちたゼオン。しかし自身が魔法で発生させた風を利用して体勢を立て直し、見事に着地する。そのまま動かない彼の目は鋭く、冷たい。静かに怒っているのが一目見ただけで分かった。しかしそこへ
「やあ、ご機嫌いかがかなと聞こうと思ったけど聞くまでもないみたいだね」
ベルデが現れた。
「くだらない事の為に来たなら消えろ。邪魔だ」
「つれないね〜僕と君の仲じゃないか」
笑ってそう話すベルデにゼオンは静かに炎を右手に燈す。
「殺してやろうか?」
「おう。こわっ!せっかくいい事を教えて上げようと思ったのに」
「・・・前みたいにダミーのラクリマを渡すと言ったらぶっ飛ばすからな」
疑いながらそう告げるゼオンに苦笑するベルデはゆっくりと彼の肩に手を添える。
「二つは本物だったじゃないか。まぁ、いいよ。実はね、君にある仕掛けをしたんだ」
「仕掛け?」
「そう。絶望という名の仕掛けをね♪」
これからどうなるのか楽しみだと言うように話すベルデはゼオンが振り向く前に姿を消した。
一方でジオとヒョウガはお互いの武器を持ち、相手を鋭く見据えていた。
「ヒョウガ。なんでテメエは俺たちを裏切った?仲間となった時、俺たちは誓い合った筈だ。仲間を裏切る事はしないと」
「確かにな。だがその誓いは俺が破るよりも前に裏切られている」
ヒョウガの言葉に眉を動かすジオ。自分たちの中に裏切り者がいるのか。なら、誰が。彼の中で不安が広がっていった。もし、あの中にいるのなら仲間たちに教えなければという思いがジオを焦らせていき、彼はヒョウガに問いを投げかける。
「どういう意味だ!」
「そこまで教える筋合いはない」
「なら、ぶっ飛ばして教えてもらうまでだ」
彼は自身の中で広がる不安を根元から断つ為に彼を倒す事に決めた。素早く弓を構えるジオを見るヒョウガも刀を構える。
「元々俺たちは敵同士。戦うことでしか分かり合えない!」
ジオは仲間を守る為に、ヒョウガはある人物を助ける為に。仲間だった筈の二人は戦う。
そしてその裏では
「そろそろ俺も行くかな。奴らを倒した時、俺は本当の意味での強者となれる!」
エドラスのゼオンが戦いの地に赴こうとしていた。