太陽は永遠に   作:ウェスト3世

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お気づきの方が少ないと思うので、一応報告します。
前回の話「最後の扉」と共に番外編「その言葉の意味」を投稿させていただきました。番外編の方もよろしくお願い致します。





 最新のニュースを閲覧すると、物騒な類が多い。

 幼児暴行、行方不明少女の遺体発見、有名芸能人の不倫疑惑、新政権反対派による暴動など、際限がない。

 ―――何故、人は人を批難するのだろうか?

 

 問い質したところで返ってくる答えはない。誰にも分からないのだ。きっと分かっていれば世界は純白だった。

 だが、現状は黒と白が混色した灰色。善悪は至る所に存在し、見え隠れしている。

 世に冷たい風が吹いているのをひしひしと感じる。

 

 スマートフォンで画面をスクロールしていくと、瞠目する記事が載っていた。

 

『人気スクールアイドル天城琴音と高坂穂乃果の酷似性』

 

 スクールアイドルはここ数年で人気が上昇し、特に名のあるスクールアイドルはテレビからの取材があるようだ。

 私達μ’sは未だ取材は無いものの、今、注目を十分に集めているため、可能性は零ではない。ネームバリューのあるスクールアイドルであれば記事が載るのも頷ける。

 

 しかし、問題はそこではない。重要なのは琴音と穂乃果に目をつけているところである。

 琴音と穂乃果の酷似性を理解しているのは現段階ではμ’sメンバーのみ、その中でも私とことりが敏感に反応していた事柄である。

 ファン達がそこに気づく要素はまずないはずである。

 

「ならば、何故……。」

 

 ―――

 

 学校でも琴音と穂乃果の話題は持ちきりだった。部室に集まった部員達も例のニュースに注視していた。

 

「ったく。阿保らしいわね。穂乃果とあの子は別人なのに。」

「そうね。何より穂乃果が居ないことはファンだって分かりきってるはずでしょ?」

 

 にこと真姫はどうやら現実的に捉えているようだ。彼女達の意見は合理的である。

 しかし、ファンの意見も一理あると捉えた花陽が黙々とニュース記事からスレサイトまで閲覧する。

 

「確かに妙な話だけどこう考えれば良いんじゃないかな。誰が見ても穂乃果ちゃんと琴音さんは顔も体型も瓜二つ。加えて今話題のスクールアイドルとなるとμ’sとA-RISEはすぐに名が上がる。」

「つまり、どういうことにゃ?」

「芸能の話題ってそっくりさん同士を挙げたり、有名ユニットグループ同士を載せるだけでも相当な盛り上がりを見せるんだよ。琴音さんはその両方に該当するんだよ。」

 

 つまり花陽の言うそっくりさん同士とは琴音と穂乃果を指し、両者共に人気グループA-RISEとμ’sにそれぞれ所属している。その二つの話題性が相乗効果を発揮し、注目度を増したのだろう。

 

「厄介なことになりましたね。」

「そうは言っても顔が似ているだけなら、そんなに気を詰めずとも良いんじゃないかしら?」

「現実的に穂乃果は居ないと考えれば、絵里の意見は妥当なのですが……。」

「海未ちゃん、何か不安でもあるんか?」

「ええ。私は都合上、彼女と話す機会も多かったので、分かるのです。顔だけではなく仕草、態度までもが似ていると。」

「世の中には全くそっくりな人間くらい一人は居るもんでしょ。」

 

 ここまでの発言ではどうやっても全員を納得させるには至らないだろう。皆の反応はごく自然であり、寧ろ異端なのは私の方なのだから。

 だが、この一言を聞いて尚、同じことが言えるだろうか?

 

「私の憶測に過ぎませんが、本来の琴音は私達が知る天真爛漫な性格ではなく、冷静沈着な性格…と言えばどうでしょうか?」

「どういうこと?」

「正確には天城琴音の本来の人格はあの明るい性格ではないということです。」

「どうしてそんなことが言えるの?」

「そう言える確証は?」

 

 当然と言えば当然だが、部員達の疑問を膨らませてしまったようだ。

 

「以前、彼女と喫茶店で話していた時のことです。琴音は礼節を弁えている上に、一つ一つの動作が冷静だったのです。何というか普段の彼女らしくないというか。」

「キャラ作ってたとか?」

「わざわざ一対一の会話でキャラ作る必要もないでしょう。問題はこの後です。」

「この後?」

「自分の話を終えた途端にスイッチを切り替えたように普段の快活な表情に移り変わったのです。」

「確かに変だけど、だからと言って……。」

「ええ、断言はできません。が、私と同じことを言う人物がもう一人います。」

「もう一人?」

「ことりです。」

「え、え?ことりちゃんはでも……。」

「……まさか。」

「ええ、記憶が戻りました。」

 

 全員、一旦は安堵の表情を浮かべるが、直様、懸念の色が蘇る。

 

「先日、ことりの病室に琴音が見舞いに行ったそうなのですが、琴音の一つ一つの仕草、表情が記憶を呼び戻すきっかけになったようです。」

「つまり、海未とことりは琴音のことを……?」

「ええ。ことりは断言していますが、私はその一歩手前の段階です。断言してしまえば、穂乃果の死が何だったのか……。」

 

 月光の光に照らされる中、私は彼女の最後の瞬間を看取った。手を握り、慟哭した記憶が鮮明に残っている。

 

「海未、アンタの一言は一応頭に入れとくけど、まだ認めるわけにはいかないわ。」

「にこ、頭に入れてもらえるだけで十分ですよ。私も分からないことがたくさんありますから。」

「そうね。とりあえず皆、頭の隅にだけ留めてもらえるかしら。」

 

 絵里の一言で全員首肯する。一応は納得してくれたようだ。

 今はこれで十分だろう。

 

 

 UTX学園の前には大勢の人が集まっていた。A-RISEのファンからμ’sのファン、また、記者と思しき影もちらほらと見当たる。

 琴音のことが気になって来てみたが、案の定と言ったところだ。

 

「上手く変装できてますかね。」

 

 今、この状況下では私も素顔を出すわけにはいかない。μ’sのメンバーである私もターゲットの的になるのは間違いないからだ。

 そのため、普段つけない帽子に眼鏡、マスク。比較的目立たないであろう黒パーカー。側から見れば変質者極まりないのだが、致し方ない。

 

「話すことは何もありません。どいて下さい。」

「でも、君もネット見れば分かるでしょ?君と穂乃果ちゃんは……」

「あー、もう!うるさいっ!」

 

 琴音本人のご登場のようだ。随分と質問責めされているようだ。

 

「そもそも穂乃果ちゃんて死んだのかな?」

「穂乃果ちゃんがUTXに転校して琴音ちゃんを名乗ってるんじゃ」

 

 耳を澄ましてみると、聞くに耐えない罵倒も数々ある。穂乃果の死は公言しているはずだ。それにもかかわらず、疑いを掛ける者がいることに、思わず歯を軋ませる。

 沸々と煮えたぎるような感情を抑えながら見ることしかできないのかもどかしい。

 

 騒然たる出来事の中、静かに昏い翳りが忍び寄っていた。

 

 

「はぁ……。ここまで来れば大丈夫…かな。」

 

 琴音は何とか人混みの中から脱することができたようだ。

 見るに、周りに人気はない。古いマンションが立ち並んでいるため、不気味に感じるが、人の波に押されることはないだろう。

 

「まったく、ファンの目の付け所ってよく分からないなぁ」

 

 ふて腐れたような表情で琴音は静かな道を歩く。今回の件は彼女にとっても全く予想外のものだったのだろう。

 

「はぁ……。それにしても此処どこだっけ?」

 

 普段、歩かない道なのか、見覚えがない。

 

「んん、ヤバい。戻った方が良いかも。いや、でもなぁ。また人だらけなのも……。」

 

 戻ればこの不気味な歩道から解放されるが質問責めに遭うのは自明だ。

 戻らなければ、質問責めに遭うことはない。

 

「うーん……」

 

 刹那―――。

 背後からぞっとするほどの寒気を感じる。全身鳥肌が立つ。

 反射的に振り向いた時には遅かった。スタンガンを当てられ、意識が遠のいてゆく。

 

 

 ―――最後に思い浮かべたのはあの人の顔だった。

 

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