太陽は永遠に   作:ウェスト3世

35 / 43

 去年の11月あたりですかね。
 大学の授業の合間にふと思いつきで書き始めました。(投稿したのは去年の12月から。)
 当初は簡単に終わらせるつもりでしたが、気付けば一年経ち、当初計画していた終局と大分方向性が変わりました。

 とはいえ、「太陽は永遠に」という名に合う結末を描いていくことには変わりありません。これからもよろしくお願い致します。


運命の行方

 街外れは閑散としていた。古いアパートやマンションが立ち並んでいたが、人が住んでいるとは到底思えない。

 

「此処は誰も立ち寄りそうにありませんね。」

 

 そう、人気のない場所だからこそ捜す価値がある。あくまで憶測だが、迷子にしても行方不明にしても人目のつく場所であれば捜索は容易に済む。

 だが、見つからないということは人目から遠ざかっているため、捜索が困難となる。

 

「さて行きますか。」

 

 背筋が立つほど、不気味だ。本当は逃げて見て見ぬ振りをするほうが楽に違いない。

 だが、後悔だけは残したくない。そして何より……。

 

「何よりも私は貴女を……。」

 

 既に決心はついていた。あとは前進するのみである。

 

 

 朝練終了後、μ’sメンバーは早々に学校を去り、ハンバーガーショップに集まっていた。

朝のファーストフード店は出勤前の会社員が朝食や仕事前の憩いの場として立ち寄っている。そのせいか、学生はやや目立つ。

 

「な、なんでハンバーガーショップ?」

「部室は教師も立ち寄るだろうから、ちゃんと話し合えないでしょ。ここならよっぽどのことがなきゃ店員に追い出されることはないでしょ。」

「とはいえ、教員の力を頼っても良かったんじゃ。」

「そうね。私達が下手に手出しできる問題でもないんじゃないかしら。」

 

絵里と真姫の意見は最もだった。行方不明事件はそもそも警察の管轄であり、生徒が関与できる問題ではない。

 

「勿論、そんなこと私だって分かってるわよ。」

 

 にこがふてくされたような態度をとる。海未を捜す方法を考えようと言い出したのは彼女である。

 それが二対一で諭されると、部が悪い。

 

 だが、そんな普段の調子から打って変わり瞳から虹彩が消える。

 光を反射させない様はまるで光を拒絶してるようだった。

 

「けど、海未を放ってはおけないでしょ。あの子の命の残量はもう……。」

 

 にこの言葉に皆、顔を俯かせる。皆、分かっていることなのだ。足掻いても消しきれない未来がある。翳はすぐそこまで迫っている。

 

「これは部長として、いや、矢澤にことしてお願いするわ。」

 

 にこは部員全員に向かって頭を下げる。

 

「絶対に無茶はしなくていい。けど、あの子を助けて欲しい。」

 

 にこが部員達に対して頭を下げるのはこれが初だった。普段の尊大な態度はどこにも見当たらない。にこの肩は小さく震えていた。

 

 

 理事長の一日は各クラスの出席簿確認から始まる。生徒数が少ないため、どの生徒がいて、どの生徒が居ないのか瞬時に分かる。

 

 淹れたてのコーヒーを啜る。じんわりと苦味が広がる。

 

「……どういうことかしら?」

 

 西木野真姫、星空凛、小泉花陽、園田海未、絢瀬絵里、東條希、矢澤にこ、以上七名の欠席が記載されていた。奇しくも全員μ’sメンバーである。

 

「一体何が……。」

 

 μ’sといえば、スクールアイドル。となれば、スクールアイドル界で何かが起きたと考えるのが妥当だろう。

 

「そういえば、ニュース見てなかったわね。」

 

 ノートパソコンを開き、最新のニュースを表示する。

 

「これは……。」

 

 表示された記事はスクールアイドル天城琴音に纏わるものだった。高坂穂乃果との酷似性、行方不明。

 天城琴音の事件とμ’sメンバー欠席。無関係ではないだろう。

 

「あの子達……。」

 

 外の景色を見ると、辺りは暗い影に覆われていた。しばらく雨は止みそうにない。

 

「放っては置けないわね。」

 

 そう言って、理事長室を後にする。

 

 

 天城琴音の行方不明事件は既に公となっている。当然彼女の目にも留まる。

 

 病院内にある閲覧スペースには最新の雑誌や新聞が置かれている。ことりはこのスペースで時間を潰すのが習慣となっていた。

 物静かで、外野からの干渉が少ないために、自分の世界に浸ることができる。息苦しい環境の中で唯一の安息と言って良いだろう。

 

 いつも通り最新の記事を黙読している時だった。驚愕に値する記事が貼られていた。

 

「行方不明……?」

 

 心臓の鼓動が早くなる。唇を噛み、松葉杖を手にし、立ち上がる。

 

「行かなきゃ……!あの人を…」

 

 ことりの瞳に逡巡、動揺は一切なかった。どうしようもないほどに、熱が身体中を駆け巡る。

 

 今だけは自分が怪我人であることを忘れていたい。

 

 

 華やかな都の裏には影が潜んでいる。

 

 古典の先生が言った言葉である。

 特に平安期の都は貴族達が謳歌し、彼らが築き上げた文化は現代まで言い伝えられるほどである。

 それは表向きの史実。裏では語り継がれていない歴史が幾千と存在する。

 平安の華やかな都の裏では貧困に喘ぎ、餓死する者、伝染病により死する者が続出したという。また、政界においても貴族達は出世するために数々の陰謀を計っていた。黄金色の舞台裏には常に漆黒の世界が広がっていたのだ

 

 華やかさとは貧苦や慟哭、諸悪によって成り立つ仮初めの平和なのだろう。

 

 華美な街の裏に、寂れた廃墟が立ち並んでいる。普段、通らない場所のため、僅かに恐怖を感じる。

 痩せ細ったホームレスが羨望の目を向けてくるが、気にしないことにした。

 

 早くこの場から立ち去りたい。こんな世界、気づかずにいれるならば幸福なのに。

 

 際立った手掛かりもない。ただ、漠然と荒れた街の中を駆け巡っていた。

 

「見つかりませんね。いえ、このままでは何をやっても見つからない。」

 

 その時だった。

 

「きゃああああああっ!」

 

 悲鳴が聴こえる。感覚的ではあるが、響音は近場からである。私がいる場から遠くない。

 

「賭けてみますか……。」

 

 悲鳴が発したであろう方角へと駆ける。すると次は「ひゃははははっ!」と、男の高笑いが響く。

 

 私の目に留まったのは、今にも朽ちそうな古いアパートだった。

 

 

 μ’sメンバーは手分けをして海未の捜索に掛かる。捜索とはいえ、情報が皆無に等しい為、大したことはできない。

 

 効率良く捜すため、部員は二手に分かれる。絵里、花陽、凛の三人と希、にこ、真姫の三人。

 

 絵里達は駅周辺、希達は街中をそれぞれ見回ることにした。

 

「さて、にこっちと真姫ちゃん。二手に分かれてなんだけど、さっそく交番に行こか。」

「え?街中回らないの?」

「回るけど、そもそも人の多い場やから困難だと思うんよ。それに最終的にはどうしたって大人の力が必要よ。」

 

 それは感情だけではなく理知ある答えだった。

 対してにこは渋った様な表情を浮かべる。

 

「いや、でも……。」

「多分、えりちもウチと同じことするやろな。」

「それじゃあ二手に分かれた意味がないじゃない。」

「いや、警察の手を回させるには一つより二つあった方が良いやろ。よく考えてみ?にこっち。ウチらが漠然と捜そうとする方が無意味や。」

 

 希の意見ににこが押し黙る。

 

「にこちゃん。海未を捜したい気持ちは分かるけど、希の言う通りよ。私達だけじゃ危険よ。」

 

 真姫にも諭され、ついにはにこから反論の言葉が出ることはなかった。

 

「そうね。気が急いでいたわ。確かに私達だけでは難しいわ。」

「分かってくれて何よりや。じゃあ早速警察に連絡やね。」

「ええ。」

 

 時刻は十時を迎えようとし、各店が開店準備を始める。そのせいもあって街は徐々に賑わいを見せる。

 

「どうか無事で、海未ちゃん。」

 

 言葉の通り吉となるか、それとも凶となるか。行く果てを誰も知らない。

 

 

 最早、憶測でしかないが賭ける他ない。

 古いアパートの一部屋。恐らく、被害者らしき悲鳴と犯人と思しき高笑いは此処から聞こえた。

 

 私はそっとドアノブに触れる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。