BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

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BLEACH El fuego no se apaga.90

 

 

 

 

 

 

 

「これより、緊急隊首会を執り行う 」

 

 

威厳に満ちた声が響いた。

部屋の奥に立つ声の主を中心に、互い向かい合うようにして列を成すのは七人の死神。

居並ぶ誰もが一目で一介の死神とは隔絶した力を持っている、と感じさせるだけの雰囲気を醸している。

だがそれもその筈、彼等は護廷十三隊に所属する死神にあって傑出した才を持ち、十三ある隊のそれぞれを取り仕切る隊長達。

 

二番隊隊長 砕蜂(ソイフォン)

 

四番隊隊長 卯ノ花(うのはな) (れつ)

 

六番隊隊長 朽木(くちき) 白哉(びゃくや)

 

七番隊隊長 狛村(こまむら) 左陣(さじん)

 

八番隊隊長 京楽(きょうらく) 春水(しゅんすい)

 

十二番隊隊長 (くろつち) マユリ

 

十三番隊隊長 浮竹(うきたけ) 十四郎(じゅうしろう)

 

護廷十三隊という組織、十三ある隊のそれぞれを束ねる彼等。

そして一癖も二癖もある彼等隊長達を総括し、護廷十三隊の全てを束ね、全ての死神から畏怖と畏敬の念を集め、護廷発足以来千年の間“最強の死神”として尸魂界(ソウルソサエティ)を守護する死神の中の死神。

 

 

一番隊隊長 山本 元柳斎(げんりゅうさい)重國(しげくに)

 

 

この緊急隊首会も元柳斎の即断によって招集されたものだった。

本来この隊首会に出席する筈の十番隊隊長日番谷 冬獅郎(ひつがや とうしろう)は、破面の侵攻に備えての現世駐屯任務により出席叶わず、もう一人の十一番隊隊長更木 剣八(ざらき けんぱち)はただただ姿を見せず。

剣八に関しては無断での欠席は叱責ものの行動であるが、案件が案件だけに彼を探すことよりも隊首会の進行が優先されていた。

 

 

「皆、既に周知の通り、三度現世への破面侵攻が確認されておる。先遣隊として駐屯しておった日番谷隊長以下、数名の死神により撃退には成功したが、現世への被害は甚大じゃ」

 

 

重い声で口火を切ったのは元柳斎。

既に隊長格には詳細な報告が成されてはいるが、順を追って説明する事で認識を密にする。

破面の更なる現世侵攻、予想だにしない、という程衝撃的なものでは無いが、前回からかなり短い間隔での侵攻であることもまた事実。

それでも現世へと送った先遣隊の面々は破面の撃退には成功していた。

 

だがこれはあくまで“撃退”であり“撃破”ではなく、この違いは大きい。

 

 

「日番谷隊長からの報告によれば、今回侵攻を確認した破面は計四体。うち三体は日番谷隊長含め先遣隊四名が、残り一体は死神代行黒崎 一護が対応。 先遣隊側は浦原 喜助の助勢もあり、然したる被害も出さず破面撃退に成功との事じゃ」

 

 

順を追った説明は破面の侵攻数、そして対応した人員へと移り、二つに分かれた戦場のうち一端の戦況を語り終えた。

内容は破面三体に対し死神側は隊長格と席官四名での対応、数の上での有利があれどそれは結局机上の論理でしかなく、先遣隊は浦原喜助の助勢によって破面を撃退したというもの。

浦原、という名が出たところで居並ぶ隊長格のうち数名が眉をしかめるが、元柳斎はそれを敢えて無視した。

 

 

「だがもう一方、黒崎 一護の方はそうもいかぬ。戦闘の最中破面の放った黒い虚閃により、現世空座町の一部が爆発炎上。十三番隊 朽木 ルキアの要請により、空間凍結と魂魄保護は行われておったが被害は甚大の一言に尽きる。憂慮すべき事態じゃ。 涅隊長、現世の詳細を 」

 

 

そう、浦原の介入よりもまずはもう一方、一護と破面の戦闘による現世への被害こそ重要なのだ。

破面 グリムジョーによって放たれた恐るべき一撃、黒虚閃(セロ・オスキュラス)により、現世には確実な被害が出ていた。

一護とグリムジョーの戦闘を確認したルキアにより、尸魂界側へ一護とルキア周辺の空間凍結と魂魄保護という措置はとられていたが、グリムジョーの一撃はそのうち空間凍結をあっさりと撃ち破り、ひどく周囲を蹂躙していた。

その惨状、元柳斎の憂慮すべき事態、という言葉が全てを物語っている。

そして元柳斎は詳細な説明をこの場で最も適しているであろう人物、涅マユリへと求めた。

 

 

「フム。 では仕方ないからキミら凡人にも理解できるように説明してやろうかネ。空間凍結は本来、死神や虚の戦闘による直接及び間接的霊圧の余波によって空間に偏重をきたさない為の措置だヨ。しかしそれがあったというのに今回の破面の攻勢霊圧とその余波は空間を歪ませ、本来均一な筈の空間霊子密度と気脈といった流動霊子の流れを著しく乱しているネ。著しい空間そのものの不定、空間霊子の圧搾に流動霊子の乱流、どれ一つとってもあの規模の街ひとつ消し飛ばすには充分だガ…… まぁ今のところは警戒強度 弐、といったところだネ」

 

 

元柳斎の言葉に次いで話し始めたのは、一目見て誰にも“異様”である、と思わせる外見の人物。

山羊の角を思わせるような青い髪、顔の周りはまるで古代エジプトの王を思わせる金色の装飾品、顔は黒塗りで額から鼻筋と頬だけが白く塗られていた。

眼はギョロリと見開かれ、口から覗く歯は黄色、猫背で黒い死覇装の上にはそでのある白い隊長羽織り、袖から覗く手もまた白く、爪は黒で一本だけが異様に伸び、他は深爪。

外見からしてまず尋常では無い、と感じさせるその人物は十二番隊隊長及び技術開発局室長涅 マユリ。

尸魂界きっての狂人であり狂科学者にして、尸魂界で並ぶ者は無い頭脳の持ち主である。

 

 

「警戒強度 弐、という事は当面の心配は無い、という事か?」

 

「……キミは馬鹿かネ。 私が既に対処したんだ、心配など億に一つもありはしないヨ。その上で警戒強度 弐と言っているのが判らないのかネ?これだから学の無い凡人は…… 先程の説明は凡人向けだったがどうやらキミは凡人以下の様だネ。仕方が無いから今度からは蛆虫でも判るように説明してやるヨ」

 

「……貴様ッ。 この私を馬鹿にしているのか!」

 

「止せ、二人とも。 元柳斎殿の御前で私憤など…… 双方隊長格として己を律するべきだ 」

 

 

涅の説明に対し意見を述べたのは、居並ぶ隊長格の中で一番小さく小柄な女性、砕蜂だった。

二番隊隊長及び隠密機動総司令を兼任する彼女、この二つの号は嘗て四楓院(しほういん)夜一(よるいち)が歴任した地位であり、その夜一の下で力を磨き、その地位を継いだ彼女の実力は言うまでもないだろう。

だがその砕蜂に対し、涅は眉をしかめ見下すようにお前は馬鹿か、と言い放った。

現状空座町は問題なく機能し、尸魂界と現世の境界も安定、現世側の大規模な記憶置換と倒壊した建造物の対応も既に完了していると。

その上で警戒強度 弐なのだ、先の報告があってそれすら読み取れないのかと言う涅。

自分とまったく同じ水準を求める事は不可能だと知りながら、それでも彼にとってこの程度と呼ばれる事は、他者にとってこの程度では無いのだろう。

だが最後に一言二言余計な言葉が入った為に、その言葉自体が全て嫌味に変わってしまいはしたが。

そんな二人を窘めるのは巨躯の男、狛村 左陣。

大きな身体が目を引く彼だが更に目を引くのはその顔、何故なら彼の顔は人間のそれではなく狼の頭(・・・)なのだ。

人狼、そう呼ばれる種族に属する狛村ではあるが、忠義や恩義を重んじる気風が強く、涅と砕蜂の言い争いも彼からすれば同じ隊長格として見過ごせない姿だったのか、その視線は強い。

 

 

「止めぃ。 現世の状況に関しては予断を許さぬ、という事に変わりはなかろう。引き続き技術開発局は空座町の監視観測を厳とせよ。続いて黒崎 一護の容態を、卯ノ花隊長 」

 

「はい 」

 

 

涅の嫌味に砕蜂が喰ってかかり、狛村が間に入ったところで元柳斎がピシャリと窘める。

その言葉に砕蜂、狛村はスッと下がり、涅も不満げではあったがフンと鼻を鳴らしそれ以上語る事はしなかった。

現世の状況と今後の対応について通達した元柳斎は、続いてこの惨状をもっとも間近で体感した人物、黒崎一護についての報告を四番隊隊長 卯ノ花に求めた。

 

 

「日番谷隊長から四番隊への緊急出動要請を受け、現世へと上級救護班を派遣した際、彼は非常に危険な状態と言えました。破面の攻勢霊圧をほぼ零距離から浴びた事がその原因と考えられ、綜合救護詰所にて霊圧の洗浄、回復、及び外傷に対する施術と投薬を施しました。現在は綜合救護詰所 第一級集中治療施設に収容されています。こちらも予断は許しませんが肉体的欠損はなく、容態も今のところ安定しています。ですが…… 」

 

 

元柳斎の言葉に答えたのは、長く艶やかな黒髪を身体の正面で三つ編みにした女性。

柔和そうな表情と雰囲気、しかし元柳斎に次いで最古参の隊長格であるのがこの卯ノ花という名の死神なのだ。

彼女が統率するのは四番隊、任務は主に死神の命を救う救護を目的とし、四番隊隊舎は同時に綜合救護詰所と呼ばれ、傷ついた死神はそこで治療回復を図る。

グリムジョーとの戦いで傷ついた一護は、現在その綜合救護詰所の中で最も設備が整っている第一級集中治療施設へと収容されており、現在も治療を受けていた。

しかし卯ノ花の言葉から見るに、今も命の危機に瀕しているという訳ではなく、峠は越えたと言ったところの様。

だがそうして一護の容態を語る卯ノ花の言葉の歯切れは悪かった。

 

 

「問題がある……と? 」

 

「はい。 私たちが彼を収容する以前の(・・・・・・・)応急処置もあって、彼の肉体は程無く回復に向かうでしょう。しかし、彼の精神は非常に深い階層に留まったままなのです。本来肉体の回復と同期する筈の精神表層への移行の兆候も未だ見られません。これが著しい衰弱による一時的なものか、或いは別の要因があるのかは判りませんが、最悪、彼はこのまま目覚めない(・・・・・・・・・)可能性も考慮すべきかと」

 

「ムゥ…… 」

 

 

卯ノ花の意を告ぐように声を発したのは、涼やかな眼をした青年、名を朽木白哉。

ルキアの義理の兄であり、尸魂界において正一位に位置する大貴族、一護とは藍染の乱の折り、互いの信じるものの為に幾度と無く刃を交えた間柄である。

彼の言葉を肯定した卯ノ花は、一護の現状においてもっとも憂慮すべき点を述べた。

 

精神の深度潜行。

 

あまりに強い肉体への衝撃、損傷、或いは危機によって精神が奥底へと沈んでしまう事は希にある。

端的に言ってしまえば植物状態、肉体の生命活動に何の支障は無いが、しかし精神だけが眠ったように覚醒しない。

一護に見られる現象は正にそれであり、こればかりは卯ノ花でも何時一護が目覚めるのかを答える事は叶わないようだった。

彼女に、いや回道を修めた四番隊隊士に癒せるのは肉体だけであり、精神、こころまでは癒せないのだから。

そんな彼女の見立てに小さく唸るのは元柳斎、一護の容態は思っていた以上に芳しくないと。

元柳斎以外の隊長達の一様に重い雰囲気を覗かせる。

一護の容態、その重さも然ることながら、隊長格にも匹敵する彼の戦闘能力は、これからの戦いにおいて非常に重要なものなのだ。

無論彼等とて己の力が一護に後れを取るとは微塵も思ってはいないだろうが、尸魂界の守護を司る者達としてそれを見過ごす手は無いという想いは確かにあるのだろう。

 

だが一方ではこれで良かったのかもしれない、という想いも元柳斎の中にはあった。

彼からすれば一護などまだ赤子に等しく、死神では無い死神代行の現世の子供を、己等の都合で戦場に送る事は、如何に元柳斎と言えど憚られるのかもしれない。

 

 

「卯ノ花隊長には引き続き、黒崎 一護の治療を。 ……さて、最後になったが破面侵攻時、現世へと向かった旅禍の少女、井上織姫についての報告を、浮竹 」

 

「はい 」

 

 

卯ノ花へ引き続き一護の治療を命じた元柳斎は、最後と前置きして一人の少女の名を口にした。

井上 織姫、嘗て藍染の乱の折り、一護と共にルキア奪還の為に尸魂界へと足を踏み入れた人間の少女、それが織姫だった。

藍染の乱が終結し、破面の侵攻が開始されてから後、織姫は己の無力さを知る事で、友である朽木ルキアを頼り尸魂界で共に修行に励んでいたのだ。

友人同士が切磋琢磨し、お互いの為に技を尽くす。

人間と死神という流れる時間の違う存在にあって、そうして親身に相手を思いやれる間柄というのは稀有であり、また貴重なものだろう。

 

だが今、彼女は非常に危うい立場に置かれていた。

 

 

「彼女は十三番隊所属、朽木 ルキアと同隊隊舎裏修行場で修行中でした。しかし破面侵攻の報を受け、朽木は即時現世へと赴きましたが、旅禍である彼女用の穿界門開設には半刻ほどのズレがあり。結果、彼女には護衛二名を付け現世へと向かわせました」

 

 

元柳斎に促され織姫の動きについて語り始めたのは、腰まで届く長い白髪の男性。

名を浮竹 十四郎、十三番隊の隊長であり朽木ルキア直属の上司、そして井上織姫の姿を最後にその眼で確認した隊長でもある彼。

元来身体が弱く、隊首会に出席できないことも多い彼、しかし今はその身をおしてこの場に立っている様子だったが、その顔は沈痛な面持ちをしている。

 

 

「そして断界を移動中、彼女と護衛二名が何者かによる襲撃を受け、護衛の死神はその場で一度意識を失い、再び気が付いた時には既に彼女の姿はなかった、との事です。現世に駐屯している日番谷隊長以下先遣隊の死神に彼女の捜索を依頼しましたが、未だ発見の報は届いておらず…… 今回の侵攻、そのタイミングを考えると、彼女は破面側に拉致された(・・・・・)と見るのが妥当だと考えられます」

 

 

旅禍の少女、井上 織姫の行方が判らなくなったのは数時間前。

破面の侵攻、黒崎一護の窮状、先遣隊の面々の治療や現世での諸々の処理に追われ、彼女の存在が後回しになってしまった事は否めないだろう。

しかし、現世で活動している浦原 喜助や朽木ルキア、更に彼女の護衛についていた死神が断界内で発見された事でこの事態は一変した。

現世を探しても、尸魂界を探しても、井上 織姫の足跡はおろか痕跡すら発見できない。

たった一人の少女ではある、旅禍として尸魂界に足を踏み入れ特殊な能力を持ってはいるが、それでもたった一人の少女ではある、しかし、あまりにもタイミングがよすぎる。

 

そう、まるで全てはこのために、井上 織姫を連れ去るためだけに謀られたかのように。

 

或いは仕組まれた様に。

 

 

「成程。 しかし浮竹よ、儂に上がっておる報告には別の側面(・・・・)を示唆するものもあるが?」

 

「……しかし、それはあくまで可能性の話です。先生! 」

 

「然様。 だがだからこそ我々はその可能性を捨て置く事は出来ん」

 

 

浮竹の報告に、ふむと顎に蓄えた長い髭をひと撫でした元柳斎。

彼の報告に嘘は無い、当然だ、何故ならこの場は隊首会、護廷各隊の長が集まり護廷の在り方、方針を決める場において嘘などあってはならないのだから。

しかし、浮竹の報告には嘘は無くとも語られていない事(・・・・・・・・)はあった。

それは何事にも寛容であり、誰かを疑うことよりもまず、信じることを重んじる浮竹らしい選択ではあるのだろう。

だがその寛容さは時に己の首を絞める。

そして元柳斎は寛容であることよりも、今は厳格さこそが必要だと考えていた。

 

 

「彼女は自ら黒腔に入った(・・・・・・・・)って報告の事だろう?山じぃ。 護衛の死神が意識を失う前のほんの一瞬見た光景…… でもそれだけじゃあまりに弱い(・・)と思うけどねえ?」

 

「そうです先生! 護衛二人の報告、その内一人の言によれば彼は意識を失う前に、もう一人の護衛の(・・・・・・・・)上半身が吹き飛ぶ(・・・・・・・・)光景を目にしていると。それを見た護衛がその後意識を失った理由は想像に難くないでしょう。彼等は二人ともあの場で一度殺され(・・・・・・・・・・)、しかし今も生きている(・・・・・・・)。これが意味するところが判らない先生では無いはずです!」

 

 

元柳斎の言葉に僅かに声を大きくした浮竹。

彼が言った可能性の内容を受け取って語りだしたのは、白い隊長羽織りの上に女物の派手な着物を重ねて羽織った男性。

名を京楽 春水、浮竹とは真央霊術院の同期であり、元柳斎が創設した霊術院から浮竹と共に初めて隊長となった傑物である。

頭に被った笠の縁を片手で摘む様にして下げ言葉を発する京楽、それは元柳斎が示唆する別の側面を理解し、しかしそれだけで全てを語るのは早計だとする彼の言葉に、浮竹も続いた。

 

彼等二人が語ったのは、元柳斎が言う別の側面を示唆する証言。

織姫に同行し、しかし何者かの襲撃を受け意識を失っていた護衛二人の証言について。

護衛のうち一人が一度意識を失い、しかしその後僅かに浮かんだ意識が途切れる間際、彼は見たというのだ、井上織姫が自らの意思で歩み、黒腔の中に消えていく姿を。

無理矢理腕を引かれたのでもなく、まして武器などで脅されていたのでもなく、傍に控えていたおそらく破面であろう男は何もせずただ黒腔の傍らに立ち、破面が開いたであろう黒腔に消えた織姫。

その姿が示唆するものは何か、強制や強要、脅迫の類ではなく、ただ彼女の意思で進んで黒腔へと入っていったように見える彼女の姿が示唆するものは何か、それこそが元柳斎の危惧であり、憂慮なのだ。

 

 

そう、井上 織姫は自らの意思で破面側へと渡ったと、自分達尸魂界の死神を裏切って。

 

 

だが浮竹、そして京楽はその可能性は低いと踏んでいた。

それは護衛として織姫に付いた死神のうちもう一方、織姫が黒腔へと消える姿を見た死神では無いもう一方の死神の証言のため。

彼は言ったのだ、自分はもう一方の護衛の上半身が吹き飛ぶ様を確かに見た、と。

証言はその光景を見た直後自分も意識を失い、気が付いた時には綜合救護詰所に居た、というものではあったが、此処で示された証言ともう一人の証言には決定的な食い違いと、その食い違いを解消できるだけの存在、能力の発動が示唆されている。

 

織姫の姿を目撃した、と言った死神はしかし、もう一人の言葉を信じればそれ以前に絶命しているはずなのだ。

 

死している筈の人物がその後意識と肉体を取り戻し、目覚め記憶する。

如何に霊体である死神であってもそんな事が出来るはずもない。

しかし、それを可能にする力は存在する、それこそが井上織姫の能力『事象の拒絶』なのだ。

藍染が着目したその能力、尸魂界側もその特異性をまったく理解していない、などという事はありえない。

浦原 喜助、涅 マユリをはじめとした科学者然り、卯ノ花烈といった回道を修めたもの然り、明らかに逸脱した能力とはそれだけ目立つものなのだ。

故に彼等隊長格は皆知っている、井上 織姫の持つ能力の本質も、そしてそれがあればこの証言の食い違いも解消できることも。

 

彼等護衛二人は一度死に、しかし織姫の能力によって死ぬ前まで戻ったのだ、という事が。

 

 

「彼女の能力はちょっと飛びぬけてるからねえ。或いはそんな絶望的な状態からでも命を救う事は出来るでしょ。仮に山じぃの言う別の可能性…… 織姫ちゃんが(・・・・・・)尸魂界を裏切った(・・・・・・・・)って可能性が正鵠を射ていたとして、彼女がわざわざ護衛の二人を回復させ、あまつさえ虚圏へ渡る姿を見せる意味は無い、と思うけどねえ…… 」

 

 

下げていた笠の縁ををクイと上げ、元柳斎へと視線を向ける京楽。

織姫が能力で回復させた事実、それが示す可能性と裏切りに伴うリスク。

もし仮に彼女が尸魂界を裏切り、断界の中で虚圏へと渡る事を予め計画していたとして、護衛を始末する事は大いにありえるだろう。

彼等二人の口さえ封じてしまえば全ては闇の中、そして死神も、何より彼女の友人である黒崎一護をはじめとした面々は、彼女が裏切ったという可能性など一切考慮せず、彼女が攫われたと思い込むことだろう。

信頼とはあまりに盲目、まだまだ青い彼等にとって裏切りを疑うことよりも友を信じることが優先されるのは、仕方が無い事なのかもしれない。

裏切りとはそれすらも織り込み、利用することにこそ意味があり、護衛二人の口を封じる事は存外効果的だと言えるだろう。

 

だが織姫は、おそらく死に瀕した護衛を癒した。

 

彼女が本当に尸魂界、そして友を裏切る心算ならばそれはあまりに無意味であり、尚且つ無駄な行為と言える。

あまつさえ自分が虚圏へと渡る姿を死神側に目撃させる、というリスクは犯すべきでは無いだろう。

裏切りとは密に行うからこそ意味があり、裏切りを宣言する事はそもそも裏切るという行為の利点を、大いに失わせるに他ならない。

故に京楽、そして浮竹は織姫が裏切ったと言う可能性よりも、彼女が破面側、藍染によって拉致されたと考えるが妥当だと結論付けたのだ。

 

 

「……おぬし等の言は判った。 じゃが相手はあの藍染、軽々に全てを断じるは禁物。それすらも(・・・・・)彼奴の策である可能性は捨てきれん。井上 織姫に関してはどちらにせよその身が虚圏にある以上、今は此方からの手出しは出来ぬ。それ以上に優先されるのは、今後破面の本格的侵攻に備えること。それこそが何より寛容じゃ 」

 

「待ってください先生! それは彼女を見捨てるという事ですか!?」

 

「然り。 人間の少女一人と世界の安寧、量るに及ばず」

 

 

裏切りだと断定できない、しかし裏切りでは無いとすることも出来ない。

判断材料があまりに少なく、更に相手取るのは全てを見透かし操るが如き男。

何より今回の侵攻で破面側の戦力が整いつつある事は明白であり、尸魂界側が推定した崩玉覚醒期間、ひいては決戦までの期間は大幅に短くなっている。

現世の街ひとつと十万の魂魄、魂の均衡は大きく狂い、何よりそれらの魂を贄とした先には尸魂界の終焉にも等しい惨劇が待ち構えているのだ。

この世界の一大事と人間の少女の安否、両方を天秤にかけたときどちらが重いかなど論ずるまでも無い、元柳斎は浮竹の声を低い声でそう断じた。

 

重さなど明白、故に量るに及ばず、と。

 

 

「しかし先生、ッ! ゴホッ! ゴホッ! 」

 

 

だがそれでも、あまりに情けの無い元柳斎の言葉にそれでもと食い下がる浮竹。

それは彼が“仁”をもって人の上に立つからなのか、或いは彼女の友人である一護達にとってあまりにも残酷な答えだったからなのか。

他者を慮る叫びを上げた浮竹ではあったが、此処へ来て身体に障ったのか、言葉を詰まらせると背を丸めて咳き込んでしまう。

 

 

「まぁまぁ浮竹、そんな風じゃ織姫ちゃんを心配する前に自分が倒れちゃうよ?それに山じぃだってあんな顔してるけどきっと辛いはずさ、織姫ちゃんは死神じゃないし戦闘要員でもない。何より彼女がこうして疑いをかけられているのも元を正せば此方側の落ち度だ。それでも立場ってやつは否応なく選択を迫ってくる…… 嫌になるけどそれから逃げちゃ駄目なのさ 」

 

「京楽…… 」

 

 

元柳斎とて人である。

超然たる霊圧を誇り、千年の長きに渡り最強の死神として、そして全ての死神の規範となり今尚彼等を束ね続けている元柳斎とて、人なのだ。

織姫を見捨てるという決断を下したのは、彼が織姫の命を何とも思っていないからではなく、彼女の命と世界を己の立場によって(・・・・・・・・)秤にかけた末の決断。

護廷十三隊総隊長という尸魂界の守護、ひいては現世との魂の調整者として下さなければならない決断は、織姫の命や安否よりも世界を優先するとしたのだ。

無論この決断は元柳斎が立ち、そして背負う責任により下された元柳斎の選択であり、これがもし一護に迫られた決断だったならば、彼はきっと織姫を、いや織姫も世界も両方を救う選択を実現するために奔走した事だろう。

京楽はそんな立場によって選択を迫られる(・・・・・・・・・・・・・)元柳斎の内心も察してやろう、と浮竹の肩を軽く叩きながら語りかける。

浮竹とは違い織姫との距離が一歩退いている分、自体を客観し出来ている京楽の言葉に、口元を手で押さえながら浮竹は元柳斎を一度見やり、そして眉間に皺を寄せ一度目を閉じるとその後はもう元柳斎に食い下がる事は無かった。

 

 

(まぁ拉致にせよ裏切りにせよ、織姫ちゃんの力が破面側に在る(・・・・・・)っていう状況じゃ、山じぃにはこれ以外の選択は出来ない、って部分もあるだろうけどねえ。それに今は(・・)手出し出来ない、って言うあたり。山じぃもただで済ます心算も無いみたいだ…… 怖い怖い )

 

 

浮竹の様子を隣で確認した京楽は、内心一息つくと何とも実直で頑固者同士な師弟だといった風で肩をすくめた。

彼が思うとおり、元柳斎の量るに及ばずという言葉には、一人と世界という意味のほかにもう一つ、織姫の力(・・・・)という存在も確かに含まれている。

織姫の能力、事象の拒絶は扱いが非常に難しい。

能力の持ち主が彼女であればこそ、彼女の能力は治癒や回帰といった“やさしさ”の方向性を向いてはいるが、それが藍染の手に落ちたとなればその方向性が歪められ、牙を向く可能性は十二分に考えられる。

それを考えれば織姫一人を助けに虚圏という未開の地に策も無く踏み込むよりも、尸魂界の防備を固める事が選択されるのも自明、といったところだ。

 

だが京楽はそんな元柳斎の言葉や選択に不満は無かった。

何故なら彼には元柳斎の言葉に僅かだが見えていたのだ、元柳斎の怒りが。

状況をいいように操られ、結局は後手後手に回らざるを得ない、先んじる敵に対し守勢にまわる事しか出来ない、それを元柳斎がよしとする訳が無く、それは言葉にもよく現われていたと。

京楽の目にだけは映った僅かな元柳斎の怒気、その一端。

子供の頃より浮竹と共に元柳斎の下で学ぶ機会を得、決して素行がよろしいとは言えなず頭に何発もの拳骨を貰った賜物か、或いは軽薄だが深慮なるこの男の慧眼ゆえか、京楽はそんな元柳斎の怒りの炎がもし自分に向いたらと思うと、怖い怖いと内心おどけて見せていた。

 

 

「……では各々に今後の命を言い渡す。現世駐屯中の日番谷隊長以下先遣隊は即時帰還、各員の隊へと戻り任に就くよう。なお阿散井、朽木の両名に関しては不承の場合拘束を許可する。両名を鑑み、この任は朽木隊長に着いてもらう。よいな? 」

 

「承知した 」

 

「二番隊は警邏隊による瀞霊廷全体の監視強化と裏廷隊による連絡密度強化、四番隊は各隊に上級救護班を配し即応体制を。七、八、十、十一、十三番の各隊は警邏隊と連携し、各担当区を警戒せよ。十二番隊、技術開発局は例のモノ(・・・・)の建造を急ぎ行うよう。浦原喜助にも諸々急ぐよう厳命するが、此方が遅れれば話にならん」

 

「フン。 言われるまでも無いヨ 」

 

「各々、己が成すべき事を成せ。 時は有限でありまた足も速い、我等が思うよりもずっと……のぉ。背に負った数字の重さ、袖を通した羽織の意味、それが飾りで無い事を示すのは言葉ではなく行動のみ。我等は皆、それを成したからこそ今この場に立っておる。過去の己と未来の己、どちらにも恥じること無い今を成せ。以上じゃ 」

 

 

先遣隊への帰還命令と各隊への命令を発した元柳斎は、杖の先で強かに床を打つ。

カンという乾いた音が響き、それが隊首会の終わりを告げた。

各隊長はそれぞれ命じられた任務を帯びて隊舎へと戻り、それぞれに隊士へと檄を飛ばすことだろう。

織姫の一件は良くも悪くも尸魂界側に緊張を齎した。

藍染による何かしらの目的が見える行動、侵攻に際し確認された破面の完成度、それが示す崩玉の覚醒時期のズレと決戦の早まり、予想外では無いが心構えが出来ていない死神が多い中、この元柳斎の命令に僅かだが尸魂界全体が浮き足立ったように感じられた。

 

だがその中にあって護廷十三隊の隊長達にはそんな様子は微塵も見えない。

そして彼等がしっかりと地に足をつけ、立っている事によりこの浮き足立った雰囲気は思うよりも早く治まる事だろう。

彼等の存在、たった十三人の存在がそれだけ多く影響を及ぼす、それだけ彼等が埒外な存在である事を証明するかのようだった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「退け、恋次、ルキア。 手向かえば拘束してでも連れ帰るよう、命を受けている」

 

 

現世、空座町の一角にあるアパートの一室、そこに集まった死神達の背後に開いた穿界門の中に立つ人物は、鷹揚少なくそう口にした。

 

日番谷 冬獅郎によりこの一室に集められた先遣隊の面々、彼等の前に据えつけられた部屋の上下左右いっぱいの、何処か有機的な画面に映し出されたのは、山本元柳斎 重國の姿だった。

そして語られたのは今回の破面侵攻に際し、敵の戦闘準備が整いつつあるとの判断が下され、先遣隊の即時帰還と尸魂界の守護の任に付くようにとの命ともう一つ。

井上 織姫が行方不明であり、またそれが拉致、或いは裏切りの可能性があるというものだった。

 

この言葉に即座に否を叫んだのは朽木 ルキア。

織姫とはこの場に居る誰よりも親密であり、また友である彼女が尸魂界を裏切り、藍染に付く筈が無いと叫ぶルキアの声には、相手が元柳斎であるにも拘らず、友を侮辱されたかのような怒りすら僅かに浮かんでいた。

そして即時織姫救出を打診したルキアと、彼女に同意した阿散井恋次の言葉を元柳斎はただ一言、ならぬ、と斬り捨てた。

 

 

だがなお食い下がるルキアと恋次に、先程の声は降ったのだ。

 

 

「ッ! 隊長…… !? 」

 

 

そう、振り返った恋次とルキアの視界が捉えたのは、自分の上司でありまた自らの兄である人物、朽木白哉の姿だった。

簡潔に語られた白哉の言葉、しかしだからこそその言葉には重さが感じられる。

手向かえば拘束する、それが脅しの類では無いと感じさせるだけの重さが、そこには確かに感じられるのだ。

だがそれでも、友を思い逸るこころは易々とは止まらない。

 

 

「しかし兄様! 井上が私たちを裏切るなどあるはずがありません!破面に連れ去られたに決まっています! 」

 

「今はお前とそれについて論ずる時では無い 」

 

「ですがッ!! 」

 

 

普段ルキアがここまで白哉に対して食い下がるような事は無い。

もともと血の繋がらない兄妹であり、つい最近までルキアは自分は白哉の妻、緋真に似ていたから拾われただけだと思っていた彼女、負い目や引け目、そういったものが彼女を白哉の前で萎縮させていたのだろう。

だがそれも誤解だとわかり、拙いながら兄妹として新たに踏み出した二人ではあったが、積み重ねたものがそう易々と覆るはずも無く。

それを鑑みてもこうしてルキアが声を荒げてまで白哉に食い下がる事は、非常に珍しいこと。

そしてそれだけルキアが真剣であり、友である織姫を心底気にかけている事の証明とも言える。

 

だが白哉はそれすらも冷徹なまでに突き放した。

織姫が裏切ったのかそれとも違うのか、それを今この場で論じたところで意味は無く、また今はその時でもないとする白哉の言葉。

彼の言葉に間違いは無い、何より今の感情でものを語っているルキアとでは議論にすらならないだろう。

真剣であるが故に目が曇る、そして感情だけで行動すればそれは往々にしてよい結果は生まないと。

 

 

「囀るな、ルキア。 未だ力足らぬお前では、あの娘を救うことも、何よりこの場を押し通ることも出来はしない」

 

「ッ! 」

 

 

そう、どれだけルキアが叫んだとて、状況が彼女にとって良い方に転ぶ事は無い。

まずもって組織とは命令が全てであり、縦型の組織である護廷十三隊もその例に漏れない。

もし命令が不服だと言うのならば処罰覚悟で自分の意思を押し通す、という事も出来なくは無いだろうが、ルキアにはそれが出来るだけの力が今はまだない。

白哉の言葉にルキアはつい先日の己と、ある男の言葉を思い出していた。

 

 

“アンタあそこで本当に自分に何か出来る…… とでも思てんのか? ”

 

 

一護と破面が戦う最中出合った男、その男が的確に突き刺した言葉、だがそれが今のルキアの現状。

圧倒的に伴わない。

同じ戦場を駆けるには、友として仲間として傍らに立ち、背を護りあうには“力が”圧倒的に伴わない。

それは彼女が弱いという訳ではなく、黒崎 一護という彼女の友が尋常ならざる成長を遂げた為ではあるのだが、片方が突出してしまえば結局のところ戦場ではその突出した戦力こそが“普通”になってしまう。

一般的に弱くは無い、寧ろ強者の類に入りはするがしかし、これからの戦場に立つには足りない、それがルキアの現状なのだ。

 

白哉の言葉にただ押し黙る事しかできないルキア。

それは彼女が誰よりも理解しているからなのだろう、自分の力を、自分と一護、そして目の前に立つ兄との力の差を。

歯痒さがルキアのうちに溢れ、溢れたものは頬を伝う。

悔しい、申し訳ない、友の為に駆ける事も、友を思い戦うことも、何も出来ない自分があまりにも情けなく、ルキアはただ俯き拳を握り締める。

 

ルキアの背を眉間に皺を寄せて見つめる恋次は、彼女の肩に伸ばしかけた手を止め、そして彼女と同じように強く握り締めた。

下手な慰めなど意味が無い、それはきっと彼の経験から来るもので、何より慰めなど彼女は求めていないだろうと。

結局のところルキアが抱えた問題は、彼女自身がどうするべきか(・・・・・・・)という答えを出すより他なく。

恋次に出来る事といえばただ彼女がここで折れる筈が無いと信じることだけ。

ルキア同様歯痒さを感じながら、急激に加速し始めた状況の中、自分に出来る事をするだけだと気持ちを切り替えるよりなかった。

 

 

両名に叛意無し、と見咎めた白哉は僅かに横へと動き、二人を穿界門へと入るよう促す。

言葉無く、肩を落として横を通り過ぎる妹に白哉は声をかけることも、そして一瞥もくれる事は無い。

今彼はこの場に護廷十三隊六番隊隊長として命を受けて立っており、それは兄と妹という関係よりも重いのだ。

誰よりも規範正しく、正一位の大貴族、その当主であるからこそ誰よりも自分は掟を守る必要がある。

嘗てよりは柔軟になったとはいえ、頑なに己を律し続けた白哉の基礎はそう変わらないのだろう。

何よりこれで妹が諦めてくれれば彼としても安心なのだ、彼にとってルキアの存在は今は亡き妻との約束そのもの、護るという誓いの為にはルキアが戦場に近付かぬ事は望むべき事なのだ。

 

ルキアが横を通り過ぎ、穿界門の奥へと消えると、白哉は僅かに瞑目する。

これでよかったのだと、例えルキアにとっては残酷な言葉だったとしても、それで妹を守れるのならばそれでいいのだと。

誓いのため、何よりルキア自身の為ならば、もしそれで自分が恨まれようともどうという事は無い、泥だろうとなんだろうと望んで被ってやろうとする白哉の覚悟。

 

 

だが人とは、人の意志の強さとは、時に彼の思惑をも上回る。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「お願い致します! 」

 

「………… 」

 

 

 

叫ばれる声は必死の思いを滲ませ、その声の主を白哉は眉をしかめて見下ろしていた。

 

 

ルキア、恋次を伴って瀞霊廷へと帰還した白哉。

おそらく問題は無いだろうが、それでも井上織姫との縁が深い二人なだけに感情に任せた行動をしないとも限らない、という事からルキアと恋次の両名は当分自宅での謹慎を言い渡された。

その後、恋次は自宅では鍛錬が出来ないとの言い分もあり隊舎へと、ルキアは朽木本家へと数名の隊士を伴って移動した。

 

白哉はその姿を見届けると、隊舎へと戻り元柳斎からの命である担当地区の警戒強化、及び二番隊、四番隊との連携体制を詰め、主だった席官に指示を出した後、緊急対応とは別の政務一切を終えた後、屋敷への帰路につく。

隊舎に詰める事も考えたが、ルキアが本家へと移されどういった様子か位は彼もその眼で確かめたかったのだろう。

時刻は既に夕刻と呼ぶには日が落ち、あたりは夜の帳に包まれつつあった。

 

時に朽木家の屋敷は大きい。

敷地が広い事は言うまでも無く、その広さに見合った屋敷と庭園が見事と言うより他無い景観を織り成している。

流石は正一位の大貴族、屋敷をただ眺めただけでも雅を感じさせるものだ。

 

閑話休題。

屋敷へと戻った白哉は、広い邸内を悠然と歩き私室へと向かう。

朽木家の当主たる白哉の私室ともなれば、そう易々と使用人その他が近づける場所でもなく、結果近付けば近づくほど人気は無くなっていった。

だが今日この日に限ってはそうでもなく、人の気配を感じながら歩く白哉は、霊圧からその人物が誰か理解して尚、その行く足に些かの淀みも見せなかった。

 

 

「何をしている 」

 

 

白哉の私室の障子戸に面した廊下、その真ん中で叩頭する人物に、白哉は足を止め問いかける。

無視して私室に入ってしまうことも出来ただろうが、おそらくそうしたとてこの人物がこの場を動くことが無い事は容易に想像できた。

何か余程の事が無い限りこの人物がこんな事をすることは無い。

何故なら彼女がこうして白哉の私室に自ら、それも一人だけで足を運ぶなど今まで無かった事なのだから。

 

 

「私はお前に、ここで何をしていると訊いている。ルキア 」

 

 

そう、ある意味これ見よがしに廊下の真ん中で叩頭しているのはルキア。

もとからそう大きくない体格の彼女ではあるが、こうしていると余計に小さく見える。

白哉はそんな小さな姿のルキアを見下ろしながら、再度問いかけた、何をしていると。

こんな所でそんな風に頭を下げ、お前は一体何がしたいのだと。

 

 

「……お願いが、御座います 」

 

「願い、だと……? 」

 

 

頭を低く下げたままルキアは言う、願いがあると。

その言葉に訝しげな白哉、元来ルキアは白哉に対して願いといった何かを望むような事は少ない。

負い目や引け目、劣等感、そういったものが彼女の中には確かにあり、それが白哉に対し、願いとして何かを要求する事を憚らせていたのだろう。

だが今、彼女はそんな思いすらかなぐり捨てこうして白夜の前で頭を下げている。

そんなルキアの姿に白哉は若干の困惑と、彼女の強い決意じみた思いを感じていた。

 

そして彼女の口から告げられた願いは、白哉からすれば望まないものだった。

 

 

 

「私に…… どうか私に剣を御教授(・・・・・)くださいッ!」

 

 

 

ルキアの願いとは何も難しい事ではなかった。

剣を教えてくれ。

自らの兄でありまた護廷十三隊の隊長を務め、尸魂界においても屈指の実力者である白哉、その彼に教えを請う事はそうおかしな事ではない。

だがそんなルキアの言葉に白哉の眉間の皺は一層深くなった。

 

 

「浅薄…… 力、武とは一朝一夕に成るものでは無い。それすら解さぬ者に剣を説こうと死期を早めるに過ぎない。頭を冷やすことだ 」

 

 

まさに一蹴。

ルキアの願いを一刀両断にバッサリと斬り捨てた白哉。

大方織姫の件で己の未熟さ、力の不足を意識し、それを解消するためにと剣の教えを請うたのだろうと。

だがそれはあまりに浅慮である浅はか、ただ剣の教えを受けたところでその瞬間に力が増す、などという事はありえない。

力とは、それを扱う武とは白哉の言ったとおり一朝一夕に身に付くものではなく、寧ろ日々と年月の積み重ねこそがいつの日か“武”と呼ばれるものへと昇華するのだ。

その日々の歳月を跳び越える事は容易ではなく、それが出来るのはほんの一握りの存在、例を上げればまさに一護のような特別な存在だけ。

そしてルキアはその特別な存在と呼ぶには足りず、結果ただ白哉に教えを請うたとて意味は無い。

結局のところ焦り、焦燥を己のうちに溜め込んだ末の浅い考えであり、そんな考えの下で身に付けた力は所詮付け焼刃、そしてそんなものは転じて己に災いを齎すだけで、死期を早めるに過ぎないと。

最早語る価値なし、そう判断した白哉はルキアから視線を外し、私室への障子戸に手をかける。

優しく諭す事などきっとこの不器用そのものである男には出来ず、結果冷たくあしらうしか手段は無いのだろうが、今はそれでいいと思う白哉だったが、彼がその指に力を込めるより早くルキアは言葉を続けた。

 

 

判っています(・・・・・・)。 もし仮に兄様に剣を御教授頂けても、私程度の者にそう易々と力は付かぬ事は…… 」

 

 

頭を下げ、叩頭の姿勢を崩さずしかし、ルキアの声は良く通った。

判っていると、ただ剣の教えを請い、技術を身につけられたとしても、それだけであの破面達と対等以上に渡り合えるほどの力は得られないと。

武とは一朝一夕に成るものでは無い、という白哉の言葉は痛いほど、ここ数日目の当たりにした光景と己を鑑みて嫌という程理解していると。

ルキアはそう言うのだ。

 

 

「……では、何故お前は私に教えを…… いや、戦う力を求める」

 

 

障子に手をかけたまま、ルキアに問いを投げる白哉。

もし仮にその答えが彼を満足させるだけのもので無かったら、彼は無言で私室へと入ってしまうことだろう。

いわばこれは最初で最後の好機、ルキアにとっては分水嶺であり正念場。

己の意思を通せるか否かの正念場なのだ。

 

 

誓った(・・・)のです。 あの日、破面との戦いでボロボロになった一護の前で私は誓ったのです。強くなると。 時も、可能性も僅かであったとしても、私は強くあろうとする事を止めないと」

 

 

それはあの日、一護がグリムジョーの一撃によって沈んだあの日彼女が立てた誓い。

強くなると、ただ強い力を求めたのではなく、誓いを果すために力を望んだ彼女。

力が目的ではなく力を手段とし、その可能性が、残された時が、それらが例え僅かしかなかったとしても、その僅かな時の中でも決して立ち止まらないというルキアの誓い。

それが今彼女をこの場に押したのだ。

僅かな、毛先ほど僅かな可能性でも、それが無駄に終わろうとも、それでも強くあろうとする彼女の誓いがこの場で白哉へと向けられた意思の正体なのだ。

 

 

「誓ったのです。 もう決して立ち止まらないと。戦場に向かう友の背を見送る事だけはしないと!私は未だ己が力の何たるかの解すら持たぬ未熟者なれど、歩む事は…… 突き立てた誓い諦める事はしたくはありません!」

 

「………… 」

 

 

友との力の差を目の当たりにし、歯噛みし、それにも増して情けなさを感じ、しかし卑屈にそれを受け止めるのではない。

届かないと決まった訳では無いと、本当に怖ろしいのは己の中でその力の差に諦め(・・)を感じてしまうことで、そうしてその場に立ち尽くし、遠くなる友の背を見送る事なのだと。

 

故に誓うと、決して立ち止まらず、強くあろうとする事を。

 

 

「……その誓い、黒崎 一護の為か? 」

 

「違います。 この誓いは私が私自身に…… 私がただ私の魂に立てた誓い(・・・・・・・・・)です」

 

「……そうか 」

 

 

白哉は問う、お前の言う誓いとは友の為の、黒崎一護の為の誓いかと。

だがルキアはそれを否定した。

誓いとは、誰かの為ではなく己の為に、己が己の中に突き立てる己自身との契約に他ならない。

結果として誰かに波及する事はあっても、それはあくまで結果であって誓いを交わすのは常に己。

そして初めてルキアは叩頭した姿勢から頭を上げ、見上げるようにして白哉へとまっすぐに視線を向けて言うのだ。

 

“ただ自分の魂に誓う”と。

 

この場で初めて二人の眼が合う。

真っ直ぐで迷いの無い見上げる視線と、語られた覚悟を推し量る様に見下ろす視線。

そんなルキアの言葉と視線に白哉は内心、良く似た事を言う、と思いながら嘗て自分と相対した時の恋次、そして一護の姿をルキアに重ねていた。

白哉と恋次そして一護、互いに己が信じるもののため道を違え、しかし相対した両者に迷いは見えなかった。

それはきっと彼等の中に迷い無く、そしてぶれる事無く突き立てられた誓いゆえだったのだろう。

他者が自分に求める姿ではなく、自分がどうしたいか(・・・・・・・・・)という己の意思、それをただ一心に貫けるかどうか、誓いとはその迷いの無さでありそれこそが真に力として発露するのだ。

 

 

「お願い致します! 」

 

「…………」

 

 

叫ぶようにして再び頭を下げたルキア。

彼女に出来るのはもうただ一心に願う事だけ。

現状を打破するためには何か、何かしなければとし、こうして頭を下げる彼女。

望みは薄い、万一望みが叶ったとしてその結果もまた、彼女が望むものになるとも限らない。

だがそれでも、歩みを止めぬと誓った彼女に迷いはもうない。

今はただ己に出来る精一杯を、出来る全てを尽くす事を、それをただ全うするのみと。

 

 

「用向はそれだけか? 」

 

「ッ! 」

 

 

懇願するルキアの耳に届いたのは、そんな白哉の言葉と障子戸がスッと開いた音だった。

それは静かだがしかし明確な終わりの音、拒否、拒絶の音。

ビクリとルキアの肩が震える。

もともと望みは薄く、願いが聞き届けられる可能性も低かった、だがそれでもと意を決した彼女ではあったがやはり、現実は甘くは無かった。

頭を下げたままクッと歯噛みするルキアは、それでも尚、諦める事はしない。

 

 

「兄様! どうかッ! どうかッ! 」

 

 

彼女に出来るのは最早誠心誠意頭を下げる事だけ。

どれだけ言葉を尽くそうともそこに意味が無い以上、彼女に出来るのはこれだけなのだ。

 

 

「くどい。 お前と私では剣に求めるものが違う(・・・・・・・・・・)。そして私の後をなぞったとて、それはお前の剣(・・・・)ではなく、私の剣の二番煎じ(・・・・・・・・)に過ぎない。なにより、お前一人に充分な時を割けるほど、私の負った責は軽くは無い…… 」

 

「ッ! 」

 

 

それでも、彼女の望みは届かなかった。

白哉は言うのだ、ルキアと自分では剣に求めるものが違う、と。

それが何を意味するのか、ルキアには見当が付かないがしかしそれに続いた言葉は、彼女にも判った。

二番煎じ、彼女の中にある強者の偶像、それはやはり兄である朽木白哉なのだろう。

故に彼女は真っ先に彼に剣の師事を仰いだ、己の中の強者に近付く、それが彼女の誓いを果す為の力を得るためにもっとも早いと、彼女自身が無意識にもそう思っていたのだろう。

 

だがそれは“朽木 ルキアの剣を極める”事ではなく、“朽木白哉の剣を極める”事だったのではないか?

 

ルキアすら気付いていなかったそれを白哉は見抜き、そしてそれを二番煎じと切って捨てた。

武の極み、頂を目指すとき、どれだけ早く駆けて後を追ったとて先達が切り開き、踏みしめ踏み固めた道をなぞるだけでは、いつまで経ってもその道の先駆者を追い越す事など出来ない。

ルキアにはルキアの、白哉には白哉の道があり、それを見つけることが力を手にする第一歩だと、白哉は言外に語るのだ。

何より今は平時ではなく戦時、白哉が負う責任はただの隊士とは比べ物にならないほど重く、それを蔑ろにしてルキアに剣を教えるなど出来る訳が無いと語る白哉。

どれもが正論、それだけにもうルキアに言い返す言葉は無い。

ルキアの顔が悲痛さを浮かべしかし、白哉の言葉には続きがあった。

 

 

「……ルキア、朽木家の霊廟の場所は知っているな?」

 

「ハイ…… 」

 

 

唐突に話題を変えた白哉、それに消沈した声で答えたルキア。

霊廟、特定の個人または一族の祖先たちを祀る墓所の事であり、ただ墓があるだけではなく社などの建造物や広い敷地を伴う場所。

ここで言う特定の個人または一族とは、無論朽木家の事であり、朽木本家が代々当主やそれに列する者たちを葬り祀っている場所である。

何故白哉が突然この場所について語ったのか、ルキアには推し量る事は出来なかったが、訝しむ雰囲気を見せるルキアを他所に、白哉は更に言葉を続ける。

 

 

「では当主としてお前には今より朽木本家ではなく、朽木家霊廟にての謹慎を命ずる。時が惜しい、今より即刻向かうがいい 」

 

「なッ!? 兄様、それは一体!? 」

 

 

何とも要領を得ない言葉、本家ではなく何故霊廟なのか、ルキアが驚きのあまり顔を上げてしまうのも無理は無いだろう。

朽木本家は広い敷地を有し、当然の様に練武場といった訓練施設も敷地内に備えている。

対して霊廟はあくまで墓所であり、確かに朽木家の所有地という事で他とは比べ物にならないほど広くはあるが、ルキアが望むような己を磨ける場所がそうあるとも思えない。

最早白哉が再び自分を戦地から遠ざけようとしているのか、という疑いすら浮かびそうになるほどルキアにとって彼の言葉は不可解に過ぎた。

それだけは避けまいと声を上ようとしたルキアだったが、しかしそれは遮られる。

 

 

「私は時が惜しい(・・・・・)、と言った。最早語ることは無い 」

 

 

これ以上の問答は不要、白哉の言葉にルキアは何とも悔しく遣る瀬無い表情を見せる。

それはもうこうして自分が彼の脚を止める事で、彼の時間が失われるのが惜しいという発言からか、或いはもっと単純に、やはり自分は彼にとって“その程度の存在”にしかなれないのか、という思いからか。

何とも不甲斐ない、そんなルキアの内心を察してか知らずか、白哉は私室へと歩を進めながら最後にこう口にした。

 

 

 

「霊廟には一人、墓守り(・・・)が居る。私に比べれば幾分、暇を持て余している事だろう…… 」

 

 

 

言葉が終わりルキアが疑問を発するより早く、パタンと静かな音を立てて障子は閉められた。

廊下には一人残されたルキア、まったくもって不可解極まりない白哉の言葉だけが彼女に残されたもの。

墓守り、それが何を、いや誰を指すのかルキアにはまったく予想できなかったが、それでも白哉が当主として発した命令を蔑ろにする事も出来ず、ルキアはただ打ちのめされた気持ちと不安、しかしその奥で未だ折れない誓いを持って朽木家の霊廟へと向かった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

朽木家の霊廟は思ったとおり閑散としていた。

なまじ広い敷地、あるのはよく手入れの行き届いた木々と玉砂利、石畳の回廊、人気が皆無であるが故にその印象はより強くなるだろう。

だがそれも当然、ここは死者の魂を安らかに祀る場所であり、喧騒とは無縁であるべき場所。

時刻は既に夜の帳が降り切り、月明かりによって照らされた社は何とも冷たく無機質な印象をルキアに与えた。

 

 

(兄様は一体ここで私に何をしろと言うのだ…… いや、する事など決まっている。 兄様のご教授を受けられずとも、私は私に出来る精一杯で誓いを果すのみだ!)

 

 

場所も何も関係は無い、あるのはただ何をおいても己の立てた誓いを、それを果そうとする意思。

それがなければ全ては始まらず、また何を残す事も手にする事も出来ない。

ルキアにとってある意味好都合だったのは、この場に誰も居ない事。

ただ修練に没頭する、という環境としては朽木本家よりこの霊廟の方がおそらく優れてはいるだろう事だ。

無論、ここには白哉の言う墓守りが一人居るのだが、一人位ならば居てもいなくても同じ事と、ルキアは状況を良い方に捉える事にした。

 

 

 

「これはこれは、こんな時間に客人とは珍しい事もあったものじゃ」

 

「ッ!? 」

 

 

声はルキアの背後から。

慌てて身を翻して飛退いたルキアは、腰を落とし刀へと手を伸ばす。

何も感じなかったのだ、背後という人体の死角、そして死角であればこそ人は無意識にそちらを警戒している。

ただの一般人ですら背後に近付く気配を察する事が出来るのだ、戦いに身を置く死神ならばそれがより顕著である事は言うまでもない。

しかし、ルキアは背後から声をかけられるまで一切その存在を感知出来ていなかったのだ。

戦闘時ほどでは無いにしろ油断があった訳では無い、それでも尚背後を取られた事は、ルキアにその後の対応を最大限の警戒にさせるに充分だった。

声の主は月光に照らされた木の影に立ち、足下だけしか見えない。

 

 

「貴様、何者だ! 」

 

 

眼前の敵を注視しながら、いつでも刀を抜き放てるよう身構えるルキア。

僅かに照らされてる足下は草履に足袋、黒い着物は死覇装のようにも見えるが、その全貌は想像出来ない。

声は老人のものだが張りがあり、年を経た重たさを存分に感じさせながら、まだまだ若々しさを感じさせる。

 

 

「ただの墓守り(・・・)じゃよ。 もう随分と前から隠居の身じゃからのぉ」

 

 

ルキアの警戒を他所に墓守りと名乗った老人は、自然体だった。

凛々しくはあるがあくまで気さく、威厳を感じさせるがそれでいて気圧されるような感覚は無い。

眉をしかめるルキアだったが、木の影から一歩一歩進み出てきた老人の姿が顕になっていくと、その顔は驚きに染まっていく。

 

 

「まさか…… 貴方は…… 」

 

 

顕となった老人の姿。

老齢にしては背筋がシャンとしたその立ち姿。

白い長髪と蓄えられた口髭が、どこか凛々しい印象を見るものに与えていた。

その凛々しさはおそらく目元、涼やかで深い、ルキアからするとよく見知ったその目元は、きっと他人の空似ではないだろう。

腕を組み、月光に照らされたその老人の姿を見てルキアはただ呟いた。

 

 

 

「朽木…… 銀嶺、様…… 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大いなる頂

 

白に染めよ

 

 

光陰

 

契約

 

理性と感情

 

 

 

 

 




え~前回の投稿より大体2ヶ月が経過しました。
申し訳ない。

暇を見つけては書く、の繰り返しだと安定しませんね。
内容的には事後処理とルキアの成長(?)フラグといった所でしょうか。
原作ではあまり出番がない銀嶺、それをいいことに登場させ、いいように動いてもらう予定です。

ではまた。

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