BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

22 / 106
BLEACH El fuego no se apaga.extara1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は空を見上げる

 

果てない高みを夢見るが故

 

私は翼をはためかす

 

空の飛び方を忘れぬように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諸君お初にお目にかかる、吾輩の名はドルドーニ。

全ての女性(フェメニーノ)の従属官にして虚夜宮、いや虚圏一の伊達男!

抱かれたい破面ランキング1位!(自称)違いの解る男!紳士 OF 紳士!

第6十刃(セスタ・エスパーダ) ドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオであ~~~る。

 

突然だが本日は吾輩の華麗で優雅な一日というものを諸君に特別にお見せしよう。

吾輩のように優雅でどこか渋さ漂う立派な紳士を目指すそこの君!!

その目を皿のように見開いて吾輩の一挙手一投足を見逃さぬようその目に、そして記憶に!魂に焼き付けたまえよ!

 

 

吾輩の一日、それは優雅な一杯の紅茶から始まる。

虚夜宮の天蓋、偽りの空というのは少々無粋な感もあるが吾輩の瞳にはしっかりとその天蓋の向こう、全てを飲み込んで余りあるような虚圏の暗く深い夜空が写っているので心配など無用さ!

そうして空を眺めている間に我が宮殿、第6宮の下官が紅茶を運んできた。

その下官はもちろん女性だ、朝から男のむさ苦しい顔など見ては一日陰鬱に過ごさねばなるまい?

 

 

「ありがとう。美しい小鳥(アーベ)ちゃん、どうだい?このまま吾輩と優雅なお茶の時間をすごさないかい?」

 

 

紅茶を持ってきてくれた美しい小鳥ちゃんをお茶に誘う。

一人で飲む紅茶もいいが、目の前に美しい女性がいた方がイイに決まっているだろう?

しかし小鳥ちゃんはといえば吾輩と目を合わせることも無く、しかもどこか冷たい目で吾輩を一瞥するとそそくさと出て行ってしまった……

 

さ・て・は・ 吾輩のあまりの凛々しさとお茶の誘いに気が動転し、なんと答えていいか判らず部屋を飛び出してしまったんだね小鳥ちゃん!

なんという初心! 恥ずかしがり屋さんの小鳥ちゃんだ…… その恥ずかしさを誤魔化すためにあえて、あ・え・て・あんな目をしてしまったんだね、嗚呼吾輩はなんと罪作りな男なのだ…… また一人女性のハートを射止めてしまったよ。

 

 

さてお茶の時間も終わった、次は何をしようか……

うん? 仕事は無いのかと?まぁあることはあるのだがね…… 十刃の仕事は『戦う事』さ。

故に藍染様よりご命令が無い限りは、こうして待機するより他選択肢など無いのだよ。

かといってだらだらと一日を過ごすのは紳士の道に反する、常に華麗で優雅な吾輩に暇な時間など無いのだ!ではどうするか……

そうだ! 今日は特別に君たちに吾輩の”弟子(アプレンディス)”を紹介しようではないか!

いやなに先日それはもう美しい淑女と出会う誉を得たのだが、その際に拾ってきた破面、残念ながら男だがなかなかどうして見所のある者だったのだよ。

それ故この吾輩が直々に鍛えてやろうと考えたのだ、しかしこの破面がまたじゃじゃ馬、いや暴れ牛、いやいや野生の獣のような男でねぇ……

この吾輩の弟子にならないか? と誘ってみれば壁を蹴破って帰ってしまう始末、さすがにあの壁を修理していたときは惨めだったよ……

 

しか~し!!

 

その程度で諦めるほど吾輩のハートは脆くない!例え同じ十刃の虚閃の直撃を受けようとも吾輩のこの燃えるハートを壊すことは出来ないのだよ!!

ではそろそろ吾輩の弟子である破面、グリムジョー・ジャガージャックの元へ行こうではないか!

 

 

 

 

 

 

「やぁ我が弟子 グリムジョー! 君が尊敬して止まないであろう師匠(マエストゥロ)である吾輩、紳士(セニョ~ル)ドルドーニが来てやったぞ!」

 

「……チッ、またウルセェのが…… 」

 

 

アレこそが吾輩の弟子グリムジョーだ。

どうだいなかなか良い面構えをしているだろう?ま、吾輩の甘いマスクには遠く及ばんがね!

それにしても師匠を前にして舌打ちとは…… まだまだ反抗的な態度だ、年長者に対する敬いというものがないよまったく。

だがしかし!それすらも許容する吾輩の器の大きさ!コレこそが我輩の紳士たる所以といってもいい!

 

まぁそれはさておき、吾輩は彼に何か特別な事を教えているわけではない、ただ戦うだけさ。

なに? それの何処が師匠かと? ノ~ン、ノ~ン、ノ~ン、言葉で教えながら手取り足取り教えた事など戦場ではまったくの無意味さ、戦いの中で編み出したもの、身に付けたものだけが真に戦場で意味を持つのだよ。

 

 

「では行くぞ! 我が弟子よ!」

 

「ウルセェんだよ! 弟子になった覚えは無ぇ!!」

 

「まだ言うか! 人にものを教わるのは恥ずかしい事ではないぞ!いい加減吾輩を”師匠”と呼びたまえ!!」

 

「誰が呼ぶか! 変態がぁぁああ!!」

 

 

彼、グリムジョーのいいところはその苛烈なまでの攻撃性と貪欲な姿勢、いうなれば野心、ある意味吾輩に共通する部分ではある。

だが彼の悪いところは素直でないところ、いい加減吾輩の事を師匠と呼んでくれてもいいだろうに、まったく。

確かに、いきなり彼の前に現れて吾輩が師匠だと言ったときの、彼のまるで道端のゴミでも見るような視線は今も忘れられんが…… それはまぁいいか。

それにしても最近はやるようになった…… 師匠として感慨深いものがある。

だがまだまだ、そう易々と超えられる訳にはいかんのでね、ほんのチョットだけ本気で相手をしてやろうではないか!

フハハハハ! 受けてみるがいい! この完璧なる肉体美より繰り出される華麗なる脚技と剣技の乱舞を!!!

 

 

 

 

 

「ふぅ、では今日はこの辺で終わりにするとしようか。次に吾輩が遊び…… ゲフン、ゲフン。 “稽古”を付けにくるまでにはもう少しはマシになっておきたまえよ。ではアディオス!我が弟子よ~~ 」

 

「グッ…… クソがぁ……」

 

 

いやはやなんとも、大人気なく少々本気でやりすぎてしまったか、弟子は砂漠に這い蹲っているよ。

それなりにやるようにはなったがまだ吾輩の前に立つには足りないな。

 

しかし考えてみれば吾輩もおかしなことをしているものだ、吾輩を倒し第6十刃の席を奪うと私の目の前で宣言したこの男を鍛えている、というのだからねぇ。

何れ来るその戦いが愉しみでその為に、最高の戦いの為に敵になるであろう者を鍛える……か……

きっとあの美しい淑女(セニョリータ) も同じような思いを抱いているのだろうか・・・・・・

 

 

……はっ! もしやこれは共通の話題を手始めにした恋の予感なのか!?

それならば僥倖、彼を拾ったのは成功だったな!如何に熱い戦いをしていたといっても小汚い若造を助けるのは正直微妙な心持ではあったが、今となってはやはり吾輩といったところか。

吾輩自身意図せぬところで実は吾輩と美しい淑女にこんな共通項が生まれていようとは…… 吾輩ったら吾輩が怖い。

待っていてください美しい淑女、もう直ぐ貴方のドルドーニがお傍に参りますよ~~。

 

 

 

 

 

さて、弟子に修行をつけてやった後はシャワータイムだ。

汗臭いままでは女性に嫌われてしまうだろう?

さすがに此処はお見せする訳にはいかない、それはもういろんな意味でダメだからね。

では暫し失礼するよ。

まぁその間暇だろうから、吾輩の美声を聞きながら待っていてくれ給え。

 

 

「ん、ん~。 あ~あ~…… ジャーーーン、ジャンジャジャン、ジャジャンジャーーン、フンフフンフーン、フフンハーーン、フフーっ!!痛い!シャンプーが目に! 目に入ってしまった!痛い!地味に痛い!染みる~!百歩譲って痛いのはいいが地味なのはいや~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

やぁ、諸君お待たせしたね。

え? 目は大丈夫かだって?

何を言っているんだい?吾輩がシャンプーが目に入って地味に悶えるなどという無様を曝す訳が無いじゃないかぁ。

吾輩は泣く子が更に泣く十刃だよ? 幾らなんでもそんな馬鹿な話ないさ。

本当だよ? 吾輩いつも現世のシャンプーハットなる装備を装着してシャワーを浴びるからね!これホントだからね!ホ、ホントなんだからね!

 

……まぁいい、これからは宮殿とその周辺の見回りだ。

こんな事は十刃の仕事ではなく従属官の仕事なのだがあいにく吾輩に従属官は居ないのでね。

何故かって? 男の従属官などむさ苦しいだけでダメさ!なら女性ならばどうか、と?チッ、チッ、チ、解っていないね。

女性を従属官などと縛りつけるなんて事は吾輩の道に、紳士の行いに反するのさ。

 

覚えておきたまえ、女性は縛るものでなく愛でるものなのだよ。

 

 

 

「やぁ美しいお花(フロール)ちゃん、今日も一段と美しい…… どうだい吾輩とお茶でも……」

 

「また会ったね美しい小鳥(アーベ)ちゃん。日に二度も会うとはまさに奇跡としか言いようが無い、という事で吾輩とお茶を…… 」

 

「これはこれは美しい子猫(ガート)ちゃん、気まぐれついでに吾輩とお茶…… 」

 

 

……言っておくがこれはあくまでコミュニケーションの一環だからね?

決してやましい気持ちがあるとか、綺麗な女性とお茶がしたいとか、お近づきになりたいとかそういう不純な動機からじゃないからね?

現に声を掛けた全ての女性から「ごめんなさい」って言われてるんだからね……

 

しかし吾輩諦めない!

眼からしょっぱい水が流れていたって吾輩気にしない!

第6十刃の地位を使えば女性を従わせる事もできる、だがそんなものは下衆の行いさ。

吾輩は紳士、力で従わせるなどという無粋は許容出来る訳が無い!

あくまで女性の為に生きる男! いや紳士!それが吾輩ドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオ!頑張れ吾輩!負けるな吾輩!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて見回りも終わった。

此処からは吾輩の鍛錬の時間なのだが……

申し訳ないが此処から先を見せる訳にはいかないのだ。

別に実力を隠したいだとか、秘密の特訓をしているだとかそんな理由ではないのだが、駄目なのだ。

それは何故か、と? ふむ、では一つ訊こう。

 

君たちは白鳥という鳥を知っているかい? 白く、大きく、そして優雅な美しい鳥だ。

白い翼は光を浴び煌くように輝き、両翼を広げ空を飛ぶ姿は美しく、そしてどこか雄々しさすら感じさせる。

そして水に浮かぶその姿はまさに”優雅”という言葉が具現したかの如く、見るものを離さない惹きつける様な魅力を感じさせるのだ。

 

だが知っているかい?

彼等はその優雅に水に浮かんだ姿と裏腹に、その水の下では必死にその足を動かし水を掻いているのだよ。

一見彼等は優雅そのものだろう、しかし見えぬ位置では、水の下では必死にその足で水を掻き、沈まぬようそして溺れぬように足掻いているのだ、その必死さを微塵も見せずに……ね。

 

吾輩はそうありたいと思う。

 

努力する姿や、泥にまみれる姿が無様だとは言わない。

ただ彼等にとっての“美しい姿”とは、我等にとっての“強き姿”と同義なのだよ。

強者は自分が如何に努力したという事を口には出さない、なぜならそれは当然の事なのだよ。

やって当たり前、強くなるには、そして強いままで居る(・・・・・・・)にはそれは当然なのだよ。

彼等白鳥にしてもそれは同じさ、水面下で足掻くのは当然の行為、その足を止めれば沈んでしまうのだ、深い深い水底へと……。

 

吾輩はまだ沈む訳にはいかんのでね、吾輩はあの者を待たねばいかんのだよ、あの者が目の前に来るその時まで十刃の椅子に座り続けていなければならないのさ。

 

あの者は、グリムジョーは確実に強くなっている。

それなのに吾輩が弱くなっては話にならんだろう?

血を吐くほどの鍛錬を重ねようとも、あの者の前ではそれを見せる訳にはいかない。

吾輩は師匠だからね、迫り来る弟子にそう易々と乗り越えられては面目が立たないさ。

あの者の前、いや他の誰の前でも吾輩は常に華麗で優雅で在らなければいけない、それが吾輩の紳士たる道。

 

 

故に吾輩は白鳥のようでありたい。

 

 

さてそれではここまでだ。

吾輩の華麗で優雅な一日は此処まで。

ここからは吾輩の水面下の時間。

必死になって水を掻かねばいけない時間なので、ね。

 

 

 

 

 

 

あぁ、一つ言い忘れていた。この話は、吾輩と君との秘密(セクレート)だからね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は空を見上げる

 

果てない高みを夢見るが故

 

私は翼をはためかす

 

空の飛び方を忘れぬように

 

 

私は空を見上げる

 

私の浮かぶ水面を見ない為に

 

水底で足掻く私を見ない為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。