BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

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■は狼

 

 

果てなき砂漠でただ独り、孤独を()んで彷徨い歩く

 

 

■に近寄る者あらず

 

 

近寄る者は皆全て、■のせいで死に絶える

 

 

■は狼、砂漠に独り

 

 

誰か■に笑っておくれ

 

 

 

 

 

 

 

■は一体誰だろう?

あまりに長い時を生きたせいか、最早自分の名前すら思い出せない。

知っているのは極僅か、此処が何処かという事と自分が“独り”だという事だけ。

一体何時から自分は“独り”だったのか、定かでは無いがそれでも、それを考え思い返すのが馬鹿らしくなるほどそうだった、という事だけは解っていた。

それを■に教えてくれる奴も居ない。

誰も■に近寄っては来ないんだ。

だってそうだろう?

 

 

誰も、自分から死にたがる(・・・・・)奴なんて居ないんだから。

 

 

皆、死んでいくんだ、■の近くに来ると皆。

理由なんて解り切ってる、■のせいだ。

この強すぎる霊圧、全てはコレのせい、コレがあるから皆、死んでいく、皆、皆、死んでいく……

何で■だけ、何で■だけがこんなめに合うのだろう?

別に強い事に拘りは無かったんだ、ただいつの間にか、知らず知らずのうち気が付けばそれこそ他者を寄せ付けないほど■は強くなっていた。

理由なんてものは解らないし、今となっては知りたくも無い。

ただ目の前にある現実は非情で、■に近付く奴らは皆、■の霊圧に耐えられなくなり、魂が削れて死んでいくだけだった。

 

 

 

 

 

弱い奴が羨ましかった。

個々に強大な力を持たず、害される恐怖に怯えて生きる奴等、だけどそれ故に、弱い故に群れていられる。

自分以外の誰かと共に居る事が出来る、そう、奴らは皆“独り”じゃないんだ。

 

羨ましかった。

何よりも…… ■の強さと引き換えに、その弱さを欲して(・・・・・・)しまう程に。

贅沢だ、傲慢だと罵る奴も居るかもしれない、でも■は心底そう思っているんだ。

持つ者と持たざる者、力ある者と無い者、持たざる者が持つ物を、力ある者を羨むのと同じくらい■は持たざる者を羨んでいるんだ……

だけどそれは叶わない、今更手に入れてしまったものを放り出す事は叶わない。

 

結局■はどうしようもなく、何も出来ず、この砂漠を彷徨い“孤独”の中に居るしかないんだろう。

 

 

 

 

 

嗚呼、■は一体何のために生まれてきたのか。

誰ともまみえず、ただただ果てしない白い砂漠を彷徨う為だけに生まれて来たのか。

ただただ、こうして“孤独”の中で生きていく為に生まれて来たのか、もしそうならそれのなんと残酷な事だろう。

そんな■にも、最近解った事がある。

 

“孤独”とは“死”だ。

 

“孤独”とは、“独り”とは誰にも知られていないという事に等しい。

誰からも認知されず、誰からも認識されずただ存在する存在。

誰の記憶に残る事もなく、ただ生命という活動を続ける存在は本当に“生きている”と言えるのだろうか?

その命ある(かすみ)のような存在は、そもそも生命体であると言えるのだろうか?

 

■にはそうは思えない。

そして何より孤独は押し潰す(・・・・)んだ。

少しずつ、じわじわと、■の精神を押し潰すんだ。

求めるものは遠ざかり、また求められる事もなく、それは自分という存在の価値の否定でしかないだろう。

そんなものに耐えられる筈がないんだ、無価値な存在を許してくれるほど世界も優しく出来てはいないのだから。

今までそれに耐えてきた、孤独の重さ(・・・・・)に■は耐えてきた。

だからといってこの先もずっとそれに耐えていられるのか?

出来るかもしれないし出来ないかもしれない、それが訪れるのは百年先か千年先か、それとも明日か、もしかしたら数分後かもしれない。

 

それは恐怖だ。

耐えられない“孤独”など恐怖以外の何者でもないだろう。

その恐怖を前に■に一体何が出来る? 何も出来やしない、ただそれに押し潰されて死ぬだけだ……

 

 

 

 

 

また途方もない時間が過ぎた気がする。

でもそれは気のせいで、本当はまだほんの少ししか時間は過ぎていないのかもしれない。

まぁ結局のところ同じだろう、時間なんてもう意味がない、終わりが近付いているんだ。

■には解る、もう直ぐ自分は“孤独”に耐え切れなくなるだろう、という事が。

誰よりも、それこそ生きる命というもののなかで誰よりも長く、“孤独”と付き合い続けた自分だからこそ解るその時。

それを前に自分が何をすべきか考えてみた、だけどそんなもの考えつきはしない。

することなんか何もないんだ。

ただ受け入れてやればいい、それでこの長い“孤独”ともさよならなんだから。

だがもし、もしも悔やまれる事があるとすれば、一度でいい、一度でいいから。

 

誰かと手をつないでみたかった。

 

 

 

 

 

もう駄目だ!耐えられない!

“独り”は嫌だ! “孤独”は嫌だ!もう独りぼっち(・・・・・)は嫌なんだ!

何で■ばっかりがこんな目に合う? どうして?どうしてなんだ!

一緒に居たい(・・・・・・)だけなんだ、ただ誰かと…… 自分じゃない誰かとただ一緒に居たいだけなんだ。

それは、そう思う事はいけない事なのか?

ただ誰かと一緒にいたいと願う事が、そんなにいけない事なのか?

もう充分だろう! ■は充分“孤独”の中にいただろう?もう嫌なんだ!嫌なんだよ!

誰か…… 誰でもいい…… ■を此処から救ってくれ。

 

■の傍で、一度でいいから■に笑顔を見せてくれよ……

 

それが誰にも届かない事なんて解っていた。

だけどもう誰かに縋るしかなかった、でも現実って奴はやっぱり何処までの非情で、そもそも誰も■に近づけないんだから助けなんてありはしないんだ。

だったらもう、この耐えられない“孤独”から抜け出すには自分が、■自身がどうにかするしかない。

恐怖を前に、ただ受け入れるだけだと思っていたものに抗ってやるんだ。

そして“独り”じゃなくなるんだ。

 

仮面に手をかける。

顔を覆う仮面に両手をかけ、力を込める。

どうすればいいかなんて解らなかった、ただそうすればなにかが起こるという確信だけがあった。

それをした後、■がどうなるかなんて解らない。

それでも、たとえ■という存在が死んだとしても“孤独”じゃなくなるなら、“独り”じゃなくなるなら、そっちの方がよっぽどマシだろう。

仮面が軋み、罅割れる、それでも力を込める事をやめる事はない。

 

おそらくコレを剥いだ時、自分が消えるであろう直感が奔る。

それは本能からの警告なのか、自分という存在の消滅に対する警告が直感として脳裏を奔り抜ける。

でもそれでも■は止めない。

数瞬の後には仮面は剥れ、■という存在は消えるだろう。

でも、それでも、何か(・・)が残る気がする。

そしてそれはきっと“孤独”ではないと■は思う。

 

高い音が響く、それが自分の仮面が剥れ、砕けた音だと認識するかしないかで■の意識は白に染まった。

消えていく意識、その中でただ思う事がひとつ、理由は解らないがただ浮かんだのはたった一言。

 

 

『おめでとう』

 

 

という言葉だった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

『俺』が目覚めて最初に見たのは、薄い黄緑色の髪をした小さな子供だった。

そして一目見て直感した、コイツは俺(・・・・・)だ、と。

片割れであり、俺自身であり、そしてもう一人(・・・・)、という俺以外の存在であると。

 

 

「……名前はあるか?」

 

「……リリネット。 ……あんたこそ名前なんかあるの?あたしだったくせに 」

 

「……スターク、だ 」

 

 

リリネット……か、いい名前じゃないかと内心で褒める。

そして俺も自分の名前を答えた、ただそれだけのやり取りが俺の内に響く。

俺にとってそれは独りじゃないんだと、俺じゃない誰かが傍にいるということを確信できた瞬間だったから。

 

 

 

 

 

 

『あたし』を呼ぶ声がする。

顔を上げるとそこには黒髪のデカい男が座っていた。

見て直ぐ解った、この男があたしの半身だって事が、もう一人のあたし以外のあたし(・・・・・・・・・)だっていう事が。

名前を聞きながら、こっちに大きなボロボロの布切れを放り投げる男、名前はスタークっていうらしい。

その布切れを羽織ながらあたしはスタークに訊いた。

 

 

「……スターク。 ……これから何するの?」

 

 

そんなあたしの疑問にスタークはただ一言、「何だってできるさ」と答えた。

だからあたしは更に訊いた。

 

 

「じゃぁ、どこへ行くの?」

 

 

スタークはさっきと同じ、ちょっとぶっきらぼうな態度で「どこへでも」と答える。

そっけない態度、だけど不思議と嫌な感じはしなかった。

それはスタークがあたしだからなのか、それとも別の理由なのかよくわからなかったけど、今はそれでいい気がする。

 

 

「一緒に行こうぜ…… どこまでも…… 」

 

 

スタークの言葉に、一緒(・・)という言葉にあたしは自然と笑っていた。

一緒、初めて誰かに言ってもらえたその言葉が、あたしには嬉しくてたまらなかった。

立ち上がるスタークに続くようにあたしも歩み寄る。

 

そうしてスタークの横に立って、スタークの手を握った。

スタークは一瞬驚いた顔をしたけど、ちゃんと手を握り返してくれた。

 

その握った手から、あたしは初めてぬくもり(・・・・)を感じたんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺(あたし)は狼

 

 

果てなき砂漠をふらふらと、往くあてもなく彷徨い歩く

 

 

俺(あたし)に近寄る者あらず

 

 

近寄る者は皆全て、俺(あたし)のせいで死に絶える

 

 

俺(あたし)は狼、砂漠を歩く

 

 

だけど俺は

 

 

だけどあたしは

 

 

もう俺(あたし)達は

 

 

“独り”じゃないんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編での登場はまだまだ先ですがこの二人です。
本当はもう少し前に投稿する予定だったのをすっかり忘れておりました。
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