BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

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強くなりたい。

 

強くなりたい。

 

あの人のように。

 

あの人の背を守れるように。

 

あの人の為に生きられるように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしが初めてそいつを見た時、そいつはどっちかって言うと襤褸雑巾に近かった。

死覇装はボロボロ、身体もボロボロ、顔は特に酷くてボッコボコだ。

その癖そのボッコボコの顔は気を失ってるくせに笑ってる、ヘンな奴だって思った。

 

 

「コレは私の下で鍛えると決めた。」

 

 

その後のハリベル様の言葉には、あたしだけじゃなくミラ・ローズもスンスンも驚たに決まってる。

襤褸雑巾みたいなチビの破面を抱えて帰ってきたハリベル様は、あたし達にそう言ったんだ。

またなんでこんな奴を、それがあたしの素直な感想。

でもそれも、ハリベル様の次の一言で吹き飛んじまった。

 

 

「手始めに今まで従属官を除いた総ての数字持ち(ヌメロス)と戦うように言ってあったのだが、最後に戦ったNo12. グリムジョー・ジャガージャックとの戦闘でこの有様だ。何とか分けた(・・・)様だがな……」

 

 

これを聞いたときのあたし達の顔は、きっと酷いものだったと思う。

だってそうだろう?

こんなチビがあのグリムジョーと戦ったってだけでもとんでもねぇのに、“分けた”なんて言われれば誰だって驚くさ。

はっきり言って信じられない、でもハリベル様がそう言うなら信じる他無い、でも信じられない、あん時のあたしは頭ん中ゴチャゴチャだったな。

 

 

 

 

 

次に見た時、そいつは寝台に寝ていた。

ボッコボコだった顔は腫れも引いて、いっそ綺麗に整ってたっけ。

綺麗すぎて逆に気持ち悪いくらい、人形みたいな顔して寝てるそいつ。

 

 

「……ホントにコイツが?」

「アタシは信じられないね! こんなガキがアイツに勝てるわけがねぇ!」

「あんたはどう思うのさ! ホントにこんなガキがグリムジョーに勝ったと思えるのかよ!」

 

 

その時あたしの口から出た言葉は、やっぱり全部疑問だった。

それは今思えばやっぱり罪深い言葉だ。

なにせあたし達が信じるハリベル様が“白”と言っている物を、本当にそうなのかと疑うような言葉。

 

ありえないだろ? ハリベル様を疑うなんでさ。

 

馬鹿な話だよ。

自分じゃ勝てない相手に、自分より小さいヤツが勝ってはいないにしろ、分けたからって嫉妬してる。

認められなかったのさ、現実を。

ホント、あたしらしくも無いよなぁ。

 

でもそんな嫉妬の馬鹿らしさは目を覚ましたそいつの、フェルナンドの眼を見た瞬間に解ったんだ。

燃えるような真っ紅な瞳、あれは炎だった。

あぁコイツは本当にグリムジョーの野郎と戦ったんだな、ってのがあたしにも直に解る。

そういう強者の目つきをフェルナンドはしていたから。

チビでガキの癖に妙にデカイ態度、それが強者たるものの雰囲気なのかそれともアイツ自身のモノなのか、そん時あたしには解らなかったけど今ならハッキリ言える。

 

 

あれは絶対アイツの性格(・・・・・・・・)のせいだね!間違いない! 絶対に! あ~思い出してもムカつくぜ!

 

 

 

 

 

その後は……

ハリベル様の“地獄の特訓”だったなぁ。

 

確かに頭にこれでもかって位血が上ってたのはあるよ。

ハリベル様がなんか言ってたのも、聞こえてはいたんだけどなぁ……

失敗したぜ、あん時は。

 

思い出すだけで身体中痛くなる……

まさしく“地獄”だったな、あの特訓は。

 

 

でもその特訓が終わった後、あたしもミラ・ローズもスンスンも指一本動かすのが嫌になるような疲れの中で、見たんだ。

フェルナンドの本当の強さ、って奴を。

 

最初はハッキリ言って、ダメダメだった。

あたし達から見ても解るくらい、アイツは刀ってモノを扱えてなかった。

正直、刃の無い棒切れを振り回してた方が、いっそ様になるんじゃないかって思えるくらい。

あれだけ強い眼をしてるくせに、グリムジョーと引き分けたって言うくせにあれは無いんじゃないか、ホントにアイツが強いのかどうか、あたし達は三人とも半信半疑になっちまう位。

 

そう思ってた矢先に二人の動きが止まって、フェルナンドの野郎は刀を鞘に納めちまった。

実際そん時はそれが当然だと思ってたさ。

ハリベル様にあんなヘナチョコの剣が通用する訳ないし、やっぱりその程度のヤツだったんだって思ってた。

 

でも違ってた。

 

あの馬鹿は、フェルナンドの馬鹿野郎はハリベル様に拳を突きつけたんだ。

直後アイツを紅い光が包んだ。

光が収まるとアイツの斬魄刀は一回り小さくなってて、アイツはそれを嬉しそうに撫でると、次の瞬間ハリベル様に突進しやがった。

それも刀も抜かず、拳でだぜ?

 

あ、アイツ馬鹿だ。

 

そん時あたしはそう思った。

だってそうだろう? あたし達のハリベル様はメチャメチャ強いんだ。

そのハリベル様に素手で挑むのがどれだけ馬鹿なことか、誰よりも近くにいるあたし達には良くわかる。

きっとミラ・ローズもスンスンも、あたしと同じことを思ったに違いない。

 

 

だけど、そんなあたし達の常識はアイツには…… フェルナンドには通用しなかった。

ハリベル様は手加減してる、でもそれは殺す、殺さないという部分での手加減、まぁそれ以上もあったかもしれないけど、それはその時そんなに重要じゃなかった。

重要なのはたった一つ。

ハリベル様相手に、フェルナンドの野郎は拳と蹴りで、その五体だけで渡り合ってたっていう事だけだった。

 

あたしの眼から見て二人の戦い方は真逆だった。

ハリベル様は流れる水のように、華麗に舞うように戦う。

水は敵の攻撃を受け流し、時に思い通りに捌き、何時しか自分の流れに呑み込んでしまう。

フェルナンドの攻撃は火だ、それも何でも焼き尽くすような猛火。

阻むものの全てをその炎の一撃で焼き払って進む、何があっても止まらない。

 

ハリベル様の水はフェルナンドの炎を消すように、フェルナンドの炎はハリベル様の水すら焼き尽くすように、互いに抗いながら戦ってた。

 

 

その時あたしは多分笑ってたと思う。

多分っていうのは、その光景があんまり鮮烈だから自分の顔がどんなだったかなんて記憶に残ってないんだ。

あたしはフェルナンドの強さに、五体だけでハリベル様に挑むその気合に一瞬で魅せられてた。

その強さに自分も近付きたいと、その強さがあればきっと、もっとハリベル様の役に立てると思ったから。

 

 

「うぉっしゃぁぁあああ!!」

 

 

そう思うと叫ばずにはいられなかった。

これで、これでまたあたしはまだ強くなれる、強くなってハリベル様の役に立てる。

それだけがあたしの喜び。

だから叫ばずにはいられないんだ。

 

ミラ・ローズとスンスンが驚いてた。

スンスンの野郎はまたふざけたこと言ってやがったけど、そん時はあんまり気にならなかった。

強くなりたい、強くなりたい、昔も今も抱えているその思いがその時強くなれる(・・・・・)っていう確信に変ってたから。

 

 

「ハリベル様!!」

 

 

二人の間合いが離れた瞬間、あたしはそう叫びながらハリベル様に駆け寄ってた。

ハリベル様は大分驚いた顔、フェルナンドの野郎は…… どうせ「変なのが出てきた」とか思ってたに違いない。

 

 

「あたしも! あたしもアイツと()らせて下さい!!」

 

 

一歩大きく踏み出して、フェルナンドを指差しながらあたしは半分叫ぶようにそうハリベル様に頼んだ。

多少面食らった様子のハリベル様だったけど、何故かあたしの眼を見ると、急になんだか優しい目になって「そうか……」って呟いた。

そんなあたしの後からミラ・ローズとスンスンも、あたしと同じようにフェルナンドと戦いたいって言い出しやがる。

 

最初に言い出したのはあたしなんだから、あたしが一番にやるのが筋だって言っても、当然あの二人が譲る訳なんて無い。

何なら先にあんた達から…… なんていつものお決まりの流れになっちまったおかげで、特訓が追加になったけど、そん時は特訓の辛さより目の前のフェルナンドと戦う事の方に目がいってたな。

 

 

「一人ずつじゃ面倒だ…… まとめてかかって来いよ、お供の三バカサンよぉ」

 

 

結局誰が一番かで揉めてたあたし達に、フェルナンドの野郎はそう言い放ちやがった。

今となっては定番の、あのクソ忌々しい皮肉な笑いでコッチに手を出し、クイッと手で「来いよ」と言いやがる。

上から目線、思えばあん時からアイツは全然変って無ぇ。

いや、あん時は見た目ガキだったから尚更頭に来たっけな。

 

そうさ、アイツは…… フェルナンドは変らない。

流されない、揺るがない、靡かない。

そういう所は素直にスゲェって思う、絶対アイツには言わないけど、口が裂けても言わないけど。

 

結局あの後は三人がかりでいい様にボコられたっけ。

死なない程度には加減してやった、とかあの後言ってたけどくらった拳はメチャクチャ効いたな……

でもそれはアイツがあたし達が“女”だからって手加減してなかった証拠だ。

それが少しだけ嬉しかったりもした、でも痛いものは痛い。

 

 

「よう。 終わりかよ、三バカ 」

 

 

それぞれ床にぶっ倒れてるあたし達。

それにフェルナンドは悠々と立ったままそう言いやがる。

「終わりじゃねぇ!」 そう言ってやりたかったけど、悔しいが特訓の疲れとダメージでホントの限界だった。

でも、だからってこのまま気絶できるか! そう思って最後の力で腕を伸ばしてフェルナンドに向けた。

 

それで言ってやったんだ、宣言してやったんだ。

 

 

 

「纏めて、括んな…… あたしはアパッチ。エミルー・アパッチだ!いいか…… 何時か…… 何時か、ぜってぇ勝ってやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強くなりたい。

 

強くなりたい。

 

あの人のように。

 

あの人の背を守れるように。

 

あの人の為に生きられるように。

 

 

いや、違う……

 

 

なりたいんじゃない。

 

 

強くなるんだ。

 

 

アイツのように。

 

 

強くなるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 




申し訳ありませんがここから番外篇が2つ程続きます。
ここで挟まないとタイミングを逃してしまうもので。

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