BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

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俺達は反発する

 

私達は反発する

 

俺達は譲らない

 

私達は譲れない

 

それが己の往く道だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは違うな、間違っているぞフェルナンド」

 

「そいつはコッチの台詞だ。 間違ってんのはお前のほうだぜ、ハリベル」

 

 

ぶつかる視線に火花が散る幻想が見える。

 

やや距離を置きながらも決して視線は切らず、互いを睨みあう二人。

その二人とは第3十刃(トレス・エスパーダ)ティア・ハリベルと破面No.nada(アランカル・ナーダ)、番号無しの破面(アランカル)フェルナンド・アルディエンデ。

その雰囲気は険悪といったものではないにしろ、互い何か譲れ無いものがあるのだろうか、一歩すら退く気は無いという雰囲気がありありと浮かんでいた。

フェルナンドに比べやや身長が高いハリベルは見下ろすように、対してフェルナンドは状況から言えば見上げている筈なのだが、そんな雰囲気など感じさせない尊大さを纏い対峙している。

 

本来こんな事はありえない。

破面という集団において番号の序列というものはそのまま力の序列に直結する。

数字持ち(ヌメロス)の間ならば多少の誤差はあるにしろ、その上、十刃(エスパーダ)においては数字とは力そのもの。

より数字の小さい者ほど殺戮能力に優れている、というのが虚夜宮における絶対の真理。

その中で“3”の数字を背負う彼女、ティア・ハリベルにこのような態度を取れる者がどれだけいようか、それも同じ十刃ではなく番号すら持たない破面の中で。

 

 

「あれ? 何だよあの二人また(・・)やってんのかよ……」

 

「みたいだね…… で? 今度は一体何が原因なんだい?」

 

「あら二人とも随分と遅かったのね。 (わたくし)心配したんですのよ?貴方達が遂に練武場(フォルティフィカール・ルガール)の場所さえ思い出せなくなったのかと思って」

 

「「馬鹿にしてんのか! スンスン!」」

 

 

睨みあう二人、その二人から離れた位置にあるその空間への入り口から二人の人影が現われる。

左右の瞳の色が違う小柄な女性はエミルー・アパッチ、大柄で筋肉質の快活そうな女性はフランチェスカ・ミラ・ローズ。

どちらも睨み合いを続けるティア・ハリベルの従属官(フラシオン)であった。

その場所、ハリベルの居城である第3宮(トレス・パラシオ)にある練武場に入るなり何処かげんなりした様子で肩を落とすアパッチ。

次いでミラ・ローズも、またかという雰囲気をありありと浮かばせながら先にその場に来ていた彼女等と同じ従属官、シィアン・スンスンへと話しかけた。

何処か棘、というか毒の篭ったスンスンの応対に二人揃って食って掛るアパッチとミラ・ローズ。

そんな二人を意に介しながらあえて流すスンスン、このやり取りは恐らく永遠に変らない事を伺わせるものだった。

 

 

「いいや、間違っているのはお前のほうだフェルナンド。その場合敵の戦力が明確になるまで様子を見る事が最善だ。敵の力も策も判らず攻める事は、自らの首をしめる事に繋がる可能性がある」

 

「それが間違ってるって言ってんだよ! 敵の能力も策も関係あるか、それに付き合うほうが馬鹿なだけだろうが。俺なら能力を使わせる暇を与えないって言ってんだよ!」

 

「ほぅ…… それは遠まわしに私が馬鹿だ、と言っているのか?敵の攻撃に付き合う私は馬鹿だと…… ならばお前はなんなのだ、そもそもこれは敵が新たな能力を使用したという前提の話であって、能力を使わせないなどという馬鹿げた発言こそそもそも本末転倒だとは思わんのか!」

 

「なんだと! この堅物の分からず屋が!」

 

「そちらこそ意地っ張りの頑固者め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「説明…… いりまして?」

 

「「いや、いい…… 」」

 

長い袖に隠れた指先でちょんちょんとフェルナンドとハリベルの方を指し、振り返るようにしてアパッチとミラ・ローズに告げるスンスン。

言葉とは雄弁で、先の二人の会話を聞いていればおおよそ何が原因かはわかることだろう。

 

はじめは簡単な問答だった。

もし、自分と実力が拮抗している相手がいたとして、その相手が新たに何らかの能力を使用したと仮定したとき、どう対処する事が最善であるか、という戦闘理論を問うただけの事。

これに対し、ハリベルはその冷静な判断力から無闇に敵に攻め込む事無く、敵の能力を把握した上でそれを凌駕し、倒す事を。

フェルナンドは能力など関係なく、苛烈に攻め続け押し切り、打倒する事を語った。

 

それはどちらも正しいのかもしれない。

そもそもこの問にははじめから正しい答えなど存在しない。

戦い方、それに定石と呼ばれるものはあれど“正しい戦い方”というものはない、そもそも毎回同じ戦場が続くなどという事などなく、その場、その時、その瞬間の最善こそが言うなれば“正しい”のだ。

この問の本当の目的は一つの考えに囚われず、他者の考えを聞くことで自分とは違った視野から戦いを見る事を養うためのもの。

本来ならばこの問いかけを行ったハリベルが抑えなければいけない場面だったのだろうが、どうにもこの二人、退くという事を知らない。

 

自分の考えの方が正しいと言い出したのはどちらだったか、それは今となっては瑣末ですらあった。

問題なのはどちらも退く気がまったく無いという事

だがこの状況は今回が初めての事ではない。

 

事ある毎に二人の意見は対立し、こうして睨み合いは起こっていた。

それは二人の生き方、考え方、そして在り方が余りにも違うため。

水の如く流麗に、何物にも流されず受け流し、しかしいつしか全てを押し流す大河の如きハリベルと、炎のように苛烈に、何者にも遮られず遮られればそれごと焼き尽くしただ、己のが思うままに広がる炎海たるフェルナンド。

何もかもが真逆と言っていい二人、故に二人の意見は違え、そして論争は熱を帯びていくのだ。

 

 

「あぁもういい判った…… こうやっていくら口で言ったって判んねぇんだ。だったらコイツで決める他無いだろうが、えぇ?ハリベルよぉ」

 

「これは奇遇だなフェルナンド。 私も今丁度その考えに思い至ったところだ。最近は随分と力を付けたようだが、それもまた私には遠く及ばないという事を思い知らせてやろう…… 」

 

 

言い争いを続けていた二人だったが、フェルナンドが遂にといった具合に両手を挙げその論争を止めた。

もはや論争というよりは口喧嘩に等しくなっていたそれ、しかし止めたという事は折れたという事かと、従属官の三人はある意味胸を撫で下ろす。

 

 

 

 

が、そう簡単に折れないのがこのフェルナンドという破面である。

 

 

 

口で言ったところで判らない、ならばその段階はもう終わりだと、そして口で言って判らない者に物事を判らせる方法など一つしかないといわんばかりにその硬く握った拳をハリベルに向けて突き出したのだ。

対してハリベルも普段の彼女からは想像も付かないほど血が上っていたのだろう。

あっけなくそのフェルナンドの誘いに乗り背に背負った刀の鍔にその指を掛ける。

 

これに慌てたのは従属官の三人、アパッチ、ミラ・ローズ、スンスンだ。

よもやここまで発展するとは思っていなかった三人。

そんなところで気が合わなくてもいいだろうにと、本当にこの二人はよく判らないと三人それぞれに内心で零す。

抛っておけば何れ収まると踏んでいた口喧嘩は、今や第3宮の存続に関わる大事へとその姿を変えていたのだ。

彼女等の脳裏に最悪の景色がありありと浮かぶ。

崩れた壁、折れた柱、そこにあるのは自分達の暮らす宮殿の成れの果て、瓦礫の山でありその上で未だ戦う主ともう一人の姿。

 

 

これはマズイ、非常にマズイ。

三人の思考が久々に協調した瞬間であった。

 

 

 

「「「スト~~ップ! 二人ともスト~~ップ!」」ですわ!」

 

 

睨み合い今にも戦いを始めそうな二人の間に滑り込むようにして割って入る三人。

その顔には一様に焦りと、そこから来る冷や汗が滲んでいる。

ハリベルの前にはアパッチが、フェルナンドの前にはミラ・ローズが割って入り、スンスンはその中央でどちらにも加勢できる状態を作る。

ある意味見事な連携、彼女達の錬度の高さを伺わせるそれはしかし、錬度が高いだけにこの場においてはどこか悲しく映った。

使い方が違うだろうに、と。

 

 

「ハリベル様やめましょうって、こんなつまらない事(・・・・・・)で宮殿吹き飛ばすなんてシャレにならないですって!」

 

「フェルナンド! アンタもいい加減しときなよ。どっちでもいい(・・・・・・・)だろそんな事」

 

「そうですわ。 お二人とも気を静めてくださいまし。」

 

 

二人を何とかして静めようと必死の説得を試みる三人。

それは必死になるだろう。

何故ならもしここで二人を止められなければ彼女等は今日から宿無し、そしてもしこの二人が本当に(・・・)全力で戦ったら彼女等とて無事で済む保障はない。

故に必死、とにかく止める事、静める事を優先する三人。

 

 

だがそれが災いの元。

静める事を優先する余り、必死になり過ぎたばかりに零れる。

重要性の違い、当事者と第三者の違い、それ故に零れる。

いや、零れてしまうのだ。

 

どうしようもない失言(・・・・・・・・・・)というものが。

 

 

 

 

「つまらない……事……?」

 

 

「どっちでもいい……だぁ?」

 

 

 

熱を持っていた空間が急速に凍結する。

それはしかしハリベルとフェルナンドの闘気が静まった、という訳ではなかった。

反転、熱は振り切れ冷へ、どうしようもない冷たさを感じさせる声と共に二人から呟かれたのはそんな言葉。

ここへ来てアパッチとミラ・ローズは自分達の失言を自覚する。

だが時既に遅し、零れた言葉を再び呑む事など叶わず、零れた言葉は言霊となり届く、今最も届いてはいけなかった二人へと。

 

 

「一体何がつまらない事だというんだ?アパッチ。私の戦い、その考え方の何処がつまらないと?」

 

「ハッ! こいつは笑えるなぁミラ・ローズ。どっちでもいいだぁ? それは何か? 俺の考えもハリベルの考えもお前にとっちゃぁ大差ないって言いてぇのか?」

 

 

言葉の地雷、それも避けようと思えば避けられたそれはしかし、今確実に起爆していた。

最早フェルナンド、ハリベルに互いを武によって制するという気配は消えた。

しかし、治まらない“気”はまさに今、二人の間にいる三人へと向けられている。

割って入ったつもりが今は挟まれていると言った方が、三人の状況を表すには正しいかもしれない。

 

そしてこうなると、途端息が合うのがこの二人だ。

 

 

「おい聞いたかよハリベル。 俺達の戦いの考え方はコイツ等からしたらまだまだ甘いらしいぜ?」

 

「あぁ、確かに私も聞いたぞフェルナンド。どうやらこの娘達には私達が及びもしない素晴らしい理論があるらしい。これは早急に私達もご指導頂かないといけないとは思わないか?」

 

「あぁそうだ。 そうだとも。 えぇ? そう思うだろう?お前達三人も……よぉ 」

 

 

 

これが先程まで睨み合う様にして戦いの一歩手前にいた者達なのか、と疑いたくなるほど息の合った二人。

若干の(・・・)拡大解釈によって歪められたアパッチ等の言葉は、二人によって今や彼女等を追い詰める鎖であり槍。

弁明を試みようにも一睨みで黙らされ、特に二人の前に立つアパッチとミラ・ローズは先程にもまして自らの危機を悟り、冷や汗が止まらない様子だった。

 

 

「「で、お前は何処に行こうってんだスンスン」」

 

 

フェルナンドとハリベルの注意がアパッチ、ミラ・ローズに向いているのをいいことに、一人静かにその場から遁走を諮ろうとしたのはスンスン。

しかしそれは他ならぬ同じ従属官の二人に肩を掴まれることで阻止される。

この状況のマズさは三人とも同じ、その中で一人逃げるなど許さないというアパッチ等の執念がその肩を掴ませた。

二人の目には一様に「お前一人逃がしてたまるか!」という意が浮かんでおり、口元を隠しながら小さく悲鳴を上げたスンスンは悪くないだろう。

 

 

「さて、それではご教授願おうか…… 三人とも準備はいいか?」

 

「当然問題ないよなぁ。 何せ俺達に“指導”する立場だぜ?まったく俺達程度を相手に“指導”してくれるとは恐れ入る」

 

 

まったくもって気が合うのか合わないのか、先程の姿など嘘のように二人は協調する。

三人を挟み込むようにして立つフェルナンドとハリベル。

そして二人はまるで鏡合わせの様に手を組み、ポキポキと指を鳴らす。

その瞳は紅と翠の光が爛々と輝き、どこか楽しそうですらあった。

 

気が合わない二人、しかし気の合う二人。

二律背反、しかしそれがこの二人。

 

 

そして響き渡ったのは三色の悲鳴は哀れなり。

 

 

 

そんな第3宮の一日……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は反発する

 

私達は反発する

 

俺達は譲らない

 

私達は譲れない

 

それが己の往く道だから

 

 

だから俺達は

 

だから私達は

 

 

認め合う

 

 

互いの譲れぬ“道”を知るから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





本編ではなく番外篇の投稿となります。
次の投稿も番外篇を挟み、本編に戻ります。
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