BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

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BLEACH El fuego no se apaga.7

 

 

 

 

 

何処までも広がる虚圏の砂漠、遮るもの無く暗い夜空と白い砂漠の境界線が視線の先に緩やかな地平線を描き、それは何処まで行こうとも途切れる事はない。

その見果てぬ白の砂漠に聳えるものがある。

それは虚圏の自然に存在しない直線と、地平線と同じ曲線によって形作られ、全てを砂漠と同じ白で彩る姿は明らかに人工的に作られたものだった。

巨大、それしかその建造物を形容する言葉は無かった。

視界に捉え確かに近付いているというのに、それにどれだけ近付いても一向に近付いた実感がしない。

余りの大きさゆえに距離感は崩れ、砂漠以外の比較対象の少ない虚圏ではそれを修正する事すら出来ない。

視界に捉えているのに近付けない、現実として存在している筈なのにまるで幻の様なその建造物。

それこそが破面達を従える者、藍染惣右介の居城であり破面(アランカル)達が巣食う美しくも危険な宮殿、『虚夜宮(ラス・ノーチェス)』であった。

 

 

 

 

 

ハリベルはフェルナンドを伴ってその虚夜宮のある場所に居た。

虚夜宮の中心に聳える塔の中にある『玉座の間(ドゥランテ・エンペラドル)』そこはこの巨大過ぎる宮殿の主である藍染惣右介が破面達に命を下す場所。

その中央でハリベルとフェルナンドは他の破面達が遠巻きに見守る中、この宮殿の主を待っていた。

フェルナンドはこの虚夜宮に来る間に多少回復はしたものの本来彼が持つ霊圧、そして炎には遠く及ばない状態。

ハリベルの横で仮面が収まる程度の炎の塊となり浮かぶフェルナンドの姿はあまりに頼りなく、そしてその彼に注がれるのは眼、眼、眼。

彼に姿が他の大虚に比べ明らかに奇異である、という理由もあるにはあるだろうが彼が視線を集め利理由はおそらくそれだけでは無い。

注がれる視線から感じるのは感情は様々、値踏みするような視線、特に興味も無いといった感情、面白そうだという興味、あからさまな敵意を含んだ殺気、そしてそれら以外の大多数の視線から感じるのは、嘲り、嘲笑といった侮蔑。

 

そして何故か、その嘲笑と嘲りの視線はフェルナンドだけではなく、彼の隣にいるハリベルにも向けられていた。

 

 

「オイオイオイ、第4十刃サマともあろう御方が、そんなゴミみたいなヤツ一匹連れてくるのにそんなにボロボロになったのかよ!?これは天下の第4十刃も地に堕ちたってもんだなぁ!えぇ!? 」

 

 

誰とも無くそんな声が聞こえる、それに次いで次々と同じような内容の言葉が飛びかいはじめた。

そしてその罵声に呼応するようにそこかしこから隠そうともしない笑いが起こる。

現状のフェルナンドの霊圧をだけ見て格下だと決め付けた者による雑言、誰が最初に声を発したかは重要ではなく、だがそれに同意するような笑いが広がる。

それはフェルナンドに向けられるのと同時にハリベルに対するものでもあった、そんな格下の大虚一匹に梃子摺ったばかりか手傷を負わされて帰ってきた十刃、これが唯の破面ならばこれほどの嘲笑は受けなかっただろう。

この嘲笑の渦は彼女が十刃であるが故、十刃という重責に居ればこそ起こったものなのだ。

 

 

十刃(エスパーダ)

破面の中で1~10の数字の刻印をそれぞれその身体に刻み、No.11以下の破面を支配する権限を持つ特権を持つ破面。

その序列の決め方は至って単純、その破面が持つ殺戮能力の高い順(・・・・・・・・) というただそれだけだ。

力こそが総てである彼ら破面にとってそれは単純であり、しかし最も彼等の理にかなった序列の決め方。

だがしかし、その十刃の一人でありしかもNo.4という上位の十刃が手傷を負って帰ってきた、さぞかし強い大虚、それも最上大虚を連れて来たのだと思えば、その彼女の隣にいるのは仮面の浮かんだ火の玉一つ。

発する霊圧もそれほど大きいものではない、その姿に何の脅威も感じられない脆弱な存在、それは即ち彼ら破面にとっては取るに足らない雑魚であるという証でありその雑魚に十刃が手傷を負わされて帰ってきたという事実は、力を信じる彼らからしてみれば許されない事態であった。

 

故の嘲笑、そんな雑魚に傷つけられるとは笑わせると、そんな雑魚は自分達でも容易に殺せると、そしてそんな雑魚に手傷を負わされるような力の無い者が十刃などと笑わせると、そんな声が聞こえてくるような笑い、それが少しずつ広間に満ちる。

 

 

嘲笑の声の中ハリベルは瞳を閉じ唯じっとその場に立っていた。

笑いは確かに聞こえる、だがそれは彼女にとって取るに足らない事、言いたい者には言わせておけばいいと。

何より自身がこの隣にいるフェルナンドに傷を負わされた事は紛れも無い事実であり、それは彼らにとっての十刃という力の絶対性を失わせかねない事実でもあった。

故にハリベルはその笑いの中で己の未熟さを再確認していた。

 

だがそんなハリベルの隣には、その笑いに耐え切れそうに無い者がいる。

 

フェルナンドは機嫌が悪かった、唯でさえここに連れて来られる前にハリベルに「お前では私に勝てない」と虚仮にされたところに、まるで自分を見世物にされた様に奇異の視線を向けられ、最後には嘲笑の嵐、平静で居られる方がどうかしている。

フェルナンドが耐え切れる筈も無く、苛立ちを覗かせた声でハリベルに語りかけた。

 

 

「おいアンタ…… こんなクソみたいな奴らに言いたい放題、笑わせ放題にしといていいのかよ?少しは頭にこないのかよ、えぇ? 」

 

「……笑いたい者は笑わせておけばいい。それに貴様に傷を負わされたのは事実だ、彼らの言葉にも一理ある。十刃という重責にありながらその責の重さを理解しきれていなかった私の未熟さが招いた結果だ、何を言うものでもない。」

 

「ハッ! 違うな、アイツ等みんなアンタが妬ましい(・・・・)のさ。大した力も無ぇクセに誰かが失敗すりゃぁそれを声高に叫びたがる、いやそれしか出来ねぇ(・・・・・・・・)んだ。テメェが強くなる事よりも誰かの足を引っ張る事しか考えてねぇ…… 物陰に隠れて姿を見せずに個を消して女々しい事だぜ…… わかったか? アイツ等なんぞはそういう程度の低いクズなんだよ」

 

 

周りに何一つ憚る事無くそう言い放ったフェルナンド。

そんなフェルナンドの言葉は、笑い声が満ちる広間にあっても異常な程良く通った。

瞬間笑い声が消える、そして嘲笑の視線はその総てが殺意の篭った視線へと変わりフェルナンドだけに注がれた。

空気が張り詰め静まり返る広間、その一瞬の静寂を打ち破るように一体の破面がフェルナンドとハリベルの前へと歩み出る。

 

 

「オウ…… 誰が物陰に隠れてるって? 雑魚の分際で言うじゃねぇか。オレ達が足を引っ張る事しかできないクズかどうか、テメェ自身に判らせてやってもいいんだぜ?」

 

 

そう言ってフェルナンドを挑発する破面、身体は異常に大きく、鎧のように肥大した筋肉を身に纏い、動物のサイの骨のような仮面の名残をその頭に着けた破面は人型というよりはむしろまだ虚に近い形状で、ハリベルの横に浮かぶフェルナンドの仮面にグッと顔を近づけてそう言った。

視線には怒りが満ちておりそして何より目つきは明らかに格下を見る目、根拠の無い自信と相手の力を測ることも出来ずただ過信によって相手を侮る愚かな態度、そんなサイの破面をハリベルが嗜める。

 

 

「止めろ。 この大虚は藍染様に引き合わせる為私が連れ帰ったのだ、その邪魔をすれば容赦せんぞ」

 

「黙っててもらおうか第4十刃サマよぉ!こんな雑魚にそのザマじゃオレはアンタが十刃なんて認められないね!十刃ってのは力を持ってるからオレ達は従うんだ!それが示せないヤツは十刃じゃないんだよ! 」

 

 

第4十刃であるハリベルに対して憚る事無く叫ぶサイの破面。

彼が言った事は十刃以外の下位の破面の総意に近いものだった。

破面にとっては力こそ総て、それが示せない者に従う理由がどこにあるとNo.11以下の破面たちは多かれ少なかれ思っている。

そしてその破面達は彼らをクズ呼ばわりした火の玉の大虚を、サイの破面が殺すのを見たがっていた。

認めないとは言っても彼等が束になったところでハリベルには敵うなずもない、本能的にそれを判っているからこそ明らかに格下に見えるフェルナンドを殺すことで僅かばかりの愉悦を得よとしたのだ。

 

 

「それじゃぁこういうのはどうだ? 藍染サマに引き合わせる前にオレがコイツの強さを試してやるよ! 雑魚なんか会わせたって仕方ないからな!おい! お前らもそう思うだろ!! 」

 

 

周りからの期待の視線を感じとったのか、サイの破面はニヤニヤと笑いながら両手を広げて宣言する。

それがどれだけ浅はかで身の程を知らない行為かも理解せずに。

しかし真実とは別に声高に叫ぶサイの破面に賛同するように多くの破面が「やっちまえ」、「ブチ殺せ」と煽り叫び始めた。

広場を喧騒が支配しはじめ殺意の篭った視線がフェルナンドへと更に集中していく中、フェルナンドはそれをまったく意に介する様子もなく平然とした態度でハリベルと話していた。

 

 

「おいアンタ…… コレは殺っちまっていいのか?相手の力も測れねぇクズのようだし、死んじまっても問題はないだろ?」

 

「あぁ、私の言う事は聴かないらしいからな。お前がそう言わなければ私が始末していた所だ。侮蔑は甘んじて受けようとも律を乱す者は許さん。 ……だがもうすぐ藍染様がいらっしゃる、殺るなら手短にしろ」

 

「ハッ! 時間を掛けるな、だと? 笑わせんなよ、こんなクズ一匹消すのに時間なんぞ掛かると思ってるのかよ?」

 

 

広間を埋め尽くす怒号の中、フェルナンドとハリベルはそんなもの気にも留めない様子で語り合う。

その内容はいたって単純、目の前の愚か者をどうするかという簡単な問題。

フェルナンドにとって機嫌の悪いところに更に追い討ちをかけるかのように出てきた目障りな相手。

ハリベルにとっては十刃である自らの命に従わない破面、ただ笑らわれている内ならばよかったが明らかな命令違反を見逃すほどハリベルは優しくはない。

そして二人の出した結論は、この破面を始末する事だった。

まるで肩に落ちた埃を払うかのような気軽さで、二人はそれを決定した。

だがそれを目の前で聞いていたサイの破面は、怒り心頭といった様子で身体を震わせ直後大きく拳を振りかぶる。

それはそうだ、お前など取るに足らない存在だと言った相手に同じように取るに足らない存在だと言い返される屈辱。

いや格下だと思っている相手だったからこそ、サイの破面の自尊心は深く傷つけられていた。

 

 

「ふざけた事言いやがって! 今すぐぶっ殺してやる!!」

 

 

叫びと同時に振りかぶった拳をそのままフェルナンドの仮面目掛けて振り下ろすサイの破面。

その拳には押し固められた霊圧が込められ、鎧のような筋肉と相まってその破壊力は明らかだった、そして戦鎚の如く振るわれる拳がフェルナンドの仮面へと直撃する思われたその瞬間、フェルナンドの炎が弾けた(・・・・・)

炎は一瞬のうちに膨れ上がり瞬く間に大きくなると、そのままサイの破面を一息に呑み込んでいたのだ。

 

 

「ギャァアああアァァぁァアアあぁァァァアァァァ!!!」

 

 

炎に呑み込まれ火達磨になったサイの破面が断末魔の叫びを上げる。

だがそれも一瞬、次の瞬間にはもうその声すら聞こえなくなった、身体を焼く炎の痛みに耐え切れず、叫び声を上げるために大きく開かれたその口からフェルナンドの炎は破面の身体の中へと入り込み、気道を焼き、肺を焼き、臓器を焼いたのだ。

焼き爛れた喉は最早声を発することは叶わず外側と内側の両方から焼き尽くされたサイの破面、既にそこには炎だけがその場で人の形のまま燃え盛っているのみ。

呑み込んだ破面の形が次第に失われ最後には炎だけとなると炎は次第に収まり、フェルナンドはまた先ほどと同じ火の玉の形に戻るとハリベルの隣へと揺らめきながら移動する。

 

広間に音は無かった、ほんの一瞬で総てが決着してしまったのだ。

先ほどまでフェルナンドの前で彼を見下し怒りに燃えていたサイの破面は最早居ない、その肉片一つすら残されていない、血痕すらなくただ彼が立っていた床に炎で出来た焦げ後が僅かに残っているのみだった。

その静寂の後に遅れてやって来るのは怒号。

目の前で同胞を焼き尽くされた破面達が一斉に叫びだしたのだ、様々な罵声が飛び交う、ありえないと、霊圧から考えてそれはあり得ない事なのだと、何か裏があるに決まっていると、そしてその総てに共通するのが「殺せ」という一つの意思だった。

まさに一触即発の気配、そしてそれは到底押さえ切れるものでは無くなりつつあった。

 

だが、その喧騒は一瞬で静まる、この男の登場によって。

 

 

 

「皆、遅れてしまってすまない 」

 

 

 

怒号と罵声が飛び交う広間に、さほど大きく発せられた訳ではない言葉が響く。

それはその男が持つ圧倒的な存在感によるものか、それともこの場にいる総ての破面が根源的に抱える恐れによるものかは判らない、だがその一言だけで広間は静まり返り、あれ程騒いでいた破面たちもそのなりを潜めた。

 

破面達がいる場所よりも、かなり高い位置に設けられた玉座に男がゆっくりと座る。

その玉座には広間から上るための階段は無く、断壁の上にあるそれは彼等とその男が隔絶された存在であることを暗に示しているかのようだった。

破面達が纏う白い衣とは似ているが趣が違うものを身に纏った男、白を基調とした破面の衣に対して男が着ているそれは黒を基調とし、その上から白の羽織を纏っていた。

柔和な顔立ちで常に笑みを浮かべてはいるが、その眼鏡の奥に誰よりも深い闇と欲望を詰め込んだ男、本来この虚圏と敵対する存在、尸魂界(ソウルソサエティ)の死神でありながら彼ら破面を産み出しそして支配する男、藍染惣右介が彼等の前に姿を顕したのだ。

 

 

「おかえりハリベル。 任務ご苦労だったね、待たせてしまってすまない。尸魂界を出るのに少し手間取ってしまってね…… 」

 

「いえ、私こそ藍染様の御前にこのような無様を曝しますこと、どうかお許しください」

 

 

先ほどまでの喧騒の理由を藍染は問わない、無論ここは彼の宮殿であり事の顛末の総てを彼は知っている。

だが、そんなものは彼にとって小さな出来事、ただ粛々と己の目的だけに邁進する彼にとって、それは余りに小さくそして瑣末な出来事なのだ。

故に彼は問わない、そしてハリベルにも労いの言葉をかけはするがそれは心からの言葉ではないだろう、だがそれも仕方が無い事、藍染惣右介にとって”こころ”などという存在は理解の外であり、故に彼にこころからの言葉などありはしないのだ。

 

 

「構わないよ。 ……それで彼なんだね? 君にその傷を負わせた、という大虚は」

 

「はい。 この傷は間違いなくこの者との戦闘で負ったものです。私との戦闘によってこの者の霊圧も極端に減衰し、現在はその大半を失っている(・・・・・・・・)状態ではありますが…… 御覧になられていた通り、最下位の破面程度ならば現状であっても問題なく対処出来る様です」

 

 

ハルベルの言葉に先程まで殺気に塗れていた彼女達の周りを囲む破面達が一斉に息を呑む。

放つ霊圧から雑魚だと決め付けていた大虚が、実はその霊圧の大半をハリベルとの戦闘で使い果たしていたという事実。

そしてその大半の霊圧を失った状態で最下位とはいえ自分達と同じ破面をいとも簡単に、そして一方的に焼き殺したという事実。

奇異の眼から殺意の篭った目へと変わったそれが、今度は恐怖を映すものへと変わっていく。

 

 

「そのようだね。 名を、聴かせてくれるかい?荒ぶる炎の大虚よ…… 」

 

言葉と共に辺り一面を霊圧が襲った。

藍染から放たれた霊圧が、まるで総てを押えつけるかのように降り注ぐ。

笑みを浮かべ、頬杖をついたまま放たれるその霊圧の大きさに「ヒッ」と何処からとも無く小さな悲鳴が漏れるほどの霊圧、呼吸に等しく解放されただけで居並ぶ破面の殆どを跪かせるような藍染の霊圧の中で、フェルナンドは怯む事無く藍染の顔を睨み付ける。

 

 

「……フェルナンド。……フェルナンド・アルディエンデだ。アンタが俺に力をくれるのかよ?」

 

「力を得られるかどうかは君次第だよ、フェルナンド。我ら破面はキミを歓迎しよう 」

 

「そうかい…… 一つ確認だが、俺がここで力をつけてこの女を殺したらアンタ…… どうする?」

 

 

力をくれるのか、と問うたフェルナンドに藍染は霊圧を抑えるとそれはお前次第だ答えた。

そう、力とは与えられるものではなく勝ち取るものであり、そうでなければそれは“本当の力”と呼ぶ事は出来ない。

そして歓迎の言葉を述べる藍染にどこか喜色めいた色を見せたフェルナンドが再び問いを投げかけた。

 

自分がハリベルを殺したならばお前はどうするのかと。

 

一瞬藍染の顔から笑みが消え代わりにほんの僅かだが驚きが浮かぶが、しかしそれもまた直ぐに消え柔和でしかしどこか暗い笑みへと戻った。

だが彼等の周りはそう簡単に治まる事は無い、ハリベルを殺すというフェルナンドの発言にざわざわと広間は訝しむような空気に満たされるが、やはり藍染が口を開くと同時に広間は再び静寂に巻き戻る。

 

 

「驚いたな…… 君はハリベルを殺すつもりで虚夜宮(ここ)へ来たのかい?そうだな…… 私は何もしないよ。 キミがそれだけの力を付けたのならばキミの好きにすると良い。だがそれは容易い道ではない…… そうだろう?ハリベル」

 

「無論です。 私とて藍染様から第4の位を頂く身、易々と敗れる筈がありません」

 

 

驚きながらも、それ以上に面白いものを見つけたといった風でフェルナンドの問いに答える藍染。

彼にとってはこれもまた余興に過ぎないのだろう。

必要なのは純然たる力、より強力でより禍々しい殺戮の力、それが手に入るのならば彼にとって破面の殺し合いなど座興でしかないのだ。

 

そしてハリベルの迎え撃つという主旨の発言にフェルナンドの仮面の奥に光る瞳が鋭さを増す。

必ず、必ずこの女を己の手で殺してやると、そして彼女を殺したその先にこそ己の求める実感はある筈だと。

視線を交わす事無く睨み合うフェルナンドとハリベル、こうしてフェルナンドは藍染により虚夜宮で破面の一員となることが認められた。

 

 

 

だが、事態はこれだけで終わりではなかった。

 

 

 

 

 

「ハリベル…… 実はひとつ、君に伝えなければならない事があるんだ…… キミが城を出て直、破面No.3、『第3十刃(トレス・エスパーダ)』 ネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクが失踪した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の言葉

 

それは絶対の宣誓

 

間違い等無く故に完全

 

駆け上がる階段

 

黒い翼

 

それは全て

 

血によって贖われる

 

 

 

 

 

 

 


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