BLEACH El fuego no se apaga.   作:更夜

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BLEACH El fuego no se apaga.79

 

 

 

 

 

時とは誰にでも平等に過ぎ行くものである。

人であれ死神であれ虚であれ、そして破面であれそれは同じ。

第6十刃(セスタ・エスパーダ)グリムジョー・ジャガージャック及び配下の従属官(フラシオン)、そして当時第7十刃(セプティマ・エスパーダ)であったフェルナンド・アルディエンデによる現世への無断侵攻。

この出来事より後、ある者は座を追われある者は念願の座を手にし、ある者は己が力の弱さに怒り、またある者は願いと義理の狭間で苦悩する。

それぞれが思い思いに、しかし欠片も無為に過ごしたとは思っていない日々。

どこまでも己の欲望の為に費やされる彼等の日々に措いて、これらはその一幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男はただ座っていた。

そこは明かりの無い少し広めで天井の高い部屋、生活感は無く私室という様子ではない。

おそらくそこは彼の所有する宮殿の一室であり、そして場所など本当は何処でもよかったのだろう。

ただ彼にとって誰にも邪魔されず、一人きりになれる場所であるならばそれこそ何処でも。

部屋の中心に椅子ともつかない白い直方体を置き、そこに座っている男。

脚は大きく開き身体は前のめり、(もも)の上にそれぞれ肘を置き、両手の指を絡ませるようにして握った状態で目を瞑り座る男。

一見考え事をしているようにも、またはそのまま眠っているようにも見えるその男であるが、その実はどちらでもなく。

遠目から見れば座っているだけのように見えるその姿も、近くによって見れば趣を変えていき、上腕の筋肉は時折ピクリと動き握られた手には力が篭り、眉は時折しかめられ真一文字で閉じられていた口からは歯噛みする音が零れる。

 

そして何より、その水浅葱色の髪と同じ色の立ち昇る霊圧は、ただ座っていると言うだけにしてはあまりに異質で、圧力に溢れていた。

 

暴れるのではなく立ち昇る霊圧、しかし常時放出されているそれよりは明らかに大きい霊圧。

その霊圧が示すのは霊圧を放つこの男が今集中しているという事。

座っているだけに見えるこの男がしかし今、何にも増して集中しているという事を示していた。

 

白に襟袖が黒い破面死覇装、水浅葱色の髪に目尻には同じ色の尖った隈取のような仮面紋(エスティグマ)、右の頬には牙を持つ右顎を模した仮面を残し腹の中心に孔を開け、座りながらも強力で研ぎ澄まされた霊圧を発する男の名はグリムジョー、第6十刃グリムジョー・ジャガージャックである。

座しているだけにも拘らず、その姿に見合わぬ霊圧を発するグリムジョー。

いや、発していると言うよりも寧ろ立ち昇っていると言った方が適切か、己が周りに意識的に圧力を押し出しているのではなく彼の無意識が発するものであり、それは感情に起因する霊圧の放出。

そう、彼の感情は今表面にでていないだけであり、内心では昂ぶりを見せていた。

昂ぶる思い、感情は彼の意識するところではなく無意識で霊圧を強め、立ち昇るそれは静かではあるが彼の周りを僅か照らすような光の柱を作り出す。

明かりの無い部屋の中でその光の柱は余計に明るく見え、グリムジョーの姿は闇に浮かび出すかの様に見えていた。

 

だが一体何が彼の感情を昂ぶらせこうして無意識での霊圧放出すら成すと言うのか。

座るという行為にあってしかし彼の身体は強張り、両手は強く握られ眉間には皺と額に薄っすらと汗を浮かべさせるものとは一体なんだと言うのか。

そんなものは決まっている、彼という男の今までを鑑みた時、そして彼の感情が昂ぶりを見せるときなど一つしか無い。

 

戦い。

 

それもとびきりの戦い、感情の昂ぶりとは即ち熱き血潮の滾りであり、彼の血を滾らせるのは戦いをおいて他にない。

野望、戦いの王となるという彼の野望を叶える唯一の手段。

戦って、戦って、戦いつくしたその先にある王の玉座、それに座るための手段として、その為に今よりも強大な力を得るため彼は戦う。

そして何より彼を昂ぶらせその血を滾らせるのは一人の男。

金色の髪を振り乱し紅い霊圧を纏う修羅が如き男、不遜にも彼に楯突き彼にとっての敗北を刻み、彼の頭の中からその姿が終ぞ消える事の無い忌々しくも強き男。

そう、グリムジョーが今戦っているのはフェルナンド・アルディエンデなのだ。

 

戦っているのはグリムジョーの頭の中、集中し思い描いたフェルナンドという男と、今まで彼が見たフェルナンド動き。

拳脚をもって敵を打倒し、業をもって敵を殺す、炎をもって敵を焼き尽くし苛烈なる意思をもって敵を圧倒する。

思い描かれるフェルナンド、常にニィという笑みを浮かべ、嬉々として自分へと挑みかかってくる彼の姿をグリムジョーは想像し、迎撃し突撃する。

幾度と無く思い描かれた戦いの想像は、その全てにおいて一方的なものになる事は無かった。

一撃入れればかならず同等の一撃が返され、二撃三撃と攻め立てたとて倍する数の反撃に押し戻されそれを更に凌駕するように自分も攻めるを繰り返す。

想像とは本来最悪を想定しながらも何処かで自分に甘く有利なものを思い描きがちだが、グリムジョーにそれは無い。

何故ならそれは妥協であり油断、敵をこの程度だろうと見積もり自ら要らぬ隙を生み出す愚かなる行為だからだ。

相手を正確に量り尚且つ欠片も欠落を許さぬ想像、あの男ならばこの一撃は易々と避わすだろう、あの男ならばこの程度で膝を落とす事は無い、あの男ならばこの状況からでもこちらを()る一撃を繰り出すはずだ。

ありえない、出来るはずが無い、そうした断定は死につながるのが戦いの常、故にグリムジョーに油断はない。

あるのはフェルナンドを如何にすればその牙と爪をもって引き裂けるかという思考であり、その為にはフェルナンドという男をほんの少しでも甘く見積もることは許されないのだ。

 

 

だが、それはどこまでも想像であり現実には届かない。

 

 

揺らめき立ち昇る水浅葱色の霊圧は次第収まり、グリムジョーは静かにその瞼を開いた。

額を汗が伝いながらそれを気に留める様子もなく黙っていたグリムジョーだったが、軽く息を吐くと一つ舌打ちをする。

吐き捨てるようなその舌打ちは彼の内面をよく顕し、彼の内側が不満に満ちて居る事を示していた。

 

 

また(・・)決着が着かねぇ…… 野郎が圧してようが俺が圧してようが、どんな状況だろうが決着だけがまったく浮かんで来やしねぇ。 ……クソが、どこまでも忌々しい野郎だぜ…… )

 

 

そう、如何にグリムジョーが油断無く思い描く戦いの光景をもってしても、二人の決着は見えない。

幾度と無く繰り返してきた想像はその数だけ戦いの流れが存在し、まるで樹の根の様に分かれて進むが如く。

例え同じ攻撃を繰り出し、また繰り出されたとしても同じ対応を必ずしも取る訳ではない戦いの渦の中、一つとして同じように進む戦いなどありはしないのだ。

だが、そうして枝分かれする戦いの流れは大きく広がりながらも必ず、一つの点へと終結する。

それが決着の光景、両者が戦い己が最善を尽くし死力を尽くし、自分へと手繰り寄せようとする勝利と言う名の決着。

どちらかが必ず地に伏しどちらかが勝利の叫びを上げる光景、戦いに生きる者は須らくこの光景に、勝利者として叫びを上げるこの光景にたどり着くことを欲しているのだ。

しかしグリムジョーにこの戦いの決着の光景は見えなかった。

それは単に今回だけという話ではなく、彼が描く全ての戦いに決着は見えないのろう。

何度も繰り返した、思い描いた戦い、思いを馳せ戦いに酔い試練が為のそれは必ず不完全なかたちで視界から消えうせる。

まるでその先など誰にも判るものではないと言わんばかりに。

 

 

(俺の力が足りない? ふざけんな、俺があの野郎に劣るとは思えねぇ…… あの時、現世であの野郎と向き合った時に判った。近いうちに俺達はぶつかる(・・・・・・・)。この直感に間違いは無ぇ。 俺の直感が叫びやがる…… 戦るなら今だ、となぁ…… )

 

 

決着の光景が見えない、それは両者の実力が拮抗し想像出来ないか、或いは自分が負ける故に見えないかの二つ。

だがグリムジョーは片方の理由をあっさりと否定する。

それは彼の自尊心が認められないものだからという訳ではなく、彼のうちに住まう獣、彼の直感が前者の理由を裏付けるため。

グリムジョーが再びフェルナンドと戦うと決めた時に求めたのは、互いの力が最高に高まった時に戦うというもの。

フェルナンドの力が最高に高まりながらも自分はそれを力によって凌駕し、全力の全力を叩き潰してこそ自分の強さは証明されると。

そう誓っていたグリムジョー、そして現世侵攻の際に対峙したフェルナンドを見たとき、互いに獲物を前にし退くことがなかったあの時に彼は感じたのだ、直感したのだ、その時は近い(・・・・・・)と。

それは野生の勘なのだろう、互いの力が拮抗し尚且つ高まった時を彼の勘は捉えたのだ。

互いの実力が伯仲し故に結末は見えない、戦いの中で進化する彼らにとって結末は紙一重であり如何に彼の油断ない想像でも描くことは出来ないのだと。

 

 

(まぁいい…… 結局は戦れば判る事だ。 俺に疑いは無ぇ。 強さ、力、そして勝利、その全てを俺が掴む事になぁ…… )

 

 

グリムジョーの瞳には僅かの疑いも無かった。

自らの勝利を、自らの力が彼を上回りそして強いのは自分であると。

疑わない事は力、自らを疑うものに勝利者たる資格は無く故にそれは勝者の条件。

自らの内に突き立てた揺るがぬ柱、彼という存在を確固として支える力の柱。

想像がつかない事に恐れはない、それはおそらく相手も同じ事であり故に血は滾ると。

思いもしない攻撃、想像すら出来ない一撃、それら全てを自分は上回り凌駕し勝利してみせるとグリムジョーは考えていた。

結実、愚かにも自分に楯突きしかしそれが出来るだけの力を証明し、立ちふさがるようにして彼の前で不敵な笑みを浮かべる男フェルナンド・アルディエンデ。

その男を自分が凌駕し倒す、それに滾り昂ぶらぬグリムジョーではない。

だが焦る事はないのだ、そういった時(・・・・・・)とは自ら近付かぬとも、不思議と自然に彼へと近づいてくる。

唐突に気安く、そしてあくまでも自然にそういう流れは訪れるのだ。

故にグリムジョーは逸らない、如何に内に住まう獣が檻を引き裂かんばかりに暴れても逸らない。

逸って台無しになるくらいならば待とうと、最高の舞台はいずれ訪れるならば待とうと、誰にも邪魔などされては困るのだからと。

 

 

そうして座して尚獰猛な笑みを浮かべるグリムジョーに一筋の光がさす。

それは扉が開かれたが故の光り、差し込むそれはグリムジョーの姿を闇から引きずり出しその光に彼は一瞬眼を細める。

光に浮かぶ影は一つ、小柄な影は一瞬グリムジョーに彼の破面を幻視させたが影はその破面とは対極に位置するような人物だった。

 

 

「ウルキオラ…… テメェ何の用だ…… 」

 

 

光に浮かぶ影の正体、それは第4十刃(クアトロ・エスパーダ)ウルキオラ・シファー。

小柄な身体に病的なまでに白い肌、緑色の硝子球のごとき瞳に感情は浮かばず左の頭部に角の生えた仮面の名残を残した彼。

突然の訪問客にグリムジョーはあからさまなまでの不快感と敵意を見せるが、ウルキオラにたじろぐ様子はない。

寧ろ何も感じていないと言ったほうが正しいかのごとく、自分を睨みつけるグリムジョーの瞳をただ真っ直ぐに見返しながら彼は言い放った。

 

 

 

「俺と来い。 グリムジョー 」

 

 

 

 

巨大な戦いの渦は、ゆっくりと加速し始めていた……

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

何かが風を切る音が響く。

それは切り裂かれる風の悲鳴、しかしそんな悲鳴など意に介さずそれは飛翔し風は叫んだ。

広い空間、壁も床も天井もそしてそれを支える太い柱の全てが白で統一された明るい空間、そこを飛翔するのは白とは反対に黒い物体。

それも一つや二つではなくそれこそ数を数えることなど無意味なほど大量なそれは、まるで太い竜巻の如く飛び回り続ける。

よくよく見ればその黒い物体は黒い羽、風に舞い上げられたようにヒラヒラと舞うのではなく明らかな意思をもって方向を揃え周回する様にして飛翔する黒い羽だった。

そして飛翔する羽の中心、黒く太い竜巻の中心にそれは居た。

 

長く伸びたきめ細かい漆黒の髪、その髪と同じ漆黒のドレスを身に纏いしかし肌は白よりも青白いといった表現の方が適切なほど病的。

背中から腰にかけて大きく空いたドレス、その腰辺りからは一対の黒い翼が生え、大きく開かれその様はまるで黒い十字架の様。

唇には薄紫の艶やかな口紅が点され、端正な顔立ちを伺わせるがしかし、その目元は厚手の黒いヴェールによって隠されていた。

黒い羽の竜巻にあってその中心に立つ美しき人、彼女の名はアベル・ライネス、前第5十刃(クイント・エスパーダ)であり現在は破面No.101(アランカル・シエントウノ)として十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)となった女性である。

そして今の彼女は普段の身体を覆い隠すような白い外套型の死覇装ではなく、自らの斬魄刀へと封じた力の核を解放し、本来あるべき姿へと回帰する刀剣解放(レスレクシオン)を行った姿。

鶚貴妃(スパルナ) 』という名の斬魄刀を解放した今の彼女は、広げた黒い翼によって超高精度での霊子の操作を可能とし、こうして列を成すかのように彼女の周りを高速で周回する羽の一つ一つを、彼女は完全にその制御下に置いているのだ。

 

彼女の周りを高速で周回する黒い羽の群れ、一つの意思の下完全に統制されたそれらは一つの軍隊のよう。

一糸乱れぬ羽の兵士達、アベルは竜巻の中心からそれらを見やり号令を下した。

号令と言っても言葉を発した訳でも腕を動かした訳でもない、彼等羽の兵士を指揮するのはアベルが持つ黒い翼。

それによって霊子の流れを制御し調整し掌握する事で彼女は羽を、どのような角度でどれくらいの速度でまたどのようにして飛ばすかを文字通り想いのままに制御できるのだ。

翼により号令を下された羽達、黒い竜巻の中からその内六枚づつが順々に飛び出し、都合二十四枚がそれぞれ四方へと分かれる。

アベルを中心とする竜巻、それを囲むようにやや離れた位置には天井を支える太い柱があり、竜巻から分かれた羽達はその柱目掛けて飛翔していく。

柱を目掛けて一直線に飛翔していた羽達はそのまま柱に突き刺さる、のではなく柱の直前で二手に判れ柱を避けると、アベルから見て柱の裏側となる位置で再び一つに合わさり反転すると今度こそ柱へと突き刺さった。

見れば柱の裏には小さな5cm程の円が描かれており、羽達はその円の中に一枚も漏れる事無く突き刺さっているのだ。

彼女の視界から完全に死角となっている柱の裏、さらにそこに描かれた小さな小さな円、その円の中に一枚も外す事無く羽を突き刺すという離れ技、十刃、いや全破面中最高の霊圧知覚とそれをもって霊子の流れを制御する技は十刃落ちとなった今でも健在、と言えるだろう。

 

 

 

「フフ…… 我ながらなんと不様な出来(・・・・・)か…… 」

 

 

 

しかし、その離れ技をしてアベルは自らを嘲笑する。

常人、いや達人から見たとて今アベルが行ったものは常軌を逸するが如き技、如何に霊圧知覚に優れていると言ってもまったくの死角にある的を寸分違わず射抜くなど彼女以外に出来るはずもない。

だがアベルはそれがあまりにも不出来でまるで児戯にも劣るかのごとき嘲笑を自らに浴びせるのだ。

まったく話にならない、そんな思いをありありと滲ませて。

 

 

「そうは思わないか? 破面No.105(アランカル・シエントシンコ)…… 」

 

「……何さ、やっぱり気が付いてた訳? 」

 

「無論だ。 貴様が無意味に霊圧を抑え、こちらを見ている事は判っていた。この姿の私相手にその程度の隠遁は、無意味でしかないというのにな」

 

「チッ! やっぱり気に喰わない女ね、あんた!」

 

 

自らを嘲うアベルは不意に同意を求めるかのように一本の柱へと声をかける。

そしてその声から遅れること数秒、柱の影から現われたのはアベルが指摘したとおり破面No.105チルッチ・サンダーウィッチだった。

小柄な身体をミニスカートでゴシックロリータ風の死覇装で着飾った彼女、やっぱりバレてはいたのかというチルッチの言葉にアベルは当然だといった風で答える。

その答えはどこまでも彼女らしく相手の好意の無意味さを突くものであったが、別段他意はなくチルッチが愚かだと言っている訳では決して無いのだが、そうした無機質な言葉というものはやはり言われた者にとってはあまり心地よいものではなく、チルッチの中でアベルはやはり気に喰わない女だ、という評価が上塗りされる結果となっていた。

 

 

「結構、他者に気に入られる事など無意味だ。他者の評価など私には何の意味も関係も無い。それよりも無意味にそこに隠れていた理由を聞こうか? No.105…… 」

 

「嫌な女ね…… 別に、偶々近くを通りかかったら強い霊圧を感じた、だから誰のか確かめに来たらあんただった、それだけよ」

 

「……成程、嘘ではない……か…… 」

 

「疑ってたわけ? 失礼しちゃうわ! 」

 

 

気に喰わないというチルッチの言葉にアベルはそれで良いと答える。

他者の評価、他者に気に入られる事、また他者に自分がどう見られているか、そんなものを気にする事など無意味だと。

それを気にしたところでどうなるものか、他者に気に入られれば強くなるのか、他者に評価される事が自分の力につながるのか、答えはどう考えても否。

無意味、無駄、不要を嫌う彼女らしい答え、その答えにチルッチは改めて嫌な女だと口にしながらアベルに問われた何故此処に居るのか、という言葉につまらなそうに答えた。

曰く強い霊圧を感じその主を確かめに来た、普段感じる霊圧に比べ解放後の霊圧というものはその量から桁違いであり、如何に面識のある相手のものだとしても完全に当てになるものではない。

更に出会ってから日が浅くそう何度も顔を合わせる相手ではないチルッチにとって、アベルの発した霊圧は興味に値したのだろう。

チルッチの言葉を彼女自身の霊圧の揺れから真実だと判断したアベル、嘘ではないと納得した様子であったがその言葉にもチルッチは怒り気味であった。

 

 

「……にしても…… あんた化物? 」

 

「それは生物の分類としてか? それならば私は間違いなく化物だが、何か別の意味であるならば些か心外だな、No.105」

 

「……一々面倒くさい女っ! あたしが言ってんのはアレよ!自分の死角にあるあんな小さい的に寸分違わず羽突き刺すなんて、よっぽど化物じゃない限り出来っこないって言ってんの!」

 

 

アベルの言葉にイライラを募らせながらも、チルッチは一度傍にある柱の上を見上げた後、アベルに話しかける。

お前は化物か、と。

そう言われたアベルは生物、破面という存在である自分は言葉の通り化物であるがもしチルッチの言う化物が生物的な意味ではないというのならば、それは心外であると答えた。

なんとも回りくどい、というか理が先行しすぎたような受け答えにまたしてもイライラが募るチルッチ。

軽く地団駄を踏むようにしてチルッチは柱の上部を指差しながら声を大にする。

そこにあるのは先ほどアベルが突き刺した羽、柱の陰に隠れていたチルッチはその現場をその眼で目撃し、驚きを覚えていたのだ。

どう考えても普通ではない、自分の死角にある的を目掛けて羽を飛ばし突き刺す、それも極々小さな的を目掛けてであり驚くべきはその的を一切違わず突き刺しているという事。

おそらく他の三本の柱も同じように的を違える事無く羽が突き刺さっているであろう事を考えると、チルッチはアベルの異常なまでの力に呆れる程だった。

だが、その呆れはアベルのこの言葉で更に大きくなる。

 

 

 

「何を言うかと思えば…… 無意味な…… その理屈でいけば私は化物ではないな。あの程度(・・・・)で化物などと言える訳が無い、ただ的に当てる(・・・・・・・)だけならばあの的は大きすぎる(・・・・・)位だ」

 

「はぁ!? 」

 

 

僅か5cmの円に六枚の羽を寸分違わず突き刺す、その技をもってアベルはそれをこの程度と評する。

まるであの程度の事で化物呼ばわりされる事の方がいっそどうかしているとでも言わんばかりに、如何に死角にあろうともたかが的に当てる程度、そこになんら技術など必要なく、それを求めるのならばあの的はもっと小さくなければいけないとすら彼女は言うのだ。

チルッチからすれば充分なその異常性、しかしそれすら彼女の、アベルの基準からすれば出来て当然の事。

得手不得手は誰にでもあるものだが、アベルの場合得手の部分が他者よりも圧倒的に秀でているが故の基準、それをもってすれば彼女の的当ては最初に彼女が零したように不様な出来、という事なのだろう。

 

 

「あれで大きい? 冗談にしちゃ笑えないわね…… じゃぁあんたは一体何を目掛けて羽を飛ばして突き刺したってのさ」

 

「冗談ではなく事実だ、No.105。 ……教えたところで無意味ではあるが、まぁいいだろう。私が狙っていたのはあの的でありそして私自身の羽(・・・・・)だ」

 

「……羽を狙う? 言ってる意味が判んないわ。勿体つけないでさっさと教えなさいよ 」

 

 

何を馬鹿な、と言った様子でアベルの言葉を鼻で笑うチルッチ。

如何に目の前の女性がつい最近まで在位の十刃だったとはいえ、的に当てるだけならば約5cmのそれは大きすぎるなどと言うのは冗談でしかないと。

そもそも的としては大きすぎると言いながらもそれを用い、現実それを目掛けて突き刺したあの羽は一体なんなのかと問うチルッチに、アベルは僅か考え込んだ後、説明する事は無意味だとしながらも彼女の本当の的を語ったのだ、それは羽だと、アベルが操り目掛け突き刺した羽、それこそが自分の本当の的だと。

訝しむチルッチを他所に、内心やはり説明する事など無意味だと思いながらもアベルは口を噤む事無くチルッチにその真相を明かす。

 

 

「あれは本来的に当てる事が目的ではない。本当の目的は的へと突き刺した一枚目の羽、後に続く羽は全て先に刺さった羽を(・・・・・・・・)薄く両断する形(・・・・・・・)で突き刺す事が目的だったのだ。故にこれは無意味で不様な失敗の姿でしかないのだよ」

 

「ッ! 」

 

 

アベルが発した言葉はチルッチを驚愕させるに足るものだった。

的はただ最初の一枚のためのもの、そして本当の的は彼女が言ったとおり自らの羽。

まず一枚羽を柱へと突き刺し、その後に続く羽は最初に突き刺さった羽を薄く真っ二つに両断し、続く羽もまた同じように先に刺さったそれを両断する形で突き刺す。

六枚だった羽は最後の一枚を除きすべて両断され都合十一枚に変るはずだったと、アベルは事も無げにそう言い放ったのだ。

考えられない、そんな思いが浮かぶのはチルッチ。

アベルの言う言葉は、事も無げに発した言葉はその実どれだけ不可能に近いものかと。

羽が如何程の厚みを持っているかは彼女には判らない、しかしどう見たところで“ 厚い ”という表現には至らないであろう羽をしてそれを両断する事の難しさ。

そして何より自分がそれを出来るという事をまったく疑った様子のないアベルの姿、チルッチからすればそちらの方が異常であり戦慄を覚えるものだった。

 

 

「そう無意味に驚くこともあるまい、No.105。現に私はこれを失敗しているのだ、少し前ならば造作も無く出来た事をな…… やはり、そう簡単に癒えるものではない、という事か…… 死して尚、邪魔にしかならん無価値な男だ、あの暴君は…… 」

 

 

驚くチルッチを霊圧から察したのか、アベルは自嘲気味な言葉を彼女にかける。

いくらこうしようと思ったと語ったところで結局は失敗していると、語った言葉を実証できない以上それは妄言の類に過ぎず驚く事は無意味であると。

だが彼女はこうも続けたのだ、少し前(・・・)ならば造作も無く出来ていた事だと。

そう、その言葉が意味するのはこの行いが初めての試みだという事ではなく彼女にとって日常的な訓練に過ぎなかったという事。

そして裏を返せば今、彼女はその日常的な訓練すらこなせない状態にあるという事なのだ。

 

アベルの翼、黒く広げられた一対の翼、それは今彼女にしか判らないがしかし間違いなく損傷を抱えている。

第8十刃(オクターバ・エスパーダ)ノイトラ・ジルガとの座を賭けた強奪決闘(デュエロ・デスポハール)に措いて、彼女は突如乱入した今は亡き“暴君” ネロ・マリグノ・クリーメンによってその翼に甚大な被害を被っていた。

今となっては外見的な傷は無く見た目上癒えていると言っていい彼女の翼、しかし外の傷がいくら癒えたとてそう易々と力が戻るかと言えばそれは違う。

ただでさえ超精密な霊圧操作を可能とする彼女の翼、言うなればそれは精密機器と同じでありそれはほんの小さな傷だけでも機能に重大な障害を齎す。

彼女が過去に造作も無く出来たこの的当てが今現在、彼女流に言うならば不様な出来を晒しているのは全てこの為。

彼女が負った翼の傷は一月二月で完全に癒えるほど軽いものではなかったという事だろう。

 

 

「何よ、あんたあの出来でまだ不満な訳? 嫌味な女ね、ホント…… あたしからすればこれだけ出来れば充分だと思うけど?」

 

「充分だ、などという言葉は無意味だ。 それは何処までも自己満足にすぎない、そして自己に満足した者にそれ以上、上に昇る資格は無い。そして何よりこの程度で勝てるほどアレは弱くは無い筈だ…… 」

 

 

再び柱の上を見上げ、突き刺さる羽を見るチルッチ。

自分にも羽はあるがああいった正確な攻撃ではなくどちらかと言えば大味で、しかしそれでも負けているとは思わなかった。

しかしそれでも此処までの精度で操作出来るかと言われれば言葉を濁すより他無く、故に彼女が何をそこまで不出来と呼ぶのかをチルッチは理解出来なかったのだ。

これ以上何を望むと、既に常軌を逸したかのような力を手にしながら一体何をまだ望むのかと、既に充分なほどの力を持っているにも拘らず、と。

だがアベルにとってこれは充分と呼ぶには程遠い場所。

何より充分だなどと考えて歩みを止める事は無意味でしかないと。

おそらく昔の彼女ならば歩みを止めていただろう。

今出来る自分の全てを把握し、それ以上を求めたところで手に入らないと判断した時点で彼女はその歩みを止めていただろう。

何故なら彼女の司る死は“ 諦観 ”、全てを諦める方向で考える精神の死。

故に今現状の自分で敵に敵わないと判断したならば潔く、いや呆気なく己の死を受け入れる事だろう。

勝てぬのならば戦うことすら無意味、永らえようとする事など無意味の極地であると言わんばかりに。

 

しかし、今の彼女は少し違う。

 

無意味だと断じながらも言葉を尽くし、無意味だと判っていながらも止まらず力を求める。

それは自らの理論の完全性を証明するために費やされる時間。

諦め投げ出すのではなく僅かばかり足掻いて見せようという方向性の現われ。

充分だな度と歩みを止めればあの男はその分高みへと昇るだろう、自らの力に満足すればその間にあの男はその渇望によってより力を増すだろう。

故に止まる事は、満足することは許されない。

何故ならあの男を倒し自らの完全性を証明するには今度こそ、完膚なきまでに力によってあの男を打倒するより他無いと彼女は悟っているのだ。

 

 

「この程度、ねぇ…… あんたさ、一体何と戦う心算なわけ?」

 

 

まるで過小評価するように自らの力を足りないとするアベルに、チルッチは一つ溜息を吐いた後呆れたように問う。

気に喰わなくて嫌味でイラつく女という評価をアベルに下し続けるチルッチではあったが、頑として自分を曲げない芯の強さはそれなりに評価してもいい点だと彼女も思っていた。

故に問う、その芯の強さをもって力を鍛え、一体何と戦う心算なのかと。

チルッチの問いにアベルは僅かな逡巡を見せた後、僅かに口角を上げるとこう答えた。

 

 

 

「何の事はない…… 私程度には(・・・・・)化物のような相手だよ…… 」

 

 

 

また一つ、小さな渦はうねりを見せ始めていた……

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「本当にやるのかい? 」

 

「……あぁ 」

 

 

そこは地底のそこのように暗く陰気な空間。

壁を這うのはどこか有機的な管の数々、時折煙を吐きながら脈動するそれらは、表現するに気味が悪いという一言に尽きるだろう。

その空間はそれ程大きくは無い様子だったが、暗く保たれた奥の方からは何とも形容しがたい苦しそうな叫び声や奇声が響き、ガチャガチャと鎖や鉄が擦れる音がする。

机の上は用途不明の実験道具、血液らしきものがべっとりと付いたままのそれと、ビーカーやフラスコに占領され、容器の中には色とりどりの液体が満たされもくもくと湯気とも煙ともつかないものを上げていた。

その奇怪と狂気が満たされた空間にあって一箇所だけ煌々と明かりに照らされる場所がある。

十字架型の手術台を照らし出すようなその場所に居る人影は二つ。

片方は照らされる手術台に手足と首を固定され、もう片方はその傍らに佇んでいた。

 

 

「それにしても驚いたよ。 まさか君みたいなタイプがこの僕を頼るなんて思いもしない出来事だ、こういう体験は実に素晴らしい!僕には判るよ、僕の脳細胞はこの思いもしない刺激に歓喜し、痺れ、震え狂喜しているのがねぇ!そしてこの提案も実にソソられる(・・・・・)! こんな狂った事を考え付くのはきっと僕か君くらいなものさ!」

 

 

傍らに立つ男は可笑しくて、そして嬉しくて堪らないといった様子で笑い声を上げる。

それは明らかに常軌を逸した笑い、狂っている事が嬉しくてそれに身を委ねることが楽しくて堪らないといった笑いだった。

 

 

「おい。 笑ってねぇでさっさと始めろ 」

 

「失礼。 少々興奮してしまったようだ…… しかし君は非常に面白い。 どんな理由かは興味が無いがコレを思い付き、躊躇い無く実行しようというのだからね、ある意味賞賛に値するよ」

 

 

狂ったように笑う男を手術台に貼り付けられた男は睨みつけ、黙らせようとする。

彼からしてみれば此処に来たのは、こんなふざけた笑い声を延々聞かされる為ではないといったところなのだろう。

こうして不様にも手術台に貼り付けられる姿を晒すという、この男の自尊心が許容できている事すら奇跡じみた現状、僅かでも男の怒りが振りきれれば拘束は無意味と化すかも知れない状況でもしかし傍らに立つ男はいたって余裕だった。

あまつさえ貼り付けの男を賞賛するとまでいう彼の言葉は、純粋に狂った思考を共有している彼への賛辞なのだろう。

 

 

「しかし本当にやるのかい? まぁ僕としては近年希に見る良質の検体に、常軌を逸しているとしか思えない施術を行えるのは、情事にもまさる恍惚を得られるだろうけど…… こんな施術をすれば、君はきっとまともではいられない(・・・・・・・・・・)よ?」

 

「……構いやしねぇ。 まともで居る事が強さを、俺の“ 最強 ”への道を妨げるなら、俺はまともな自分をブチ殺してやる」

 

 

傍らに立つ男は賛辞を語りながらももう一度問う。

本当にいいのか、と。

彼、いや彼らが一体これから何を始めようとしているのかは判らない、しかしそれは十中八九狂気の沙汰であることは確かだろう。

だがこの傍らに立つ男は貼り付けの男の身体を案じてこのような事を言っているのではない。

何故なら男の顔には心配ではなくニヤリという笑みが隠し切れずに浮かんでいるのだ、止めると言われても関係なく彼はその狂気の沙汰を実行する心算なのは明らか。

何より同じ破面である貼り付けの男を“検体”と呼んでいる時点で、これは貼り付けの男の願いを聞き届けたのではなくどこまでも彼自身の興味を満たす為の行為に成り代わっているのだから。

しかしその狂気を満たす為の行為であっても傍らに立つ男の言葉に嘘はない。

まともではいられない、という彼の言葉はきっと嘘ではなく真実、彼らが望む狂気の沙汰は貼り付けの男にとってそれだけのリスクを背負うものだという紛れもない事実なのだ。

 

だがしかし貼り付けの男は一瞬の迷いも無く構わないと口にした。

その迷いの無さは即ち意志の強さであり揺れない芯の存在を、そしてなによりこの男にも傍らに立つ男に負けない狂気が内包されている事を示している。

まともな自分など必要ではない、まともというものが自分の足を引っ張るのならばそれを自分は真っ先に斬り落とす。

“最強”を冠するのに必要なのは、強さを引き寄せて尚圧倒する絶対的な力でありその道を阻むものはそれが自分自身であっても殺して進むのだと。

そんな思いがありありと滲む言葉に傍らに立つ男は狂気に染まる笑みを深めた。

 

 

「結構! 大いに結構! まとも、普通、一般的、そんな画一されたものは何時だって僕達の足を引っ張る足枷でしかない!他者に紛れる事しか出来ない者達の言い訳や嫉み!自分より優れた者達を世界から締め出そうとする小さくて醜い正論というなの排他主義など、僕達には何の価値も無い!狂気なくして(・・・・・・)我等の進歩はない(・・・・・・・・)のさ! ハハハハ!実にイイ! 実にソソられる! この実験は必ず成功すると約束しよう!この僕の溢れる知識に賭けてね!! 」

 

 

狂った興奮は最高潮に達し、傍らに立つ男は大きく背を反らせて天を仰ぐようにして叫び笑う。

口は裂けた様に広がり目は見開かれ宿した狂気は彼の世界を狂乱させる。

まともである自分を殺してでも力を得ようとする狂気、傍らに立つ男にとって貼り付けの男の望みは狂っているとしか言いようが無く、それ故に価値があった。

素晴らしい狂気、何故これだけの事をしようというのかに興味など無い彼であるが、それを選択した事は大いに評価に値し、故に彼は歓喜に染まるのだろう。

 

 

「さぁ準備はイイかい? これから始まるのは激痛と悲鳴の宴だよ?神経を切り裂かれ内側から掻き毟られるような、身体中の血管にマグマを流し込まれるような、乙女すら恥じらいを容易く捨て醜い獣のような咆哮を晒すような!まさしく恍惚! それこそ脳が蕩ける程の! それ以外の表現を僕は知らないよ!ハハハハハ!! 」

 

 

狂っている事は既に判りきっている彼。

その狂気で世界を塗りつぶし、世界の全てをその知識としようとする男。

他者の命は顧みず、他者の苦痛を何よりの美酒とし、それらを糧に知識を得ることを至上とする。

その狂気が今まさに貼り付けの男へと向けられ、しかし貼り付けの男はまったく動じる様子はなかった。

 

 

「激痛なぞ構いやしねぇ、悲鳴は上げるもんじゃなくて上げさせるもんだ。そして必ず上げさせてやる……あのクソ女になぁ……!」

 

「実に結構。 では始めようか…… 」

 

 

狂気を前に動じず、男は激痛を許容し悲鳴を否定した。

それがこの男の矜持、力を得るため、最強を得るためならばいくらでもその身をなげうつ覚悟。

そして何よりその最強の道に常に立ちはだかる者を殺す為に、その為に彼はこの狂気に身を委ねるのだ。

貼り付けの男の言葉に満足した様子の傍らに立つ男。

彼の指が貼り付けの男に迫り、そして触れた瞬間貼り付けの男の身体は拘束を引き千切らんばかりに跳ね上がった。

眼は見開かれ身体中を紫電が伝い口からは泡が零れる。

意識を完全に残したまま身体を貫かれ焼き尽くされるような痛みに襲われる男。

この後どれだけこの男の苦行が続くのかは定かではないがしかし。

 

食い縛られた歯の隙間からは、欠片の悲鳴も漏れる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い思惑

 

動き出す歯車

 

空が割れ

 

這い出よ悪

 

 

 

 

 

 

 


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