モモンガは狂気に嗤う   作:シベリアン

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予告を全く守れずすいませんでしたああああああああ!


5話 天使

私は良い父親だろうか。

 

私は良い夫だろうか。

 

 

エンリの父は寝る前にふとこう思う事がある。

 

このカルネ村に移住してもう何年になるだろうか。

 

妻と共にこの村へ来たあの日の事を今でも鮮明に思い出せる。

 

未だ開墾されていない場所だらけの土地。

 

毎日が自然との戦いだった。

 

妻には随分と無理をさせた。

 

娘たちにも苦労をかけている。

 

だが日々の努力が地味ながらも着実に実っていく。

 

村は少しずつ発展し僅かながら余裕も出てきた。

 

ゆっくりと豊かになっていく暮らし。

 

報われた過去の日々。

 

そしてこれからもそれは続きやがて大きな芽を出す日がくるだろう。

 

気恥ずかしさから口に出す事は無いが愛しい家族にささやかであろうと幸せを。

 

その願いを胸に生きてきたつもりだ。

 

この私の、私達の誇りであるカルネ村で。

 

だから、この村を、家族を守る為なら嘘偽りなく命を賭けられる。

 

 

そう、今まさにこの瞬間、剣スケルトンの凶刃が頭上に降り注ぐ瞬間も。

 

己の命の終わりを悟ったが故に、彼はこう思っていた。

 

私は良い父親だったろうか。

 

私は良い夫だったろうか。

 

神よ、どうか我が愛しい家族をお救いください。

 

 

そう最後の祈りを捧げ、しかし未だ訪れぬ死に違和感を感じて目を開けばそこには。

 

 

「よく頑張った、後は俺達に任せろ」

 

 

死を切り裂く剣閃が舞っていた。

 

 

 

 

 

ロンデスは驚いていた。

たった今、村人に襲い掛かっていた剣スケルトンの蛮行を阻止すべく振るった己が剣。

村人を救うべく夢中で放ったそれだったが、その鋭さは恐らく今までの人生で最速の一撃だった。

守るべき者の為に剣を振るう。

ただそれだけで体に力が漲ってくるのを実感する。

 

今までも多くの戦場で剣を振るってきた。

しかし、それは任務の為であり、こうやって人の為に剣を握った事は無かった。

人類の為の戦いと、目の前の人間を救う為の戦い。

その違いを心で理解する。

 

これが、これこそが法国の剣が在るべき姿なのだ。

異形に理不尽に狩られる弱者を守る剣。

それこそが本来の法国の理念なのだと。

 

無論、与えられてきた任務の価値は理解している。

しかし、それでも、この体を駆ける熱い誇りもまた一つの真実なのだ。

 

剣スケルトンから抜き放った剣を返す形で迫っていた別のスケルトンを叩き割る。

 

こんな誇らしい気持ちで戦うなんて初めての事だ。

 

もう何も迷いは無い━━━

 

 

「かかってこい、死にぞこないの骨どもが!俺が居る限りここより先に進めると思うなよ!」

 

 

ベリュース隊の行動は早かった。

村を救う事が決まったその瞬間より全員が一丸となって戦場に駆け馳せた。

恐らくこの隊が発足して以来、最も優れた連携を取っていただろう。

 

村人達に注意が向いていたスケルトンはその動きに全く対処出来ず、無防備に晒していた横腹を食い破られる形となる。

突然の乱入者に殆ど抵抗も出来ず一気に包囲を突き崩された。

更にそちらの対処に気を取られると今度は村人への圧力が弱まり、そこから反撃を受ける。

元より野良仕事で鍛えられた屈強な村人だ、単純な戦力で見ればスケルトンを一対一で上回っている。

 

騎士が磨き上げられた戦技で戦線を構築し、数の暴力で押しぬけてきた敵には村人が集団で駆逐。

 

決壊しかかっていたこの脱出路はこうして幾多の奇跡の上に再びその活路を開かせていた。

 

 

 

 

 

(これなら行ける)

 

 

隊を指揮しながらベリュースは手応えを感じていた。

無数に押し寄せるスケルトンは脅威だが、鍛え抜かれた騎士達の力はそれを上回っている。

時たま戦列を抜けるスケルトンがいても村人達がそれに当たってくれる為、目前の敵に集中出来ているのも大きいだろう。

今は幾人かを隊列から抜けさせ、村の避難所にいる村人達をこちらへの誘導に当てている。

彼らが到着次第、ここから脱出する算段を既に立てていた。

 

丘の上から見ていた限り、スケルトンは村を完全に十重二十重に包囲していた。

しかし、この一角は完全にベリュース隊が優勢であり、現に彼らが参戦してから騎士は勿論の事、村人達にも一人の被害も出ていない。

このまま彼らを護衛しながら安全な場所まで移動させる事は十分に可能だろう。

食料等は隊から供出すれば近くの村か、或いはエ・ランテルまで持つはずだ。

 

順調だ。突貫の救出作戦ではあるが上手く行っている。

 

後ろを見やれば避難所に向かった騎士が女子供達を連れて合流に来た。

この作戦は完璧の内に成功しそうだ。

 

 

 

しかし、そこでふと不安に駆られた。

余りにも順調に行き過ぎている。

 

スケルトン達はこの村を包囲していたのだ。

この場所で予想外の反抗を受けたとは言え、あれだけ数がいたのだからもっと周囲から押し寄せてきてもいいのではないか。

それにいくら村人達が奮戦し食い止めていたとはいえ、それはここだけの事なのだ。

包囲していた他の箇所からここを挟撃されてもおかしくはない。

むしろスケルトンならば、目前に生者がいるならばその方が自然ではないか。

だが、この地に現れたスケルトン達は未だそうしてはいない。

 

それに避難所側が全くの無傷なのもおかしい。

あれだけの包囲に速度だったのだ。

ベリュース自身、避難所にもある程度はスケルトンが来ているだろうと考えていた。

だから、ただ呼びに行くなら一人でいいところを貴重な戦力から複数人送ったのだ。

なのに、どうやら一体のスケルトンも避難所に行った様子は無い。

 

そして余りにも当たり前の事に行き当たった。

 

(そもそもこれ程の大群が何故発生した?よしんば何らかの理由で大量発生したとして、それが村を包囲等出来るのか?低級なアンデッドが?)

 

先程見た包囲は教本に載りそうな見事なまでの包囲だった。

あんな芸当をスケルトンが出来るわけがない。奴らは生者を憎む天敵だが、それは本能のようなものなのだ。

高度な知性など持ち合わせておらず、言ってみれば行き当たりばったりの行動しかとらないはずなのに。

剣スケルトンがあの一体以降現れていないのも気になる。

アンデッドが多数発生すればそこからより強力な物が発生しやすい。

その為、複数の剣スケルトンが来るのではと警戒していたのだ。

 

何かもっと邪悪な何かがスケルトンを操っているのでは無いのか。

そんな恐ろしい予想が、しかし頭から離れない。

 

 

(今は余計な事を考えるべきじゃぁない。ここを無事に脱出する事を考えるんだ)

 

 

現実に、今この場所は優勢を維持しているのだ。

ベリュースがやる事はあやふやな予測では無く、的確な現場の指揮である。

 

それでも、目の前に集中するべきと思っても不安は消えてなくならない。

 

 

(何か……何かがおかしい。襲われなかった避難所。村人達が活路を見出したタイミングで剣スケルトンが現れたのは偶然なのか?まるでこちらをいたぶって、希望が見える度にそれを潰しているかのような……)

 

 

それは正解だった。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

突如として騎士の一人が血しぶきを上げる。

 

そこには曲刀━━シミターとラウンドシールドを装備したスケルトンがいた。

 

 

「まさか!スケルトンウォリアーだと!?」

 

 

スケルトンウォリアー、強力なアンデッドの1つだ。

生前身に付けたであろう戦士としての技術を疲労を知らぬ体で繰り出す強敵である。

その実力は高く、一体が騎士と同等の力を持つと見ていいだろう。

 

そんなスケルトンウォリアーが複数、突如として現れた。

 

 

 

 

 

「くそっ、ウォリアーだと?今までどこに潜んでいたんだ!」

 

 

ロンデスは切り結んでいる目の前のスケルトンに毒づく。

鋭利なシミターと強固な盾をもったスケルトンウォリアー相手となれば幾ら法国騎士といえど容易な相手では無い。

先程の剣スケルトン程度までの相手ならば2,3体纏めて相手にしたとしても何とかなる。

しかし、こいつが相手となっては一対一で全力を出さなければ危ういだろう。

 

隊の中でもロンデスや他の腕利きならば間違いは起こらないだろうが、他の騎士ではその実力は伯仲する。

幸い騎士の総数よりも少ないが、危険度は一気に跳ね上がった。

また万が一スケルトンウォリアーが後続に抜ければ村人達がどれほど犠牲になることか。

 

そう考える視界の隅で一人の騎士が負傷していく。

幸いそれ程大きな傷では無いようだが状況は厳しくなっていくばかりだ。

同じような事が広範囲で起きていく。

一刻も早く脱出しなければ村人だけでなく自分達も全滅するだろう。

 

 

「お前だけに構っちゃ、いられないんだよッ!」

 

 

上段から振り下ろされたシミターだが身を捻るように回避し、その勢いのまま横薙ぎで斬りはらう。

倒れたスケルトンウォリアーの頭部を踏み砕きロンデスは先程の騎士の援護に向かった。

 

 

 

 

 

スケルトンウォリアーの出現により切り開かれていったはずの脱出ルートは徐々に狭められていった。

最初に現れた分はほぼ殲滅したものの、その都度ウォリアーが補充されるかのように出てきている。

更に剣スケルトンも徐々に増え始めており、ベリュース隊は防戦一方となっていた。

 

 

「エ、エリオン!デズンのカバーに回れ!」

 

 

ベリュースは戦線を抜け村人に襲い掛かろうとするスケルトンを切り伏せながら指揮をしていた。

一歩下がった位置である為、戦線を大きく見渡す事が可能であり、スケルトンが集まりつつある所や劣勢に立たせられている騎士のカバー指示が可能だ。

全体を見渡せているからこそ、現状が非常にまずい事は誰よりも理解出来ていた。

 

 

(まずい、このままでは……)

 

 

騎士の被害はそれ程では無いが、先ほどまでのように前に進む事は出来なくなってきていた。

単純に疲労してきたという事もあるが、何よりもスケルトンの動きが明らかに戦術的なのである。

騎士が一か所を突破しようとすれば途端にそこに殺到し、それを援護しようと騎士が動けば、今度はその薄くなった所を突いてくるのだ。

しかも、それでいて攻勢をたたみかけ一気に突破しようとせずジワジワと包囲を縮めてくる。

 

ここに至ってベリュースは確信した。

 

 

(間違いない。何故かは分からないが、こいつらは嬲り殺しにするつもりだ!)

 

 

突破する術を持ちながらギリギリこちらが対応できる程度に加減して攻めている。

後方から俯瞰するベリュースだからこそ、相手の意図が読めていた。

 

しかしここから突破する手立てが無い訳では無い。

 

 

(今更ではあるが……一点突破に賭ければ包囲を突き崩すだけの余力はある。しかし、それでは……)

 

 

そう、ロンデス達精鋭を一点に投入すれば今ならまだ包囲を抜け出る事は可能だろう。

しかし、包囲が狭まっている中それをしても切り崩した脱出路を長く維持する事は出来ない。

僅かな間切り開かれるだろうその道から逃げられる村人は体力のある男衆やまだ若い女くらいだろう。

負傷者や子供、老人達は殆どが取り残される事になる。

 

ベリュースとて全てを救えるとは思っていない。

しかし余りにも被害が大きくなりすぎる。

恐らく1/3の村人が逃げられれば良い方だろう。

そして残りの2/3はこの生者を憎む亡者の餌食となる。

その被害者達からは少なくない数がアンデッドとなるに違いない。

 

故にベリュースは悩む。

もっと良い方法を模索しようと。

 

だが時間はそれ程多くは残されていない。

早くどうするか決断しなければならない。

 

味方を変えれば全滅するはずだった者達を1/3は救う事が出来るのだ。

それに自分達とてこのままここに居れば全滅は免れまい。

 

己の無力をベリュースは悔やむ。

 

仮に自分がアダマンタイト級、いやオリハルコン級冒険者並の力があれば或いは単独でここを切り開く事も可能だろう。

しかし必死に努力し研鑽してもそこに届く事は出来なかった。

 

前線に指揮を飛ばしながらも自分の不甲斐無さに歯を噛みしめる。

 

その時だった。

 

 

「隊長!後方からも敵が近づいています!」

 

 

見れば背中に守っている避難民の後方からスケルトンの大群がこちらに向かってきている。

前方の脱出路すら切り開けず食い止めるのが精いっぱいの現状であれが到達すれば最早打つ手は完全に無くなるだろう。

 

 

(決断しなければならないのか、今すぐにでも!)

 

 

脱出するならば今しかない。

今すぐにここを離れなければ村人も騎士も、一人も残さず全滅する。

 

 

「ロンデス!う、腕利きを集めて一点突破だ!そこから道を開き村人を逃がせ!」

 

 

ベリュースの指示に、しかしロンデスは反目する。

 

 

「隊長、この包囲じゃ突破しても長くはもちませんよ!それでは村人が」

 

 

前線での戦闘に注力していたとはいえロンデスは歴戦の戦士だ。

状況は後方から見ていたベリュースと同じほどに理解している。

村人達の多くが逃げきれないと分かっていた。

 

だからこそベリュースは続ける。

 

 

「わ、わかってる!だ、だからこそ、こ、ここは私が引き受ける!」

 

 

震える手で剣を握りしめる。

当然ながら武者震い等ではない。

 

 

「だ、脱出後の指揮権は、ロ、ロンデスが引き継ぐ物とする!ひ、一人でも多くの村人を救え!そ、それが最後の命令だ!」

 

 

かくなる上は迫りくるスケルトンを一秒でも長く食い止め、その間に村人を逃がすしかない。

だが、後方のスケルトンを相手する殿役は確実に死ぬ。

部下達には自分の我が儘でここに着き合わせているのだ。

 

ならば、ここは自分がやるのが当然だろう。

 

 

「隊長……いいんですね……?」

 

 

「は、早く行け!わ、私一人じゃ大した時間は稼げんぞ!」

 

 

無言でロンデスは頷き周囲の騎士と鋒矢陣を取る。

事ここに至っては議論する時間すら惜しい。

 

 

「村人達よ、今より包囲を打ち破り脱出路を作る。道が出来たら周囲を騎士が護衛するから脇目を振らず駆け抜けろ!」

 

 

 

 

 

ベリュースは後方から突撃の雄叫びが聞こえたのを確認すると目前に迫るスケルトンの大群を再びみやった。

数えるのも馬鹿らしい数だ。

視界は既に半分近くが白い骨に覆われている。

これに一人で斬り込めば瞬きする間もなく惨殺されるだろう。

容易に想像されるその光景を思い浮かべ、足はガクガクと震える。

 

しかし自分の役目は時間稼ぎなのだ。

どれだけみっともなくとも一秒でも長く敵を引き付ける必要がある。

 

周囲を見渡し、手近にあった長い木棒を取る。

恐らくは物干し竿として使われていたのだろう。

それを槍の様に構えるとスケルトン群の先頭に突っ込んだ。

 

 

「う、うおおおおおおおお!」

 

 

木棒は先頭のスケルトンに当たるが腰の入っていない突きではスケルトンの体勢を崩す程度の力しかない。

ベリュースはそれを確認すると木棒を即座に捨て去り左へ、騎士や村人達とは反対の方へ駆ける。

そして行先にあった民家の外にあった桶等の大き目の家具を手あたり次第にスケルトン達へ投げつけた。

 

この珍妙な男にスケルトン達は注目する。

 

 

「ほ、ほれほれ、どうしたぁ!俺ごとき骨抜けすら捕まえる事が出来んのかぁ!?」

 

 

スケルトンに挑発が効くのか不明ではあるが、当のスケルトン達は思惑通りベリュースを八つ裂きにせんと進路を変える。

先頭が進路を変えた為、後続もそちらに釣られ始めた。

これで多少なりとも時間は稼げるだろう。

ベリュースは無様に辺りを駆けまわりながら、良さげな物があればそれを投げつける行為を繰り返す。

 

しかしそれも長くは続かなかった。

 

スケルトン達は実は後方だけでなく左右から包囲を狭めてきていた。

故に走る先にスケルトンを確認し、進路を変更しなければならなかった。

あちこち走り回った結果、それなりの時間を稼いだものの結局元の所へ戻ってきてしまう。

 

 

「む、村人達は……!?」

 

 

前方のスケルトンに斬りつけながら転がりぬけるという器用なのか無様なのか言い難い技を披露し群れを抜けたその先。

村人達が居たはずのそこを見やれば、どうやら逃げ遅れたのは4人だけのようだ。

相当数が逃げ遅れると思っていたが、ロンデス達は想像以上に上手くやってくれたらしい。

逃げ遅れたのは、どうやら丘で見ていた時にスケルトンに勇敢に立ち向かった男とその家族のようだ。

手傷を負った為に上手く逃げられなかったのだろう夫が妻と姉妹を庇うように立っている。

 

 

「す、すまなかった。お、お前達も逃がしてやりたかった……」

 

 

息も絶え絶えのベリュースだが、覚悟を決め正眼に剣を構えスケルトンに向き合う。

後は一秒でも彼らの生を守る事しか出来ない。

 

 

「……あんたたちが誰かは知らないが、礼を言う。俺達は逃げ遅れたが、他の皆は無事逃げられたみたいだ。あんたたちのお蔭だよ」

 

 

自分達の最後を既に悟っているのだろう男は諦観の笑みを浮かべつつベリュースに礼を言う。

 

 

「俺達だけじゃ皆殺されてた。娘たちだけは逃がしてやりたかったが……仕方ないさ」

 

 

お父さん、と長女であろう娘が父に縋る。

下の娘は母が守るように抱きかかえていた。

 

それを見るベリュースは、しかしある事に気づいた。

 

既に諦めが支配している彼らの後方、スケルトンの群れ。

それらはこちらに向かいつつも、だが全てがこちらに向かっている訳では無い。

見れば半数以上が反対方向、ロンデス達が突破していった方向へ向かっているではないか。

 

 

「ま、まだだ!あ、諦めるのは早いかもしれないぞ!」

 

 

村の男は気づいていないようだが、ロンデス達が突破した方向のスケルトンはその多くが突破していったロンデス達を追おうとしているのだろう。

ならばそこに隙があるはずだ。

前進する群とロンデス達を追う群れ。

上手く間隙を縫えば包囲を抜けられる可能性はある。

こちらに向かう群の薄い所に飛び込み、反転しているスケルトンの群れに割り込むのだ。

背を向けている敵はこちらに気づかないだろう。

無論、飛び込めば気づかれるだろうが、それでもかなりの距離を進めるはずだ。

薄い箇所を選び、斜めに駆け抜けていけば脱出組を追う群れの横に抜け出す事が出来るかもしれない。

運が良ければ抜けられる可能性はある、彼らだけは。

 

 

「わ、私があの背を向けているスケルトンの群れへ切り込んで少しでも道を作る!こっちに気づいた奴はわ、私が引き付けるから、逃げ出せた連中の脇の方へ駆け抜けるんだ!い、今ならまだ間に合うかもしれない!」

 

 

「だ、だが、それじゃあんたは……」

 

 

「い、いいから急げ!」

 

 

覚悟を決めたのだろう男の家族はベリュースの後に着く。

夫に妻が肩を貸し、少しでも早く走れるようにする。

娘たちはその後に続く形となるだろう。

 

 

「こ、これが最後のチャンスだ!わ、私がどうなっても構わず進め!」

 

 

男が頷いたのを見てベリュースは最後の力を振り絞り走る。

自分は間違いなく助からない。

走れるのもあと少しだろうし、群れに飛び込めば背を向けているとはいえ気づいたスケルトンが取り押さえようとするだろう。

 

だがそれでいいのだ。

 

ベリュースが襲われるのも織り込み済みだ。

自分が襲われている間はつまり時間を稼げるという事だ。

最も薄い箇所を最短で進めばその時間を込みで家族が脱出できるチャンスが生まれる。

それでも大分、分が悪い賭けだが現状ではそれに賭けるしかない。

 

 

故にベリュースは駆けだして━━━

 

 

聖なる光線(ホーリーレイ)

 

 

どこからともなく飛んできた白い光線がスケルトンを貫く。

それだけでなく無数の攻撃魔法が飛び交い、ベリュースの目前にいたスケルトン群は文字通り跡形も無く消し飛んだ。

 

 

「やれやれ、様子がおかしいから見に来てみればスケルトンの大群とはな。何故こんな所にこれ程の数がいるのだ?もしや、これが例の破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)の前兆か?」

 

 

短く刈り揃えた金髪をオールバックにした男が背後に多数の部下を従え現れた。

 

 

「何れにせよ、人に仇を為すアンデッドの存在を我らは許さん。神の御業をとくとその目に焼き付けよ」

 

 

それは正義の執行者。

 

聖なる天の尖兵。

 

 

「ニグン・グリッド・ルーインが命ずる。炎の上位天使達(アークエンジェル・フレイム)よ、疾く不浄を滅ぼせ」

 

 

裁きの炎を纏った天使達が舞い降りた。




予想以上に時間が取れません。
しかも本来なら5話でカルネ村が終わるはずだったのですが、最後まで書き上げられてません。
原因は自分でも分かってて、力も無いのに妙にこなれた文章書こうとしたり細かくやろうとしたりしてるせいですね。
これ終わったら1~3話みたいなスタイルに戻そう……。

自分でも「これどうなの?」と思う内容でしかも半分も書けていないのに上げるのも失礼ですが一応何とかキリの良い所までいったので投稿させていただきます。

次回

第6話 魔王

絶対に次で終わらせる……
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