Paint it black   作:ゆず故障

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ボスは、私が政府軍にした事を秘密裏の内に『消した』。すべては、アルマを奪還に来た反政府ゲリラの仕業に見せかけ、私の所業は闇に葬られた。

 完璧な偽装工作と偽装情報の流布のおかげで、当局の矛先が私に向くことは一切なかった。見事としか言いようのない、鮮やかな手並みだった。

 だが、アルマには『裏切り者の反政府組織のスパイ』というレッテルが貼られ、墓すら作られることは無かった。

 病院で、彼女の事を悪し様に言う兵士達の会話を聞き、悔しさと虚無感だけが私の心に渦巻いた。

 

 それから数日後、アルマの少ない遺品を見晴らしの良い丘に埋めてやろうと、郊外へ出た。アルマが生前、アルストロメリアが美しい丘で、いつか私を連れて行きたいと言っていた場所だった。

 丘を登りきると、オレンジ色の海が私の目の前に広がっていて、暫くその景色に見蕩れてしまった。

 不意に、後ろに気配を感じて振りむいた。

 

「足音は消したと思ったんだけどなぁ」

 

 ばつが悪そうに頭を掻きながら歩いてくるボスを見て、私は驚いた。

 

「つけてきたんですか?」

「俺だってそんな暇じゃない。思い切りこいつを吸える場所が欲しかっただけだ。あそこにいたら、俺の分がなくなっちまう」

 

 彼はそういうと、上等な葉巻を旨そうに吸い始めた。案外、嘘は下手なようだと笑いながら、私は地面に穴を掘り、遺品と、彼女にプレゼントするはずだった本を埋めた。

 

「……結局、アルマの人生は何だったんでしょうね。彼女が生前人々に為した事は全て上書きされて、大罪人として人々に記憶される。でも味方を殺した私は、変わらず日常を生きている」

 

 なんて世界は不条理なのだろう。

 土で汚れた手を見つめる。彼女の血が、混ざっているような気がした。まただ。黒いペンキが、私の中に渦巻く。オレンジのアルストロメリアが黒く染まってゆく。

 

「だが、お前だけは彼女の事を覚えている。それが、真実だ。大衆が何を言おうと、お前の中の真実は変わらない」

 

 背中から、いつもの厳しさは無く、不器用ではあるが、優しさに満ちたボスの声が聞こえた。

 その言葉は、なぜだか深く、深く心の中に突き刺さった。

 溢れ出る感情を抑えきれず、私は無言でオレンジ色の海を見つめた。もう、黒いペンキはどこにも見えなかった。

 そうだ。私は彼女の事を覚えている。それが真実なのだと自分に言い聞かせて。

 

「ボス、ありがとうございました。」

 

 私は、ずっと傍に居てくれた彼に礼を言った。彼は少し照れくさそうに笑いながら、片手をあげた。

 長居しすぎてしまったようだ。周りを見ると、赤い夕陽が花畑を濃い橙色に染めている。

 

「これから、よろしくお願いします」

 

 私は直立し、土で汚れた右手で敬礼した。

 おそらく、私達が行く道は修羅の道だ。そしてその先は、地獄へ向かっていることだろう。

 それでも、私達のような天国の外側 《アウターヘブン》の住人には理想郷なのかもしれない。

 だから私は、ボスについて行こうと思ったのだ。

 真っ黒な世界から私を救ってくれたのは、他でもない、彼 《ボス》なのだから。

 今度は、私が貴方を助けよう。

 それが地獄への道行きだとしても、私は貴方を守るだろう。

 

 ―――――――――

 

 ボスの元で働き始めて数ヶ月が経った頃、幾度目かの反政府ゲリラとの戦闘の後に、ボスは傷ついた兵士を拾ってきた。なんでも、反政府ゲリラの指揮官とのことだった。

 私は驚いた。まだ、20もそこそこの若者に見えた。実戦経験もそれほど無いはずだ。

 名前は、カズヒラ・ミラー。日本人とアメリカ人のハーフらしい。

 私は彼の怪我の状態を確かめた。爆風による裂傷があり、出血もそれなりにしているが、呼吸も血圧も安定している。適切な処置を施せば、すぐに回復するだろう。

 それを伝えると、ボスは安堵したように、そうか。と呟いた。

 

「ああ、そうだ。くれぐれもこいつに危害が及ばないように気をつけてくれ。ここの連中は気性が荒いからな」

「わかりました。でも、何故私に?」

「お前が一番近くにいるだろう?それに一番信頼できる」

「それはありがとうございます。そんなに彼がお気に召したんで?」

「なかなかこいつは根性があるし、面白い。気に入った」

 

 物好きな人だと半ば呆れるように言うと、ボスは人好きする笑みを浮かべながら、頼んだぞ。と私の肩を叩いた。

 ボスが診療室を出ていくと、私は治療台に乗せられた彼を見た。

 金色の髪が、どことなく、昔ベトナムの地で果てた友人と重なった。

 

『おふくろ……』

 

 彼の口から聞きなれない国の言葉が聞こえ、少し慌てた。

 その声は酷く悲しげで、何かを探すように手が空を彷徨う。

 私は思わずその手を握り、宥める様に胸に手を当てた。

 

「もう大丈夫だ。安心しなさい」

 

 そういうと彼はホッとしたかの様に、穏やかな呼吸に戻っていった。

 サングラスを取ると、年齢より大分幼く見えるなと思いながら、私は彼の処置に取り掛かり始めた。

 彼は相変わらず、私の手を握りしめている。そのままでは治療できないので手を外すと、今度は私の上着の端を掴んできた。

 まるで、親から離れない子供のようだと、私はくすりと笑った。

 

 その若者がいずれ私達の副指令官となることなど、その時は思いもしないまま、私は彼の穏やかな寝顔を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトガキ

 

 ヴェノムの過去話というか、どうしてボスと出会ったのかを妄想して滾り過ぎた結果がKONOZAMAです。異論も苦情も全てボートが受け付けます。

 ただ、TPPってプレイヤーの数だけヴェノム・スネークがいるんじゃないかなと思ってます。これはまぁ、その星の数ほどいるヴェノム・スネークの一人だと思っていただければ幸いです。

 

 アメリカ人でなくてもよかったのですが、どうしてもベトナム戦争というもう一つの戦争を出したかったんです。

 ベトナムを出したのは、メタルギアであまり語られなかった戦争だから。

 当時、ベトナムに侵攻したアメリカ国内は反戦運動真っ盛り。撤退してからもそれは続き、満足な補償もなく、人殺しと謗られ続けたベトナム帰還兵達がたくさんいました。

 国にも、家族にも見捨てられ、居場所を失くした兵士達。

 どことなく、ビッグボスに通じるものがあるような気がしてなりませんでした。

 彼は衛生兵。でも、人を殺し、仲間すら救えない。そのジレンマに苦しむ。

 望んでいた平穏すら苦痛で、戦場でしか居場所を感じられなくなってしまう。

 そんな苦悩を表現したかったのですが私にはそんな文章力ありませんでしたすみません。

 アルマというキャラクターは、そうですね、これから彼に起こるであろう予言見たくなってしまいましたね。

 スネークにとってのザ・ボス、そしてパスを彷彿とさせるキャラクターを出してみたんですが……すみませんでした。

 メディックさんは医師としても兵士としても優秀だし、ビッグボスとは違う優しさがあるんちゃうかなっていう感じを…ね…はい。

 そんなこんなで、これは全くの妄想であり、ねつ造であり、実際のMGSや人物や団体などとは関係ありませんので悪しからず!

 そして、こんな駄文をご高覧下さりまして誠にありがとうございました!

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