あなたのもとへ   作:セーヤ

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※すみません、書き途中です。この章はまだ2/3程度です。

物語が始まる前のよく設定資料集にある裏話みたいなものです。
この後の物語にかかわる部分もありますが、テイルズオブグレイセスの幼少期かな?って感じで見てもらって結構です。

 初投稿のため至らぬ点が多々あると思いますが、徐々に改善していきたいと思います。

 誤字などがありましたら連絡ください。※意図してそのままにしているのもあると思うので直さない場合も



序章

 何をしようが平等に流れていく時間。

 理不尽な運命を持つ者や幸せを約束されている者。

 時間の流れは運命に関係なく流れていく。

 たとえば余命が分かっていたとしたら…

 

 

あなたは何のために残された時間を生きますか?

 

 

 昼の砂漠。それは肌を露出するとたちまち肌が焼けてしまうほどの厚さを誇る地帯。

一陣の風が吹き、砂が舞って視界を邪魔する。緑が目立つサボテンや岩石しかない、面白味も決まった道もない、そんな砂の海を一人の少年が歩いている。

 少年の背の高さからして年は10から12才だろう。頭を覆う布から覗く髪の色は黒。長すぎず短すぎずといった長さだ。もちろん肌の露出を防ぐため、少しぼろぼろではあるがローブを纏っている。

 

 少年は歩き続けているが、暑さのせいだろうか足取りは重い。完全に肌を隠しきれていない顔から出る汗は、顎へと流れ、そして砂の海に落ちる。

 

 太陽に照らされ、汗を流し、砂を濡らすという一連の流れがこれからも続くのかと思われたが、

 

「坊主、こんなところを一人で何してる?」

 

 少年に当たるはずの日光は遮られ、代わりに彼の目の前には背の高い人物が立っていた。急な明暗の変化に目が慣れておらず、顔がよく見えなかったが声からして男であろう。

 

(いつの間に目の前に…?)

 

 暑さと水分を奪われているとはいえ、目の前に現れるまで気づかなかったことを疑問に思いつつも、その不審な男を改めてよく見る。

 

(体はそれほど屈強じゃないように見える。服装は綺麗な方…商人か?なぜ一人で砂漠に…?)

 

 男の正体が分からず疑問は増えるばかりだった。男は少年と同じくローブ姿で、ごつごつとした形が見られないことから鎧は身に着けていないだろう。

 

「聞いてんのか?それとも暑さで答えられないか?」

 

 質問の答えを待ち続ける男からいらだった様子は感じられず、むしろ心配している声音で二度目の問いが発せられる。

 

「聞こえてるよ。少しぼーっとしていただけだ」

 

 疑問は残るが軽装なのは確かだ。男に初めて言葉を返した彼は、いつものように心を落ち着け、そして些細な動きをローブの中でする。

 

「そりゃ大丈夫かい?よかったら俺らの…」

 

 男の気遣いの言葉が言い終わる前に、

 

 ─一閃─

 

 少年が動いたのだ。しかしそれは一瞬だった。彼がいつも持ち歩いている自分を守る武器、短刀で男を斬り払ったのだ。

 人間は自分の予期せぬ事態が急に訪れると少なくとも一瞬は頭が働かなくなり、硬直する。その隙に獲物を仕留める。彼が生き抜くうえで身に着けた技だった。服の上から斬りつけるため服として売ることはできないのだが、綺麗な服だったのでおそらく布として売ることはできるだろう。

 

 だがおかしい。少年の疑問はまたも増える。

 

(いつも斬っているときと感触が違う…?いや、肉を斬った感触すらなかった…?)

 

 ここ数年繰り返してきた行動は精練され、肉を斬る感触が思い出せるくらいになっていた。しかし、今回は手に感触が全く残っていない。

 そんな馬鹿なと言わんばかりに、自分の短刀の刃に付着するであろう赤い液体を確認するため、短刀を持っていた右手にサッと顔を向けるが…短刀が、ない…?

 

「子どもがこんな危ないもん持つのは、感心せんなぁ」

 

 男の言葉から痛みの訴えや動揺した様子はなく、呆れしか感じられない。つまり、

 男を切り裂くはずだった短刀は、奪われたことに気づけないほど一瞬で少年の手から離された。

 今、目の前で短刀の刃を指で挟んでプラプラさせているこの男は商人ではなく…少なくとも少年にとっては強人である。

 唯一の武器を奪われたことで、絶体絶命の淵に立たされている。

ということが少年の正しい現状理解であった。

 

 人間誰でもこんな絶望的状況に追い込まれたら人生を覚悟するものだろう。まだ幼いといえるこの少年もそのひとりだった。

 

 しかしながら、恐れと同時に命を覚悟する少年の思いは裏切られる。

 

「別に殺しやしねぇよ。…親はいるのか?」

 

 なぜ殺さないのか?

 人質になると思っているのか?

 それとも本当に許しているのか?

 男の本心が読めない。

 

 だが、答えられることはある。

 

「…親は殺された…友達も…村の全てが、壊された…」

 

 声のトーンが下がり、恐れや困惑といった感情が悲しみへと変わったことが表情からも分かる。

 思い出したくもない。平穏に感じていたあの日々も仲の良かった友人も大切に育ててくれた両親も、もう帰っては来ないのだ。

 

「…お前さん、どこの子だ?」

 

 今度は男に疑問が増えた。最近どこかの村で紛争があったなどと聞いた覚えがなかったからだ。

 

 この世界は大きく五つの大陸に分かれ、それぞれ火、水、土、風、雷の国と呼ばれている。国の中でさらに都市や街、村に分かれているため、どこの国から来たのか分かればその村がどこだったのか探すことができるだろう。

 

「島の子だよ」

 

「…すまんがどこの国の子だ?」

 

 五つの大陸はどれも周りが海であり、小さい島々は無数に存在する。少年の回答ではあまりに情報が足りなすぎる。

 

「国?……分からない…」

 

 少し考え込むようにうつむいた後、一泊おいての回答。

 

 自分の国が分からない理由の一つは、誰からも教えられていなかったから。

 もう一つの理由は、その地域がどこの国にも分類されていないから。つまり、その島をどこの国も発見できず、管理できていないということだ。

 

 興味深い…

 

 男は純粋にそう思った。

 この世界でどの国にも管理されていない島はもう何年も発見されていない。さらに、村があるということはかなり前からその島は存在し、人が生活していたことを示す。

 

 その島についても気になるが、この少年も放っておくわけにはいかない。男は先ほど言えなかった気遣いの言葉の続きを言う。

 

「とりあえず俺らの街に来ないか?」

 

 少年はうつむいていた顔を上げ、首を少しかしげながら困惑の表情を浮かべる。

 

「なぜ?僕はあなたを傷つけようとしたのに…」

 

 もっともな疑問であろう。見知らぬ人を襲う輩を自分の街に迎え入れたい人などいないはずだ。

 

「お前さんを放っておけないのと、色々と聞きたいことがある」

 

 自分よりもだいぶ小さな少年に向かって少しごつごつした手を差し伸べる。

 少年が男の顔を見上げるのと同じくして、雲がちょうど太陽を隠し、男の顔がはっきりとわかる。

 

「マグナだ」

 

 砂漠を歩いているにもかかわらず、フードを被らずに短い銀髪を完全にさらけ出す、30代ぐらいの顔つきの男。その男の名だった。

 少年は差し出された手に自分の手を重ね、同じく応える。

 

「レイズ…レイズ・ディフェンディア」

 

 幼くして理不尽な人生を歩んできた少年の名がマグナに、世界に告げられ、空では雲に隠れていた太陽が再び姿を現す。

 

「じゃあレイでいいな。街まで距離が少しあるから色々質問させてくれよ」

 

 重なられた手は握手となり、光差す広大な砂漠を大小二人が歩き出す。

 

 

─────

 

 

 レイズについて分かったことは

 現在10才。二年間にわたり一般人に襲撃を繰り返し、食料・金を確保して何とか生き抜いてきた。

 二年前に村が襲われた。

 友人四人とかくれんぼで遊んでいる途中、いつまで経っても探しに来ないので、村へ戻ると悲惨な光景が待っていた。

 両親を発見するもすでに事切れていた。斬られた傷があることからおそらく人による仕業だろう。

 友人たちを探したが、誰一人として発見できなかった。

 村に備えてあったボートで近くの島を転々とし、今に至る。

 

 斬られた傷跡があることから、村を襲った犯人は人間である…

 確かに他の生き物は刃物を扱えないから犯人は人間である可能性は高い。けれどもそうであるなら、どこかの国がその島に接触していたことになる。

 なのにどこの国にも属していないのか?それになぜ襲う必要が…?

 

 二人が出会い、目的地に向けて歩みを進め早一時間。マグナは隣を歩くレイズから聞いた情報をまとめて考えてみるも、島の場所や犯人について確定できる情報がない。

 早くも考察タイム終了かと思られたが…

 何かが変だ。

 

 …友人を誰一人として発見できなかった…?

 

「レイ、二年前村には何人子どもがいたんだ?」

 

「僕を合わせて五人だったよ。小さな村だったからみんな仲が良かった…」

 

 質問に答えつつも暗い表情になる。やはり思い出したくないのだろう。今後はこの話題を出さないように気を付けよう。

 

 しかし回答からすると、レイズ以外の子どもは全員消えたことになる。

 

(子どもを連れ去るのが目的だったのか…もしくは逃げ延びてまだ生きているか…)

 

 助けられるものは助けたい。それがマグナのモットーであった。

 

「島の場所本当に覚えてないのか?」

 

 もし子どもたちがまだ生きているのならば助けに行かなければならない。たとえ助けるのが遅かったとしても、その怪しい島について調査は必要だろう。

 

「無理だよ…二年間すべての道を安全に通ったわけじゃない。道のない森の中を歩いたりもしたし」

 

 まぁ仕方ない。生きるために必死だったのだろう。ついさっき合ったばかりの俺にここまで話してくれただけでも十分だ。

 

「ありがとさん。情報が全くないよりは大分助かるよ」

 

 小さくながらも目的の場所も見え、話も丁度終わりの頃合い。時刻は日が落ち始めていることから夕方であろうか。夜の砂漠は昼と逆転し、すごい寒さになるので急がねばなるまい。

 

 

 

 目的地までさらに一時間ほど時間かけ、現在…

 

「ようこそ、火の国最大の都市、アルタイルへ。歓迎するよ、少年」

 

 マグナはガイドのように、手を前方の巨大都市へと向ける。

 

「街って言ってたからそれほど大きいとは思っていなかったのに…」

 

 都市アルタイルを初めて目の当たりにしたレイズは、その都市の大きさに驚き、圧倒されている。国内最大都市というだけあって、建物の数も面積もレイズの村の何百倍もあるようだった。

 

 アルタイルは砂漠の砂をできるだけ避けるため、砂漠の水平面よりも数十メートル高く地面を作り、砂漠からは階段を上って都市内に入るような構造になっている。

 大きな荷物などはおそらく会談とは別の方法で上に上げるのだろうとレイズは予想する。

 

「街の中に行くまで階段がちょっとキツイが頑張ってくれよ」

 

 そう言いながらマグナは先に階段を上り始める。確かにトレーニングとしてこの階段を上るのは良さそうだが、子どもであるレイズには少々つらいかもしれない。

 しかしレイズにとってはそんなことよりも

 

「本当に街の中に入ってもいいの?僕はこの町の人にまた何かするかもしれないよ?」

 

 レイズは階段の前で足を止め、マグナに問いかける。

 

「それに僕はまだおじさんを信用していない。武器を取られてどうしようもないからここまでついてきたけど…」

 

 レイズの短刀はいまだ取られたままだった。武器のない状態の子ども一人で歩くことは危険だということをレイズ自身知っている。さっきまでの自分のような追剥にでも会えば立ち向かう選択肢が自動的になくなってしまうからだ。

 知らない人についていくことは良いことではないが、この先を安全に突破するにはまずこの男についていくしかない、ということが消去法で導き出した答えだった。武器は街についてから新調できる。入手手段は色々とあるが。

 

 武器のためにアルタイルに入りたいならば、余計なことを言わずについていけばいいのに。そうしなかったのは、この後自分が何をされるか予想できないことによる恐怖心からだろうか。それとも

 

「お前さんが優しい子だっていうのは最初に目を見た時からわかっていた。自分では覚悟を決めて襲っていてのかもしれないが、目に迷いがあったぞ?」

 

 階段を少し上ったところで振り返り、言葉を続ける。

 

「今までやってきたことが悪くないとは決して言えん。だが生きるために仕方なかったんだろう?」

 

 レイズは優しい子だった。友人たちにも気を配れる、五人の中でリーダーだった。子どもとはいえ性格はマグナに似ているといっていいだろう。おそらく何も言わずに階段を上ることさえできなかったのは、罪を犯した自分がその社会に入ってもいいのかという疑問があったからだろう。

 確かに、生きるためとはいえ人を襲うことは嫌だった。しかし罪は罪だ。清算することはできても逃れることはできない。

 

 レイズはうつむき、控えめながらも声を発する。

 

「僕は二年間ずっと考えてきた…もしかしたら村が襲われたのは自分のせいなんじゃないかと、自分は存在してはいけなかったんじゃないかと…。そう思いながらも人を襲って生き続けてしまっていた」

 

 人間の大半は自分の存在理由について考えたことがあるのではないか?この少年は幼いながらも存在理由について自問自答を繰り返し、理由が見つからずに涙を流してきた。

 何のために生き、何のために死ぬのか。いまだに答えは出ないままだ。

 

「人を襲っても生きていていいの?そんなことをしてまで僕は何のために生きているの?教えてよ!」

 

 控えめだった声とは対象に、マグナを見上げて強く答えを求める。目には毎日のように流した涙があり、次第に頬から顎へと流れ落ちる。

 何のために生きているのか、簡単に答えられる人もいればそうでない人もいるだろう。特にレイズは大切なものを多く失くした。今は絶望の状態であるはず。そんな少年に生きる希望はあるのか。

 

 マグナは涙を流す少年を見据え、一言。

 

「わからん」

 

 当然と言えば当然だろう。何のために生きているかを決めるのは本人次第だ。答えられるはずがない。

 

「だが、これから理由を見つけることはできる。今から人生をやり直せ、レイズ」

 

 子どもに向かって人生をやり直せはいささか早すぎる言葉であろうが、”もう一度頑張れ”や”リスタートしろ”と変換するとあまり違和感はないように感じる。

 

「自分を救えるのは自分だけだぞ?みんなが世界で懸命に生きる中、お前さんは何をするんだ?」

 

 何をする?

 自分にできること、やるべきことは何だ?

 

 マグナの言葉を聞いてレイズは考える。今までと同じように自分の存在理由を。

 少し考えてみたが、やはり答えは出ない。

 

「何をしようか迷っているなら一緒に人助けしないか?俺の場合やるべきことというよりは助けられるものは助けたい性質(たち)だからやってるだけだけどな」

 

 

今までとは正反対に、人に対して良いことをする。

…いいかもしれない。自分のしてきたことの償いになる…

 

レイズはマグナの提案に頷き、肯定を示す。

過去に囚われ、何もせずに生きるよりはよっぽど良い。

 

「ならまずはこの街に慣れないとな!人生は長いんだ、気長に行こう。途中でやりたいことが見つかったらそっちをやればいいんだ」

 

 マグナは笑いながら再び階段を上り始める。

 

 …とりあえずは成り行きとはいえやるべきことは決まった。しかし、村で起こったことを忘れたわけではない。自分の存在理由、そして村で起こった真相を絶対に掴んでみせる…

 

 流していた涙はいつの間にか止まり、これからやるべきことを胸の内に秘めたレイズは、マグナの後を追い同様に階段を上り始める。これが少年の、自分の存在理由を探す第一歩だった。

 

 

 




 この作品はマインクラフトで物語を作って動画投稿しようと計画していたものの派生形みたいなものです。

 あと、私は物語を読んでほしくてこの小説を書いたわけではなく、別の意図があって製作しました。
その意図についてはおそらく物語のラストで分かる、もしくは確信になると思います。※物語のラストはすでに大方できています。
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