艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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軽空母メイン。

真面目なシーン、独自解釈、独自設定、ネタ、キャラ崩壊含みます。

いつもより長めです。


艦これSS二百二十二話

 

 ○○鎮守府、一○三○ーー

 

 埠頭前ーー

 

大淀「では前回と同じく、今回も集まった方々から順に整列してください」

 

 大淀の呼び掛けにより既に埠頭前に集まった者達からそれぞれ三日前と同じく、速やかに整列をし、その場で待機する。

 

 本日は広島に続き二度目の原子爆弾がアメリカ軍により長崎へ投下された日である。

 

 三日前の時と同様、提督、艦娘達、妖精の鎮守府に所属する全員が埠頭前で長崎の方角を向いて整列した。

 

 全員の整列が終わったのを確認した大淀は提督へ合図を飛ばす。

 

 大淀の合図を受けた提督は三日前と同様、全員へ向けて大きな声で話を始めた。

 

提督「皆も知っての通り、本日は長崎へ原子爆弾が投下され、多くの人々の命が失われた日だ。広島で亡くなった人々同様、あの日の熱線、爆風で亡くなった人々、そしてその後の放射能による急性障害、後障害で亡くなった人々の御霊に向かい、謹んで、哀悼の誠を捧げ、被爆により今も尚、後遺症に苦しんでいる人々に対し、皆で心からの祈りを捧げよう!」

 

全員『はい!』

 

 提督の言葉に全員が揃って返事をした。

 提督が話した内容は広島へ黙祷を捧げる時に話したこととほぼ同じだが、それは広島へ対しても長崎へ対しても、同じ思いで祈りを捧げようという提督の想いが込められていた。

 そして全員に声をかけた提督は着帽し、みんなと同じ方向を向いて、みんなと同じ気持ちでその時を待った。

 

 

 一一○二ーー

 

提督「黙祷!」

 

 提督の号令と共に、全員で静かに黙祷をする。

 両手を合わせ懸命に祈る者、そのままの姿勢を崩さず真剣に祈る者、お辞儀をした姿勢のまましっかりと祈る者……それぞれが同じ気持ちで黙祷捧げた。

 

 一分間の黙祷を捧げた後、大淀の合図で全員が姿勢を正した。

 

 そして提督の解散の合図を受けて、全員はまた同じ気持ちでそれぞれの任務へと向かうのだった。

 

 

 防波堤ーー

 

 艦隊のみんながそれぞれの任務へ向かう中、隼鷹だけは一人、港の防波堤に腰を下ろし、晴れ渡る空を見上げていた。

 

 艦の空母『隼鷹』は一九四四年の十一月下旬に輸送任務を行い、それを終え帰投中の十二月九日に長崎県野母崎沖の女島付近でアメリカ軍の潜水艦による雷撃を受け、損傷したため佐世保のドックへ入渠した。

 そして一九四五年の三月末にようやく修理が終わり、ドックから出渠したものの、船体が修理されただけで雷撃により浸水した右舷機関室は修理されなかった。当時は資材が枯渇していたため完全な修理が施されないままだった。空母『隼鷹』そのまま佐世保の恵比寿湾に疎開して繋留放置された状態で終戦を迎えた。

 

 そう、隼鷹はあの日に上がった雲を見ているのである。

 

隼鷹(この日は本当に辛い日だな……)

 

 理由があるとは言え、ただあの雲を見上げることしか出来なかった当時の隼鷹は、艦娘となり自分の意思で動ける今だからこそ、あの日のことを思うとやるせない気持ちでいっぱいだった。

 

隼鷹(何も出来なかった……本当にただ浮いてることしか出来なかった……)

 

 隼鷹はあの日に亡くなった人々、その後それが原因で亡くなった人々に向かって、改めて黙祷し、守れなかったことを悔いた。

 

「隼鷹さん」

 

隼鷹「?」

 

 背後から声をかけられた隼鷹が後ろを向くと、そこには春風が立って居た。

 

隼鷹「あぁ、春風か。どうしたんだい?」

春風「隼鷹さんと同じ理由、と言えば察してもらえますでしょうか?」ニコッ

隼鷹「なるほどね……そういや、春風も見てたんだったね、あの雲を……」

春風「はい……あれを見たからこそ、(わたくし)は改めて黙祷を捧げるたく思い、ここへ参りました」

 

 春風は隼鷹と違う場所ではあるが、隼鷹と同じくあの日上がった雲を目撃していたのだ。

 

春風「」

 

 春風は隼鷹の隣に立って、静かに両手を合わせ、空へ向かって黙祷を捧げた。

 

 隼鷹は春風を少し見つめた後、また空へと視線を移した。

 

春風「」フゥ

 

 ぴったりと一分間で黙祷を終えた春風は、隼鷹の隣に腰を下ろした。

 

春風「(わたくし)達は深海棲艦と戦争をしていますが、今度こそ人々を守りましょうね」

 

 そう言った春風は隼鷹の手を強く握った。

 隼鷹もそんな春風に負けじとしっかりと握り返し、微笑みを浮かべて答えた。

 

隼鷹「おう! もうあんな歴史を繰り返させてたまるか! 今のあたしらは艦娘でただの艦だった頃とは違うってとこ、見せてやろうな!」

春風「はい!」

 

 あの瞬間を見たからこそ、守れなかったからこそ、二人は同じことを繰り返さず、今度こそ人々を守ろうと互いの気持ちを新たにした。

 

「春風〜!」

 

春風「あら、この声は……」

 

 その聞き慣れた声のした方を見ると、そこには手を振りながら近づいてくる神風が居た。

 神風は隼鷹に気がつくと、隼鷹に挨拶をする。

 

神風「隼鷹さんもご一緒でしたか! こんにちは!」

隼鷹「はいよ、相変わらず元気だな〜」ハハ

神風「元気があれば何でも出来ますから!」キリッ

隼鷹「お〜、どっかのレスラーみたいな台詞だな〜」

春風「神風お姉様、(わたくし)に何か御用でしょうか?」

神風「用があったんだけど、もう済んじゃった♪」テヘッ

春風「???」クビカシゲ

 

神風「さっき飛鷹さんに隼鷹さんを探してほしいってお願いされて、私だけだと遅くなっちゃうから手伝ってもらおうと思って……それで春風が防波堤の所に行くのは聞いてたから頼みに来たの♪」

春風「まあ……それはそれは」クスクス

隼鷹「飛鷹があたしに何だって?」

神風「経理のことで何かあるみたいです!」

隼鷹「あ〜、経理のことね〜」

 

「み〜つけた……」

 

隼鷹「!?」ゾクッ

 

 聞き慣れた声だが、その低過ぎるくらいのトーンに隼鷹は思わず肩を震わせた。

 振り向くといつの間にか隼鷹の背後に居た飛鷹が満面の笑みで仁王立ちしていた。

 

神風「あ、飛鷹さんも来ましたね♪」

飛鷹「えぇ♪ 報告ありがとう、神風♪」ナデナデ

神風「はい!」キラキラ

 

隼鷹「あの〜、これには深い事情が……」

春風「(わたくし)が事情も知らず引き止めてしまったのがいけないんです。お叱りを受けるならこの春風が」

飛鷹「違うのよ春風。今日のことで隼鷹が一人になりたい時間がほしいってことくらいは分かってるの。そのことに対してとやかく言う気はないわ」ニコッ

 

隼鷹「じゃ、じゃあ、どうしてそんなにキレていらっしゃるんで?」ガクブル

飛鷹「あら、私はキレてないわよ」ニコニコ

隼鷹(めっちゃキレてる笑顔じゃないですか、やだ〜!)

飛鷹「あなた、また提督におねだりしてお酒貰ったでしょう?」

隼鷹「あれれれれ? そそそそんにゃことにゃいぜ?」アタフタ

 

神風(とても動揺してる……)

 

飛鷹「提督だってお酒飲むの知ってるから私も最初は疑ってなかったんだけど、提督ってついこの前も一升瓶買ってるのよ〜?」ニコニコ

隼鷹「へ、へぇ〜……」ダラダラ

飛鷹「それに前回のお酒は『加賀美人』だったけど、今回のお酒はなんと『春鹿』の超辛口と『黒松剣菱』なのよね〜? 甘口が好きな提督がこんなに辛口を買うなんて不思議よね〜?」ニコニコ

隼鷹「…………」ダラダラ

飛鷹「あなたこの前『提督から酒貰った』って言ってたわよね? 本当は()()()()()()の間違いなんじゃないの?」ニコニコ

隼鷹「すんませんでしたぁぁぁぁ!」ドゲザ

 

飛鷹「はぁ……あんたはすぐに提督に甘えるんだから。何度も言ってるけどちゃんと自分で買いなさいね」

隼鷹「あれはたまたま提督に言ったら買ってくれただけで……」

飛鷹「あ?」ニッコリ←修羅の眼光

隼鷹「なななななんでもないよよよよ!」

 

神風「」ニガワライ

春風「」クスクス

 

 その後、隼鷹は飛鷹にしょっ引かれ、神風と春風はお昼御飯を食べに食堂へ向かった。

 

 この日も鎮守府のみんなは変わらず、海の平和を守るため、任務をこなしていくのであったーー。




今日も日本人として忘れてはいけない日です。
この日、亡くなった方々、そして後遺症で亡くなった方々へ心よりお祈り致します。
更に今も闘病する方々に心からお見舞い申し上げます。

本編で気分を害してしまった読者の皆様、申し訳ありませんでした。

本編に書いた隼鷹さんの記述はWikipediaから引用しております。
最後の方は少しコメディタッチにしましたが、ご了承お願い致します。

では読んで頂き本当にありがとうございました!
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