艦これ Short Story《完結》   作:室賀小史郎

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駆逐艦のみ。

真面目なシーン、独自解釈含みます。


艦これSS二百六十六話

 

 ○○鎮守府、一七○○ーー

 

 埠頭ーー

 

提督「では、皆。黙祷!」

 

 提督はそう号令を出した。その号令を受け、提督と共に埠頭へやって来た者達は静かに黙祷を捧げた。

 本日の仕事を早めに終えた提督とこの場へ黙祷を捧げに来た面々は、文月、時雨、五月雨、磯風、秋雲、夕雲、風雲の七名。

 

 一九四三年、この日の二一○○前。ソロモン諸島のベララベラ島沖で第二次ベララベラ海戦が発生した日である。

 日本軍のベララベラ島撤収部隊とアメリカ軍が交戦し、双方の駆逐艦一隻が沈没した海戦で、日本の被害は駆逐艦『夕雲』だった。

 そう、この日は夕雲が沈んでしまった日なのである。

 

 夕雲は艦娘となった今でこそ母性に溢れ、お淑やかな艦娘ではあるが、艦時代は南方海域で多くの戦いに参加していた歴戦の艦である。

 

 駆逐艦『夕雲』最後の戦いである第二次ベララベラ海戦時の日本軍は『秋雲』を旗艦とし『風雲』『磯風』『夕雲』という編成で行動していた。

 するとそこでアメリカ軍の駆逐艦三隻からの先制攻撃を受けたことにより発生。

 先制された日本軍だったがその中で先んじて反撃を開始したのは『夕雲』だった。

 砲撃並びに魚雷発射と一気呵成に攻める『夕雲』だったが、夜は光があるところに攻撃が集中するため、砲撃による炎から『夕雲』はアメリカ駆逐隊の標的となってしまい、集中砲火を浴びてしまった。

 

 しかし『夕雲』が放った魚雷が見事に敵艦『シャヴァリア』に命中。更に後続にいた駆逐艦『オノバン』が突然速度が落ちた『シャヴァリア』に追突し戦闘不能と、陣形を崩した。

 そんな中でも駆逐艦『セルフリッジ』からの砲撃は止むことがなく、炎上し隊列から離脱していた『夕雲』にとどめとなる魚雷が直撃。これにより『夕雲』は三隻の攻撃も一手に引き受け、ベララベラ島沖に沈んでいった。

 

 この海戦後『シャヴァリア』は沈没(雷撃処分)、『オバノン』と『セルフリッジ』も大きな損傷を負って退却を余儀無くされた。

 駆逐艦『夕雲』は撤退作戦の完了に大きく貢献し、更には大きな戦果を残したのだった。

 

 

夕雲「…………」

 

 お辞儀をするように夕陽へ向かって頭を下げ、黙祷を捧げる夕雲。

 提督達が一分間の黙祷を捧げて姿勢を直した時、夕雲だけはまだ黙祷を捧げていた。それを提督達はそのまま黙って夕雲が黙祷を終えるのを待った。

 

 それからまた一分後、夕雲は静かに姿勢を直し、水平線を見つめた。まるで目の前に広がる光景を焼き付けるように。

 

 ぽふっ

 

夕雲「?」

 

 ふと自分の頭に柔らかい感触がした夕雲が視線をその主であろう方向へ向けると、思った通り提督が自分の頭に手を乗せていた。

 

 何も言わず、ただ黙って置かれた手は大きく、優しくそして温かかった。

 

夕雲「私は大丈夫です。お心遣いありがとうございます、提督」ニコッ

 

 提督の心遣いに夕雲はお礼を言うと、提督が自分の頭へ乗せている手を両手で包むように退け、提督の手を自分の頬へと持ってきた。

 

夕雲「あの夜、沢山の方々と運命を共にしました。艦娘となった今でも、あの方々と駆逐艦『夕雲』の頃の思い出は私の大切な思い出の一つです」

 

 提督の手を頬へあてながら静かにそう語る夕雲は優しく微笑んでいた。

 そんな夕雲に提督はニッコリと笑い、『そうか』と言うようにゆっくりと頷いた。

 

夕雲「あの方々に恥じないよう、これからも提督の元で頑張ります。ですから、いつでも頼ってくださいね」ニッコリ

提督「頼らせてもらうよ。生まれ変わって来てくれてありがとう、夕雲」ニコッ

夕雲「はい、提督」ギュッ

 

 誓いを新たにした夕雲とその誓いをしかと受け止めた提督。すると夕雲はするりと提督の胸にしがみつき、提督がそれを受け入れると、二人はまた黙ってそのまま沈み行く夕陽を眺めた。

 

秋雲「あの〜……二人だけの世界に浸ってるとこ申し訳ないんだけどさ〜、秋雲達も隣に居るの忘れないでね〜?」ニガワライ

風雲「そうそう……それにもう湿っぽいのは終わりにしましょ。その方が英霊の人達だって喜んでくれるわ」ニコッ

夕雲「あら、残念」クスクス

 

 秋雲と風雲の言葉に夕雲はそう言いながらも、提督の胸から離れようとはしなかった。

 

磯風「言葉と行動が全く伴っていないのだが……まぁ今回は致し方ないな」フフ

時雨「ふふ、今日くらいは大目に見よう。こんな時くらい夕雲だって甘えたいだろうからね」ニッコリ

 

 時雨と磯風は大人の対応だったが、その隣に居る文月と五月雨は共に『いいな〜』とつぶやきながら提督に優しく抱かれる夕雲を眺めていた。

 

夕雲「文月さんと五月雨さんも来る?」ニコッ

文月「え……」

五月雨「でもぉ……」

夕雲「提督は大人だもの♪ あと二人くらい余裕ありますよね?」ニコニコ

提督「みんな可愛らしいサイズだからな。いけるぞ」ニカッ

 

 夕雲の問いに、提督は笑顔で頷いて両手を広げると、文月と五月雨の二人はパァッと表情を輝かせて提督の胸へダイブした。

 

文月「わ〜い♪」ギューッ

五月雨「えへへ♡」ムギュッ

 

 すると、

 

時雨「じゃあ僕と磯風は提督の背中ね♡」ヒシッ

磯風「この磯風が司令の背中を守ってやろう♡」キュッ

提督「はは、大袈裟だな」クスッ

 

 LOVE勢である二人も当然のように提督へ身を寄せた。

 

風雲「こんなことしてて不謹慎じゃないかな……」

秋雲「でもあの幸せそうな表情見たら何も言えないと思うよ〜」ニヤニヤ

風雲「そうかな〜?」ニガワライ

 

 こうして夕陽が完全に沈むまで夕雲達は提督から離れようとはしなかった。

 そして夕雲はあの日沈んだ自分と英霊の人々へ『今の自分は笑顔で過ごせてます』と心の中で報告した。

 

 その間、秋雲が提督達の様子をスケッチしていたことは言うまでもないーー。




 おまけーー

 同時刻、埠頭から少し離れた所ではーー

長月「あいつら……」グヌヌ
皐月「あんなに……」ムムムッ
水無月「まぁまぁ」ニガワライ

 文月を迎えに来た三人が提督達を眺めていた。

 その内、LOVE勢である皐月と長月は提督に引っ付いているLOVE勢(文月以外)に嫉妬の炎を燃やしていた。そんな二人を苦笑しながらなだめている水無月。

皐月「ボクだって司令官に引っ付きたいなのに〜!」
長月「私だって……(出来れば背中に抱きつきたいぞ……////)」ゴニョゴニョ
水無月「今回は仕方ないでしょ〜? それに甘えようと思えばいつでも甘えられるでしょ?」
皐月「そうだけどさ〜……」
長月「(私から甘えられるはずがない////)」モジモジ
水無月「なら今から突入する?」

皐月「それはダメだよ! 今日は夕雲にとって大切な日なんだから!」
長月「だからこそ、私達はここで大人しく見ているのだからな」ウンウン
水無月「なら妬かずに待ってようよ〜」
皐・長『それは無理!』
水無月「えぇ〜……」ニガワライ

 /ヤイノヤイノ\

文月「皐月ちゃん達、何してるのかな〜?」
夕雲「きっと乙女の悩みよ♪」クスクス

時雨「夕陽も落ちたし、そろそろ戻ろうか」ニコニコ
磯風「そうだな。夜風で司令がまた風邪を引いてはいけないからな」
五月雨「提督、早く戻りましょう♪」ニパッ
提督「そうだな。三人にも声をかけよう」

秋雲「部屋に戻って色付けしよ〜♪」
風雲「本当に秋雲って素描得意よね」ニガワライ

 こうして提督達は長月達に声をかけ、みんなで仲良く鎮守府へ戻ったーー。

 ーーーーーー

今日は本編で書きました通り、夕雲ちゃんが沈んでしまった日です。
駆逐艦『夕雲』と英霊の方々に心からお祈りします。
本編中の情報はWikipediaと大日本帝国海軍所属艦艇から得ました。

そして今日は長月ちゃんの進水日でもあるので、おまけで少しですが登場させました!
おめでとう、長月ちゃん!

今回も読んで頂き本当にありがとうございました!
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