「あんた、あの日から何処にいたのよ?」
一夏、鈴、箒は現在食堂の隅にある席で昼食取っていた。
「何処って……まあ、束さんのところかな?」
「姉さんのところだと?」
何故? と思っただろうが、一夏の身体に起きた異変を考えれば、自ずと答えが出てくる。
「じゃあ、ISの知識とかは……」
「全部教えてもらった」
ISの開発者である篠ノ之束にISについて教えてもらっていたことが発覚すると、食堂にいた生徒全員の視線が一夏に向く。
「この服も束さんのお手製なのよ? トカレフ弾程度じゃあ貫通しないって言ってたし……」
一夏は着ているメイド服の裾を掴みながら説明する。メイド服だけに防弾性能があるとか、天才の考えることは予想の斜め上をいくことをこの場全員が実感した。
「……………」
その時、一夏は他の生徒とは全く違う視線を感じた。
殺気だ。
すぐに襲ってくるようではなかっかたので、表情を崩さず一夏は食事を楽しむ。
◇
夕刻。鈴と箒と別れた後のことだった。
「……そろそろ、出てきたらどうかな?」
ふと林の方に向かって一夏は問いかける。そして、一夏の視線先の林から一人、少女が出て来る。輝く銀髪を腰近くまで伸ばした少女。一夏はその少女が誰なのか知っていた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」
ドイツが作り出した遺伝子強化試験体。戦うための道具としてありとあらゆる兵器の操縦方法や戦略などを体得し、良い成績を彼女は収めてきた。しかしISの登場後、ISとの適合性向上のために行われたヴォーダン・オージェの不適合により左目が金色に変色し、能力を制御しきれず以降の訓練では全て基準以下の成績となってしまい、このことから「できそこない」と見なされて存在意義を見失っていた。しかし、ISの教官として赴任した千冬姉の特訓により部隊最強の座に再度上り詰めた。この経緯から、ラウラは千冬姉を尊敬し「教官」と呼んでいる。
一夏はラウラの経歴とおは一通り目を通してあった。
しかし、目の前にいるラウラからは殺気しか感じられない。
「私は認めない。貴様があの人の妹であるなど、認めるものか」
「あなたが認めなくても、この関係は決して変えることはできないよ」
「ああ、そうだな。だから……今、この場で私と戦え!!」
言うなりラウラは自身が持つISを展開する。シュヴァルツェア・レーゲン。ドイツが開発した第三世代。
しかし、一夏はため息を吐く。
「断る。……と言いたい所だけど、あなたのことだから諦めないでしょうからね」
この場から逃げてもいいが、相手はこの学園で唯一の正規の軍人。私と同等の身体能力を持っていてもおかしくない。逃げれても後々面倒なので一夏はある条件をつけた。
「丁度、学年別トーナメントがあるし……」
「何が言いたい」
「うん。これがベストだね。ラウラ・ボーデヴィッヒ。私と戦いかったら、学年別トーナメントで優勝しなさい」
「何!? どう言うつもりだぁ!! あんなお遊戯に何故、参加しなければならない」
「今は時間、そして、この学園では許可なく私闘は禁止されている。なら、あなたが満足に戦える舞台を私が用意してあげる」
「……………」
「物語で言えば、千冬姉は攫われたお姫様。私は魔王。あなたが勇者って感じかな? 千冬姉を救いたいなら私の元に来なさいってことさ」
ラウラは一夏の言いたいことを理解したのか、シュヴァルツェア・レーゲンを解除した。
「いいだろう。貴様の余興に付き合ってやる。その首を洗って待っていろ!!」
言って、ラウラは立ち去った。
◇
ラウラの一件を千冬姉に話と千冬姉は爆笑した。特に例えのところで。
「いいだろう。学年別トーナメントでラウラが優勝したら正規の試合を用意してやろう」
「一応、お礼は言っとくよ」
一夏と千冬は今、食堂に来ていた。
生徒は誰もいない。完全に貸し切り状態なのだ。
「……あいつは元気なのか?」
「まあ、多少は迷惑するぐらい元気だよ」
一夏は緑茶をすすりながら千冬姉の質問に答える。
千冬もそれを聞いて安心したのか、同じく緑茶をすすった。
その後は雑談を交えながら、一夏がこの学園に生徒として入学することになった。ただし、授業には出る必要はなかった。すでに、必要なことは束のもとで教わっているため、ここで教わる事は全くと言ってない。そのため、授業に出る必要はなかったのだ。もちろん、行事事にも出られない。シールドエネルギーが無限にあるISに乗る一夏が大会にでたら試合にならないと言うことで。
「……身体は?」
「……未だに謎のエネルギーが出ている。白式の力で相殺しているけど、そろそろ限界かも」
成長に伴って力は増し、握力などの身体能力が凄い事になっていた。
気を抜いたらドアノブを変形させてしまうため、一夏は気を抜くことができないのだ。
「もう遅いしな」
言って、千冬は鍵を渡す。
一夏はそれを受け取り、そこに書かれた部屋に向かった。
◇
「えっと……ここだ」
指定された部屋に入るが、電気を消されており、誰もいなかったのだ。
部屋の奥にある二つのベットは使われた形跡がなく、まだルームメイトが来ていない証拠だった。
荷物の段ボールはあるが、開封されていない。
「帰って来ていない?」
既に12時を周り、日が変わっている。しかし、それでも帰ってこないとなると、一夏は不安になった。
「ルームメイトの名前は……更識簪か」
一年四組のクラス代表である彼女のことは一夏はあらかた調べる。
結果、彼女がいそうな場所をピックアップし、そこに向かう。
向かった先は第三アリーナにある整備室。
そこに入ると、一カ所だけ光が付いていることに気付いた。
「ビンゴだね」
そこでは一夏が近づいていることに気付かない水色の髪の少女―――更識簪がキーボードを打っていた。
「駄目……」
どうやら、上手くいってないらしい。
簪は目の下をこすり、再びキーボードを打つ。
数十分後、簪は寝落ちしてしまった。
「無理しちゃって……」
一夏は寝落ちした簪がやっていたデータを覗くとキーボードを打ち始めた。
数分後、画面に完了の文字が現れ、一夏は簪に毛布をかける。
「これで、よしと……」
簪とは昔の自分と似ているところがあり、一夏は思わず手伝ってしまった。
毛布をかけ、安心した一夏はその場を去り、指定された部屋に戻る。