Aピットで試合の様子を見ていた一夏はラウラに異変が起るとすぐさまアリーナに降り立った。
そして、困惑しているシャルロットと簪の元まで行く。
「VTシステム……」
一夏はラウラのISに起きた現象の原因である名前を口にする。
「ヴァルキリー・トレース・システム……?」
「ええ。違法システムよ。使用者にモンド・グロッソのヴァルキリーの力を真似させると言う馬鹿げたシステムが一度開発されたんだけど、色々と問題点があって即刻中止になったはずなんだけど……まさか、ドイツがまだ持っていたのは思わなかったわ」
シャルロットの問いに一夏は答え、黒いISに視線を向ける。
黒いISの持つ刀は一夏は知っていた。いや、知っていて当然だった。それは千冬姉だけが持つことを許された世界に一本しかない刀。《雪片》なのだから……。
『織斑さん! 更識さん! デュノアさん! 今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生たちがISで制圧に行きます!』
割り込んできたのは山田先生だった。心なしか、いつよりも声に威厳があった。
「山田先生、それってラウラを殺すということですか!?」
いつもは冷静なシャルロットが山田先生の会話を聞いて、反論してきたのだ。
山田先生の言う通り、あのISはラウラと取り込み、近づいた者を容赦なく攻撃する人形。今ここで相手しなくても教員の誰かが制圧しに来るだろう。しかし、それは同時にラウラの死を意味する。
「白式……私に力を貸してくれるか?」
それに答えるかのように白式は発光し、装甲のあらゆる場所に光の膜が現れる。
そして、目の前に《雪片弐型》とは別の剣が刺さっていた。
「ありがとう」
《雪片弐型》を左手に持ち替え、名前の知らない剣を抜く。
「それでは!!」
何かを言いかけるシャルロット。それを
「ところで千冬姉。一つ確認していいかな」
場違いなほど平然とした声で、一夏が遮った。
『……なんだ』
伏目で一夏を見る千冬。
一夏は黒いISを見据えたまま、
「千冬姉たちが倒してもいいが―――別に、アレを今この場で倒してしまっても構わんのだろう?」
そんな、トンデモナイ事を口にした。
『一夏、お前―――ふん、遠慮はいらん。そこらのへなちょこよりは育ててあるわ、一夏』
「そうか。ならば、期待に応えるとしよう」
言って、一夏は《雪片弐型》の刀身を開く。
「行くぞ偽者野郎、シールドエネルギーの貯蔵は十分か?」
自身から溢れ出すエネルギーだけでなく、全てのエネルギーを消し去る絶対無効の力を持った刃を一夏は振った。
それに合わせるかのように黒いISが刀を振り下ろす。それは千冬姉の振る剣と同じで、速く鋭い剣。けれど、そこには千冬姉の意思など全くない。ならばそれは―――
「ただの真似事だぁ!!」
左手にある《雪片弐型》と右手にある名前の知らない剣で横一閃、相手の刀をぶった切る。
そしてすぐさま頭上に《雪片弐型》を構え、縦に真っ直ぐ振り下ろした。