インフィニット・ア・ライブ/ステイナイト   作:ぬっく~

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第十六章 福音

「二時間前……」

 

旅館の一番奥に設けられた部屋に一夏たち専用機持ち全員と教師陣が集められた。

照明を落とした薄暗い室内に、大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

一夏たち専用機持ちが集められた訳は、ハワイ沖で試験稼働していたアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音』が暴走したことにあった。政府は近場にいた一夏たちにこのISを撃退しろのことだ。

 

「この状況下でそれって……」

 

「ああ。非常に不味い状況だと言うことは承知だ」

 

「どう言うこと?」

 

このことを知っているのは一夏と教員だけで鈴たち専用機持ちは知らない。

 

「現在、この島限定で通信妨害を受けている。よって、外部からの情報が入手できないのよ」

 

「な!?」

 

そう。これにより、福音の居場所が現在わからない。外部と通信できるパソコンから常時居場所を聞き出しているが、限界がある。

そんな状況下でこの作戦を実行しなければならない。

 

「しかも、相手は軍用。普通のISでは歯が立たない」

 

軍用。ISはスポーツ転用に伴ってリミッターがかけられていた。しかし、軍用はそのリミッターが外されている。

 

「そうだ。本作戦は一夏。お前が殺ってこい」

 

「確かにその方がいいだろうけど……」

 

一夏は何故か視線を天井に向ける。すると視線の先の天井が開き、篠ノ之束が出て来た。

 

「ちーちゃん! これは一体どいうこと!?」

 

どうやら、束も気付いたようで、慌てて出て来る。

 

「我々にもわからん」

 

「むむむ……こんな高度な遮断は束さんも初めてみたよ」

 

束も初めて負けを目の前にして、怒っていた。

 

「緊急事態ですので、束さん。今回は私だけで行かせてもらいます」

 

「むむむ……仕方ないね。とっとと片付けてきて」

 

「了解」

 

言って一夏は立ち上がる。

そのまま、砂浜へと向かった。

 

「織斑先生……一夏一人で良かったのですか?」

 

「そうか、お前らには話していなかったな。一夏の白式はリミッターが外されたISだ」

 

千冬から放たれた真実に鈴たち専用機持ちは驚く。

大型の空中投影ディスプレイから一夏の白式のスペックデータが表示された。

 

「なによこれ……」

 

それを見た専用機持ちは言葉を失った。

白式のシールドエネルギーは9999とエンカウントし、初速度も従来のISの3倍の速度、攻撃と機動の両方に特化したこのモンスターISを一夏は操作していたのだ。

 

「しかも、第二形態に移行していたの!?」

 

「第二形態・雪羅……荷電粒子砲を可能にした装備か」

 

こんなデタラメ機体に勝てるISはこの世に存在するかと疑問に思われた。

実際のところ、ここまでしなければ、一夏から溢れ出すエネルギーを処理できないことは、千冬は話さなかった。

 

「一夏が帰ってくるまで、待つしかない」

 

一夏の戦闘を観戦することすらできない状況に専用機持ちは黙ってしまった。

 

 

    ◇

 

 

「……………」

 

一夏は或美島から出たことにより、通信が回復するとすぐさまクロエに連絡を入れる。

 

『そのまま、直進してください。5分後に接触します』

 

福音の情報を聞き、一夏は更に速度を上げる。

そして、白式のハイパーセンサーが福音を捉えると『雪片弐型』を抜く。

そのまま、白式の単一能力・零落白夜を発動した。

 

「葬る」

 

一閃。一撃を当てるだけで、本作戦は終了する。現在の白式の速度は300キロを超え、普通なら回避することは不可能だと思われた。

 

「!?」

 

福音は最高速度を超えた一夏のままこちらに反転、後退の姿となって身構えた。

 

「このまま、行く!!」

 

相手の反撃が来る前にケリをつける方を一夏はとるが―――

 

「敵機確認。迎撃モードへの移行。《銀の鐘》、起動開始」

 

オープン・チャンネルから聞こえたのは機械音声だった。

一夏の攻撃を福音は身体を一回転させ、避ける。それは慣性制御機能を標準搭載しているISであっても、かなり難易度の高い操縦だ。

 

「あの翼さか!?」

 

高出力の多方向推進装置は他にも多く存在する。流石は軍用だと一夏は実感した。

 

「そっちが、そうなら……」

 

一夏の中にある何かが反応し、白夜の装甲から光の膜が出現する。

 

「もっと、速度を上げるまでだぁ!!」

 

一夏は瞬時加速で一気に距離を詰める。

しかし、福音はそれすら避ける。

 

「!!」

 

銀色の翼。スラスターでもあるそれは、装甲の一部がまるで翼を広げるかのように開く。

 

「砲口!?」

 

一斉に開いた砲口を一夏に向かわせるため、翼を前へと迫り出す福音。次の瞬間、幾重もの光の弾丸が撃ち出された。

 

「っ!!」

 

その弾丸は、高密度に圧縮されたエネルギーだった。ちょうど羽根のような形状をしている。それが海に刺さると一斉に爆ぜた。

 

「連射まで可能!?」

 

爆発するエネルギー弾丸。それが連射で一夏に襲う。

狙いはそれほど高くないが、数と速度が異常だった。

 

「うおおおっっっ!!」

 

一夏からさらに中から溢れ出すエネルギーが増え、光の膜が輝きを放つ。

そして、一夏は名前の知らない筈の剣の名前を口にした。

 

「〈無敗剣(エクスカリバー)〉!!」

 

左手に黄金の剣が出現し、一夏は瞬時加速でもう一度、近づくと縦に一閃。

黄金の剣は福音の左の翼を切り落とした。

バランスを崩した福音を一夏は見逃さず一気に攻める。

 

「これで……終わりだァァァ!!」

 

一夏の零落白夜が福音のアーマーを切り裂く、その一撃が決まり、スーツだけの状態になった操縦者が出て来る。

 

「息はしている……」

 

福音の操縦者の生死を確認して安心する。今までにない戦いをした一夏は疲れ切っていた。一夏はそのまま、旅館の方へと飛んでいった。

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