インフィニット・ア・ライブ/ステイナイト   作:ぬっく~

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第二十一章 アイドルと女装とメイド

天央祭の会場となる天宮スクエアは、天宮市のちょうど中心辺りに位置する大型コンベンションセンターである。

中央にセントラルステージがあり、その周囲に大型展示場が広がっているという構造になっている。天央祭に用いられるのは主に東ブロックの一号館から四号館だった。

 

「下見はこれで、オッケーね」

 

各ブースの下見を終える楯無と一夏。

今一夏は、二号館の下見を終え、解散したところだった。

 

「ん?」

 

二号館を出ようとした時だった。

資材の陰で身を躍らせる少女が、素早く出て行く。

しかし、一夏はその少女に違和感を覚えたのだ。

 

(あの癖……)

 

一夏はその少女の後を追うように一号館の方へと走って行った。

一号館に入ると紺色のセーラー服に身を包んだ少女たちの集団がおり、誰かを追っている少女を見つける。

そして、『関係者以外立ち入り禁止』と書かれたロープを潜って、ステージ裏まで入り込んでしまった。一夏はその後に続き進むと覗き込むように何かをしている少女を見つけ、背後から声をかけた。

 

「そこで、何をなさっているのですか? ()()()()くん?」

 

「!?」

 

いきなり背後から声をかけたのは悪かったようで、少女は驚いて倒れてしまう。

倒れた衝撃でステージにいた少女にも気付かれてしまった。

 

「あらー?」

 

ステージにいた少女は驚いた様子で目を開き、倒れた方の少女はダラダラと汗を掻く。

 

「あなたは……?」

 

何か色々と不味い状況になりかけているようで、一夏は自然となく、倒れた少女の方に手を差し伸べる。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「え!? ああ」

 

一夏は手を引っ張り彼女を立たせると同時にステージに姿を現す。

 

「一昨日の会議にいたメイドさん!?」

 

どうやら、一夏の姿を見て、ステージにいた少女は目を輝かせる。

今一状況がつかめない一夏は、隣にいる少女の話に合わせる事にした。

 

「―――な、なあ」

 

「はいー?」

 

「こ、ここって……立ち入り禁止じゃないのか?」

 

「ふふ、そうですねー」

 

なんて言いながら、いたずらっぽい笑みを浮かべる少女。

 

「でも、そうなるとあなたたちもいけない子ですねー」

 

「え? あ……」

 

その通りである。少女は弁解するように手を振う。

 

「あ、いや、その。俺は……」

 

「ふふ、いいですよー」

 

と。そう言いながら、彼女は「しーっ」と前に指を一本立ててきた。

 

「三人だけの秘密にしましょう? いけない子同士の約束ですよぉ」

 

「え……あ、ああ……!」

 

彼女は右手を差し出す。

 

「では、改めましてー。竜胆寺女子学院の誘宵美九です」

 

「士織……五河士織だ」

 

右手を差し出し、美九と握手を交わす。

 

「メイドさんは?」

 

「織斑一夏です。ちなみにIS学園の生徒ですよ」

 

「え? 生徒なんですかー」

 

まあ。普通ならその反応ですよね。この服装を見れば誰もが生徒とは思わないからね。

士織が美九と話をしている時、一夏のISからアラームが鳴り、一夏は眉を潜める。

 

(通信電波……しかも、非公式の暗号回線。発信源は……さほど、遠くない……か)

 

士織が時々、おかしな会話をしているのを一夏は見逃してはいなかった。士織の右の耳にインカムが付けられているのだろう。時々、右手を当てているから、誰かと通信していることが、すぐに分かってしまったが、あえてそれを一夏は見逃した。

 

「そうだな……戻ろうか。こんなところ、誰かに見つかったら怒られるし」

 

「いえー、それは別に構わないんですけどねー」

 

「え?」

 

士織が首を傾げると、美九が再び指を一本立てて「しーっ」と鼻先の前に立てた。

 

「せっかくの三人だけの秘密じゃないですかぁ」

 

「……!」

 

士織は不覚にもドキッとしまう。きっと顔が赤くなっていることだろう。

そんな士織の心境を知ってか知らずか、美九が微笑み、軽やかな足取りで歩いて行く。

通路を抜け、立ち入り禁止のロープを越えてセントラルステージの観客席に舞い戻った。

 

「では、私たちはこれ―――」

 

が、一夏がそこで言葉を切る。

一瞬不思議に思うも、理由はすぐに知れた。いつの間にそこにいたのか、少女が私たちの間に割って入ってきたからだ。

 

「離れて、士織」

 

士織を守るように手を広げながら、キッと鋭くした視線を美九に向ける。

 

「お、折紙!?」

 

なぜ、折紙と呼ばれる少女が美九を睨み付けるのかは分からないが、美九は何か覚えがあるようだ。

結局、納得のいかないまま、美九は一号館の方に歩き去って行ってしまう。

 

「士織さん」

 

「はい?」

 

「この後、お時間いいですか?」

 

士織が右手を耳に添えようとした瞬間、一夏は素早く耳に付けられていたインカムに奪う。

 

「ちょ!?」

 

「やっぱり、着けていましたか……」

 

士織の顔はやばいと言った感じがもろに出ており、一夏はすぐにそれを士織に返す。

 

「通信をするなら、言葉に出さない方がいいですよ? 見ててバレバレですから」

 

「っ!」

 

「それで、誰ですか? 士織さんと通信をしていたのは?」

 

と。言うと士織は驚いていた。理由は簡単だった。

 

『なっ!? 回線をジャックされたですって!?』

 

「ISを舐めては困りますよ。まあ、私のが特別なだけですけど」

 

『……っ』

 

「秘匿回線を使うからには、組織が関与していると思いましたが、随分と若い声ですね」

 

『あなたこそ何者なのかしら? 織斑一夏』

 

向こう側も同等の立場に持ってこようとしているが、一夏はそんなことを気にせず話を進める。

 

「人目が多いようですし、場所を変えましょう」

 

「ああ……」

 

士織もインカムからの指示に従い了承する。

折紙には役員の話し合いがあると無理矢理理由を着けて、分かれた。

 

 

    ◇

 

 

数分歩いた先にあるフード店の奥の場所で一夏と士織は向き合っていた。

 

「それで、なんでその服装なんですか? ()()さん」

 

「う! ばれていたか……」

 

「もろにバレバレです。男の癖が抜けていないですよ」

 

男と女の歩き方は違う。しかも、士織の歩き方は男の歩き方ですぐにわかってしまった。

 

「美九とは何か色々とあるようですが……それは置いて置きましょう」

 

一夏は本題を切り出す。

 

「今回の件はあなたたちですか?」

 

『何のことよ?』

 

士道のインカムの会話は一夏にも聞こえるようにしている。

 

「この天央祭ですよ。今回、政府の指示で我々も参加することが決定しました」

 

『いいえ。わたしたは何も関与してないわね』

 

向う側は否定した。

一夏もそれの言葉を聞いて、嘘をついていないことを確信した。

 

「となると、DEM……か」

 

「DEM……」

 

士道も何か思うことがあるのだろうか、顔に出ていた。

 

『そんな話はどうでもいいわ。それより、貴方は何者なにものなのよ!』

 

組織が相手なら、身元ぐらい調べるだろう。

そして、織斑一夏についても調べたが、行き詰ったんだろう。

 

「織斑一夏。それ以上、それ以下でもありませんよ」

 

『っ! 白を切るつもりね』

 

「真実を言ったまでですが……」

 

「なあ? 俺からもいいか?」

 

話を割って入って来たのは士道だった。

 

「一夏は精霊なのか?」

 

「う~ん。答え的にはYesですね」

 

「的?」

 

「自覚がなかったんですよ。あの日まで」

 

意外な真実に士道たちは驚いていた。

自身が精霊だったことに気付かなっかたことに。

 

 

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