インフィニット・ア・ライブ/ステイナイト   作:ぬっく~

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第二十二章 敗北

「或美島の一件まで、私自身が精霊と呼ばれる存在になっていたことに気付いていなかったのよ」

 

「……………」

 

士道はその答えで確信を得てしまった。

織斑一夏は〈ファントム〉によって精霊にされた人間であることを。

 

「これは、忠告よ。近内に嵐が来る」

 

「嵐?」

 

「そう。あなたたちが思っている以上の嵐がくるわ」

 

そう言い残して、一夏は席を立つ。

 

「今度は、天央祭でお会いしましょう。五河士道くん」

 

「ああ」

 

言って、一夏は士道の前から立ち去る。

士道は〈フラクシナス〉に回収された。

そして、その日がやってきた。

 

『これより、第二十五回、天宮市高等学校合同文化祭、天央祭を開催いたします』

 

天井付近に設えられたスピーカーから実行委員会の宣言が響くと同時に、各展示場が拍手と歓声に包まれた。

9月23日、土曜。天宮市内の高校生とIS学園の生徒が待ちに待った、天央祭の始まりである。

今一夏がいるのは二号館。来禅高校の隣に位置する飲食ブースだ。

 

「皆、準備はいい?」

 

「問題ないよ」

 

「同じく」

 

一年一組の出し物は、『ご奉仕喫茶』である。

店員は全員、メイド服を着ており、いわゆるメイド喫茶と言ってもいい。

しかも、これを企画したのが……ラウラだった。

 

「開店よ!」

 

一夏の声に応え、メイドさんたちが一斉に礼をする。

そして、決戦は始まった。

 

 

    ◇

 

 

天央祭が始まって数時間が経った時だった。

一夏だけに聞こえる『白式』のアラームが鳴りだしたのだ。

すぐさま一夏は、鳴った理由を調べるため、人目の少ない裏方に周った。

 

「未確認飛行物体が多数……」

 

嫌な予感が的中し、一夏は考えこむ。

束からの情報でDEMと対精霊部隊〈AST〉、精霊を保護する組織〈ラタトスク〉などの情報を手に入れていた。

そして、DEMがこの天央祭に夜刀神十香と五河士道、織斑一夏を捕獲する計画をしていることも入手しており、その時間が来たのだ。

 

「めんどくさいことをしてくれるわね。でも……」

 

しかし、一夏は既に対策を用意していた。

 

「……時間です」

 

一夏はプライベート・チャンネルを開き、誰かと会話をする。

その一言を聞くとすぐに切れてしまったが、一夏は何事も無かったように表に出た。

 

 

    ◇

 

 

同時刻、天宮スクエア上空15万5000メートルに〈ラタトスク〉が所有する空中艦〈フラクシナス〉がいた。

その艦橋に、かたたましいアラームが鳴り響く。

 

「天宮スクエア上空に、ASTと思しき反応が20……30!」

 

「なんですって……!?」

 

クルーの報告に、琴里は顔を歪めた。

それと同時に、メインモニターがパッと空中の映像に切り替わる。

全身に仰々しいCR‐ユニットを纏った魔術師たちと奇妙な機械人形が、天宮スクエア上空に浮遊していた。

 

「DEMの手の者? それにしたって、一体このタイミングで何故……!」

 

そこで、奴らの目的が分かるが、人目に多いこの場でやれることが限られていた。

そんな琴里の思案を感じ取ったのだろうか、神無月が静かな声を発してきた。

 

「よろしければ、私が出ましょうか」

 

「……仕方ないわね。頼ん―――」

 

と、琴里が言いかけた瞬間、再び艦橋内にアラームが鳴り響いた。

 

「!? 今度は何事よ!」

 

「大型コンベンションセンターに巨大な反応が現れました! こ、これは―――」

 

クルーの狼狽と同時に、モニターが切り替わり、新たな反応の主が姿を現す。

 

「な……まさか、あれは……」

 

その姿を見て、琴里はゴクリと唾液を呑んだ。

 

 

    ◇

 

 

「なッ!?」

 

―――引き金を引こうとした瞬間。前方から剣や斧、槍と複数の武器が飛んできたのだ。ジェシカは緊急回避行動を取り、避けるが通り過ぎた武器は〈バンダ―スナッチ〉を一機に串刺しになった。

その馬鹿げた攻撃に、思わず顔を青くする。

魔術師のよりは精度は低いとはいえ、〈バンダ―スナッチ〉の周囲に展開されている随意領域を張り巡らせている。

防御特化にする時間が無かったとはいえ、その不可視の壁を紙のように撃ち抜くなど、常識では考え得ない話だった。

 

「な、何事ダ!」

 

『前方に敵です!』

 

大型コンベンションセンターに一人、輝かしい光を放つ者がいた。

 

「招待状の無い客は帰りな、雑種ども」

 

腰まで伸びた黒い髪。かつて最強の座に立った者がそこにいた。

織斑千冬だ。

これが、一夏が用意した策だった。

一夏の霊力を研究した結果で出来た、霊力に近いエネルギーを活用したISを一夏は千冬に渡してあったのだ。

千冬は右手を上げると周囲に複数の波紋が現れる。

 

「ふんッ!」

 

下ろすと波紋から高速で剣や槍がジェシカに目掛けて放れた。

 

「く―――目標変更! 迎撃用意!」

 

千冬から放たれる攻撃を避けながら、ジェシカは金切り声を上げ、銃口を千冬に向けた。

 

「雑種ごときが、王に刃向かうか……なら、仕方ない」

 

千冬の懐に波紋が現れ、乖離の剣を握った。

 

「人類最古の宝物を見せてやる」

 

乖離の剣の刀身が回転を始め、周囲の風を超高速回転で巻き込む。

 

「ァ……」

 

千冬が乖離の剣を構えた瞬間からジェシカの震えは収まらなかった。

逃げようにも既に遅く、千冬はジェシカたちに目掛けて最強の一撃を放つ。

 

天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!」

 

異常なまでに圧縮、それによる真空波の渦が放出され、物理的に空間を切裂いていった。

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