順調だね……コメントがあまりなくて、ちょっと寂しい。
ニコニコ静止画でお絵描き中……
その光景を目にした者は言葉を失うだろう。
実際に一夏も言葉を失っているのだから。
「しろ……きし……」
原初のIS。その名前を知らない者は絶対にいないどろう。2341発のミサイルを粉砕した経歴を持つISなのだらから。
「成程、あなたが白騎士の操縦者だったのですか……」
「……………」
千冬の顔はバイザーで隠れているため、表情は分からない。
白騎士は無言のまま、腰に付けられていた剣を抜く。
「……っ」
ただ、抜いただけなのに一瞬にして辺りの空気が変わった。
重い……いや、苦しいが正しいだろう。息をすることすらできないとは言えないが、そうとう厳しく感じる。
それどころか、千冬とエレンを中心に周りの瓦礫が浮き上がっていた。
「……………」
「……………」
お互いに無言のまま、睨み付ける。
最強と最強の戦いを目の前にして、一夏は頬に汗を掻く。
そして、その汗が地面に落ちた時が……合図だった。
「……ッ!?」
一瞬の出来事だった。
一夏の汗が地面に落ちた瞬間、二人の姿が視界から消えたのだ。
だけど、お互いにぶつかり合っていることはわかる。
「ははは……勝てる気がしないわ……」
剣と剣がぶつかり合う音しか聞こえない。
姿と音が全くと言って合わない。千冬とエレンは音よりも速い戦闘を行なっているのだ。
見えたとしても、あっという間に消えてしまう。
「ん?」
千冬の戦いぷりに目を奪われていたため、周りの存在に気付けなかった。
美九の洗脳を受けたゾンビたちだ。
今の一夏は虫の息である。
対抗する術はもうなく、左腕すらまともに動かせない現状であった。
「随分とボロボロですわねぇー。一夏さん」
ゾンビ兵が左右綺麗に整列し、その真中を歩いて来る精霊、誘宵美九。
「忠告しておくけど、今は私に手を出さない方が、身の為よ」
「あらあら、おかしなことをいいますのね。虫の息であるあなたに何が出来るというんですかー?」
今の美九なら、一夏を好きなようにすることができる。しかし、それは同時に死を意味していた。
「事実。今の千冬姉はガチギレしているから、触れただけでも、存在ごと消されるわよ」
「……………」
美九も千冬の戦いを目にしている。
一夏の言う事は真実だとすぐにでもわかった。
「変なことをしなければ、まあ……許してくれるだろうけど」
「まあ、いいでしょう……」
そう言って、観客の一人が白い箱を持って一夏の左側に座った。
「応急処置ぐらいは、してあげますわ」
一夏は痛みに耐えながら、左腕を固定する。
エレンの剣は骨ごと貫通していたが、精霊である一夏は霊力により、普通の人間より蘇生スピードが速く、既に傷口は塞がっていた。本来なら白式に備わっている生体再生能力で治すことができたが、今手元には白式はない。
「なんで、開かないのよぉ!!」
出入り口の方がなんだか、騒がしくなっていた。
そして、氷で覆われた扉が吹き飛び、ぞろぞろとISを纏った少女たちが入って来る。
「何よ、これ……」
彼女たちが最初に目にしたのは崩壊寸前のステージ。
そして、応急処置を受けている一夏たちだった。
「一夏くん。これは一体……」
「ざっくり言えば、敵襲だね」
「亡国機業!?」
「いや、DEMだね」
と、言うと楯無は眉を寄せる。
「なんで、DEMが……」
「私が狙いでしょうね。まあ、他にもいるけど」
一夏は肩をすくめる。
精霊に関する情報は秘匿されているため、一夏の口からでは言えなかった。
「どうやら、あちらも終わったようだね」
そう言って、視線の先から千冬がとちらに向かって歩いてくる。
ISスーツ姿のままの千冬は一夏を抱きかかえると、無言のまま何処かへ行ってしまう。
その後ろ姿をただ単にその場いた者たちは見ていることしか出来なかった。
「……何って、気迫なのよ……」
楯無が口を開けたのは千冬が会場から出た後のことだった。
あの時、口を開けば首が飛んでいただろう。
それを全員、本能的に悟ってしまったのだ。
◇
あれから、数時間が経過した。
千冬は、一夏を完全に安全な場所に運ぶと何処かに行ってしまい、天井付近に設置されているスピーカーから美九の歌が聞こえる。
それと、同時に外には多くの人が溢り返っていた。
「この会場にいる人たちを洗脳したわね……」
しかし、そこで疑問が生まれた。
何故、美九の歌を聞いたのに洗脳を受けていないのだろうか。
ステージの時は耳を塞いだから聞かなかったのは分かるが、今さっきのは耳など塞いでいなかったのだ。
「霊力……いや、それなら他も精霊と同じはず……」
一夏は考える。
しかし、結論には届くことはなかった。
「ん?」
『―――わざわざ私のお城に戻ってくるなんて、随分と余裕があるんですねー。士織さん……いえ、五河士道……ッ』
スピーカーから美九の声が響き渡った。どうやら、士道がここに戻ってきたらしい。
「あの馬鹿……なんで、戻って来たのよッ!」
一夏はすぐさま、士道がいると思われる天宮スクエア前まで走る。
程なくして一夏は天宮スクエア前に着くが、既に士道の姿はなく、精神を疲弊されたように倒れた人たちしかいなかった。
「これは……」
すぐにそれが士道の仕業ではないことはわかった。
「まさか!」
一夏はすぐさま、セントラルステージの方に向かう。
向かう途中、外にいた人たち同様に倒れている人がいたが、気にせず進む。
そして、セントラルステージの入り口前まで辿り着くと、その扉を惜し開けた。
「そろそろ退散いたしますわよ」
「ちょっと待ってくれ! もう少し―――」
どうやら、僅かながら戦闘があったようだが、士道は血のような紅と闇のような黒で構成されたドレスを着た少女に襟首を掴まされ、その場から飛び去った。
照明道具に足をかけ、ステージ天井に開いた穴から出て行く。
「にッ、逃がさないでください……っ!」
「応とも!」
「了解。承知しました」
美九の声に応え、八舞姉妹が後を追って外に飛び出る。
しかし、数分して戻って来てしまった。どうやら、見失ったらしい。
「一体、何をしに来たのよ……」
一夏は士道の行動が全くと言ってわからない。
せっかく、逃げる機会を与えたのに、彼はここに戻って来た。だけど、士道がここに戻って来た理由は僅かながらわかった気がした。
美九の表情を見るに士道は美九に会いにきたのだと。
まあ、どうやら失敗に終わったようだけど……。
「……………」
一夏は士道たちが逃げる時に使った穴……エレンが空けたステージ天井の穴を眺める。
「探してみますか……」
一夏はIS学園のスペースがある二号館に向かう。
その裏方、一夏の私物からインカムを取り出した。
「コード『******』」
言うと、コール音が鳴る。
『どうされましたか? 緊急用の方をお使いになるとは、珍しいですね』
インカムからクロエの声が聞こえる。
一夏が使っているのは非常事態に備えてのインカムだった。
「ちょっとね。それより頼んでいい?」
『はい。何でしょうか?』
「五河士道の居場所を特定してほしい」
『分かりました。少々お待ちください』
数分して、士道の居場所が分かる。
『目的の人物はDEMインダストリー前におります』
「っ!? ありがとう」
一夏はすぐさま、DEM日本支部に向かうが、天宮スクエアからDEMインダストリーまで距離がありすぎた。
「仕方ない……」
一夏は体内にある霊力を開放する。
「〈
いままで着ていた服が光を放ち、精霊だけが持つ霊装へと姿を変えた。
軽く簡素な鎧の上に青色の外套。
或美島の一件で一夏は何故だか、この名前が分かるようになっていた。
霊装を纏うと、一夏の脚力が上がり、あっという間にDEMインダストリーが目の前に見えてくる。
「やっぱり……」
上空では、先程、天宮スクエアにいた少女がバンダ―スナッチと戦闘を繰り広げていた。
一夏はそのまま、目的の建物に突っ込み、階段を駆け上がる。
五階まで駆け上がり、次の階段へと廊下を進む先に聞き覚えの声が聞こえた。
「そんなこと……させるかぁぁぁぁぁぁッ!」
目映い光が放たれ、そこには金色に輝く、一振りの、巨大な剣があった。
士道は柄を握り、前方に陣取っていた魔術師をビルの壁ごと吹き飛ばす。
「あんまり、無茶はしないの」
「な!? 一夏……」
士道に襲いかかろうとしていた魔術師を一夏は気絶させる。
一夏の存在に気付いた士道は何故か安心感を見せていた。
「さて、十香ちゃんはどうしたの?」
十香がいないことに疑問を持った一夏は士道に問う。
「十香は……」
士道の説明によると、あの後、新たに現れた白と紫で染め抜かれたCR‐ユニットを纏った金髪の魔術師に連れ去れてたそうだ。
そして、この上層階に十香がいるらしい。
「そう。なら、助けにいけないね」
「ああ」
そう言って、一夏と士道は次の階段を上がった。