インフィニット・ア・ライブ/ステイナイト   作:ぬっく~

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第二十七章 宵待 月乃

「―――それで、十香さんはどこにいるんですかぁ?」

 

「いや、その」

 

突如現れた美九によって状況が一変する。

洗脳を受けた四糸乃と八舞姉妹は外にいる者たちの対処に回され、敵の注意がそっちに向いてくれたことが何よりだった。

 

「で、でもそんなこと、簡単に調べられないだろ……!」

 

「ああ。それなら、大丈夫だよ」

 

一夏は指を上に向ける。

 

「最上階手前の階にいる」

 

「なんで、分かるのですかぁー?」

 

「DEMにはちょっと警戒していたからね。そこの設計図は既に頭に入れてあるんだけど、十八階の所に妙なエリアがあったのよ」

 

「妙なエリア?」

 

「そう。一部の者しか入れないエリア……ウェストコットとエレンだけが入れるエリアがね」

 

「!!」

 

これで、十香の場所が分かった。士道は小さくうなずきながら拳を握り、上階の方に視線を向ける。

 

「よし、じゃあ行こう、美九、一夏」

 

「だから、勝手に協力している感出さないでくれますぅ?」

 

「あんまり、無理だけはしないの」

 

色々と思うところはないでもなかったが、士道は大人しく、一夏のあとをついていく。

と、それからまた階段を上がり、どのぐらい歩いた頃だろうか。あれからもワイヤリングスーツを纏った魔術師たちを倒すが、士道は思わずその場に膝を突いてしまった。

 

「ぐぁ……っ」

 

「あんた……まさか、見せなさい!」

 

苦しむ士道の身体に一夏は手を当てる。

 

「内蔵破裂……筋肉繊維の断絶……って、士道、あんた! 」

 

人の身に余る精霊の剣―――天使〈鏖殺公〉を何度も振った代償は、予想以上に士道の身体を破壊していたようだ。

 

「このままだと……死ぬはよ?」

 

「かまわねぇ……俺は十香を助けなきゃならない。そのためなら、この身体がどうなろうとかまわねぇ」

 

士道は意識が飛びそうな痛みを堪えてその場に立ち上がる。

 

「あーあーあー。何ですかそれ。悲劇のヒロインを助ける自分に酔ってるんですかぁ? もう正義の味方に憧れるような歳でもないでしょうにぃ」

 

だが、士道は反応を示さず、ただ黙々と廊下を歩いていった。

 

「ちょっと! 何無視してるんですかぁ!」

 

美九はそれが気に入らなかったのだろうか、声を荒げる。

 

「士道……」

 

「がぁ……ッ!? 一夏……」

 

一夏は士道を追い越し、腹に向けて拳を振った。

気を失った士道を肩に抱える。

 

「そんな男を何故、連れていくのですかぁ? そのまま置いて行けばいいのにぃ……」

 

「確かに足手まといは置いていくのは、戦場のルールだけど……私はそうはさせないわ」

 

足手まといでしかない士道を抱えながらも連れて行く一夏に美九は肩をすくめる。

 

「なんで……ですか……どうして、あなたはその男に肩入れすのですかぁ……」

 

「なぜだろうね……私にも良く分からないけど、ほっとけないのさ」

 

「ッ……! 人間にそれ以上の価値なんてありません!」

 

美九は断ずるように叫ぶ。

 

「美九、あなた……」

 

一夏は眉をひそめた。

 

「なんで―――人間をそんな風にみるのだ……」

 

「はッ、そんなの決まっているでしょう? 人間なんてその程度の―――」

 

 

「―――あなたも、人間なのに……?」

 

 

美九の声を遮るように言い放つ。

美九が、言葉を切って息を詰まらせた。

 

「あなた、どうしてそれを」

 

「知り合いに美九のファンがいてな」

 

一夏の親友に()()()()()()()()使()()()()()()のファンがいたのだ。

宵待月乃―――幼い頃から歌が得意で、15歳の時に“宵待 月乃(よいまち つきの)”という芸名でアイドルデビューを果たした。しかし、デビューから1年後に事務所から指示された枕営業を拒否した結果、捏造されたスキャンダルで業界から干され、さらにそれを信じたファンの心ない言葉により憔悴していき、心因性の失声症に陥ってしまった。自分の全てだった声を失い、その後、舞台から姿を消してしまった。

 

「同じ……人間なんだから、もっと……」

 

「ふざけないでください……、あなたに、あなたに一体何が分かるというんですか!」

 

美九の憎々しげに叫ぶ。

 

「分かりますよ。私もあなたと同じ……人間だったから!」

 

「ッ……!」

 

一夏の叫びに、美九は息を詰まらせた。

 

「私は一度、死にました。一方的に身体に銃弾を撃ち込まれ、死以外の道しかなかった所に『神様』が現れ、今の力があるのです」

 

「あなたも、私と同じ……」

 

美九はこの『声』をくれた『神様』は、一夏の言う『神様』と同じ者なのだろうとわかった。

ノイズような姿をした『何か』に与えられた力。

 

「それでも、美九の……月乃の歌を今でも楽しみにしている人はいるんだから」

 

「そ、そんな人―――!」

 

と、その瞬間、廊下の前方から幾人もの足音が響いた。

 

「いたぞ! 侵入者だ!」

 

「気を付けろ! 奴らは精霊だ!」

 

魔術師が一斉に弾丸を放ってくる。が、それらは美九の発した声の壁で弾き飛ばされた。

その隙を狙って剣を一閃させる。

魔術師を蹴散らし、一夏と美九は廊下を進む。

するとその時、階段を上がって、次の階に到達した二人の前に、一人の魔術師が現れた。

大柄な男である。今までの魔術師とは異なり、両手に明らかに屋内戦闘用ではない巨大なガトリングガンを携えていた。

 

「止まれぇい! 散々好き勝手にやってくれたようだが、そこまでだぁ! ここから先は、メイザース執行部長よりこのビルの守護を任させたこのクー・フーリ―――」

 

「〈勝利すべき黄金の剣(カリバーン)〉!!」

 

男の口上の途中で、一夏は叫んだ。〈無敗剣〉から一直線に飛んだ巨大なビームは男が守護していた扉ごと突き破って行ってしまった。




ウェストコット「ランサーが死んだ!」

エレン「この人でなし!」
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