「……………」
「何処に行くつもり!?」
アルテミシアは、何やら耳に意識を集中させ、奥に部屋を見つめた。
そして、一夏と折紙を無視して、そちらの方へと飛ぶ。
「待ちなさい!」
折紙も後を追うとした瞬間、突如通路が崩れ、完全に道が塞がってしまった。
「どうして……」
折紙は悔しかった。
神様は何故か、私を見捨てる。
大切な人が前にいるのに、何も出来なかった。
◇
「―――悪いが、我々はここで失礼させてもらうことにするよ。生き延びたならまた会おう。タカミヤ―――イツカシドウ」
一夏が部屋に入った瞬間、目を疑った。
部屋の天井は突き破られ、その奥に十香らしき女性と美九、士道がいたまではよかったが、さらに奥にエレンとアルテミシア、ウェストコットがいたのだ。
「いいや、知らないさ。―――イツカシドウのことはね」
言うとウェストコットは士道から視線を外し、エレンの肩に手を置いた。
するとその瞬間、エレンの周囲の空気がぐわん、と揺れる。
そしてエレンとアルテミシアはウェストコットを見えない手で支えるように浮遊させると、そのままスラスターを駆動させ、恐ろしいスピードで空の彼方へと飛び去っていった。
「あとは……貴様らか」
十香は空に消えたエレンたちの姿を視線だけで追ってから顔を下方に向け、士道たちの姿を捉えると、ゆっくりと三人の元に下りてきた。
「想像以上にやばいわね……」
一夏は十香から溢れ出す“負のエネルギー”を感じ取っていた。
一体どうやれば、あそこまで出せるのか。一夏は不思議でたまらなかった。
士道は十香に声をかけようとした瞬間、十香が右手に握った剣をぞんざいに振り抜いてきた。その太刀筋から衝撃波が発され、三人に襲いかかる。
「っ……」
咄嗟の事に思わず〈無敗剣〉でそれを受ける。
一夏は戦慄した。十香にとっては児戯にも等しいものであるとはいえ―――今の攻撃は、確実に士道に向けられたものだった。
十香はギロリと視線を鋭くする。その顔は明らかに敵を見るそれしか思えなかった。
「十香! おまえ……どうしちまったんだ! 俺のことを覚えていないのか!?」
士道が叫ぶと、十香は眉をひそめた。
「十香……? 私のことか?」
やはり、いつもの十香ではなかった。士道の事おろか、自身の名前さえ覚えていなかったのだ。
「一体……何が……」
と、士道が困惑に顔を歪めると、右耳に手を当てた。
どうやら、ビルの上層階が破壊されたことにより、ジャミングが解除されたらしい。
「何をごちゃごちゃと言っている」
と、士道の会話を遮るように、十香が冷たい声を発してくる。
「―――ふん、何だか知らぬが、まあいい。屠れば済む話だ。どうやら先程の女ほどの力はないようだしな」
言って、十香は再び剣を振ってくる。衝撃波が士道を襲った。
「くあ……っ!」
なんとか初撃は防いだが、次の瞬間、またも十香が剣を振り抜いた。手が痺れまともに動けない士道目掛けて、斬撃が飛んでくる。
「く―――」
「〈
が、その攻撃が士道に当たる寸前にで、一夏で斬撃が相殺する。
「一夏……!」
「こっちも、限界があるからさっさとやってきなさいよ。王子様」
「ああ!」
〈鏖殺公〉を握り直し、十香を睨め付ける。
「さあ十香。もうじき朝だ。家に帰って飯にしよう。今ごめんなさいって言えば、今日は朝から昼晩、おまえの好きなメニューで統一してやるぞ」
「……何をいっている?」
十香が怪訝そうに眉根を寄せてくる。士道は細く息を吐いて、一夏と士道は十香に向かって駆け出した。
だがその瞬間、十香が剣を振ってくる。一夏は〈無敗剣〉でそれを受け止めたが、そこで発生した衝撃波で士道は元いた場所へと押し戻されてしまった。
「うぐ……っ!」
一夏は十香の剣を捌く。
剣を弾くと凄まじい衝撃波が辺りを襲う。
「よかろう―――ならば一撃にて塵も残さず粉砕してくれる!」
言って、十香は床を蹴って再び空へと舞い上がると、巨大な剣を天高く振り上げる。
すると虚空に不思議な波紋が現れ、そこから、十香の身の丈の倍はあろうかという巨大な玉座が姿を現した。
そしてその玉座が空中でバラバラに分解し、十香が掲げた剣に纏わり付いていく。
玉座の破片と同化するたびに、黒い粒子を巻き散らしながら、巨大な剣は、さらに長大な、禍々しい姿へと変貌を遂げていった。
そして、最後の破片が剣に同化し―――その切っ先が、月を裂くように天を突く。
「―――我が【
十香の吠えるような宣言とともに、〈
「あれは……!」
それを見て、士道が目を見開いた。
十香が、剣の柄をさらに強く握りしめる。すると巨大な刀身に、辺りの空間から黒い粒子が収束していった。
「去ね、人間……ッ!」
叫び、十香は暗く輝いた剣を一夏に向かって振り下ろしてくる。
だが―――
「簡単に終わらせるかぁ!!」
一夏の〈無敗剣〉は十香とは真逆の暖かい光を発し、光の粒子を纏わせる。
そして、十香は絶叫じみた声を上げ、一夏と十香は剣を振り下ろした。
「〈
「〈
瞬間、士道の視界が、光に染まった。