インフィニット・ア・ライブ/ステイナイト   作:ぬっく~

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第三十二章 転校生

天央祭が終わり、IS学園は平凡な日常を取り戻しつつあった。一夏も千冬に貸していた白式を返却してもらい、生徒会の仕事もちゃちゃっと片付け、専用機持ちのISの整備をする日々を過ごしていた。そんなある日、千冬から「今日のSHRには出ろ」と言われ、一夏は珍しく朝のSHRに出た。

 

「では山田先生、HRを」

 

「は、はいっ」

 

ちょうど眼鏡を拭いていたらしく、慌ててかけ直す山田先生。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!」

 

「え?」

 

いきなりの転校生にクラス中が一気にざわつく。

 

(そう言うことね……)

 

一夏も千冬の言っていた意味が分かり、千冬の方に視線を向ける。

千冬も一夏の視線を感じたのか、ふっと僅かに口を曲げた。

 

「失礼します」

 

クラスに入って来た転校生を見て、一夏は違和感を覚えた。

間違いなく初対面のはずなのに、一夏はこの転校生の少女を何処かで見た事がある気がしたのだ。

 

 

    ◇

 

 

「本当によかったのか? 接触するとは言え……」

 

「こうでもしなければ、接触ができないんだし」

 

〈フラクシナス〉の艦橋で五河琴里は不機嫌であった。

天央祭の一件以降、詳細が不明になっていた織斑一夏を見つけることが出来たと思いきや、一夏はかのIS学園にいたのだ。

 

「学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約がある以上、我々でも手が出せない。なら、これしか手はないじゃない」

 

琴里はチュッパチャプスを転がしながら令音の質問に答える。

流石の〈ラタトスク〉でも、IS学園には手を出す事は出来なかった。

特に国際条約が大きく、上も許可を出してくれなかったのだ。

 

「後は餌にかかるのを待つだけよ……」

 

琴里たちが行なった作戦は……意外な物だった。

 

 

    ◇

 

 

崇宮真那(たかみや まな)であります」

 

馬の尻尾(ポニーテール)というには少し短い髪をブンブンと振りながら、敬語になってるんだか良く分からない言葉を弾ませた。

 

「きゃああああああ―――っ!」

 

ソニックウェーブというやつだろうか。

クラスの中心を起点にその歓喜の叫びはあっという間に伝播する。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

面倒くさそうに千冬がぼやく。仕事がというより、こういう十代の女子の反応が鬱陶しいんだろう。

 

「それじゃあ崇宮さん、空いている席に座ってくれますか?」

 

「ええ。その前に、一つお願いがあります」

 

「ん? なんですか?」

 

山田先生が言うと、真那が一夏の方に視線を向けた。

 

「転校してきたばかりでこの学園のことがよくわかんねぇです。放課後にでも構わねぇですから、誰かに案内していただきてぇんです」

 

「あ、なるほど。そうですねえ……じゃあクラス委員の―――」

 

だが真那は、先生の言葉の途中で前方に歩き出すと、一夏の席の真ん前までやってきた。

 

「お願いしてもええですか? 一夏さん」

 

「え……?」

 

一夏は予想外の事態に、目を点にして呆然と声を発した。

真那はニコリと微笑むと、ポカンとしたクラスメイトの視線の中、指定された席に歩いていった。

 

 

    ◇

 

 

黒板の上に設えられた時計は、もう三時を回っている。

一夏の視界の中では、見慣れた帰りのHRが展開されていた。チャイムとともに教室に入ってきた山田先生が教卓に出席簿を開き、連絡事項を伝えている。

千冬は何か用事があるということで、この場にはいない。

 

『……………』

 

すると一夏の両隣と後方に座っている箒、セシリア、シャルロット、ラウラが、何の冗談でもなく、長時間見つめられていたら皮膚炎か何かになってしまいそうな視線を一夏に浴びせかけてきた。

 

「……ど、どうしろっていうんだよ」

 

一夏が絶望的な心地で息を吐くのとほぼ同時に、山田先生がパタンと出席簿を閉じた。

 

「連絡事項はこんなところですかね」

 

起立の号令が響き、それに従って椅子から立ち、礼をする。山田先生は「はい、ではさようなら」と言って教室を出て行った。

周りから、席を立つガタガタという音と、生徒たちの談笑が聞こえてくる。

下校時刻。だが―――一夏にはまだ仕事が残っているのだった。

 

「では、行きましょうか」

 

「ええ……」

 

一夏は真那を連れてIS学園を案内する。

食堂から保健室、屋上へと案内するが、真那の後ろを付けてくる複数の気配に一夏は気付く。

屋上手前の扉の前に立った一夏と真那は、屋上へ入ることなくその場にとどまる。

 

「そこで、こそこそしているヤツ。出て来たらどうです?」

 

『!?』

 

バレバレの尾行に気付いていなかったのか、そこに隠れてた五人の少女が姿を現した。

 

「やっぱり……」

 

一夏たちを尾行していたのは、紛れもなく箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラだったのである。

 

「貴様の目的はなんだ!」

 

「そうですわ。この時期になっての転校なんて、ありえませんわ!」

 

「そうね」

 

箒、セシリア、鈴の言うことはもっともだった。

いくら代表候補生でも、この時期での転校はあり得ない。

それに、このIS学園に入るにも国の推薦状が必要なのだから。

 

「目的でやすか? 決まっているでないですか、織斑一夏と接触することが、真那の任務ですから」

 

『ッ!?』

 

一夏も「ああ。やっぱり」といった顔で箒たちよりは驚かなかった。

しかし、それなら尚更おかしい。

朝のSHRから放課後まで時間はあった。しかし、真那は何もせず、放課後まで待った。

それに、一夏ほどの実力者を誘拐することは出来ない。あの魔術師を除いて。

 

「それで、そちらの要望はなにかしら?」

 

消去法で導き出される答えは一つだけだった。

 

「織斑一夏さん。我々、〈ラタトスク〉に来てもらえたいのです」

 

「そう来たか……」

 

一夏も予想通りの回答に眉をひそめた。

だが、それを良く思わない者たちがそこにいたのである。

 

「何かってに話を進めているのよ!!」

 

「そうですわ。一夏さんを連れて行くと言うんでしたら」

 

「僕たちが相手になってあげるよ」

 

鈴、セシリア、シャルロットは真那に殺気をぶつける。

というより、そこにいた全員が真那を敵視していた。

 

「いいでしょう。その喧嘩、買ってあげるでやす!」

 

一夏はまた、面倒事に巻き込まれたと、頭を掻いた。

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