万由里が可愛いかった……
俺の親友はこんなにも可愛いはずがない
六月頭、日曜日。
一夏は久々にIS学園の外―――というか、
「で?」
「で?って、何か?」
「だから、なんで……メイド服なんか着ているんだよぉ!!」
ああ。そのことか。
ちなみに五反田弾は一夏の中学から友達だった。入学式当日に知り合ってモンド・グロッソまでの間、やたら馬があって鈴と揃って同じクラスだった。そのこともあって中学時代(短い間だったが)はよく三人でつるんでいたんだが……。
「上司の趣味だ」
「いい趣味しているなそいつ。こんど、紹介してくれよ」
「東京湾に鎮められたいなら、いいが?」
篠ノ之束は極度の人間嫌いだ。その上、気に入った人間以外は近寄ることすら許さないといった、ヘビーな存在でもあった。
「……冗談だよな?」
「いや、まじでだ」
「……………」
ちなみに今一夏と弾が対戦しているゲームは『IS/VS』だった。ISを使った格ゲーだ。
「で、今日はなにし―――」
と弾の言葉は、突然の訪問者によって破られた。
「お兄! さっきからお昼出来たって言ってんじゃん! さっさと食べに―――」
どかんとドアを蹴り開いて入って来たのは弾の妹、五反田蘭だった。
「あ、久しぶり。邪魔している」
「え? えっと……どちら様でしょうか?」
蘭も一瞬、一夏のことが分からなかったようだ。
「まあ、普通ならその反応だよね。織斑一夏だよ」
「へ?」
弾も最初は一夏の事を千冬と間違えていたが、蘭もあとで一夏だと気付くと同じ顔をしていた。
「いっ……一夏……さん!?」
「そうだよ」
蘭の頭では現状の処理が追い付かず、倒れ込んでしまった。
「流石に男だったお前が、いきなり女となって帰って来ればそうなるよな」
「仕方ないさ。私の意思でなったわけではないし」
弾は状況の飲み込みは早く、普通に接する。
仕方ないので、倒れてしまった蘭を抱え、一夏たちは弾の部屋を出て一階へ。一度裏口から出て、正面の食堂入り口にと戻る。
「あら、千冬さん。久しぶりね」
「あ、いえ……私は」
五反田食堂の自称看板娘、五反田連さんが一夏たちを待っていたのだ。
「千冬さんが……こんな、趣味があったとはね」
「母さん。これ、千冬さんじゃないぞ。一夏だぞ」
「はい?」
蓮さんもニコニコと笑顔を見せているが内心では混乱しているようだった。
「お久しぶりです、連さん。織斑一夏です」
◇
「しかし、驚きです。一夏さんが見ない内に女の子になっているなんて……」
あれから、事情を軽く説明して、場を収める。
その時に蘭も目覚め、色々と大変だったことは言うまでもなかった。
「モンドの時にね。この身体こともあって、帰れなかったんだけどね」
昼食をいただきながら、話を進める。
「そう言えば、一夏は今、何処に住んでいるんだ?」
「IS学園」
「IS学園って……」
一夏の即答に何故か蘭が反応する。
「……。決めました」
「はい?」
「私、来年IS学園を受験します」
「お、お前、何言って―――」
立ち上がった弾の顔におたまが直撃する。
おたまを投げたのは、五反田食堂の大将、五反田厳さんだった。
「え? 受験するって……。蘭の学校って大学までエスカレーター式じゃなかったっけ?」
「大丈夫です。私の成績なら余裕です」
「IS学園は推薦はないぞ……」
よろよろと立ち上がる弾。
「お兄と違って、私は筆記で余裕です」
「あそこって実技もあるよな?」
「ああ……あるわね。私はやっていないけど」
起動試験でランキングを作成して合否を決めるのがIS学園だ。
最低でもBはないと入れないだろう。
「……………」
蘭は無言でポケットから何やら紙を取り出す。
「げえっ!?」
弾はそれを受け取って開く。
「IS簡易適性試験……判定A」
「これは……これは……」
簡易とはいえ、判定Aには一夏も驚きだった。
Aとなれば企業からも声はかかってくる。ある意味、原石がここにいるのだ。
「で、ですので」
咳払いをして、戻したばかりの椅子に腰をかける。
「い、一夏さんには是非先輩としてご指導を……」
「まあ、受かったらね」
蘭の将来が決まり喜んでいる中、弾は何故か反対を宣言していたことは置いて置く。