「……………」
一夏が目を覚ました時には外は夜だった。
身体中に付けられた装置がプチプチと離れながら一夏は病室を出る。
(なんだろう……)
意識が朦朧する中、一夏は何故か屋上を目指していた。
屋上へと繋がる階段を上がり、その扉を開ける。
一瞬、突風が襲ってきたが一夏はそのまま屋上に足を付けた。
(……呼んでいる)
中央あたりまで歩くと一夏はある言葉を発した。
「
着ていた病衣が光の粒子となって消え、別の物へと変わる。
青のドレスと中世の鎧を纏う。
そして、一夏は右手を天に掲げ、もう一つの名前を言う。
「
そこに現れた物は一本の剣だった。
病院に運び込まれる前まで持っていた剣がそこに現れたのだ。
そのときだった。
「一夏ぁ!!」
千冬が慌てて屋上に入って来たのだ。
それに反応するかのように一夏は千冬の方に振り向く。
しかし、一夏の目には光を全くと言っていい程に無かった。
「心配……っ!?」
一瞬の出来事だった。
千冬が一夏に言葉をかけようとした瞬間、一夏は千冬の懐に飛び込み、その手にある剣を振った。
間一髪で部分展開で《雪片》を展開し、千冬の首は吹き飛ぶことはなかったが、千冬は驚いている。
「なんだ……」
千冬が一番に驚いることはその力だった。
ISだったならその力には納得いった。しかし、一夏が纏っているのは蒼いドレス。そして、刀身3尺余、身幅4寸ほどの剣が握られているだけ。
とてもだが、ISと同等の力が出せるとは思えなかった。
「……………」
一夏は無言のまま剣を構える。
千冬も致し方ないと暮桜を展開し、《雪片》を構えた。
「参る」
千冬はそう言って、その姿が霞のように消え去った。
次の瞬間、一夏の頭上に千冬が現れ、手にしていた《雪片》を振り抜く。
だが、一夏は顔の向きすら変えないまま右手を上方へとやり、剣で千冬の一撃を防いでいたのである。二人の剣が触れた瞬間、凄まじい衝撃波が発生する。
「……………」
《雪片》の一撃を受け止めた一夏は未だに無言のまま、千冬を弾き飛ばす。
千冬はくるりと身体を回転させると、空中でぴたりと制止した。
「あの剣は……束に預けたはず……」
そう言って千冬が視線を鋭くし、再び《雪片》を振りかぶり、一夏に跳びかかる。
一夏は右手に握った剣の柄に左手を添えると、横薙ぎに襲ってきた千冬の斬撃を止めた。
が、千冬の猛攻は止まなかった。左から、上から、下から、その場に残像を残すような速度で剣撃を繰り出す。
《雪片》の残光がチカチカと視界の中に輝く中、今までの千冬と、明らかに気迫が、スピードが違っていた。普通の操縦者であれば、恐らく初手で切り捨てられていたであろう猛撃が、一瞬の間に幾度も幾度も繰り返される。
とはいえ、一夏も負けてはいなかった。そんな人の動きとは思えない太刀筋を、全て正確に捉え、捌ききっていたのである。
人なざる者と、人を超えた者との人智の及ばぬ戦いだった。
「―――そこッ!」
と、千冬が下段から、大きく一夏の剣を斬り上げた。一瞬、一夏の身体ががら空きになる。
無論それは、剣を切り上げた千冬も同じことだった。だが千冬は切り上げた剣をそのまま降り下ろす。
「すまない……一夏」
そのとき、赤い液体が飛び散った。