千冬が《雪片》で一夏を斬ってから数時間が経った。
一夏は千冬の一撃を喰らってから未だに目を覚まさず、また病室で寝ている。
一夏にできた傷は幸いにも浅く、傷跡は残らないと医師は言っていた。
そして、千冬は屋上でまた誰かと連絡を取っている。
「これは、どういうことだ? 束」
篠ノ之束だった。要件はおおよそ検討が付いていた。
一夏が持っていた剣のことだ。
『束さんも、さっぱりわからないよ~。厳重に保管しておいたはずなのに、いつの間にか無くなったし……』
束ですら、これは分からなかった。いや、分かっているのだが、認められなかったのだ。
『ちーちゃんの所までだいぶ距離はあるし……ましてや、束さんのラボから持ち出すことなんて、不可能に等しいんだよ!!』
「だが、実際ここにある」
千冬は一夏が持っていた剣を眺める。
刀身3尺余、身幅4寸ほどある剣は千冬には重く感じた。一夏はこれを片手で操作していた。一夏の身体に起こっている異変が少しずつだが分かっていく。
『……一回、いっくんを束さんの所で調べていい?』
「だろうな……。束、
千冬は束に釘を打ち付け、電話を切る。
その後、千冬は空に向かって大きくため息を吐いた。
◇
数分後、病院の近くにあった公園ににんじんを模様したロケットが落ちて来た。
中から出て来たのは言うまでも無く、篠ノ之束本人だ。
その光景を千冬はため息を交えながら頭を抱える。
今日だけで何回ため息を吐いたのだろうか、数えるのを忘れてしまった。
「やあやあ、数分ぶりだね。ちーちゃん」
「来いとは言ったが、もっと穏便に来い!」
千冬は束の頭を殴る。
そのとき、束の頭からいい音が鳴った。
「ちーちゃんが殴った~。束さんの頭が二つに別れちゃったよ~」
「そうか。なら、別々に考えることができるな」
「そっか! ちーちゃん、あったまいい!!」
束は千冬にはぐはぐしようとするが、千冬のアイアンクローで止める。
「要件はわかっているよな。束」
「ちぇー……もちろん、わかってるよ」
束の悪ふざけモードから一気に真面目モードへと変わる。
千冬それを確認し束をアイアンクローから解放した。共に一夏の眠る病院へと向かう。
一夏の眠る病室に着き、中に入ると医療機器を着けられた一夏が寝ていた。
「そんじゃ、いっちゃんはもらっていくね」
「ああ。わかったら、連絡をくれよ」
「そんじゃあ、バイビー!!」
束は一夏を抱えて病室の窓から飛び降りた。
三階もある場所から束は滑らかに着地し、再び公園に向かう。
千冬はそれを見送り、病室を出て行った。
束は来た時に使ったロケットは別に新しいロケットをその場に出し、乗り込む。
そのまま、ロケットは何処かへと飛んで行ってしまった。
◇
数か月後。千冬は一夏の救出のためドイツに借りをつくっていた。その借りを返すため、ドイツのとある部隊の演習場で指導をしていた。そこに一本の連絡が千冬に届いた。
「織斑教官。お電話です」
「わかった。各自、そのまま続けろ」
千冬は訓練兵に指示を出した後、電話を受け取る。
「お電話、代わりりました」
「やあやあ、ちーちゃん。束さんだよ」
電話の相手は束だった。
必要以上では電話はしてこない束が電話して来たということは、あれのことだろう。
「連絡してきたと言う事は何かがわかったのか?」
「うんうん!! いっちゃんの身体には驚かれぱなっしだよ~。特にあのむn……。まてまて、切らないで!!」
「さっさと要件を言え」
「ごほん。いっちゃんの身体から何かよく分からないエネルギーが物凄い量で出ていることがわかったんだよね。これが、暴走の原因だね。ちなみにあの剣からもこれと同じエネルギーを感知したよ」
「そうか。お前のことだから、もう対策を考えてあるのだろう?」
「お~、さすがだね。ちーちゃん。うん。このエネルギーを止める方法はないけど、それを逆に利用することにしたのだ!」
「で?」
「いっちゃんにISを持たせることにたのだ。ちなみに束さんお手製の」
「それが、どう関係しているのだ?」
「成功するかは微妙だったけど、まあ、暴走は限りなくゼロになったんだよね。それで。仕組みは簡単だよ。ISのシールドエネルギーをいっちゃんから溢れ出すエネルギーで代用しているんだよ。つまり、無限に動けるISが完成したわけだぁ!!」
「……………」
千冬は頭を抱えた。
束がついにとんでも機体を作り出したのだ。
ISはシールドエネルギーが無ければただの鉄の塊でしかない。しかし、一夏から溢れ出すエネルギーは未だに無限に出ている……それを束はISのシールドエネルギーの代わりにした。
よって、通常のISは400ほどしかないシールドエネルギーに対して一夏に持たせたISは9999を超えていることになる。
「やりすぎだ! っと言いたいところだが今回は見逃そう」
「お~お~! ちーちゃんが許してくれた!!」
今回は仕方ないと言う事で千冬は束のやったことを許す。
一夏の要件が終わり次第、日本に送ることを束は伝え、電話を切った。
「……お前らは、そこで何をしている?」
ビクッ!!
千冬のいる所から少し離れた角から数名の気配を千冬は感じていた。
電話に出る為、演習場で訓練を続けていろと伝えたはずの訓練兵が隠れいたのだ。
「ほうほう。気になって抜け出して来たのか……」
千冬は拳をゴキゴキ鳴らして歩いて来る。
盗み聞きをしていた訓練兵はその日、ISを背負って演習場を走らされた。
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