「嘘でしょ……」
「いや、嘘じゃないぞ」
未だに驚き続けている鈴に一夏はさらっと答える。
セシリアと真耶は何故鈴がそんなにも驚いているのかがまったく理解できていなく、頭の上に?を作っていた。
顔立ちこそ一夏と変わらないものの、髪は長く、唯一違う所は頭の中央にあるアホ毛ぐらいである。
しかし、それだけではない。ただの女装とは違う。身体のラインが丸みを帯びているというか、IS用のスーツからでている太ももが妙に柔らかそうに見えたのだ。
「……ッ! ま、まさか―――」
鈴はハッと肩を震わせると、右手で一夏の胸をむんずと鷲掴みにした。
「やんっ」
「ひ……ッ!?」
一夏の妙に色っぽい声を上げると、鈴が息を詰まらせ一歩後ずさる。
「こ、この感触は……」
「うん。自前」
「ギャーッ!?」
全身を震わせながら、鈴が絶叫を上げた。一夏が、可笑しくて仕方ないといった様子で破顔する。
「ちなみに性転換とかではないよ。強いて言うならば突然変異の方が正しいかな」
余程の衝撃に鈴は一夏の会話を聞くことなく気絶してしまった。
「ちょっと、衝撃が強かったか?」
「当たり前だ」
千冬はこのことは知っていたから、特に驚きもしなかったが鈴は特に酷かった。
鈴の会話を聞いて理解したのか、セシリアは一夏に《スターライトmkⅢ》を向ける。
「鈴さんの会話が正しければ、あなたは男というこですか!?」
「うん。ご名答。でも、元ね」
言って、一夏は《雪片弐型》を部分展開しセシリアの懐に入り込む。その一瞬をセシリアは見逃さなかったが、一夏は左腕に展開された腕で《スターライトmkⅢ》を鷲掴みし、《雪片弐型》をセシリアの首元に当てた。
「一夏。そこまでにしておけ。オルコット、貴様もだ」
一夏は部分展開を解除し、セシリアもブルー・ティアーズを解除する。
そんな空気の中、一夏のプライベートチャンネルに通話が入った。
「……なに? ……分かった」
「どうした?」
「あ~。あの人が嫉妬しちゃっているみたいだからさ……今日は帰るね」
千冬は一夏の言葉に出て来た「あの人」が誰なのかがすぐに分かった。このままにしておくとこの日本を焦土に変えかえないため、ため息を交えながら一夏を一時帰すことにした。
「……………」
一夏は飛び立つ時、一瞬千冬たち以外の誰かに見られている視線を感じた。しかし、視線を感じた場所には誰いなかった。
◇
「……危なかったですわ」
一夏が視線を感じた場所から少し離れた場所。アリーナの近くにある林の影に隠れるように黒髪の少女が立っていた。
赤と黒を基調としたドレスを着用した少女は一夏の姿が見えなくなるまでその場に隠れ、完全に消えたことを確認すると、緊張を解き木に背を預ける。
(あれがドイツで確認された
彼女はあらゆる場所に
そして、今日。その一夏が動くことを知った彼女はIS学園に忍び込み、その戦いを目にする。
(
一夏はまったく精霊の力を使わず、ISだけであの無人機を撃退した。
身体能力が普通の人より高いのは精霊として昇華した影響によるものだということは分かっていたが、最強の鎧である神威霊装を纏うことなくあのレベルにまで達していることが彼女にとっては一番の計算外だったのだ。
「手札を増やしてからの方がいいですわね」
言って、彼女はその場から消えてしまった。