あれから二週間たった、私は狼の皮を繋ぎ水筒と靴、雑多な物を入れるための袋を作り
その中に、焼しめた狼の肉を入れ、少しながらも世話になったこの家を出ることにする
生きる上で最低限の条件、それは『群れる』ことだ
どんなに阿呆で、どんな屑でも、どんなに救われなくとも、一人で生きるなどできやしないのだ
これは、感情だとか、道徳面で言っているわけでない
無論そういった面もあるが、一人で生きるなど物理的に無理だ
今手にしている日記の持ち主がいい例だろう、皆が旅立ったが一人ここに残り
そして、結局のところ自身も旅立っている
なぜ旅立ったかはかすれて読めなかったが、一人で生きるのに何らかの障害が発生したのだろう
当然のことだ、一人で生きるということはだれにも助けられない、助かることもない
一人と孤独は違うものだ、孤独であっても対価を払えば何らかの物は得るだろう
だが、一人でいた場合は?対価を持っていてもいったい何に払い、何を得るというのか
世界の終りで金を持っていても仕方がないのだ、そう、『尻を拭くことにも使えない』
結局何もできずただ死んでいくのだろう、それはごめんだ
私は臆病者だ、苦痛を嫌い怠惰を好む、正直働きたくもない
だからといって死ぬのもごめんだ、私は生きていたい
この環境で生きていくのは簡単だ、だがいずれ障害が出るだろう
老いによるものか、それとも別の要因か、それでも終わりは来るのだ
ならば只終わるよりは自らに従って生きていたい、可能性に縋りながら生きていたい
故にここを出る、峠を越え日記に記してあった『中央都市』へと向かう
そして今ある可能性に縋るのだ、先に何があろうとも・・・
「ぐるぁぁぁぁ!!」
「ぎゃん!!!」
峠を越えるにあたって、厄介なのはこの『黒狼』達であろう
分かれ道など、ある一定の場所で襲い掛かってくるこいつらは敵ではないが面倒くさい
何より厄介なのは『群れている』のだ、こいつらは
必ず五匹で纏まってくる、更に狼たちより速く倒すのが遅れる、そのせいで行軍が遅れている
「ぎゃいん!!」
最後の一体を杖代わりにしていた木の棒で薙ぎ払い、岩壁に叩きつけ戦闘は終了する
剥ぐ時間ももったいない、私は黒狼の死体を後にし先を急ぐ
「む?・・・これは・・・」
しばらく歩くと白骨死体を見つける、日記の持ち主だろうか
肩に背負っていただろうと思われるリュックは引き裂かれボロボロになっている
そこへちょうど日光が差し込み、きらりと何か反射している
その場へしゃがみ調べるとそこにあったのは
「拳銃・・・か?・・・しかし、これではな・・」
五連発できるリボルバー拳銃のようだが、ぼろぼろで使えそうにもない
せめて中の弾だけでもと思い、弾倉を調べる
3発撃ったようだ、弾頭がない弾が3発、後はまだ残っている
他にもあるかと思ったが、これだけしかなかったようだ
ふと、ベルトに差し込んでいた銃の弾倉から弾を出し比べてみる、同じのようだ
いまだ撃ったことのない銃、信用は置けないがあって困ることはない
そもそも、回転弾倉のライフルなんて私の知識の中にはなかったものだ、使えるかもわからない
再び白骨に目を向ける・・・『一人』とはこういうことだ、慈悲もなく、後悔すらも知られることはない
ただひっそりと、だれにも知られないのだ、実につまらない終わり方だ
これは再確認なのだ、『一人を選んだ』自分のなれの果てだという、戒めのようなものだ
私は白骨を見るのをやめ、獣道を進む、『一人』から脱出するために――――
「ふう・・・」
ちょうどよく湧水が溢れ、小さな泉のようになっている所を見つけたので小休憩とする
日は傾き始めたところ、まだ時間はある
これまでは黒狼しか出ず、スライムの変異種は出てこなかった
これから先は違うのかもしれない、もう少しで峠の頂上だ、油断はできない
「・・・よし!」
休憩は終わりだ、足に力を籠め、ベルトに挟んでいた銃を抜く
銃弾は入っていた分を合わせ8発となった、この分なら1発ぐらいは使ってもいいだろう
石を積み、その上に小石を置く、10歩ほど離れ銃を構える
撃鉄を降ろし、狙いを定める、引き金に指をかけ、引く
パァン!
思っていたより軽い音と共に小石が砕ける、よかった、まず使えるようだ
「・・・ん?」
頬に傷ができている・・・ああ、成程、なぜこの銃が使われず錆付かせたのかが理解できた
この銃は欠陥品だ、理由も理解できた・・・ガスだ、銃弾を撃った時のガスが射手に来るのだ
これが拳銃であれば問題ない、射手から離して撃てばいい
だがこれはライフルだ、狙うからには顔に近づけなくてはならない
まぁ、これは皮当てなど付ければ問題ないが、今はそんなことをしている暇はない
弾倉から打ち終えた銃弾を抜き、新しく装填する
撃った銃弾は先ほど拾ったものだから他のが使えないなんてことはないだろう
そして私は頂上へと向かう坂道へと歩いた
「くそっ!!!」
ぐちゅ・・・ぐちゃ・・・
頂上には化け物がいた、スライムの変異種だ
ただの変異種じゃない、黒に近い紫の、全く見たことのない新種だ
しかも・・・・
「ありえん・・・!!」
退路を防ぐように3匹が上ってきた道のほうから現れ、進むのを拒むかのように前の下り道から2匹現れた
待ち伏せ、挟み撃ち、どれも知能がない生命体ではできないことだ
私は横の広い広場へと逃げ、岩壁を背にしスライムと相対する
「・・・もう何も言わんぞ・・・!!!」
完全に包囲されていた、5匹が均等にこちらへとにじり寄ってくる
私は勘違いしていた、このスライムというのはただの単細胞生物かと思っていた
実際は違う、これらは知能を持つ『獣』だ、ようやく理解できた
だが、私もただやられるわけにはいかない
無言で銃を構える、まずは一番近くまで来ている真ん中の奴に照準を合わせる
パァン!
火薬の炸裂音がして、人の目には映らない速度の鉛玉が紫のスライムを打ち抜く
バチュ!
と、なんとも気の抜ける音と共にスライムが崩れ落ちる
次に左のに照準をつける、その次は右だ
パァン!パァン!
そのまま右端のを撃ち貫いて、止めに左端を
パァン!パァン!
こうして、初めて銃を使った戦闘を終えた
後から聞いた話ではこの世界の銃弾はこういった化け物用に作られており
当たれば絶大なダメージを負わすことができるようだ
この時の私はそんなことも知らず、ガスによってぼろぼろになった顔に
精一杯の安堵の表情を浮かべ、下りの坂のほうに見える『中央都市』をぼんやりと見ていただけであった
原作のゲームをやると分かるのですが、この世界では銃というのは個人携行の武器として強力な威力を誇ります、それも、種類によってまちまちですが・・・
少なくとも今回のような敵ならば一撃で倒せるでしょう、今回に限った話ではなく今後銃などの武器はどれも強力です、一部例外もありますが。