気に入らない方は急いで帰りましょう。
それではどうぞ。
とある山のキャンプ地
矢文が織斑家に飛んできた日から数日後、一夏たちは予定通りパートナーたちの強化合宿を踏まえてのキャンプに来ていた。本来千冬は学園に戻らなければならないのだが副担任の真耶に「家族との大事な時間だから」と言ってなんとか代わりにやってもらうことになった。
「鈴、早く薪を持ってきてくれ!」
「わかってるわよ!テリアモンもしっかり持って!」
「重いよ~!」
鈴とテリアモンはそれぞれ薪を運んでくる。一方のシャルロットと簪は釣竿とバケツを持ってくる。
「じゃあ、僕と更識さんは魚を釣って来るね。」
「蛇出てこないよね・・・・」
「そのときは僕がやっつける!」
「蛇には毒があるぞ。」
「嘘!?」
レナモンの一言でパタモンは唖然とする。箒とアグモン、そして、ブイモンはキャンプに残ってテントやご飯を炊く準備をしていた。
「そう言えば一夏と千冬さんは?」
「確かこの間の挑戦状とかの場所がこのキャンプ場の近くの神社らしいんだ。一様どういう奴なのか顔は見に行くそうだぞ。」
「ふ~ん。」
一同はその後それぞれの役割へと移っていった。
キャンプ場近くの山
一方の一夏たちはキャンプ場近くの山の神社を目指して歩いていた。どういう偶然なのかキャンプの日と決闘を申し込んだ日は同じだったのだ。
「なあ、千冬姉。そのときの女の子が本当に俺たちに挑戦しに来ると思っているのか?」
「私の記憶が正しければな・・・・」
千冬 中学生時代
丁度私が中学生の頃だ。篠ノ之道場に少し変わった女の子が道場破りに来てな(と言っても普通は空手とか柔道でやるもんだと思うのだが)、私よりも年下に見えたその子に門下生は舐めてかかった。だがその子はかなりの実力だったんだ。全員ほとんどやられてしまい門下生は私だけになってしまった(このとき一夏と箒は不在)。
「ははははは!こんな程度!弱いもんね!」
少女は笑いながらやられた生徒たちを踏みつけていた。
「もう終わり?終わりなら後はそこのおじさんだけだよ!」
少女は竹刀で柳韻さんを指した。柳韻さんは自分から動こうとしたが私が代わりに相手をすると言って彼女と試合したんだ。
「今度はお姉ちゃんが相手?せいぜい楽しませてよね!」
少女は試合開始後すぐに私に攻撃を始めた。確かに彼女は強かった。だがそれは自分の強さを見せつけるためのもので相手への敬意とか全くこもっていなかった。それ故に私は許せなかった。
結局その試合は私の勝利で終わった。少女は初めての敗北だったのかかなり泣いていた。私は彼女がこれ以上同じことをしないよう敢えて追い打ちをした。
「お前程度の実力では私の弟にも勝つことはできん。」
それを聞いた少女は「いつか勝ってやる!」とか言って大泣きしながら去って行った。その後、あの少女がどうなったのかは知らない。
現在
「それって千冬姉の言い方が悪くてこうなったんじゃないのか?それもよりによって俺のことまで持ち出していたのかよ。」
一夏は少し呆れながら千冬を見る。
「まさかこんな形で挑戦状を送り込んでくるとは思わなかったんだ。それにアイツぐらいの腕なら当時のお前でも十分勝機があると考えていたからな。」
千冬はそう言うと一夏は突然足を止める。
「どうした一夏?」
「何か声がしなかったか?」
千冬は静かにして見る。確かに小さくだが大きな声が聞こえる。
「行ってみよう。」
一夏たちは少し道を外れて声がした方へと歩いてみる。しばらく歩いてみると森に丁度ぽっかりと穴が開いたような感じの場所でがに股の筋肉ムキムキのおっさんとマントを着た爬虫類のような生物が何かをしていた。その近くの木の下には修道服を着た姉妹が座っている。
「あれはガンクゥモン・・・」
「知っているのか?」
「ロイヤルナイツに属しているデジモンだ。ということはあの小さいデジモンの方は弟子のハックモンか・・・」
二人は茂みに隠れながらその様子を見る。
「どうしたのだハックモン!いつもに比べて動きに迷いがあるぞ!」
「は、はい!すみませんお師匠様!」
ガンクゥモンの言葉にハックモンは謝る。
「どうやら何か迷いがあるようだな。」
「・・・・はい。俺、ずっとお師匠様に修行してもらっているんですけど本当に強くなっているんでしょうか?本当にこのままでいいのかと思ってきて・・・・・」
「なるほど、己の力に自信がないということか。ならば・・・・」
ガンクゥモンは一夏たちが隠れている茂みの方を見る。
「地神!神鳴!神馳!親父!」
突然、自分の上に浮いているヒヌカムイで突然攻撃してきた。一夏は一瞬でヴリトラモンに姿を変え避ける。
「そこにいたのはわかっていたぞ、ヴリトラモン。いや、織斑一夏。」
「流石に参ったな、でも攻撃するのはひどいと思うぜ?」
「人の修行を勝手に覗き見などするからだ。それよりもこんな場所へ何しに来たのだ?」
「ちょっとした挑戦状さ。」
「うん?」
一夏は手紙をガンクゥモンに見せる。すると納得したかのような顔をする。
「大体話が分かった。ハックモンよ、お前に試練を授ける。」
「試練?」
ハックモンはガンクゥモンに近づく。
「その人間と行動を共にするのだ。さすれば今のお前に足りないものが見つかる。」
ガンクゥモンは千冬を見ながら言う。ハックモンはショックなのか驚きながら答える。
「ど、どうして人間なんかと!?俺はお師匠様以外に教えてもらうことなんて・・・・」
「・・・・・」
ガンクゥモンは黙る。
「俺が修行してもいつまでも弱いから?だから人間に預けるのですか?お師匠様にとって俺は・・・・」
「否!」
「うわああ~~!!!」
その瞬間、ガンクゥモンはハックモンをアッパーで空高く飛ばした。シスタモン達もその光景に思わずギョッとしたがしばらくしてハックモンが再び見え、地上に激突した。
「ぐへ・・・・・」
「ハックモンよ、私が言う足りない❝何か❞をこの人間と共に見つけ出してみよ。それが見つかるまでここに戻ってきてはならん!」
「う・・・・お、お師匠様・・・・」
地面に激突したハックモンはなんとか起き上がって来る。
「お前に授ける試練、それはその人間と共にこの山の上の神社にいる『メルヴァモン』を倒すことだ!さすれば、私の言う❝何か❞が見つかるであろう。」
「メルヴァモンだと!?」
ガンクゥモンの言葉に一夏は驚く。
「そんな・・・・・今の俺の力じゃまだメルヴァモンには勝てません・・・」
「それならばそれでよし、弱いままでいるがよい。」
そう言うとガンクゥモンはその場から離れて行く。
「あっ、ちょっとガンクゥモン!」
シスタモン達も慌てて彼のことを追う。その場には一夏と千冬、そして、ハックモンだけが取り残された。
「・・・・お師匠様・・・・俺がいつまでたっても弱いから呆れられちゃったんだ・・・・」
ハックモンはしょんぼりする。千冬たちは何と言えばいいのか迷うがハックモンは急に真面目になって言う。
「絶対にお前たちの力なんか借りないぞ!俺一人でメルヴァモンを倒すんだ!俺一人の力で倒せばお師匠様はきっとまた俺の事を見てくれる・・・・・絶対について来るなよ!」
そう言うとハックモンは神社の方へと走り去って行ってしまった。
「・・・・・どうする一夏?相手はまさか・・・・」
「詳しい話はキャンプに戻ってから話す。今は一度戻ろう、箒やチビ達も心配しているだろうし・・・」
二人は一度キャンプに戻ることにした。
夕方 キャンプ場の近くの山の神社
「・・・・・もうすぐか・・・・・」
神社の拝殿の目の前で一人の女性が大剣を持ちながら座っていた。
「もうすぐだ・・・・もうすぐであの時のリベンジを・・・・」
「おい!メルヴァモン!」
「ん?」
彼女、メルヴァモンが目の前を見るとそこにはハックモンがいた。
「なんだ、デジモンには挑戦状を送った憶えはないんだがな・・・・」
「この俺と勝負をしろ!」
「勝負?別に時間もあるからいいけどアタシに喧嘩を売った奴には・・・・」
メルヴァモンは大剣を構える。
「容赦しないよ。」
(勝ってみせるんだ・・・・そうすればきっと!)
キャンプ場 夜
一夏たちは夕飯を終えると焚き火を囲んで話をしていた。
「メルヴァモンと言うのはオリンポス十二神に例えて、知恵・勝利を司る女神ミネルバに当たる名のデジモンだ。」
「オリンポス十二神?」
「ギリシャ神話の中で大神とされるゼウス以下十二の神々のことを指す語だよ。」
疑問に感じていた鈴の隣でシャルロットが助言する。
「しかし、それにしては変よ。本来ならミネルバモンって名前になるんじゃないの?」
「メルヴァモンは本来ミネルヴァモンと言うデジモンだったんだ。しかし、どういうわけかいつの間にか改名したらしい。」
「それはどういうことだ一夏?」
「メルヴァモンはミネルヴァモンの頃と比べてかなり外見が変わってらしくてな。本人も気づかれないのがショックで改名したらしい。」
「ちなみにそのミネルヴァモンの姿は?」
「これだ。」
一夏はデジヴァイスから映像を見せる。そこには大剣と盾を持った小柄な少女の姿が写っていた。その映像を見て千冬は口を開いて驚いていた。
「どうしたんだ千冬姉?」
「似ている!あの時道場に来た少女と!」
「え?」
「じゃ、じゃあ道場に来ていたのは人間の姿になっていたミネルヴァモン!?」
千冬は神社がある方を見る。
「一夏。」
「どうやらハックモンの奴は俺たち姉弟の因縁(笑)に巻き込まれちまったようだな・・・」
一夏たちは急いで神社の方へと行く。
神社
「おりゃあ!」
「うわああ!!」
メルヴァモンの大剣の一撃でハックモンは吹き飛ばされ、近くにあった木に激突する。木は衝撃に耐え切れず、倒れてしまった。ハックモンはそれでも立ち上がってメルヴァモンに向かって行く。
「甘い!」
「うわあ!」
メルヴァモンの強い蹴りにハックモンはまたも吹き飛ばされ、とうとう倒れてしまった。
「・・・・・やっぱり勝てなかった・・・・お師匠様・・・・ごめんなさい・・・」
「ふん!だらしないわね・・・・・・もう立ち上がる気力もなくなるなんて・・・・・アンタの力はそんなもん?」
「やっぱり俺がロイヤルナイツになるなんて・・・・・お師匠様の跡を継ぐなんて・・・・無理だったんだ・・・・」
ハックモンがしょげている姿を見てメルヴァモンはため息をつきながら言う。
「アンタは昔のアタシによく似ているわ・・・強くなろうとガムシャラに努力して・・・・突っ走って・・・・答えを見つけ出そうとする。それ自体は間違っていない。でも、そんなんじゃ本当の一人前にはなれないのよ。本当の一人前には本物の強さ・・・・自分の力に自惚れず、何かを守ろうとする覚悟が必要なのよ。アンタにそれがある?」
「俺には・・・・そんな・・・・・」
「ないってことね。」
メルヴァモンはそう言うと剣を振り上げる。
「それじゃ・・・・アンタの戦いはここまで。アタシがアンタの戦いを終わらせてあげる。」
メルヴァモンは剣を振り下ろす。だが剣はハックモンにまで届かなかった。
「え?」
ハックモンは上を見上げるとメルヴァモンの剣をカイゼルグレイモンの龍魂剣が受け止めていた。
「誰よアンタ?」
カイゼルグレイモンは剣を弾き飛ばすと距離を置き、ハックモンを降ろす。既に後ろには千冬、ブイモン、箒、アグモン達が来ていた。ハックモンは驚いた顔をしていたがメルヴァモンは千冬を見た瞬間思わず笑った。
「どうやら本当に来てくれたみたいね、織斑千冬。」
「やっぱりあの時の奴だったか。」
「アンタに負けてからアタシはデジタルワールドに戻って一から修行をした。アンタにリベンジをするためにね!」
メルヴァモンは大剣で千冬に指差す。
「と言うことはその騎士型のデジモンはアンタのパートナー?」
「私の弟だ。」
「ふ~ん、まあいいわ。あの時のようにアタシはアンタと勝負を・・・・・」
「なんで来たんだよ!」
「ん?」
メルヴァモンが言いかけたときハックモンが千冬に怒鳴る。
「ついて来るなって行っただろう・・・・もういいんだ・・・・俺はもう・・・」
「たわけ!」
「!?」
ハックモンは千冬にぶたれる。ハックモンはいきなりの攻撃に驚く。
「なんで諦めようとする?お前は今まで何のために修行してきたんだ?」
「そ、それは・・・・」
「自分の師の跡を継ぐためなんだろう?ならまだやれるんじゃないのか?」
「お前らに何がわかるんだ!どうしてそこまで言えるんだ!お師匠様に言われたから?それだったらもう言わなくても・・・・!」
言いかけたハックモンはカイゼルグレイモンの後ろ姿を見てふとガンクゥモンの言葉を思い出す。
『ハックモンよ、ロイヤルナイツの称号は誰かに与えられるものではない。世界を守ろうとして戦う姿を見ていつからかそう呼ばれるようになるのだ。守る者になれ!ハックモン!その手で世界を、友を、そして・・・・デジタルワールドを!そこから生まれる鋼の意思は必ずお前をロイヤルナイツへと導く!』
「そうか、分かったぞ!俺に足りなかったものが!それは戦う意味・・・・誰かを守ろうとする覚悟だったんだ!一番大切だったのはそれだったんだ!」
ハックモンは千冬から離れるとカイゼルグレイモンの前に立つ。
「俺は戦う・・・・この庇ってくれた人のためにも・・・・大事なことを思い出させてくれたあの人のためにも!」
ハックモンの反応を見てメルヴァモンは一瞬驚いていたがすぐににやりと笑う。
「はははは!少しはマシな面になったじゃない!いいわ、アンタのその覚悟が本物かどうかもう一度試してあげる!全力で掛かってきな!」
メルヴァモンは剣を構える。すると千冬のデジヴァイスが光り始めた。
「な、なんだこれは・・・・・もしかしてこのデジヴァイスはIS!?」
デジヴァイスは千冬の右腕に装着されると展開されていく。その姿は一夏の炎龍と箒の紅椿を足して割ったような感じだった。コードには『白蓮』と表示されていた。
「千冬姉のデジヴァイスは千冬姉のISの待機状態でもあったのか!」
「まるで一夏の炎龍の体に私の紅椿の展開装甲を合わせたような感じだが白と言うのは・・・・」
一夏と箒は驚いていたがむしろ鈴たちのリアクションの方がすごかった。
「この勝負・・・・私も加勢する!」
千冬とハックモンはメルヴァモンへと挑んでいく。
今回の技
地神!神鳴!神馳!親父!=ガンクゥモン
オリジナルIS
「白蓮」
束が開発した四世代型IS。一夏の炎龍と箒の紅椿の特徴を合わせたもので白式の単一仕様能力「零落白夜」を使用できる。外見は炎龍の体(尾はない)に紅椿の展開装甲が付いたような物。待機状態は千冬が所持しているデジヴァイス。一様設定では封印状態になっていた「暮桜」のコアを束が密かに回収して作ったものということにしている。武装は「白式」の雪片弐型の発展型「雪片参型」。
それではまた次回。