嫌な方は急いで引き上げましょう。
旧デュノア社周辺
「世界を賭けたゲームだと!?」
千冬たちも驚きながら答える。ルーチェモンはその反応を楽しんでいるのか笑みを浮かべたままだった。
「ええ、その通りです。・・・・っと、そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたね。私の名はルーチェモン、七大魔王の『傲慢』を司る者です。そして・・・・」
「我が名はデーモン、『憤怒』の称号を持つ者だ。」
「オレ、リヴァイアモン!『嫉妬』!」
「ZZZZZZ・・・・・・」
「あっ、彼はベルフェモン。司る称号は『怠惰』です。」
「私はリリスモン、『色欲』の称号を持つ者よ。よろしく、ガキンチョなお嬢ちゃんたち。」
「儂は・・・・・・」
「お前はバルバモン!確か・・・・・『強欲』!」
老人のようなデジモンが言いかけたときブイブイの言葉で紹介が止まってしまった。バルバモンは思わずショック泣きした。
「わ~~!!儂が言いかけておったのに!!」
「・・・・・・・貴様ら、ベルゼブモンはどうした?奴も七大魔王の一員だったはずだぞ?」
デュークモンはルーチェモンの顔を見ながら聞く。
「彼なら我々の元から去りました。七大魔王の『暴食』の称号まで捨てて。」
「何!?」
「故に私たちは彼の後釜を探していました。それで無事採用されたのがメディーバルデュークモンです。彼はダークデュークモンと名を変え、我々七大魔王の新たな『暴食』を司るデジモンとなったのです。」
「そういうことだ、分かったかデュークモン。」
ダークデュークモンは腕を組みながらデュークモンを見る。デュークモンは複雑な心境だった。
「さて、自己紹介でだいぶ話がそれてしまいましたがそろそろ私たちが行うゲームの説明をしましょう。」
ルーチェモンは話題を変えるように言う。一夏たちは警戒しながら聞く。
「私たちが行うゲーム、それは我々七大魔王とあなた方の試合です。」
「試合だと?」
「あなたたちの世界にあるISもアラスカ条約というものでモンドグロッソという世界大会で実力を競うというのは知っています。ですからあなた方のメンバーを数名に分け、我々七大魔王のメンバーと戦っていただきます。」
「なあんだ、相手が一人ずつだったら複数で分けられる私たちのほうが有利じゃない。」
鈴はほっとするように言うがデュークモンは首を横に振る。
「いや、七大魔王の実力は我々ロイヤルナイツと互角、それ以上の者もいる。それにやる場所はおそらく奴らの本拠地であるダークエリア、奴らが最も自分の力を発揮できる場所だ。甘い考えを持っていては命取りになる。」
「そ、そんな・・・・」
「さすがデュークモン、ロイヤルナイツの中でも古参の方だけのことはあります。ご察しの通り試合をするのは私たちの本拠地ダークエリア内です。」
「貴様ら!いきなり現れておいて一方的に有利な試合を押し付けるとは卑怯だぞ!」
箒は思わず言う。ルーチェモンはそんな箒に対しても態度を変えず丁寧な口調で話を続ける。
「しかし、あなた方は戦わなくてはならない。何しろこちらには人質やあなた方の世界を滅ぼすためのものがあるのですから。」
「滅ぼすもの?」
「こちらをどうぞ。」
ルーチェモンがいうと配下のデスモンの目から映像が映し出される。それは両手足を鎖で拘束され服は多少ボロボロになっていたが一夏たち、とくに千冬と箒には一番わかる人物だった。
「束!」
「姉さん!」
「彼女は我々の依頼を拒否した上に自爆で道づれにしようとしましたからね。そのため彼女は我々の本拠地で拘束しています。命に別状はありませんよ?」
「貴様ら・・・・・」
「おっと、別に我々全員に勝てば彼女は解放します。それはご安心ください。ただし我々に敗北した場合はこれによってこの世界は滅びます。」
デスモンが映す映像が白黒の模様とオウムガイのような形状をした生物のものに切り替わる。その瞬間、リリモンは急に顔を真っ青にしロイヤルナイツのメンバーたちも唖然としていた。
「あれは!」
「あ、あああ・・・・・・・・」
「姉ちゃん?」
「リリモン、いったいどうした?」
一夏と退化していたブイモンが呼びかけるがリリモンには聞こえていないのか彼女は震えて動かなくなった。箒も心配そうに近寄る。
「このリリモンの震え・・・・・普通じゃない。まるで何かにおびえているようだ。」
「彼女が震えるのも無理はない。あれこそが我らの故郷デジタルワールドを壊滅にまで追いやった元凶なのだからな。」
スレイプモンは落ち着きのない顔で言う。
「それはどういうことなんですの?」
「あの生物イーターこそ、このデュークモンたちが恐れた存在なのだ。」
「「「あれがイーター!?」」」
鈴、簪たちはじっとそのイーターの映像を見る。不気味に光る眼は思わず体が震えてしまう。
「あなた方が私たちのゲームに参加されなかったらこのイーターたちがこの世界に現れ、この世界の人間はみな一人残らず生きた屍へと変わるでしょうね。」
「生きた屍?それはどういう意味だ?」
「奴らが捕食するのはデジモンだけではない。人間の精神データさえも捕食する。データを捕食された人間は二度と目を覚ますことのない。まさに生きた屍というものだ。」
「何それ!?死んでいるわけじゃないのに二度と目を覚まさないなんて!」
「だがおかしい、イーターがデジタルワールドを壊滅寸前にまで追いやっているのにどうして貴様らダークエリアのデジモンは何ともなっていない?同じデジモンならばイーターに捕食されるはずだ。それも貴様ら七大魔王も例外ではないはず。」
一夏はルーチェモンを見ながら言う。ルーチェモンは面白いのか愉快そうに答える。
「あなたは十闘士の物語を読んだことがありますか?」
「物語?」
「あっ!姉さんが臨海学校の時に話していたあれか!」
「どうやら知っている方がロイヤルナイツ以外にいるようですね。では簡単に説明いたしましょう。太古、我ら暗黒デジモンの住処であるダークエリアはかつて十闘士によって倒されたアポカリモンが眠る地、そしてイーターが現れ始めたのもダークエリア・・・・・・」
「まさか!!」
デュークモンとスレイプモンは何かを察したように言う。
「そう、イーターが我々を襲わない理由。それはイーターが我ら暗黒デジモンの祖先アポカリモンの一部から生まれた存在だからです。」
「アポカリモンの一部?」
「でもおかしいよ、アポカリモンってさっき聞いた話だとずいぶん昔に倒されたんだよね?倒されたはずのデジモンがなぜ・・・・」
「そうよ!チョー昔に死んだはずのデジモンがまるで体だけ残ったまんまみたいな話じゃないのよ!」
「・・・・・その通りだ、多分。」
「え?ちょっと箒、アンタ今なんて言った?」
「姉さんの話した話だと十闘士が倒したのはアポカリモンの上半身と言っていた。つまり、まだ体自身は残っているんだということなんだと思う。」
「えっと・・・・・つまり・・・・」
「まだ下の部分が残っているということ。」
簪に言われて鈴は何も言えなくなってしまった。
「下半身が残っていたとしてもどうして今になってその一部からイーターができましたの?」
「俺の頭から今までの話を整理すれば空っぽになってしまった器には何かを入れなければ満たされない。それは現実に言う人間が己の欲望を満たそうとする行動と同じ原理なんだろう。つまり本体を失ってしまったアポカリモンの体は復活するために本体の代わりになるものを探そうとした。しかし、それだけではどうにもならない。そのためにやつの体は独自の進化をし始め、太古のデジタルワールドの時のようにほかのデータの塊であるデジモンを取り込むことによって変わりの器を作ろうとしているんだ。」
「つまり、そのために大量のデータを必要としているわけか。それに暗黒デジモンなら自分と同じ存在だと認識されて襲う心配はない。」
一夏の仮説に千冬は結論を言う。
「その通りです、いやはや見事な推理ですよ。」
「っていうことはこのままほっといたら鈴たちの世界も僕たちデジモンの住むデジタルワールドみたいになっちゃうの?」
テリアモンが心配そうに聞いてくる。パートナーである鈴はどうにも答えることができなかった。一夏は覚悟を決めてルーチェモンを再び見る。
「ルーチェモン、お前のゲームを受けてやるぜ。」
「一夏!」
「ほう、では・・・・」
「ただし、条件を付けさせてもらう。」
「ん?何でしょう?」
「一つは今すぐにはやらないということだ。見ての通り俺たちはドゥフトモンたちとの戦いで心身ともに疲弊している。それに今の俺たちじゃ相手不足だろう?」
「なるほど、要は時間がほしいということですか。そのくらいなら認めましょう。」
「それともう一つ、お前と俺は一対一の勝負だ。俺はこの中で一番実力がある、他のペアがいたら邪魔だろうし、他のほうに分ければアンタも俺の全力で戦える。」
「それは面白いことを言ってくれますね、いいでしょう。」
「ルーチェモン!」
「お主、あんな小童の言うことを聞くというのか!?」
ルーチェモンの言葉にリリスモンとバルバモンは驚く。
「しかし、こちらも無条件で要求を呑むわけにはいきません。こちらも条件を出させていただきます。」
「それは?」
「一つは織斑千冬が所持している水のスピリットをこちらに渡していただきます。そしてもう一つは逃げ場がないように私たちがデジタルワールドで特殊なステージを用意させていただきます。場所はまだ言いませんが。」
「よし、分かった。」
一夏は千冬から水のスピリットを受け取り、ルーチェモンに向かって投げる。ルーチェモンはすんなりと受け取った。
「これで取引は成立です。イーターについてはしばらくゲートを封鎖しますのでご安心を。篠ノ之束の身柄の安全は保障しましょう。期間は1カ月、入り口はあなた方の学園からゲートでご招待します。よろしいですね?」
「了解した。」
「それでは皆様方、御機嫌よう。1か月後を楽しみにしていますよ。」
ルーチェモンはそう言いながら再びゲートを開いて去って行った。ダークデュークモンはデュークモンを見ながら無言でゲートに入って行った。ゲートが閉じると箒たちは一夏たちの方へ集まる。
「一夏、どうしてあんな奴のゲームを受ける気になったんだ?」
「いくらお前とはいえ奴と一対一でやるなど命がいくつあっても足りんぞ。」
「あっちには束さんが捕らえられている。こっちが断れば無論奴らは殺すだろうし、たとえ断れてもこの世界の滅亡を早めるだけだ。」
「でも、私たちみんなで力を合わせれば・・・・・」
「さっきこの場で戦って勝てるという保証があるか?ほとんど力を使い果たした俺たちが。」
一夏の一言に全員黙る。その中リリモンは若干顔が青いままだったが立ち上がって歩き始める。
「リリモン、お前・・・・」
「今更くよくよしても仕方ないわ、とりあえず戻りましょう。いま必要なのは休息、特訓はその後からでもできるわ。」
そういうと彼女はふらついた状態でありながらも飛んでいく。
「確かにリリモンが言うのも正しいことだ。私たちも相当疲弊している。休めるうちに休むのも大事だ。私たちも戻ってIS学園に帰るぞ、返事は?」
「「「「はーい。」」」」
「了解しました。」
千冬の指示で全員「吾輩は猫である」の方へと向かう。その中シャルロットは違う方向へと歩いていく。
「デュノア、どこへ行くつもりだ?」
「織斑先生は先に戻ってください。僕とレナモンは少しやることがあるので。」
そう言うとシャルロットとレナモンは千冬たちと別れて行った。一方の箒は人間の姿に戻らず歩いている一夏の姿を見て考えごとをしていた。
(一夏は最近無理しすぎているような気がする・・・・・・でも、私にできることはあるのか?こんな私に・・・・・)
ここでのアポカリモンの説明
アポカリモン⇒後のダークエリアに住むデジモンの祖先。つまり、暗黒デジモンのほとんどがアポカリモンの末裔。
⇒イーターの親玉(残った下半身の一部から誕生)
次回もあればいいけどまた。ちなみにゲームの期間を開けたのはデジモンアドベンチャーのダークマスターズ編で太一たちが序盤ほとんど歯が立たなかったということから期間を開けようと思いました。