ダークエリア
「・・・・・・・・・」
スサノオモンは動く様子もなく、その場で沈黙していた。そんなスサノオモンに箒は、手を触れる。
「・・・・・一夏。もう終わりなんだな。全て。」
箒の言葉にスサノオモンは答えることはなかった。そんなパートナーの姿を見てビクトリーグレイモンは何も言えずに悔しがっていた。
「リリモンに続いて一夏まで・・・・・・私たちは・・・・・・いったいなんのために戦って来たのかしらね?」
「兄貴・・・・・・・くそ・・・・・・とうとう俺だけになっちまった。」
「・・・・・・・みんな、よく聞いてくれ。」
全員が悲しんでいる中、千冬はできるだけ落ち着いて話す。
「確かに一夏は死んだ・・・・・・・だが!だからこそ、一夏のためにも最後まで戦うべきじゃないか?違うか?」
「で、でも奴は、今までの敵以上に強いです・・・・。私たちでどこまでできるのか・・・・・」
千冬の言葉に対して簪は不安そうに言う。そのとき、千冬のデジヴァイスから何かの発信音が鳴る。千冬はデジヴァイスを操作する。
『・・・・・・ど、・・・・どうやらやっと繋がった様ね・・・・』
「ミレイか。そちらはどうなっている?」
『現在、そちらから向かった何かを迎え撃つためにロイヤルナイツが表に出たわ。そちらの状況を詳しく教えてもらえないかしら?』
「わ、分かった。」
???
(ここは・・・・・・・・どこだ?俺は・・・・・・確か・・・・・)
一夏はゆっくりと目を開けながら周りを見回す。辺りは真っ暗で何も見えない。
(なんなんだ・・・・・・この水の中に沈んでいくような感覚は・・・・・・でも、動こうにも体が動かない。・・・・・・そうか・・・・・・俺は死んだんだ・・・・・あの攻撃で・・・・だから、ハイパースピリットエヴォリューションも解除されているのか・・・・。)
一夏はあちこちに傷だらけになった自分の体を見る。これではおそらく動くのは無理だろう。
(俺は結局何もできなかった・・・・・・・・デジタルワールドも・・・・・・・人間界も・・・・・・・なにも救うことはできなかった。リリモンやオメガモン、他のデジモンたちの犠牲も無駄にしてしまった。所詮、俺は何もできない「出来損ない」か・・・・・・・)
再び意識が薄れ始め、一夏は目を閉じようとする。
(・・・・・・・一夏・・・・)
(?)
(一夏・・・・・)
奇妙な声に一夏は目を開く。
(・・・・・誰なんだ?)
一夏が思って声がした方を見ると目の前に光が現れ、やがて二人の人間の姿となる。その二人に一夏は何か見覚えがあった。
(・・・・・会ったこともないはずなのにどこか懐かしい気がする・・・・・・)
一夏が見る限りは目の前に現れた二人は夫婦の様で女性の方は千冬に雰囲気が似ていて、男性の方は何となく自分に少し似ていた。
(一夏・・・・・・こんなところでいつまで眠っているの?起きなさい。)
女性の方が一夏に優しく声をかける。
(・・・・・・・・・もしかして・・・・・・・母さん?)
ダークエリア
『・・・・・・・そう、あの反応の正体はルーチェモンだったのね。それもサタンモードを大きく上回る究極・・・・いえ、超究極体にね。私でもデジモンが神を取り込んで進化するというのは初めて見たわ。』
通信でミレイは何とも言えない顔で答える。
「話は以上だ。」
『だとしたら、ことは急いだ方がいいわ。イーターがゲート内にいないというのなら急いでマスティモンの能力でそちらにゲートを展開するわ。おそらくルーチェモンよりも早くこっちに戻れるはずよ。』
「了解した。」
千冬はそう言うと連絡を終える。
「みんな、聞いての通りだ。我々はゲートが開き次第急いで学園に戻り、ルーチェモンの攻撃に備える!全員、準備を始めろ!」
「でも、一夏はどうするのよ?ここに置いていくつもり?」
千冬の指示に鈴は難色を示しながらも聞く。
「・・・・・一夏はお前たちが行った後にベルスターモンに来てもらって束たちと一緒に回収してもらう。念のため、私も残る。」
「きょ、教官も!?」
「ルーチェモンとイーターがいなくなったとはいえこのダークエリアが安全と言う保証はないからな。私も束たちを送り次第、合流する。到着後はは最年長の更識が中心にデュークモンの指揮下に入ってくれ。」
「・・・・・・し、篠ノ之さんはどうしますの?」
セシリアはスサノオモンに寄り添っている箒を見ながら言う。
「・・・・・・そうだな、篠ノ之の方は先に戻って少し休ませた方がいいかもしれんな。何しろ一番辛かったのはアイツだからな。すまないが一緒に連れて行ってくれ。」
「・・・・・はい。」
鈴たちは箒の所へと向かう。
「・・・・・・箒、一旦戻るわよ。」
「・・・・・・・」
「気持ちもわからないわけじゃないけど・・・・・」
「一夏はもう帰ってこないよ・・・・・いくら待っても。」
「・・・・・嫌だ・・・・・・私はここにいる・・・・」
箒はメンバーの説得に応じようとしなかった。
「一夏はここにいるんだ。だったら、せめて世界が終わるときまで一緒にいたい。ほっといてくれ。」
「何弱気なこと言ってるの?」
箒の言葉に簪は思わず言う。
「それじゃ、一夏はなんのために戦って来たの?私たちの世界を救うためだよ?なんで諦めるの?」
「そうよ!一夏だってそんなこと・・・・・」
「ならどうしたらいいんだ!」
箒は鈴たちの方を向いて言う。顔は既に涙で濡れていて、手は握りすぎていたせいで既に血が滴り落ちている。
「私にはもう戦うことができないんだ!紅椿はカオスデュークモンの戦闘で壊れてしまった!これ以上どう戦って行けというんだ!?」
「・・・・・箒・・・・」
「私は・・・・・・・私は・・・・・うぅ・・・・・誰も助けられなかった・・・・・リリモンも・・・・・一夏も・・・・・・」
「そんなことはありませんわ!篠ノ之さんだって必死に・・・・・・」
「もう私には何もできないんだ・・・・・・・・・何も・・・・・・・・」
箒は跪きながら再び泣き出す。その光景を見て鈴たちは何も言えなくなる。
学園に戻れば、訓練機ではあるが打鉄とラファールがある。しかし、あのルーチェモンに対して訓練機で戦うことはあまりにも無謀に見える。
悲しんでいる箒に対してマドカは我慢できなくなったのか千冬から離れて彼女の所へと向かう。
「・・・・・・お兄ちゃんを救う方法が一つだけあります。」
「えっ?」
「ちょっ!?マドカちゃん!!」
マドカの唐突な発言に束は慌ててマドカの口を塞ぐ。
「突然変なことを言っちゃダメだよ~!もう!」
「マドカ・・・・お前今なんて・・・・」
「何でもない!何でもないよ~!!だから、箒ちゃんはみんなと一緒に急ごうね~!!」
「姉さん、誤魔化さないでくれ!本当にあるのか一夏を助ける方法が!?」
「う~ん~~~束さんには何を言ったのかさっぱり~~~」
「束、もういい。話してやれ。」
何とか誤魔化そうとする束に千冬は言う。
しばらく黙ってしまった束であったが諦めたのか急に真面目な顔になる。
「・・・・・・・確かに一つだけ方法はあるんだよ。いっくんを助ける方法が・・・・・・でも、これは箒ちゃんにも教えるわけにはいかなかったんだよ・・・・・。」
「教えるわけにはいかない?どういう事なんだ!?」
「それはね・・・・・・・・・」
束は言いずらそうな顔をしながらも答える。
「いっくんと一体化して深層心理の世界からいっくんの意識を連れ戻すことだよ。」
「「「「「「「えっ?」」」」」」」
???
(母さん・・・・・・・なのか?)
一夏は目の前にいる女性を見て思わず言う。女性は頷く。
(・・・・・でも、と言うことは隣にいる人が父さんなのか?)
(ええ、そうよ。ずいぶん大きくなったわね、一夏。)
母は嬉しそうに言った。父の方も少し嬉しそうだった。
(・・・・・・と言うことは俺は死んだってわけか。だから母さんたちが迎えに・・・・)
(確かに私たちは既にこの世の者ではないがそれは違うぞ一夏。お前はまだ死んではいない。)
(?)
父の言葉に一夏はよくわからなかった。
(今の私たちはお前に真実を伝えるためにスピリットの力でここに来ているに過ぎない。だからここはあの世ではなく、お前の深層心理の世界なんだ。)
(俺の深層心理の世界・・・・・・・・)
(一夏、これから言う事はまだお前が物心がつく前の話だ。信じられないと思うがお前は一度死んだと思っているな?)
(・・・・・ああ、確かに俺は千冬姉の応援に行ったときに誘拐されて・・・・・・そのときに殺されたんだ。その後デジモンとしてデジタルワールドに・・・・・・・・)
(それは違うわ。)
(何がだよ?実際に俺はデジタマから・・・・・)
(実はお前はあの時死んだわけではないんだ。)
(何?)
ダークエリア
「い、一夏と一体化・・・・・・・・・」
箒は束の言葉に思わず顔を赤くする。
「あっ、そういう意味じゃないと思うから勝手な妄想はよして。」
「一体化って・・・・もしかして、さっき聞いたカオスデュークモンのように合体するってことだよね?」
「その通りだ。今の一夏は仮死状態に近い状態だが、カオスデュークモンとの合体で体のダメージがある程度回復している。だが、問題は一夏の意識がほぼ無いに等しいという事だ。」
「そこでカオスデュークモンがかけたもう一方の方をデジヴァイスを利用してスサノオモンと一体化し、いっくんの精神世界に入っていっくんの意識を戻す・・・・・・と言うわけ。わかるかな?」
束と千冬の説明に一同は納得する。
「な、なんだよ・・・・千冬姉ちゃんは意地悪だな・・・・。なんでそんな方法があるなら先に教えてくれなかったんだよ。」
「そうだよ。だったら急いで誰かが・・・・・・」
「そうもいかないんです。」
「えっ?」
安心するも束の間、マドカの一言でマグナアルフォースブイドラモンたちは思わず目を丸くする。
「本来合体するには最初から分離した状態からしなくてはいけないんです。もしすでに合体している状態で無理に外部から合体しようとすると・・・・・・」
「「「「「「「すると?」」」」」」」
「お兄ちゃんと助けるどころか逆にそのまま戻ってくることができなくなってしまうんです。」
「・・・・・・・・・マジで?」
マドカの言葉に思わず鈴は聞く。
「・・・・本当です。・・・・・それ以前に合体できるのは人間だけでしかも実行するためにはデジヴァイスをお兄ちゃんのタイプでやる必要があるんです。とてもですが・・・・・」
「そ・・・・・・そうだよね・・・・・・もう一方の方は既にカオスデュークモンと一緒に・・・・・」
「待て!そう言えば千冬さんの話ではマドカが使っているデジヴァイスがあるじゃないか!マドカがあれを使えば・・・・・」
「・・・・・残念だがそれも無理だ。マドカのは飽くまでもプロトタイプで合体するには危険過ぎるんだ。それにさっき無理やり戦わされた影響でマドカは使うことができない。」
「それでもいい!マドカ、私にデジヴァイスを貸してくれ。頼む。」
箒は、マドカからデジヴァイスを取ろうとする。
「ちょっ、ちょっ、ちょっと!別に箒ちゃんが行かなくてもいいんだよ~!ベルちゃんが来ればすぐにでも新しいデジヴァイスを組み立てて束さんとちーちゃんでいっくんを助けに行くから!」
「嫌だ!いくら姉さんがダメだと言っても今回ばかりは意地でもやる!」
箒と束は、マドカのデジヴァイスの取り合いになる。
「渡してくれ!」
「ダメ!」
「よこせ!」
「いやですよ~!欲しければ束さんを捕まえてごらんなさい~。」
「うわあぁぁ!!!」
二人が騒いでいる中、一同の前にゲートが開き、わざわざ心配したのかミレイとベルスターモンが来た。
「うまく繋がったみたい・・・・・・・・何をしているの?あなたたち?」
「・・・・・・束ったら、大事なことを言わないからこんなことになるのよ。」
ベルスターモンは溜息を吐きながら束たちの方へと向かい、ミレイは鈴たちの方を見る。
「ゲートが開いたからみんな急いで入ってちょうだい。向こうではクロエがすぐに機体の応急処置を行えるように準備をしているから。」
「わ、分かりました。」
「と、取りあえず急ぎましょう。」
「では、教官。お先に行かせてもらいます。」
鈴たちは急いでゲートの中へと入って行った。ミレイはそれを確認すると箒たちの方を見る。
「・・・・・束、残っているのはもう私たちだけよ。いっその事彼女に本当のことを話してあげたら?」
「!?ほ、本当のこと?」
「束はアンタのために言ってやっているのにアンタがそれに耳を貸さないというわけさ。」
「どういう事なんだ?」
ベルスターモンが言ったことに箒は不審になった。
「アンタ・・・・・束の言った方法でやったらどうなると思っていたの?」
「そ、それは・・・・・・」
「ベルちゃん!そのことは・・・・」
「束の言った方法で合体したらアンタは普通の人間ではなくなるのさ。」
「えっ?」
「人間とデジタルモンスターの中間生命体・・・・・・織斑一夏と同じ存在になるというわけさ。」
キャラ紹介
織斑両親
一夏と千冬、そしてマドカの実の両親。
まだ幼かった一夏と千冬を置いて行方を暗ませるが実は来るべき時に備えて準備をしていた。しかし、潜伏先がルーチェモンたちに発見され、死亡したことがマドカの発言で発覚している。
次回は、一夏救出開始!