東方ギャザリング   作:roisin

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07 異国の妖怪と大和の神

 

 

 

 

 

 

 悪魔と呼ばれるものが居るのならば、それは恐らくコイツのことを言うのだろう。

 

 背中に生えた羽は蝙蝠のようで、身の丈は俺の三倍を越えようか。

 

 まるで人間を数倍大きくし、虫の羽をつけたような格好のそいつは、血色の眼を幾つも持ち、開く口はまるで昆虫をさらに醜悪にしたかのような、おぞましい顔をしていた。

 

 だが、今の俺にはその醜悪さすらも充実感に変わる。

 

 パワー&タフネス、共に9。

 

 今まで召喚してきたクリーチャーの中では、もはや規格外と言っても良い数値。

 

 実験の結果で、カード表記されている攻撃防御数値が1上がる毎に、戦闘能力は二倍にも三倍にも跳ね上がっていた。

 

 では、この9という数値はどこまで神を相手に打ち合えるのだろうか。

 

 

 

 ―――いや、どれくらいまで、敵を殺せるのだろうか。

 

 

 

 暗い感情が心を満たし、それを燃料に感情が煮え立つ。

 

 俺の大事な人達を傷つけたばかりか、勇丸を……何より諏訪子を殺してくれたのだ。

 

 左腕のもがれた痛みと出血による意識の希薄化と抗いながら、一言。

 

 もはや口上は無い。

 

 頭ン中には怨みつらみがぐるぐると渦巻き、考えられうる限りの罵詈雑言が思考を埋め尽くすが、出てきた言葉は単純明快。

 

 

 

「―――殺す」

 

 

 

 俺の怨みの代弁者は、今まで聞いたことも無いような咆哮をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……皆の者、下がれ。奴は私が相手をする」

 

 神々や民達を下がらせる。

 

 妖怪を使役している人間など聞いたことも見たこともなく、ましてその妖怪の頭に大の字がつけば、立場は違えど最低でも下層の神程の力は持っているだろう。

 

 それが、私の目の前にいる。

 

 虫の頭に人の体。

 

 神職の男は死の門の悪魔と言っていた。

 

 

 

(悪魔……か)

 

 

 

 私も初めて見る。海の向こうの妖怪をそういう名で呼ぶのだったか。

 

 見るもおぞましく異郷な者なれど、その身に宿す力は本物。

 

 辺りの霊魂を、体の全てを使って取り込んでいるのが見て取れる。

 

 

 

(魂喰の類か。……死の門とは、また安直な)

 

 

 

 自身の周囲に特殊な神気を練りこんだ石柱―――オンバシラを展開する。

 

 洩矢の国で作られた鉄より強度は低いが、鉄より重く、神気を通すことで手足のように扱う事が出来る。

 

 これに対処出来ずに、大妖怪と呼ばれる奴らや、下級の神などは敗れていった。

 

 そうして何本ものオンバラシラが宙に浮く中。

 

 

 

「―――殺す」

 

 

 

 下手な神や妖怪より殺気の篭った言霊が聞こえてきた。

 

 なるほど、洩矢の神は祟り神の統率者だったと知っていたが、言い換えれば怨みの力だと思い直す。

 

 それの神職であるものがその力を宿していても不思議ではなかろう。

 

 ……悪魔とやらが咆哮を上げる。

 

 見た目通りの畏怖を周囲に与えながら、魂すら奪われそうな声は、まさに絶望ともとれる光景に、思わず口の端がつり上がる。

 

 他のものから見れば、それは死以外の何者でもないだろう。

 

 だが私は神。

 

 ……絶望? 笑わせるな。

 

 人や妖怪ならいざ知らず、奇跡の1つや2つ起こせずして、伊達にその名を語ってはいない。

 

 

 

「我が名は八坂 神奈子の神。覚えておけ。お前を屈服させる者の名だ」

 

 

 

 展開していたオンバシラのうち四本を射出。

 

 身の毛もよだつような風きり音を撒き散らしながら、寸分違わず悪魔へと殺到していく。

 

 だが。

 

 木々を裂き、大岩をも砕くその攻撃も。一本はかわされ、一本はいなされ、一本は腹部へ当たったものの怯んだ様子もなく、最後の一本は殴り付けられたことによって粉微塵に破壊された。

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

 呆れるように、小馬鹿にしたように鼻で笑う。

 

 ここまで効果がないと、逆に相手を褒めてやりたくなる。

 

 この攻撃で幾人もの神や人を傘下に加えてきたというのに。

 

 

 

(面白い……)

 

 

 

 こやつ相手ならば、力加減など気にしなくても良さそうだ。

 

 過去、全力で戦闘を行ったのは、一度か二度。

 

 その際には地形が変わってしまい、復興までに中々の時間を要していたので控えていたのだが、構うものか。

 

 

 

「どこまで耐えられるのか、楽しみだ」

 

 

 

 余力を残しつつ、けれど能力を最大まで使い対処するとしよう。

 

 

 

 二十本以上展開していたオンバシラを全て撃ち出す。

 

 足止め位にしかならないだろうが、それで充分だ。

 

 体中に神気を行き渡らせる。

 

 途端、空が泣き出しそうになった。

 

 澄み渡る月夜だったにも関わらず、今はもう曇天で覆われており、視界も悪化し、時折空を走る雷のみが大地を照らすようになった。

 

 どちらも闇に隠れるようになるが、片や体が神気によって青白く発光し、片や撃ちだされたオンバシラを砕きながら、血を凝縮したような輝きを持つ複数の眼がその存在を主張している。

 

 

 

 私は神。

 

 神とは何かの象徴として具現化している。

 

 自分の場合は―――天。

 

 天候や風そのものと言い換えてもいい。

 

 干ばつには雨を、日照りには曇天を、嵐には快晴を。

 

 敵対者には―――神の鉄槌を。

 

 

 

「天からの贈り物だ。色々あるぞ? くれてやろう」

 

 

 

 悪魔の頭上に出現するのは、雹。

 

 人間の頭ほどある大きさの雹が、無数の雨となって降り注ぐ。

 

 オンバシラを全て迎撃し終えた、悪魔に殺到するそれは、まるで天が地上へ落ちてくるかのような光景を彷彿とさせた。

 

 しかし、それでは役不足。

 

 オンバシラの直撃ですら耐え切る強度を持つあの悪魔は、体に揺らぎをみせるものの、羽を傘のように使い、まるでただの雨を凌ぐかのように防いでいる。

 

 神職の男が、自分への被害が及ばぬよう、悪魔を壁のように見立てて配置したせいだろう。

 

 地形を変えるほどの雹の雨を、何のこともなく耐えている。

 

 耐久性は今までに出会った者の中でも最高峰なのではないかと判断しながら、片手を前に突き出した。

 

 

 

(丈夫な体だ)

 

 

 

 その事にあまり効果の見られない様子を気にしする事もなく、私は次の攻撃を仕掛けた。

 

 突き出した拳を握り込む。

 

 たったそれだけの動作だけで、周囲の風が一気に悪魔を囲むように渦巻いた。

 

 

 

 風が土砂を巻き込み土色の壁となって相手を拒む。

 

 

 

(もっと……もっとだ)

 

 

 

 こんな風では奴は消えない。

 

 強く、強く、強く。

 

 唸りを上げる風の渦は徐々にその力を増し、寸暇のうちに自然界ではありえない風力を持つ暴力となった。

 

 地面の大岩すら持ち上げ、触れる者を切り裂き、バラバラに砕き散る渦となったそれを収縮させる。

 

 握りこんだ手をさらに握りこみ、渦の中心となっている安全圏を狭めてやった。

 

 図体はでかいのだ。少しばかり範囲を絞ってやればいい。

 

 

 

「■□■□―――!!」

 

 

 

 そうする事で、やっと悪魔に被害を与えられるようになったのだろう。

 

 暴風によってあまり聞き届けられないが、渦の中心で奴の叫び声がし始めた。

 

 

 

(小枝が岩にめり込む程の風速は、流石の悪魔とやらにも効果はあるようだな)

 

 

 

 しかも、一抱えもある雹を巻き込んでの台風。

 

 その破壊力はほぼ全ての神や妖怪も屈服させてきた。

 

 だが―――

 

 

 

「ほう、まだ刃向かうことが出来るのか」

 

 

 

 そんな地獄の中、奴は男を守る体制を緩めることはなかった。

 

 その躯体には多少の傷を作ってはいるものの、その眼は今にもこちらを殺さんと輝かせている。

 

 ならば追加だ。

 

 

 

「降り注げ、天よりの雷」

 

 

 

 耳をつんざく雷鳴。

 

 暗闇の世界の中、閃光が走る。

 

 寸分違わず悪魔の脳天に落ち、体中を沸騰させる電撃。

 

 それが、無数に飛来し、蹂躙する。

 

 風によって巻き込まれた雹の間で帯電し、さらなる電力を伴って襲い掛かっている。

 

 ―――暴風で切り刻み、雹ですり潰し、雷で蒸発させる。

 

 天災三重苦。

 

 山ですら、これの前には平地と化す。

 

 

 

(……くっ、やはりこれの維持は堪えるな)

 

 

 

 幾ら神とはいえ、そう易々と天候を変化させられない。

 

 なればこそ、この三重苦を行っている内に仕留めておく。

 

 洩矢の国と戦ってなお余力はまだあるが、今後を考えれば温存しておかねばならない。

 

 一国を支配下に置くには神気は幾らあっても困ることはないのだから。

 

 

 

 ……丁度一分。

 

 もはや叫び声すら聞こえなくなった状況で、私は能力を解除した。

 

 舞い上がっていた瓦礫や雹、土砂が落ちてくる。

 

 まるで巨大な手で掬い取った様な窪地が出来ていた。

 

 ―――隕石が落ちたかのようなその中心。

 

 腕で顔を隠し、羽で体を覆い、自身を庇うよう死の門の悪魔を配置しながら、その足元に男はいた。 

 

 全身を見ても傷ついていない場所がない。

 

 もはや立っている事も間々ならないようで、地面へと前のめりに倒れている。

 

 けれど顔だけはこちらへと向けて、視線を逸らすことはない。

 

 例え悪魔が無事だとしても、召喚した本人はそこ等の人間と変わらないのだ。

 

 それが今、こうして悪魔に守られていたとはいえ無事であるのは、奇跡以外の何ものでもないだろう。

 

 しかし。

 

 ギリッ、と。

 

 そう、思わず奥歯をかみ締める。

 

 

 

(凌がれた……)

 

 

 

 今まで何人(なんぴと)も抗うことが出来なかった天災の三重苦を耐え切った。

 

 天変地異といってもおかしくない光景を眼にしながら、男のその瞳には、強い恨みが色濃く残っている。

 

 

 

(洩矢の神は良い神職を従えていたようだな)

 

 

 

 もし自分に仕えていてくれたのであれば、と思う。

 

 しかし、その思いも一瞬で流す。

 

 もはや覆ることのない事実を思い出したかのように―――これから反撃だとばかりに、悪魔はこちらへと襲い掛かってきた。

 

 神気を大量に使った反動で、いま少しばかり充填に時間を要する。

 

 あの天災の中で男を守っていた結果、体はもちろん羽もボロボロだが、それでも飛行には問題ないようで、こちらとの距離を詰めてきた。

 

 あっという間。

 

 馬ですら全力で駆けても五秒は掛かろうかという距離を、コイツは二秒を切る勢いで到達した。

 

 

 

(間に合わんか!)

 

 

 

 悪魔がとうとう私の前まで辿り着く。

 

 屈強以外の何ものでもないその腕は、全てを圧殺する勢いで振り下ろされた。

 

 天候を使った神気での迎撃が間に合わないと判断。

 

 オンバシラの何本かを具現化し、避けながら、振り下ろしてきた拳に合わせる。 

 

 破砕音。

 

 束ねたオンバシラが、悪魔の拳と激突し、全て砕かれる。

 

 そのお陰で威力は大分削がれたものの、何とかかわしたその腕は、大地を抉り、それだけでは足りずに地面に亀裂を生んだ。 

 

 叩きつけられた拳から逃れるように土砂が四散する。

 

 巨大な物体が落ちてきたかのような重い音を響かせて、奴の攻撃は一瞬止まった。

 

 笑ってしまうくらいの豪腕。

 

 こんなものを真正面から馬鹿正直に相手をしてはならない。

 

 撒き散らされた土煙に紛れる様に悪魔から距離をとる。

 

 そうすれば対処も容易いのだろうが、問題はそこではない。

 

 

 

 ―――神が、化け物相手に退いた。

 

 

 

 僅かの間だったとしても、それは屈辱以外の何ものでもない。

 

 舞い上がった土埃のせいで民や配下の神々からは見えてないが、この事実は私の中で揺るぎのないものとなった。

 

 

 

 もはや、掛ける慈悲はなくなった。

 

 余力など考慮せず、一気に消し飛ばしてしまおう。

 

 そう考えた矢先、

 

 

 

「がはっ」

 

 

 

 悪魔の後ろ、私の前。

 

 神職の男は、口から大量に血を吐き出していた。

 

 生きている事さえ不思議なのだ。

 

 むしろ、それくらいですんでいるのだから重畳と言えるだろう。

 

 けれど、男自身が限界を迎えようとしているのと同調しているかのように―――

 

 

 

 

 

 その存在が維持できないとかばかりに【死の門の悪魔】は霞のように闇に溶け消えていった。

 

 

 

 

 

 立ち上った煙が消えるように、何の後腐れもなく。

 

 初めから存在していなかったかのように、夜の闇へと還っていった

 

 

 

「……何だそれは」

 

 

 

 苛立ちから、語彙が荒くなる。

 

 今までの出来事は何だったのだ。

 

 過去私を後退させた者など上位の神々ですら数えるほどしかおらず、ましてやそれがただの人間になど、生を受けて初めてのこと。

 

 なればこそ真っ向から挑もうと、純粋な力では叶わぬのなら、神気でそれを補い正面から屈服させてやろうと思った直前、その相手は私の前から消え去った。

 

 そんな存在を召喚した男は、むせる様に咳をし、時折口から血を吐き出す。

 

 虫の息とはこのことか。

 

 つい先程まで戦い、負かした洩矢の国の者達と同様の状態になってしまった。

 

 自分の表情が表情が険しくなるのが分かる。

 

 人として良くやったと褒めてやるのが普段の私の筈なのに、今回は何故か怒りしか込み上げて来ない。

 

 人間の身にあるまじき力を誇示したせいか、それとも洩矢の神ですら出来なかった私をかすり傷とはいえ傷つけたという行為に対しての思案からか。

 

 

 

 ―――兎に角、この沸き立つ怒りをぶつけねば気がすまない。

 

 まだ息はあるようだ。

 

 辛辣な言葉を浴びせたいのか、その命の最後をこの手で散らしたいのか。

 

 湧き上がるものに突き動かされ、私はただ怒りのままに、その男の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ……もう、視界が完全にぼやけてやがる……)

 

 

 

 視界も埋まり、曇天の世界がモザイクへと変わってどれくらいの時間が経っただろうか。

 

 左手を取られたことによる出血で、段々と体力は奪われ、意識すらも霞んできている。

 

 庇うように守っていた諏訪子は……諏訪子の体は、まだ俺の前にあるだろうか。

 

 

 

(……全く、幾ら強大な存在を使役出来たとしても、自分が殺されたら終わりっていう弱点があるのなら、対処は簡単じゃないか)

 

 

 

 現に八坂は雹を降らせて【死の門の悪魔】を防御に使わせるしかない状況を作り出し、台風をこちらの周りに展開し自由を奪い、止めとばかりに雷を無数に放ってきた。

 

 雹は何とか防げたのだが、続く風の攻撃で呼吸が困難になり、最後の電撃で体中で無事なところの発見が難しい位に感電し、肉体を壊された。

 

 ―――そうして、限界が訪れた。

 

 幾ら強力な存在を召喚出来たとしても、維持できなければ効果を発揮し続けてくれない。

 

 天災の終わった直後、何とか顔だけを八坂が居た方へと向け、奴を殺せと悪魔に命令する。

 

 刹那の如く移動し、大地が破裂するような一撃を与えた事を音で判断した俺は、もはや堪えるだけの力もなく、【死の門の悪魔】の供給を終わらせるよりなかった。

 

 マナコスト9。

 

 それの維持は、常にほぼ全力で走っているかのような疲労具合だったのだから。

 

 

 

(もしこれで殺せなかったら……)

 

 

 

 自分が死ぬのは確定だとして、無念のままに潰えるのはイヤだった。

 

 例え何度も人生リトライ出来るとしても、この思いだけはリセットできよう筈もない。

 

 幸いにも耳………いや、片耳だけはまだ聴力が生きているようだが、それでも体は、もはや痛みすら感じられず、消えそうになる意識を意思の力でキープしている状態。

 

 このまま何も聞こえなかったのなら八坂を倒せたと判断し、満足のままに再スタートするとして。

 

 

 

 

 

「……何だそれは」

 

 

 

 倒せなかったら、俺はどんな思いで第三の人生を歩めば良いんだろう。

 

 

 

 

 

 

 聞こえた声は、間違いなく風神。

 

 しかも大したダメージを負っていない様な口調ではないか。

 

 ―――イヤだ、イヤだ。このまま何の思いも遂げずに死ぬなんて。

 

 大切なものも守れない。己の意思すら貫き通せない。

 

 そんな状態で死ぬなんて―――絶対に嫌だ。

 

 だから―――

 

 

 

(近づいて来い)

 

 

 

 八坂の呟いた声には怒気が含まれていた。

 

 恐らくただの人間の俺が抗ったのが許せないのだろう。

 

 こちらは瀕死。あちらは壮健。

 

 こんな状況、まさに強者が弱者を嬲るのにおあつらえ向きじゃないか。

 

 ―――獲物を前に舌なめずり、大いに結構。

 

 その油断を、その慢心を。その、思考力の低下した状態でこちらに来てくれ。

 

 そうすれば……否。そうでもなければ、お前を倒せないから。

 

 1歩1歩、こちらに近づく足音が聞こえる。

 

 まだだ。まだまだだ。

 

 もう少し。あと少し。

 

 徐々に近づく気配に願いを込めながら。

 

 俺の側まで寄って来い。

 

 その時は俺の命を差し出そう。

 

 だから、だからその時は。

 

 

 

「―――お前は何者だ、洩矢の眷属よ」

 

 

 

 来た。

 

 残り1マナ。

 

 最後のカードを思い浮かべる。

 

 呪文系では効果が怪しい。

 

 現状でも対象を破壊するカードは山ほどあるが、それが神相手にどこまで通用してくれるのかは検証したことがない。

 

 ならば、純粋な力による撃破が望ましい。

 

 よって、先程と同じように、クリーチャーを思い描く。

 

 通常の状態では効果の薄い、でも、こんな状態の今だからこそ最大限の効果を発揮する、あれを。

 

 

 

 ……八坂、俺の命を差し出そう。

 

 それ位しないと、今の俺には手が届かない。

 

 ―――だから。だから代わりに。

 

 お前の命を―――くれ。

 

 

 

「―――死、……ッね、ぇ……!!」

 

 

 


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