とある夜。万事屋は浮かれていた。
それは一つ依頼をこなしただけでたんまりと報酬が貰えたからである。
依頼人は大手企業の社長であったこともあり産まれてから見たことないぐらいの札束だった。
「まさかこんなに貰えるとはなァ。相手が社長だったんで少し期待はしてたが、嫁が雇った探偵黙らせるだけでまさか100とは思わなかったぜ」
「今日は焼肉食べたいアル!腹いっぱい食べたいアル!」
「そうだな今日は焼肉でも食うか。当然食べ放題だがな」
浮かれながら三人は会社のエレベーターに乗ろうとした。
すると「ちょっと待て」と言って銀子が止めた。
「銀子さんどうしたんですか?」
「このパターン前もあったな。確か金持ちの浮気揉み消してあの時も大金貰って焼肉食いに行こうってなってエレベーター乗ったら…閉じ込められたよな」
※本編参照
「確かにありましたね…」
「このタイミングでエレベーターに乗るのはマズイぞ」
銀子の言葉で躊躇した新八と神楽もエレベーターに乗らなかった。
「でも銀子さんここ55階ですよ?階段で降りてたらそれこそ倒れちゃいますよ」
「ここは一か八かエレベーターに乗った方が良いアル!」
「待てこのエレベーターどこが作ったんだ、シン○ラー社じゃねェだろうな」
「危ない事言うんじゃねェよ!ていうか違いますから!」
新八と神楽に比べて何故か銀子の警戒度が異常に高かった。
「銀子さんそこまで警戒しなくても良いんじゃないですか?エレベーターに閉じ込められるなんて一生に二度も経験しませんよ」
「バカかよぱっつぁん、貧乏人が大金を手にしたら必ず直後に不幸が起こるんだよ。そうやって世の中は上手い感じに回るようになってんの」
「もう銀ちゃんに付き合ってたらいつまで経っても帰れないアル!私から乗るネ!」
ビビる銀子にイライラした神楽はエレベーターに乗り込み、銀子や新八を待たずにすぐに閉を押して下って行った。
「神楽ァァァァ!!」
「いや何叫んでんですか…」
「前は俺たち三人の警備員のおっさんの計四人だったからまだ乗り切れたが一人でエレベーターに閉じ込められた時の孤独感ったらねェぞ!5分後に死にたくなるよたぶん!」
「どこまで心配性なんですか…」
銀子の心配を他所にエレベーターの表示は1Fになり神楽は無事に帰ることが出来た。
「ほら大丈夫だったじゃないですか。なんなら次僕が行きますから」
続いて来たエレベーターに新八は乗り込んだ。まだ警戒する銀子は乗らなかった。
そして新八も無事に1Fまで行き帰ることが出来た。
「あとは俺だけか……」
この会社にエレベーターは2基装備されている。
神楽と新八がそれぞれ使ったので両基共に壊れていないことは証明済みである。
さらに二人ともどこの階にも止まらずに1Fまで行ったということは、今この会社には人がいないということ。その点は前と同じ。
「完全に俺一人が閉じ込めれるフラグが立っている…まず最初の選択はどちらを選ぶかということだ。ここで選択を誤れば地獄へ落ちる…天国か地獄か!オブンorヘル!」
どちらを決めきれない銀子は両基のボタンを同時に押した。
「先に上がって来た方に乗ろう。そうだそこのフィーリングだな」
しかし当然といえば当然なのだが両基は同時にやって来た。
「よーし両基共に異常無しってことか。こういう時は変に悩んだらダメだ、直感に全てを賭ける!」
銀子は直感だけに全てを賭けて向かって右側のエレベーターに乗り、1Fのボタンを押した。
バクバクする銀子の心臓。順調に下っていくエレベーター。階数表示も段々と下がって行っていた。
だが14Fを過ぎると全く下がらなくなった。
「ん?誰か14Fで乗って来るのか?」
……扉は開かない。
「ま、まさか……閉じ込められたァァァァ!!だから言ったじゃん!やっぱり俺が正しかったんじゃねェかァァ!」
銀子の心配通りの展開になってしまった。しかもたった一人。
「なんでだいたい俺だけなんだよ!どうせなら新八と神楽も閉じ込められろよ!」
感情的になっていて気付かなかったが、ふと冷静になった時何故自分だけが閉じ込められたのか銀子はすぐに理解した。
「俺が金を持ってるからか……100万全て俺が持っているからなのか……くそっ!こんなことならアイツらにも33万ずつ持たせておくんだったぜ!仲良く不幸を三分割出来たってのによ!」
エレベーターの中で声を荒げようと返って来るのは沈黙だけ。何故なら孤独だから。
「そ、そうだ非常ボタンがあるんじゃねェか。神楽みたいなバカ力もいねェしコレを押せば……」
しかしいくらボタンを押そうが何ともならなかった。
「ここが壊れてるんかいィィィィィ!!」
ツッコミというよりキレた銀子は扉を木刀でぶち壊した。そこは14Fフロアだった。
「最初からこうすりゃ良かったんじゃねェか。14Fからならまぁ階段で…」
そこで銀子は自分の過ちに気付いた。エレベーターをぶっ壊してしまったのだ。その様子はエレベーター内の監視カメラでバッチリ撮られている。
万事屋の焼肉は夢と消えたのだった…。
第九訓完。
またお会いしましょう