『ピピッ…ピピッ…』
目覚ましがなった。
時計を持ち上げ時間を見た。
午前三時。
寝ていた男は寝起きがいいこともあって布団からすぐ出た。
季節は冬。その暖かい布団に戻りたいと心に残しつつ、窓を開け、ベランダに出た。
ここは田舎。星がとても綺麗にみえる。星の邪魔をする奴が誰もいない。
あくびをすると、ほわっと白い息がでた。
気温は零度あるかないか、それぐらいだろう。
男は柵に腕をかけ、何かを待つようにそっと遠く見つめた。
どこか嬉しいような、でも少し寂しいような。
そんな気持ちを思いにしながら。
昔の物語(こと)を思い出しながら。
-----再会-----
僕の名前は佐加野 翔(サガノ ショウ)、17歳。
田舎のとある高校に通っている。
部活は野球部。
運動するのは大好きなんだ。
野球を始めたのは中学一年の時。
何に入ろうか迷ってたあの時、野球部のマネージャーにとても可愛い先輩がいると言うのを聞いて仮入部に行った。
ただそれだけの理由で、野球を始めた。
今は野球が大好きだから部活に入っている。
そのマネージャーは今はいない。
どこで、何をしてるのかもわからない。
そんなことを懐かしく思いながら始業式へと歩いた。
始業式。鐘がなる。体育館に生徒が集まる。
新一年生はこの後入学式らしい。まだこの会場にはいない。
校長の話。指導員の話。どれもつまらない。
鐘がなる前に始業式が終わった。
今から待ちに待ったクラス発表だ。
ドンッ‼︎
『⁉︎』
翔はびっくりしてとっさに振り返った。
「おっはよー!しょーーーちゃん!♡」
『うわ…でた……』
男の元気な挨拶と同時に翔の気持ちはまたこの日常生活が始まるのかと少し肩を落とした。
笹倉 優雅(ササクラ ユウガ)
幼稚園からの幼なじみ。
なんというか、凄く愛情をくれる奴だ。
(BLではないからな!!by.優雅)
「優雅、お前、今日はいつも以上にテンション高えな。」
「そりゃー翔ちゃんと同じクラスだったから〜♡」
『……(汗)。今年は一緒なんか…まあこれでぼっちではないっと…』
「翔ちゃん?翔ちゃーーーん???」
「わりぃ、考え事してた。」
「翔、すぐ考え事しだすんだからー。」
そんなことを話しながらクラスへいく。
席はもう決まっていた。
後ろの方の席だった。勝った気分しかない。
俺の後ろの席は…やっぱり。優雅か…。
うるさい日々が始まる。
ただそれだけだと思ってた。
鐘がなる。と同時に教室のドアも開いた。
ガラガラガラ
担任が入って来た。
先生の隣にいる…あいつは…?
封印していたかすかな思いが
溢れるほどに飛び散った
『海穂……だよな……?』
「うぉぁ!?海穂ネェ!?」
優雅が叫ぶ。しかし翔には聞こえていなかった。
蘇る過去に引き寄せられすぎて周りがないものだった。
「今日からこのクラスへ転校してきました!
小川 海穂(オガワ ミホ)です!実家がここの付近にあって中学まではこっちで過ごしてました!訳あって他方の高校だったのですが、また訳ありで戻ってきました〜(笑)。知ってる人もいるかもしれませんがよろしくお願いします!!」
明るい挨拶。
楽しそうにハキハキと話す、でもどこか抜けている。
確かにあの海穂だ。
翔は自分の世界に入ったまま戻ってこない。
意識が戻る頃には隣の席に海穂がいた。
「ウワァァ!?!?」
隠しきれない驚きが全体にもわかるほどになっていた。
「どうしたん(笑)そんなお化けが出たような顔しとって?(笑)」
懐しい。
「まーた同じ学校になっちゃったね(笑)」
凄く懐しい。
「………翔?」
「ふぇ?」
さっきまでとは違った腑抜けなような凄く力が抜けているような声が空気のように出た。
「まだ野球やってるん?」
「やってるよ。昔よりも真面目に。」
「昔よりって(笑)昔は真面目ちゃうかったんか!」
凄く、物凄く懐しい。
もうあれから3年経つらしい。
海穂は相変わらず変わらない素振りで翔に話しかけた。
「ここの野球楽しいかー?」
「楽しいよ。練習もちゃんとしてて。」
「また可愛いマネさんが居たから入部したんだろー(笑)」
「んなわけあるか。」
「えー?(笑)」
また鐘がなる。今日は鐘が鳴るのが早い気がする。
ホームルームが終わった。これから新入生歓迎会で野球部も出席しなければならない。
『帰れないなら野球してるほうが…』
そう思いながら席を立つ。
「また明日な。」
そう言って海穂を後にした。
海穂は何か言いたそうだったが、無言で手を振った。
少し寂しそうな顔をして。