やはり俺のハンター生活は間違っている   作:眠魚

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題名の元ネタはモンハンシリーズほぼレギュラーのあの方。



第5話 第三王女

ドンドルマから見て西側。整った街道を抜けて、あまり整備されていない道を十数の竜車がまとまって移動していた。その大隊の中央部に位置するとりわけ豪華な車内―――

 

「―――じゃからのぅ、わらわはイイ感じのペットを捕らえようと家を出ただけじゃというのに、じいと来たら心配性でいけませぬいけませぬとしか言わないのじゃ。大体じいはいつもそうじゃ、この前も――――

 

あまりクレイには縁がない高級そうな竜車に姫、使用人二人、自分といった感じで乗り込みそんな中でお姫さんの話、というか愚痴を聞きながらクレイは頭が痛くなるのを感じた。

 

 

なぜ、ハンターが王族とともに竜車に乗っているのか?少々前の出来事を見てみよう。

 

 

クレイ呼び出される。護衛の依頼を出される。受ける→現在。回想終了。

 

当初は大勢の黒服たちのことも相まって突然打ち首じゃあ!とでも言われたらどうしようかとびくびくしていたものだが、どうも取り越し苦労に終わったようである。

 

現在は、依頼を受けてくれたら無礼を不問とするとお姫さん直々にお許しを得たので半ば強制的ではあるものの依頼のために何処に行くともわからない道を同行中というわけだ。

 

そもそも、王族の方が自分にどうして依頼を出したのかとそれとなく尋ねるとそれについてはこのお姫さんにじいと呼ばれていた高齢の使用人が説明をしてくれた。

 

曰く、目の前のお姫様はさる王国の第三王女である。しかし、親が少々甘やかしすぎたのがいけなかったのか好奇心が旺盛すぎて放っておくと何処に行かれるか分からなくなることが多々ある。

 

であるからして、どうせ出ていかれるなら先手を打ってお目付け役兼護衛を付けようという事になったのだ。

 

まあどうなったかは既知の通り。護衛はまんまと姫さんに出し抜かれ気づいたらどこにもいなく、やっと見つけたと思えば、どこぞのハンターに滅多打ちにされた恐怖からか護衛を辞退してしまったようだ。…護衛の人哀れ過ぎない?

 

何はともあれその様子をみたお姫さんが何を気に入ったのか護衛をそのハンター、すなわちクレイを任命するという運びになったらしい。

 

…やらかした自分がいうのもなんだが、そんな重要な依頼をハンターとはいえ一市民に過ぎない自分を巻き込むものだろうか?

 

それとなく、そのじいとやらに抗議のアイコンタクトを送るが、そのじいはお姫さんに聞こえないように小声で囁く。

 

(これ以上癇癪をおこされると私の胃が持たないのです!何卒っ何卒っどうかご容赦していただきたい!)

 

あまりにも鬼気迫った目をされたので何か言う気さえ失せてしまった。となりにいた侍女らしき人物もしきりにうなづいている。

 

…まあ疲労の色が見え隠れするご老体に鞭打つのも大人げない。ここはこのご老人に免じて依頼はちゃんと果たすとするか。

 

そんな心持をしながら、いまだに自分はいかに窮屈な暮らしを送っているのかという話を続けている件の少女を見やる。年齢はユキより上あたりらしいが身長や言動も相まってとてもそうは見えない。

 

「―――というわけで、なみいる男どもを丸腰で撃退したそなたにこう何というかビビッとくるものを感じての。こうしてわらわ直々に、…そう直々(・・)に指名してやったというわけじゃ。光栄に思うが良いぞ!」

 

突然立ち上がりバサァっと真紅のドレスを翻し機嫌良さそうに無い胸を張って踏ん反り返るお姫さん。クレイは言いようのないさらなる不安に襲われていた。

 

そんなクレイと対照的にどうやら上機嫌な姫様が嬉しいらしく、姫様がおっしゃったのですから間違いありませんな、と従者二人は褒め始めている始末。

 

…部外者が言うのも何ではあるが、その態度がこの姫の性格を形作ってきたのだろうと褒められて気分を良くしたのか満面の笑みを浮かべるお姫さんを眺めて思った。

 

 

「あのぉーハンターさん少しよろしいでしょうか?」

 

 

その後暫く雑談(姫様が一方的に話すスタイル)をしていたところ侍女っぽい人がおもむろに口を開きこちらに尋ねてきた。突然話しかけられて盛大にキョドるが平静を保とうとするクレイ。

 

…自分に一体なんの用だろうか。無言でその先を促す。

 

「依頼のあと直ぐに出立してしまいましたが、パーティの方などへの連絡はよろしいでしょうか?」

 

……………ん?

 

パーティの方?一瞬本気で何を聞かれているのか分からなかったが………それはもしかして自分に聞いているのであろうか?

 

普通ハンターというものは安全のためにもパーティを組むのがほとんどで、常時一人で活動するものはよっぽど己の腕に自信があるか何か問題を抱えている者しかいないのである。

 

そんなわけでどうやら彼女はクレイが普段パーティを組んでいると思いこみこうして尋ねたようだ。…もちろんクレイにパーティと言えるようなものはいない。

 

悪意はないとはいえ不意打ち気味のジャブに少しめまいがする。

 

「おぉ、それはこのじい失念しておりました!なるほど、確かに本来ハンターとはパーティで戦うもの。てっきり組むものがいなくて一人だと勘違いしておりましたぞ」

 

さらにじいによるボディーブローが炸裂した。きっと後でじわじわと効いてきて胃が痛くなってくるに違いない。

 

確かに正解ではあるが……別に一人で戦うハンターがいてもいいじゃないですか!

 

心の中で叫んでみるが攻撃は止まない。畳みかけるようにそれは違うぞと言いながら不遜な笑みを浮かべて王女はいう。

 

「そのことについての調べはもうついておる。

…何を隠そうギルドの奴に聞いたところそやつは酒場や狩場、公私ともに常に一人の孤高の戦士。だからそんな面倒なことは考えなくてもよいのじゃ!」

 

どうだと言わんばかりの態度でしてやったりといった顔で言い放つ姫さん。ギャラリーの流石姫様情報収集に長けておりますな、キャーステキなどの声が聞こえる中、渾身のストレートを叩きこまれて真っ白に燃え尽きた男がそこにはいた。

 

…はあ、…一緒に狩りに行く友達が欲しい。理不尽なダメージを負いながら切実にそう思った。

 

 

◆◆◆

 

 

突然の精神攻撃にノックアウトされかけたものの仕事は仕事。とにかく依頼の詳しい確認をするために本日の主犯であるお姫さん……はまだ話しかける勇気がないので、男性で年寄りという話しかけやすそうなじいに話を聞いてみる。…少しどもった気がするがこの際気にしない。

 

「姫様、この者が護衛をするに当たって何処に向かうのかと聞いておられますが一体私たちは何処に向かっているのでしょうか?」

 

…いや、あんたらも知らなかったんかい。想像以上に抜けている使用人にであったため胸中で突っ込む。

 

「ふむ、今回は久々に自由な行動が出来るゆえわらわも機嫌が良い。特別に今回の目的を教えてやろうじゃないか」

 

やっと仕事の話に入ったためスイッチを切り替え、真剣に話の続きを待つ。これは仕事なのだ。延々とさっきまでのことを引きずりはしない。

 

…本当にしないよ、うん。

 

そんな益体も無いことを考えているとついに姫さんの口から姫自身による壮大な計画が伝えられようとした。

 

ごくりと誰かが生唾を飲む音が聴こえ、満を持してお姫さんの口が開かれた。

 

 

「…実はのう、ギルドにはもう話しは通したのじゃが今から向かうアルコリス地方の森丘にの、それはそれは珍しい小さいイャンクックが出たとらしいのじゃ。それを聴いてわらわは閃いたのじゃ。そのチビクックをペットにしたらさぞ可愛らしかろうとな!」

 

満面のどや顔を覗かせてお姫さんはそう言った。

 

…なんだって!と叫びたい気持ちを押さえつけながら今の発言を頭の中で反芻する。

 

わざわざ王女が森丘に向かう?確証もない噂で?しかもモンスターをペットにするために?

 

突拍子もない話であったため、せっかく切り替えたスイッチがオフにされかかってしまった。そんな理由でこんな人数を引き連れていたのか…。というか理由もなくよくこんな人数連れてこれたな。

 

不敬罪にあたりそうだが、クレイは開いた口が塞がらなくなってしまっていた。

 

「姫様!そんな理由で今回家出をなさったのですか!なりませぬぞ!」

 

呆然としていたじいが漸く再起動して姫さんを諫めようとする。その調子だ、もっといえ!

 

「そんな理由とはなんじゃ!あんなに何もない家ではモンスターペットの一匹ぐらい居なくてはわらわが退屈で死んでしまうであろう!」

 

「………ぬぅ、ですが…」

 

どう見ても穴しかない理屈にじいは毅然とした態度で諭そうとしたのもつかの間もう丸め込まれそうになっている。じい弱っ。

 

思いのほかお姫さんに弱かったじいに見切りをつけ今度は侍女の方を見る。見ると彼女も説得しようと口を開いていた。

 

「危険です、姫様!小さいとはいえモンスターなのです。姫様が傷つかれたら姫様のお父上がご心配になりますよ!」

 

じいが使えない今、頼れるのは侍女さん、君だけだ。頼む!

 

「ペットの躾などわらわの威光があれば、問題ないじゃろう!」

 

「…むぅ、確かに……」

 

…いや、確かにじゃありませんがな。この姫の何処にモンスターをも躾けれる威光を感じ取ったのだろうか?速攻で陥落した二人をみて諦めるしかないと悟るクレイ。

 

…ん?自分で説得すればいいじゃないかって?…馬鹿言っちゃいけねぇ。ここで下手に口出して姫さんにぼろくそ言われたら泣く自信があると断言しておこう。

 

「二人揃って心配性じゃのう。見よこのハンターを!こやつはわらわの言ったことになんの反対意見も出していないぞ!少しは見習ってほしいものじゃな」

 

そして沈黙が功を奏したのか姫さんに高評価をいただく。

 

…違うんです、意見するほど女性に話しかける訓練をしていないだけなんです。自分で言って悲しくなるような言葉をもって心の中で反論するクレイ。もちろん姫様には届かない。

 

そんなこんなで一応満場一致で森丘に行くことになったお姫様一行。

 

今更だが本当にギルドはイャンクックの捕獲の許可を出しているのだろうか?帰還したら密猟で逮捕されないか不安になるクレイだった。

 

 

◆◆◆

 

前途多難かと思われた道中であったが、流石は王族と言った感じで、移動の方は少ない揺れで疲れも少なく、野営もちょっとしたホテルのようでよく眠れた。まあ、護衛ということでそこまで長く寝させてはくれなかったが。

 

途中やれ面白いことや話でもしてみろと無茶ぶりはされたもののそれに目を瞑れば気づけば目的地についているほどの快適な旅である。王族様々であった。

 

そんな経緯で現在、森丘。

 

ドンドルマの西方に位置するアルコリス地方にあるシルクォーレの森とシルトン丘陵、略称森と丘は狩場ではあるものの危険の少ない地域ではよく家族連れでピクニックに来る人も多い穏やかな気候の土地である。

 

その土地で新鮮な空気の香りにこれまでの心労が癒されるのを感じたクレイはどたばたと野営の準備を始めている王族直属の荷車隊をよそに早速護衛ついでの依頼らしいイャンクック捕獲の準備をする。

 

もしかしたら入用になると思い、捕獲用の道具の調合素材だけを持ってきていたがどうやら正解だったようだ。

 

ハンターが討伐依頼を達成する時の方法は二通りあり、一つは単純に狩猟する方法。もう一つは専用の道具を使って捕獲する方法である。

 

今回クレイが持ってきた理由はたまに捕獲でないと失敗になるクエストがあるため、依頼内容がはっきりしなかったこの依頼にも念のため持ってきたという次第らしい。

 

そんなわけで、いつもの簡易キャンプを手早く建て、その他もろもろの準備を終え家で取り換えていた武器を手に取る。今回の武器は取り回しを第一に考えたためいつもの大剣は一回お休み。

 

装備の点検も終わったので最後に一応念のため何かあったとき用の信号弾を渡すのと姫さんにうかつに外を出歩かないよう釘をさしておこうと思い後ろを振り返る。

 

そこにはいつの間にか自分の建てたものよりも立派なテントがそびえ立ち、そして何故か片手剣を装備し甲冑のような鎧を着込んだ小さめの人物が必死に止めようとする使用人を引きずりながらこちらに近寄ってきていた。

 

「さあ、準備は良いか?いざ、わらわのペットを手に入れるために、出発!」

 

というか姫さんだった。

 

 

 

…え?着いてくるんですか?

 

 

今日一番の困惑にクレイは襲われた。

 

 




とりあえず、クレイの夢を叶えてみたかった。

狩猟に持っていくのがこんなに難しいとは思わなかったです。

イャンクック 鳥竜種 別名 怪鳥

皆大好きクック先生。基本的な飛龍の動作を教えてくれるモンハン界の良心。
が、4gギルクエの亜種は許されない。

パーティ

モンハン世界では5人以上で狩りに行くと不吉なことが起こるというジンクスから4人で組むのが通例。決してシステム上の問題ではない。

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